12 ,2008
翠滴 2 溢れる水 5 (21)
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唇を重ねると享一も返して来た。
躊躇いを殺し挑むかのようにおずおずと河村の首に腕を回して来る。河村の手が着衣を剥そうと伸ばしても抵抗を見せなかった。少し俯く享一の目は、ネクタイを解き上から一つずつ釦を外していく河村の指を追っている。その頬や唇に何度も口付けた。
間接照明の柔らかな光が形の良い享一の輪郭に影を落し緩やかに際立たせる。
享一、綺麗だ…感嘆の思いをそのままに口にすると、享一は目を伏せ、少し困ったように笑った。そして何かを振り切るように顔を上げ、強い視線を投げかけてきた。その、瞳と唇をつかまえる。
唇を合わせながらシャツと滑らかなラインを描く肌の間に指を差し込み、肩から滑り落とした。
潤んだ瞳が欲情を露にしてキスの合間に小さな喘ぎ声を漏らすと、河村を煽るように首を傾げ半分伏せた瞳で河村の唇を見つめる。ゆっくり河村に自分の唇を寄せると、舌先で柔らかい河村の口角の間を行来する。
享一のぎこちなくて淫らな行為に脳の奥が痺れた。
「積極的だな」
「……いけませんか?」
自分の行き過ぎた行為を咎められたと思ったのか、羞じらったような戸惑ったような顔をして浅く俯く。そんな仕種の一つ一つがダイレクトに河村を刺激する。
「そんなことない。でも無理もしてほしくない」
「どうして俺が無理をしなければいけないんですか?」
面と向かって少し怒ったかのように返して来たが、投げ遣りと取れなくもない。
河村は、享一の変貌ぶりに驚きと咽喉に刺さる小さな骨のような引掛りを感じつつも黙殺した。なにより、自分が渇望していた享一の扇情的な姿態と、自らの欲望に脳内は焼切れていく。
「怒るな」
「別に……怒ってなんかいません」
舌を絡め合い、剥き出しの欲情でお互い深く求め合う。
享一はタブーや躊躇いを金繰り捨てたかのように、自分の欲望を満たそうと河村の腕の中で妖しく肢体をうねらせる。享一の四肢が、長い時間、人肌のぬくもりに餓えていた事を証明するかのように絡みついてきた。
つぅと、享一の紅く染まった目元から一粒の涙が零れ落ちる。その涙を舌先で捕らえ、瞳に残った涙も唇で拭い取る。これが最後の涙だと思いたい。
前回、葉山で初めて躯を重ねた時、涙と共にうわ言のように呼び続けた男の名が口に昇ることは終ぞ無かった。
唾液をたっぷり絡ませた指を双丘の秘めた場所に潜らせる。蕾をくじると享一の喉が息を飲む短い音を立て眉根が歪む。その表情を読みながら固い蕾に指を突立てるようにして めり込ませて行く。片手は河村の腕を掴みもう片方の手はソファの脚を握って耐えている。
前の時は酒に酔っていた。シラフで身体を開くには抵抗も躊躇いも残っているはずだ。河村は享一を安心させるように、何度も何度も口づけた。やがて指を増やし、充分にエレクトしたそこを刺激しないようにポイントを避けて出し入れして解していく。やがて、享一の息が上がり腰がもどかしげに揺れ出した。指を抜くと享一の唇から小さな声が漏れる。膝裏をすくって脚を広げた。享一の目は薄く開かれ、潤んだ黒曜石の瞳は天井に向けられている。
「俺は、最後まで享一を抱きたい」
天井に向いていた瞳がゆっくりとこちらにむけられ、縋るようなそれでいて迷いが残るような複雑な色を帯びた瞳で微かに微笑んだ。その瞳に胸の奥の何かが爆発し、理性も懸念も飛沫となって飛び散った。俺なら、こんな寂しげな顔はさせない。俺なら、お前を守ってやれる・・・・もう遠慮なんかしない、清らかな流れを手に入れ他の誰にも味あわせたりしない。
脚を更に押し広げ、享一の中にゆっくり自分を沈めてゆく。享一はソファの脚をさらに強く握り、息を詰めて耐えている。わざと避けていたポイントを自分の欲望で刺激すると、躯が跳ね上がり甘い叫び声が上がる。一度の情事で憶えた享一の良いところを次々攻め落とす。
時見 享一という美しく清らかな水を夢中で飲んだ。
媚態に煽られ劣情に曝され、止どまるところを知らずに攻め続け、お互い何度も達した。
なのに、満されない、享一が足りない。
享一は変らず清らかで甘い水のように煽り続け、自らを与え続けてくれるのに、抱いても抱いても渇きが止らない。享一は、まるで享一の姿をした薄い皮を被り元の自分を封印してしまったかのようだ。
永邨 周を直向きに愛する時見享一という男を…
「周…、可愛さ余って何とかだな…」
意識を飛ばし眠りに落ちた享一を見下し呟く。享一の仕草や反応のあちらこちらに前の男の影響が見える。隙あらば絡め捕ってしまおうと思った相手が今、癖の悪い障害となって憚っている。
時間を掛けよう。時間を掛けて享一の中から彼の男を消し去り、新しく自分を構築していく。
「享一、時間を掛けてゆっくり堕ちておいで」
憂いを滲ませた声でそう言うと、河村は疲れて青みを帯びた享一の瞼にキスを落した。
唇を重ねると享一も返して来た。
躊躇いを殺し挑むかのようにおずおずと河村の首に腕を回して来る。河村の手が着衣を剥そうと伸ばしても抵抗を見せなかった。少し俯く享一の目は、ネクタイを解き上から一つずつ釦を外していく河村の指を追っている。その頬や唇に何度も口付けた。
間接照明の柔らかな光が形の良い享一の輪郭に影を落し緩やかに際立たせる。
享一、綺麗だ…感嘆の思いをそのままに口にすると、享一は目を伏せ、少し困ったように笑った。そして何かを振り切るように顔を上げ、強い視線を投げかけてきた。その、瞳と唇をつかまえる。
唇を合わせながらシャツと滑らかなラインを描く肌の間に指を差し込み、肩から滑り落とした。
潤んだ瞳が欲情を露にしてキスの合間に小さな喘ぎ声を漏らすと、河村を煽るように首を傾げ半分伏せた瞳で河村の唇を見つめる。ゆっくり河村に自分の唇を寄せると、舌先で柔らかい河村の口角の間を行来する。
享一のぎこちなくて淫らな行為に脳の奥が痺れた。
「積極的だな」
「……いけませんか?」
自分の行き過ぎた行為を咎められたと思ったのか、羞じらったような戸惑ったような顔をして浅く俯く。そんな仕種の一つ一つがダイレクトに河村を刺激する。
「そんなことない。でも無理もしてほしくない」
「どうして俺が無理をしなければいけないんですか?」
面と向かって少し怒ったかのように返して来たが、投げ遣りと取れなくもない。
河村は、享一の変貌ぶりに驚きと咽喉に刺さる小さな骨のような引掛りを感じつつも黙殺した。なにより、自分が渇望していた享一の扇情的な姿態と、自らの欲望に脳内は焼切れていく。
「怒るな」
「別に……怒ってなんかいません」
舌を絡め合い、剥き出しの欲情でお互い深く求め合う。
享一はタブーや躊躇いを金繰り捨てたかのように、自分の欲望を満たそうと河村の腕の中で妖しく肢体をうねらせる。享一の四肢が、長い時間、人肌のぬくもりに餓えていた事を証明するかのように絡みついてきた。
つぅと、享一の紅く染まった目元から一粒の涙が零れ落ちる。その涙を舌先で捕らえ、瞳に残った涙も唇で拭い取る。これが最後の涙だと思いたい。
前回、葉山で初めて躯を重ねた時、涙と共にうわ言のように呼び続けた男の名が口に昇ることは終ぞ無かった。
唾液をたっぷり絡ませた指を双丘の秘めた場所に潜らせる。蕾をくじると享一の喉が息を飲む短い音を立て眉根が歪む。その表情を読みながら固い蕾に指を突立てるようにして めり込ませて行く。片手は河村の腕を掴みもう片方の手はソファの脚を握って耐えている。
前の時は酒に酔っていた。シラフで身体を開くには抵抗も躊躇いも残っているはずだ。河村は享一を安心させるように、何度も何度も口づけた。やがて指を増やし、充分にエレクトしたそこを刺激しないようにポイントを避けて出し入れして解していく。やがて、享一の息が上がり腰がもどかしげに揺れ出した。指を抜くと享一の唇から小さな声が漏れる。膝裏をすくって脚を広げた。享一の目は薄く開かれ、潤んだ黒曜石の瞳は天井に向けられている。
「俺は、最後まで享一を抱きたい」
天井に向いていた瞳がゆっくりとこちらにむけられ、縋るようなそれでいて迷いが残るような複雑な色を帯びた瞳で微かに微笑んだ。その瞳に胸の奥の何かが爆発し、理性も懸念も飛沫となって飛び散った。俺なら、こんな寂しげな顔はさせない。俺なら、お前を守ってやれる・・・・もう遠慮なんかしない、清らかな流れを手に入れ他の誰にも味あわせたりしない。
脚を更に押し広げ、享一の中にゆっくり自分を沈めてゆく。享一はソファの脚をさらに強く握り、息を詰めて耐えている。わざと避けていたポイントを自分の欲望で刺激すると、躯が跳ね上がり甘い叫び声が上がる。一度の情事で憶えた享一の良いところを次々攻め落とす。
時見 享一という美しく清らかな水を夢中で飲んだ。
媚態に煽られ劣情に曝され、止どまるところを知らずに攻め続け、お互い何度も達した。
なのに、満されない、享一が足りない。
享一は変らず清らかで甘い水のように煽り続け、自らを与え続けてくれるのに、抱いても抱いても渇きが止らない。享一は、まるで享一の姿をした薄い皮を被り元の自分を封印してしまったかのようだ。
永邨 周を直向きに愛する時見享一という男を…
「周…、可愛さ余って何とかだな…」
意識を飛ばし眠りに落ちた享一を見下し呟く。享一の仕草や反応のあちらこちらに前の男の影響が見える。隙あらば絡め捕ってしまおうと思った相手が今、癖の悪い障害となって憚っている。
時間を掛けよう。時間を掛けて享一の中から彼の男を消し去り、新しく自分を構築していく。
「享一、時間を掛けてゆっくり堕ちておいで」
憂いを滲ませた声でそう言うと、河村は疲れて青みを帯びた享一の瞼にキスを落した。
享一の想いを知りつつ彼を抱く河村も切なけりゃ、抱かれる享一も更に切ない。連鎖です。切なさの。(┯_┯) ウルルルルル
紙魚さまがおっしゃってた享一クンの荒修行→→周さん奪還!への道。
かなりの困難を要するとお見受けしますが、楽しみです!!フンガーッ(鼻息荒過ぎ)