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紙魚

Author:紙魚
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長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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Category: ユニバース(全80話)

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rose fever 11
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 <ローズ・フィーバー 11>

 事実、イブとの関係は最悪な形で終わった。
 恋をして相手に心酔し、思い入れが強くなるほどに心のシールドは疎かになる。
 それが自分の甘さで、弱点だということは前からわかっていた。
 想いのままに肌を合わせ、行為に夢中になるほどに、愛情という感情がシールドを破り、その隙間から知りたくもない相手の「本音」や「真実」がなだれ込んでくる。

 美貌、スタイル、髪の先のカールにまで、女としての美しさと愛らしさで装備したイブ。
 翳の仕事をする自分が同僚と付き合うという禁忌を冒したのは、甘い菓子で出来たようなイブを理性と本能の両方で欲しいと思ったから。

 お互い生まれたままの姿になり、長いシルクのような髪を手で乱しながらキスをする。
 2人の熱が上昇して心を明け渡した途端、見詰あう大きな瞳から濁流が流れ込んできた。

 イブの頭の中は常に自分と他の男を天秤に掛けていた。
 ごく少数の者しか知らない事実、迅(迅)・K・クロストの「息子」を捕まえたイブの頭の中は計算で埋め尽くされていた。先ずは息子に近付き、そして高みを目指す。
 つまり、イブの目当てはカウチでグラスを傾ける、灰色の目を持つ男だったと言う訳だ。
 恋をする情熱とか信頼、愛情、そういった感情が一気に萎えた。


「八つ当たりというわけか。ノア、人間は欲望の塊だ。欲の強い人間ほど、向上もするし強くもなる。ひとつひとつ傷ついていたら限がない。もっと割り切ってみたらどうだ?」
 欲望が人を高める。
 それは否定しない。
 だが、いま自分が触れたいのは、ぎらつくような向上心や世界の高みを目指す貪欲な強さではない。もっと、身近で自分の手のひらに収まるくらいの、小さな“何か”でいい。

 人の数だけ、誰かの思いの数だけ、光の屑はさんざめく。
 ふと、ダンテたちの大らかで抱きしめるような笑顔を思い出し、気持ちの片隅に切ない痛みを覚えた。
 2人の温かさに触れる度に感じるこの痛みの正体の端っこを、いま掴みかけた気がした。それなのに、確かめようと思考を止めた途端、それは砂のように崩れ痛みの輪郭が曖昧になる。
 そして、自分の心の一部が欠けたままでいるような気がして途方に暮れた。
 一体、何を、どうやって割り切ればいい。

「あんたらしい提言だな」

 迅もまた人の心を読む力を持つ。
 自分やジタンのように人の意識の中に跳ぶ事は出来ないが、迅にとってはそれで十分だった。
 迅はその力を今日の地位を手に入れる為に大いに活用した。

 自分たちのような能力を持つ人間を集め組織し、手に入れた情報で世界を席捲していく。
 迅は今の地位に就任するなり、競合する大手製薬会社を潰し、アスクレピオス製薬をこの新世界で最大の製薬会社にのし上げた。
 次期、CEOの呼び声も高い迅だが、この男がアスクレピオスで満足するはずがない。


 いつか誰かが迎えに来て、自分に手を差し伸べ、
 そして、愛してくれる。
 ティーンズの頃は、それが迅なのだと信ていた。だから、誘われるままに自分を差し出した。
 だが、感情も欲望も完全にコントロールする男は、ノアの迅に対するその気持ちに応える事はなかった。柔軟で傷つきやすい少年の体で目覚めた性は、ノアを未完成なままで大人にする。
 そして、身体を繋げるだけの関係のみが、消せない習慣のように2人の間に残った。

「ところで、さっきのはどこの女?初めて見る気がする」
 柔らかな肌、括れた腰、豊満な胸。男の本能が、もうひとつの性である女を選ぶ。
 自分ならどうだったのか?もし、イブと上手くいっていたなら、迅を切ることが出来たか。

 手持ちのカードが最後の2枚になって、どちらかを捨てなければならなくなったとしたら。
 その1枚がジョーカーだったなら?
 自分は躊躇うこともせず、もう一枚の方を捨てるだろうという予感に自己嫌悪した。

「お前が私のところに出入りする女に言及するとは珍しいな。夕方の“父さん”発言といい、何かあったか?単なる嫉妬なら、嬉しく受け取らないわけでもないが」
 諦観の息を吐く頸の後ろに吐息が触れた。弾かれたように振り返った躰をガラスに強く押し付けられる。抵抗の呻き声を上げた唇を塞がれた。
 ノアの肩を押さえ、動きを封じノアを知り尽くした舌がノアの力を奪ってゆく。
 短いインターバルで息を吸い込んだ。
 甘い匂いが鼻につく。途端、怒りがこみ上げ、女の匂いが残る迅の胸を押し返した。
 
「心にもないことを・・・・。俺のことを鼻で笑って、自分だけ楽しんでいるところがマジ腹立たしいって言ってんだろ」
「口が悪くなった。お前を拾った時はこんなもの言いはしなかったのに、育て方を間違えたかな」
 顎に手が掛かり、グラスで冷えた指が唇を弄ぶ。
 少し首を傾げ困った表情を装いながら、勘違いをさせる笑顔を作る男が憎らしい



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お読みくださり、ありがとうございます。

チューも入って、BLっぽくなってきました・・・です。よね?
って、誰に聞いているのか?自分

リアルが立て込んでいまして、コメレスが遅くなるかもしれません。
それでもOK、と仰って下さる方、コメントお待ちしております。

紙魚

テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

ノアが 欲してるもの、小さな”何か”
普通の人が 何気なく 手に入れてるもの?

人の思念が分かるノアには それさえも 難しいのかも

迅が出てくるだけで 一気に BLらしさが出てきました!
きっと 迅の雄のフェロモンが 作品から ダダ漏れなんだぁ~゚.+:。(´ω`*)゚.+:。ポッ

リアル生活の重視は 当然ですから!
コメへの返事は お気遣いなく~(○ゝз・)b⌒byebye☆
けいったんさま、ようこそようこそです!!

わかり過ぎて、見えなくなっているもの。
ノアはいつか自分で理解し手に入れられるのか?
うーん、どうしようかなあ←

迅は、絵に描いたようなBLメンですねー(字ですけど・・
自分でも彼の登場で、一気にユニバがBLになったような気がします(笑) 
今度は、逆にSF臭がなくなってしまったらどうしよう。とか心配したり…
思考が単純なので、上手く配分できるか兼ね合いに悩んでしまいます。

コメントレスが遅くなってしまい、申し訳ありませんでした(;^▽^A
リアル重視で…と仰っていただけまして、優しいお言葉に感謝です。

コメント&ご訪問、ありがとうございました!

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