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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
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長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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Category: ユニバース(全80話)

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怪物 12
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 やはり、ジタンはルドガーに接触していたのだ。
 
「ありゃ?こいつはしくじったかな。親父の情人(イロ)までやってる奴だから、てっきりクロストから・・・・あ、そか。情報漏洩防止対策ってやつね」
 独り言のように呟いたトキが、遅すぎる口を噤んだ。
 自分がしゃべりすぎた事に気付いたのか、自嘲気味に笑う。

「まあいいや。今更だ。お前はもうこっちに落ちたも同然なんだしな」
 言いながら、銃を構えなおした。
「呉 紹いやノア・クロストか。お前の事は、結構好きだったぜ。クロストとの乱れた関係はさっさと忘れて、これからはせいぜい劉桂に可愛がってもらいな」
 薬漬けかも知んないけどな、と付け足し裏木戸を顎で指し、外に出ろと指示する。

 渋々ノアが歩き出すのを認めたトキが、取り上げたノアの銃をズボンの背中側に挟む。
 微かな金属と樹脂製のベルトが擦れる音を、トキ自身が聞き取った時には、利き手に構えていたトキの銃はノアの足に弾き飛ばされていた。

「この・・・・!」
 間髪入れずにトキの顔面に拳を食らわせる。吹っ飛んだトキの胸倉を、ノアの一見細く見える腕が引き上げた。

「可愛い顔してんのに、馬鹿力だな」
「黙れ。今度、可愛いって言ったら、完全に鼻を潰すぞ」
 トキの鼻の骨は折れ、切れた唇は血まみれで腫れ上がっている。トキは顔を顰めて無理に笑うと、血だらけの唇を歪ませ、大量の血反吐を吐き出した。教会の中庭に面した石の床に、折れた歯の混ざった血糊がべったりと付く。
 トキの身体をノアが揺すった。
「言え。ジタンはどこにいる?お前たちが拘束しているのか」
 一重の鋭い視線がノアを射した。

「黙れとか、しゃべれとか、まるで暴君の命令だぜ」
 発音が不明瞭になった声でふてぶてしく言い、紫色に膨れ上がった唇の間から歯を剥き出しにやりと笑う。
「あいつ消えちゃたのか。もしかして、あいつもお前の男だったって事? じゃあ遠慮せず、愛しいジタンはお前が殺したのか教えてくださいって聞けばいい。ほら、お願いしてみな」
 腹に硬いものが食い込んだ。トキが背中に挟んだノアの銃だ。

「放せよ」
 胸倉を掴むノアの手がトキから離れる。 
 ジタンの話に気を取られ、背中の自分の銃にまで気が回っていなかった。
「形勢逆転。だから人生って面白いよな。人の話を最後まで聞くところは褒めてやるが、頭に血が上ると注意力が散漫になる甘さは、お前もジタンもそっくりだな。命取りだけどさ」
 トキの指がセルフチャージのスイッチに触れると、銃身からキュインという音がしてあっと今にチャージが完了する。トキが軽くトリガーを引くだけで、自分は性別の区別もつかないくらい木っ端微塵になるはずだった。
 
 いきなり襲った強い衝撃と、思い物体が硬い壁に衝突する音を聞いたのはほぼ同時だった。
 それからコンマ数秒遅れて、静寂の中庭に獣の咆哮のような悲鳴があがる。
 弾き飛ばされた衝撃で、石の柱に叩きつけられ蹲ったノアの身体に、恐怖と苦痛に捩れる悲鳴が降り注ぐ。
 ふらつく頭を上げ、飛び込んできた光景にノアは瞠目した。

 教会の石の壁には亀裂が入り、割れた瓦礫が倒れた自分の足元にまで散らばっている。
 先の衝突音は硬い石の壁を砕いた音に違いなかった。
 そして衝撃が砕いたものは壁だけではない。
 長躯の背中が高々と掲げるトキの身体は、腕が肩の付け根から奇妙な方向に捩れ、間延びしたようにだらりと垂れ下がっている。トキの腕を伝って滴る血液が、靴の先から70センチ下の地面に早くも血溜まりを作っていた。
 血泡を吹くトキの口から、人間とは思えぬ低いうめき声が漏れる。
 
 美しい金髪を戴く後姿がダンスでも踊るかのように、スイと優雅に右腕を上げた。手のひらをひらりとかえし、すっと伸ばす。
 その手刀の軌道上に、深く傾いだトキの首があることを認めたノアは、心臓が冷たく萎縮するのを感じた。
 スローモーションのように優美に伸ばされた手が、完璧な弧を描いて滑り出す。
 加速をつけた手刀が、トキの首を薙ぎ落とす光景が目に浮かんだ。

「ルドガー、やめろ!」
 風を切って滑る手刀が、トキの首にめり込む寸前で止まった。
 トキはもう観念しているのか、目を閉じて動じる気配もない。

「トキはもう無力だ。これ以上傷つける必要はない」
 ゆっくりルドガーが振り向く。ノアに向けられた感情のない瞳に、虚を突かれた。
 いつも生気が溢れ、晴れ渡った空を思わせる青い瞳は昏く沈み、開ききった瞳孔は赤く染まっている。殺伐とした無機質なルドガーの瞳は、殺人鬼ホーリーの瞳より冷たく無慈悲に見えた。
 これは本当にルドガーだろうか。
 言葉を失うノアを見詰めるルドガーの瞳が、ぎこちなく瞬きをする。静かな中庭を風が抜け、ルドガーの艶やかな金髪を揺らす。
 ルドガーが、徐に表情を取り戻し始めるのを見て、ゆっくり近付いた。
「トキには、まだ聞きたいことがある。殺したら俺が許さない」

 ジタンと似たトキのことを、まだ憎みきれない。
 近付く途中でルドガーの肩越しにトキと目が会った。項垂れていた頭の腫れた目蓋をこじ上げ、ノアを見る。欠けた歯列が、腫れて歪んだ唇の間から見えた気がした。
 あるいは笑ったのかもしれない。
 銃声と腹で炸裂する熱。
 ルドガーの「トウワ」と叫ぶ声を、色彩を失った世界で聞いた。
 トウワじゃない、ノアだって。声はすぐバラバラになって、訪れた闇の中に解けて消えた。
 意識が途切れた。




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  ■最後までお読み頂き、ありがとうございます♪(*^▽^*)
  

  ユニバ2章で目指すのは、バラとワンコとツンデレの乙女チックロマンス。
  なんでこんな痛い流血シーンが出てくるのか・・・・乙女チックロマンスはどこ?
  次からはきっと、BLです(苦しい・・・

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Comments

Re: バイオレンス
鍵コメさま、おはようございます。

トキは大変な目に遭っています。
ルドガーもお花が少し抜けてますね。ノアも撃たれちゃいましたし。
BLロマンスは一体どこ・・・(笑)

> 次なるニュースも読んで興奮しています。二次!!!アレク・瀬尾!!
・そうなんです!!二次を戴いています(≧▽≦)
美しく、行間に蜜のような懊悩とエロスティズムの詰ったKさまの秀作です。
早くこちらでUPして、みなさまにもお目にかけたいと思いつつ
取り急ぎカット制作中の私。急ぎます。

コメント&ご訪問、ありがとうございます!
見たよ!見たよー!mkさまのエロチシズム溢れる素敵な絵!
紙魚さまの作品が、mkさまの絵で 更に 色っぽいよ~(〃ω〃)
いい事のひとつは、これだったんですね♪

さてさて ルーくんの別の顔が またひょいと現れましたね。
背負ってるのが、お花から影?闇?へと...
この豹変ぶりは、何かしらの訳がありそうですね~(。-`ω´-)ンー

それに トキに撃たれた時に(←ダジャレになってるよ!(..*) ポッ) 
ルー君が、「トウワ」と言った名前が、気になってしょうがないです
過去が...過去に...

家を ほんのちょっと工事する予定で ただ今 大掃除の真っ最中で~す。
車庫に ゴミが溢れ出しそうな位いっぱいなのに 恐ろしい程 片付かないの~ヽ(´;ェ;`)ノ...byebye☆ 
けいったんさま、こんばんは。

ご覧になっていただけたのですね~~(*^▽^*)
mkさまのイラスト殺人的に色っぽいです。
そうなんです、いい事のひとつはmkさまのイラストでした。
もうひとつの方も、近日中にはお目にかけられると思います。

> さてさて ルーくんの別の顔が またひょいと現れましたね。
・ルーちゃん、本領発揮になりますか・・・
やっとワンコキャラにも手が馴染んできたところですのに←
殺伐としたキャラが顔をだしてしまいました。

> それに トキに撃たれた時に(←ダジャレになってるよ!(..*) ポッ)
・文章を打っていて、時々このダジャレにぶち当たります。
別にかまわないと思うのですけれど、なんとなく恥ずかしくなって表現を変えたり・・・(笑)
 
> ルー君が、「トウワ」と言った名前が、気になってしょうがないです
> 過去が...過去に...
・トウワ(桐羽)は怪物のいちばん最初に一度出てきただけなので、漢字をすぐに忘れます。
もっと馴染みやすい字にすればよかったです。

けいったんさん、お片づけは終わられましたか?荷物って、知らないうちにどんどん溜まっていくのですよね。
我が家も先日、消防検査で納戸の整理をしました。もう何も考えず全部捨てたいと
素直に思えました(じゃあ、早く捨てたら?、と家人に言われるので口には出しませんが←
物を片付けるって重労働ですよね。お疲れ様でした。

コメント&ご訪問、ありがとうごさいます。

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