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紙魚

Author:紙魚
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07

Category: 翠滴 2 (全53話)

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翠滴2 Agua de beber 1 (8)
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朝から何度も入力ミスを繰り返していた。
いつもはコンタクトの目に慣れない眼鏡が鬱しい。

 モニターから目を放し眼鏡を取って目頭を押さえる。
あと少しで、アトリエサイドとの初顔合わせなのに。
今からコンタクトに替えようかと迷いつつ、机の上のアトリエの資料に目を落とした。


 設計集団・アトリエK2  主宰 : 河村 圭太(かわむら けいた)
 アメリカ クーバーユニオン 卒業 在学中より数々のコンペを獲得…と華々しい経歴が紙の上を踊る。
 33歳、若き天才といったところか。
 プロフィールの横に河村の小さな写真が載っていた。モノクロの枠の中には解像度が低いせいか鮮明ではなかったが、スクエアタイプの眼鏡をかけた神経質そうな男が挑戦的な目付きでこちらを睨んでいる。

 10件程並んだ作品リストの中に、葉山のバー”シーラカンス”があった。
 一瞬 嫌悪感に眉を顰めるが、あの一件は自分の中で揉消す事案として決定済だと考えた無視することにした。作品とその建物の中で起こった出来事は、関係がない。切り離して考えるべきだと。

 それよりも、完成度の高いあの空間の設計者に会えるのかと思うと、自然と河村圭太という人間に興味が涌いてくる。

 俄かに 社内が騒がしくなっている事に気が付いた。
 色めきだった 女子社員の様子に神前が来た時の事を思い出し、警戒心と不快感に眉根を寄せる。
 今日はクライアント抜きの顔合わせの筈なのに…
 
 「時見君、そろそろ始まる時間だし行こうか」
 「はい」

 大石部長が声を掛けられ席を立った。

 「部長、今日はクライアント側の方々も顔を出されるんですか?」
 「いや、今日は設計事務所とウチだけだ。クライアントのN・A トラストには
 改めて社長と総本部長と私で出向く事になっているからね」

 名指しで聞くわけにいかず、遠回しに尋ねたが自分の求めた答えは聞けた。今日の会合に神前 雅巳は来ていないと知って、ひとまず胸を撫で下ろした。
 そして、別の重圧に気持ちが張り詰めてくる。 
 翌週から、と決まったK2サイドの人間との顔合わせだ。
 当然、河村 圭太 本人が来ているだろう。
 経歴を見る限り、かなり頭の切れる人物に違いない。もし的外れな事を口にしたら、即刻出向を取り消されるかもしれない。そう思うと、自ずと気持ちが引き締まった。

 
 緊張した面持ちのまま 部長に連れられて、コンファレンスルームのドアを潜る。
 ロの字型に並べられた机にはK2のスタッフと思われる若い男と、大森建設の開発営業部や建築部 設計部やらの15名程が顔を揃えて座っている。

 部屋に入って真っ先に、ロの字の真ん中にチームが担当する部分の100分の1の模型が置いてあり、享一の目を惹いた。
 その模型は、この段階で既にプロジェクトの成果の素晴らしさを予感させている。
 美術館であるその建物は地面から浮いたようにデザインされ縦横比のバランスが絶妙だ。この建物に自分も関われるのかと思うと胸が躍った。
 感嘆を隠せず、模型に目釘付けになっていると上座から声が掛った。

 「気に入って頂けましたか、時見さん。どうぞ空いている席に座って下さい」

 さらりと苗字を呼ばれ、声の主に目を向け固まった。
 勝手に身体が翻って、ドアに向かう。

 「時見君?」

 大石部長に腕を掴まれ声を掛けられて、はっと我に返った。

 「何してるの? 早く席に着きなさい」

 小声で叱責され、慌てて末席に身を落ち着かせた。

 「失礼しました」
 「では、全員揃ったようなので始めましょう。それと、時見さんは来週からの、K2への出向の件で話があります。この後、残って戴きたいので お願いします」

 絶句した。
有無を言わせず ”お願い”して来たのは、揉消した筈の葉山の男だった。

 

 皆が各部署に戻っていった後の、がらんとしたコンファレンスルームで享一は葉山の男・河村圭太と2人きりで対峙していた。狼狽を隠せぬまま、正面を向き合うとやはり背が高い。”神前”と同じ位ありそうだ。

 肩にかかるぐらいの長い癖毛を後ろで束ね、優男と形容出来る風貌は少女まんがの王子様だ。なるほど、女子社員たちが色めきだっていたのはコレかと思い至る。 
 最悪の展開に、溜息を呑み込んだ。

 「眼鏡掛けてるんだ。この前は掛けてなかったよね。もしかして変装でもしてるつもりとか?」

 確かにそういう意味もあったが、笑いを含んだ言葉にカチンと来た。
 コンタクトを眼鏡に変えたのは、自分を 『サクラ』 だと言い当てた神前を気味悪く感じ、少しでも顔の印象が変わればと思っての事だ。
 だが今は、目の前の河村の顔を正視するのも、表情を読まれるのも厭だった。

 「もともと目が悪いんです」

 自分が晒した痴態や醜態をどうフォローすれば良いのか分らず、伏し目がちになる。

 「そう、じゃあ眼鏡外して」

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 □□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ


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Comments

こんばんわ!
お邪魔してま~す。

どうなっちゃうの・・?享一・・・。
前話の周のその後も気になるけど、このまま二人はすれ違い・・・?
お互い想い合っているのに・・・。

でも、この展開にちょっと萌えます・・・(エヘッ・・・)
かなりのエロ好きに、許して下さい・・・。(ペコリ・・)

揉消した筈の葉山の男・・・。
このフレーズが好きですわ。

では、また明日のお楽しみに・・・・(ムフフッ・・・)

すみませんです。こんなエロコメント・・・。


 ミートン・メートンさま。。おはようございます(ペコリ

 揉消した筈の葉山の男・・・消えてませんでした。
 再び登場(ニヤリ。。

 享一どうなるんだろう・・・
「君の名は」状態?ア、古い?古すぎ?
紙魚も内容はよく知らないけど、シツコイ位のすれ違い話と
聞いたことがあるような・・・リアルタイムで知ってたらコワイな・・(笑)

えろコメント大歓迎~!! またお越しくださいませ~(ペコリ

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