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紙魚

Author:紙魚
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Category: ユニバース(全80話)

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rose fever 18
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 <ローズ・フィーバー 18>

 夏は、ちょっとした細工をしたから楽しめと言った。
 花の詰った棺の記憶を、夏が知る訳はない。誰にも、迅にさえ話したことがないのだから。
 草原に置かれた棺はたったひとつ、過去の自分に繋がる手がかりだ。口に出して話せば、もっと情報が集められるかもしれないと思う。だが言葉にしようとすると、いつも何かに思考をロックされてしまう感覚に落ちる。

 まるで誰かが、話してはいけないと自分に囁いている感じ。
 ほんの少し掠れて、心地よく鼓膜を震わせる。声音だけで主の知性と品の良さがうかがい知れる、低く厚みのある柔らかな声。
 よく知っている声のような気がするのに。記憶の糸を手繰り寄せようとすると、ふつりと切れてしまう。
 
 夏はダイブしたノアの思念を逆に辿り、ノアの深層心理に封印された記憶に接触した。そして、ある状況を切っ掛けに「細工」が発動するように仕掛けた。
 ある状況。
 半ば伏せられた薄い瞼の下の透度の高い黒目を、隣にいる男に向けてそっと滑らせる。冷静に自分を見詰る迅のクールグレイの瞳と視線がかち合い、羞恥と屈辱に目許を染めながら視線を逸らせた。

「俺が夏から盗んだ情報は、たぶんガセだと思う。それに、こっちの情報が漏れている可能性も否定はできない」
 今から思えば、夏との接触はあまりにも簡単にいき過ぎた。
 夏はセントラルアジアの次世代を担うといわれる程の男だ。冷静に考えれば、数週間やそこいらのお膳立て何とかなるような相手ではない。
 
 呉紹というノアの偽名も、ノア・クロストという名も、夏は知っていた。
 セントラルアジアに潜入した時点で、ノアの仕事から相棒の失踪、迅との関係まで身辺を徹底的に調べ上げたに違いない。
 そして、自分の嗜好を利用して近付く不埒な男が快楽を感じたその瞬間、「細工」のスイッチが入るように仕掛けたのだ。
 巧妙で、悪趣味な。
 夏が、棺の中にジタンを寝かせた意味は。最悪の答えを推測しては強く否定する。

 自分の元にノアを送り込んだ迅への当てつけも含めた報復か。
 小手先で弄ばれたという実感が再度湧き上がり、ノアの唇が悔しさに色を失う。
 
「なるほど、食えない男だ。意趣返しという訳か。流石に、あの若さでセントラルアジアを仕切るだけの事はある」
 淡々とした態度に、迅の失望を嗅ぎ取り更に気持ちが沈んだ。

「ノア、次の仕事だがターゲットが決まった」
「もう・・・?」
 言葉を失った後、溜息が漏れる。
「また単独で跳ばさせるつもりかよ」
 ノアが1人で行動していたことは、夏にとって、さぞ好都合だっただろう。
 打ち捨てられた運河沿いの古い貧村。水面は淀み、ローズ・フィーバーによって流された大量の血液も色褪せる。悲劇の中で時間を止めてしまった村。
 夏の誘導がなければ、自力では村を抜け出すことは出来なかった。
 ノアを自分のものだと豪語した夏。男の思惑ひとつで、あの完全に死に絶えた村に永遠に囲われる可能性もあったのだ。
 今更、込み上げる恐怖に、そっと身が強張る。

「今回の仕事は長期になるだろう。2人よりひとりの方が、目立たずにターゲットに近づける」
「正直、ロングの仕事より、ロングバケーションの気分なんだけど?」
 迅の表情は変わらない。こんな時、ポーカーフェイスの出来る男は本当に得だと思う。
 溜息と共に仕方なく内容を聞いた。

「相手はアスクレピオス製薬の社主だ」
「社主?うちの会社にそんなのがいたのか」
「アスクレピオス製薬創設者の曾々孫にあたる人物だ。現在は、創立者の一族は彼以外残っておらず、会社運営にも携わっていないが、今も株の大半を所有している。」
「自分とこの会社の社主なら、なんでも直接聞けばいいだろう?」
 珍しく迅の顔に当惑の表情が浮かんだ。
「それがなかなか話の通じない相手でね。半ば世捨て人のような生活をしているせいか、口にする記憶も曖昧ですぐに話の論点がずれてしまう。本人に会話がずれている自覚がないだけに始末が悪い」

 つまり少々ボケの入った隠居老人といったところか。そんな弱者から、迅は一体何を盗ろうというのか。アルツハイマー等で失くした記憶を探って欲しいとかいわれても、自分には無理だ。
 狂人やうつ病など、精神が安定しないターゲットの表層意識は脆弱で、下手をすればダイブした自分の立ち位置すら危うくなる。そんなことは迅だって承知のはずなのに。
 
 ホーリーの表層意識の扉を押し開いた途端、押し寄せた狂気と殺戮への欲望。もし、ホーリーの心理に本格的にダイブをしたら、自分はあの場で発狂して戻れなくなっていた。
 ひとりで跳ぶなら尚のこと。危険性が高すぎる。

「迅、この仕事は嫌だ。断る」 
 危険な任務に自分を就かせようとする迅の真意が掴めない。
 ノアの強い拒否にも感情を見せない迅を痛む心で見つめた。
 迅を失望させたくない。その一心で、これまで迅の仕事を拒否した事はなかった。

「お前は受けるさ。もうこの件に深く関わっているんだからな」
「な・・・」



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最後までお読みくださり、ありがとうございます。

暑さと忙しさでぼーっとしていたら、随分と更新の間が開いてしまいました。
申し訳ございません。

テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

チョー怖いダイブには 夏の ”おまけ”つきだなんてー!
もっと 素敵な ”おまけ”だったらいいのにね(*´・ω-)b

夏のダイブは 失敗だったのに もう次の お仕事をさせるって...
さすが 迅さまぁ~俺様ぁ~( ̄∀ ̄)ウシシ♪

迅が命令する お仕事は 拒否できそうもないのかな。。。
こうなったら オモチャ売り場で ゴネル子供の様に 床に寝転んで 手足バタバタ~してみる?
ヤダヤダ (( ゙凹〇 ))゙ ヤダヤダ...byebye☆
こんばんわ~!

も・・もしかして・・もしかして創立者の一族って・・(ニヤリ・・)
あ~ん・・これで絡み合ってきちゃうのかしら・・?(ドキドキ・・)
ふっふっ・・一人妄想をしながら、続きを楽しみにしております♪

なんだかノアと迅との関係って・・・(大好き❤)
リバって・・やっぱリバって、こういうのいいよねぇ~!(←もう何言ってんだか、分かんないし・・・)

そうそう、また最近暑くなってきましたね~!
私の住んでいる場所は、わりと毎年夕立が多いのですが、最近は無いなぁ~。
雨でも降ってくれると、少しは涼しくなるのに・・。
暑いとぼーっとしちゃいますよね~
紙魚さまも、体調には十分お気を付けて下さいね!
けいったんさま、ようこそです♪

ミッション成功~と思っていたら思わぬオマケを貰っていました。
素敵なオマケ・・・高級中華食材とか?(ちがう

容赦なく次のお仕事を入れる迅さん。ゴリ押し俺様上司です。
泣いても喚いても(( ゙凹〇 ))←カワイイー、しな垂れてもダメっぽいです。
ノアもゴメンだー!とか言いながら絶対行っちゃうんですね。

ノアの次の仕事のシーンは2部からのスタートです。
リアルが慌しく、PCを使える時間が少ないので2部スタートまで
また間が空きそうですm(_ _)m
2部もけいったんさんに楽しんでいただけるようがんばって書きます~。

コメント&ご訪問、ありがとうございます!
M・Mさま、ようこそです~~♪

ううむ、M・Mさんするどい。
彼が絡んで、やっとお話が進みます。
前振りが長すぎて、一体誰と誰のお話なのか・・・・(←自分でもわからなくなっている

迅とノアの関係を気に入ってくださり、ありがとうございます(*^▽^*)
リバシーンは書きなれていないので、どんな風に表現すればいいのか迷いまして・・・
さらっと流す感じで書いてしまったのですが、違和感なく読んでいただけたのでしたらよかったです。

本当に暑いです。
節電~~と思いつつ、エアコン無しでは生きられません(熱中症になっちゃう
夕立、いいですね~。
ザーーッと一雨来てくれると、ちょっとリフレッシュされますよね。
まだまだ猛暑は続きますし、お互い体調を崩さないよう乗り切りましょうね~~。

コメント&ご訪問、ありがとうございます!

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