11 ,2008
翠滴 1-7 スコール 4 (22)
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背中で戒められた腕は解放されたが、痛みを堪えて緊張し過ぎた身体はぐったりと床にへばり付き、抵抗する気も起こらない。ただ、ただ、浅い息を繰り返した。
目の前に静かで薄暗い堂内とは対照的に開け放たれた堂の出入り口からは、雨に打たれた生命力滾る鮮かな木々の緑が見える。すぐそこにあるはずの、写真のように四角く切り取られた明るい戸口が酷く遠くにあるもののように思た。
「ああそうだ、オレ黒帯なの だから無駄な抵抗はよしたほうがいい
無意識に技かけちまう事も、度々だから」
そういうことは、早く言えよ!
俯せていた躰を仰向けに返された。
「享一は、中高と水泳やってたんだよな?」
「なんで・・・」 知ってんだ?
「調べたから」
いけしゃあしゃあと、事も無げに言って退ける。
「6月の失恋も今までの交友関係も、愛人と逃げた親父の事も…」
父親のことを持ち出され、身体と一緒に心も強張った。
「全部調べたつもりなのに、初恋の相手が初キスの相手とはね。嬉しい初耳。
新情報、サンキュ・・・」
頬の直ぐ横で囁かれ、吐息が産毛を掠めてザワッと肌が粟立つ。
「全部調べたって・・それじゃあ、まるでストーカーじゃないか」
「だから、今までイッパイ傷ついてきた享一に、たくさん優しくしてやりたい訳」
享一の非難を気にする風でもなく、少し首を傾げ半眼で見下してくる。
目の縁に色気が漂う艶やかなその視線に頭の中が小さくかき乱された。
この色気は普段の大人の男然とした周にも共通している。
そう、まるで大人とガキだ。
もしかしたら、周は2重人格者なのかもしれない。優しく麗しい風貌と性格の男と、激しく乱暴で煮え滾る狂気を持つ男。下手に抵抗すれば平気で骨の一本や二本は折りそうな冷酷な男。
この男の中には、優しい周はいない。そう思うと、恐怖で身体中から血の気が引いていく。
動けなくなった享一の唇に周が重なってくる。力の抜けた唇の隙間を割って舌が深く侵入してきた。口腔の柔らかいところを蹂躙し、淫猥な動きで享一の舌裏に侵入すると根元から先にかけて強く吸上げる。その刹那、下腹部に一気に血液が集まり理性が混乱する。享一は唇を剥がす為に頭を捩ろうとするが、頭の両側を強い力で固定され微動だに出来ない。
「んぅっ!」
こんな深いキスは知らない。そもそも、これはキスなのか?
侵食されて自分が汚された気分だ。
息が上がりはじめた享一の肌は、雨と湿度で汗ばんでいる。しっとり滑らかな肌に吸い付くように周の掌が這ってゆく。ゆるりゆるりと肌を攻められ、くすぐったいような焦れるような感覚に堪らず目を閉じた。
真夏の激しい雨の音だけが やけにリアルで、その他の何もかもが現実味を欠いていた。
官能の波がひたひたと押し寄せて、微弱な電流を放ちながら、享一を痺れさせる周の指先がとろりと絡みつく波を撹拌する。周から感電して生れた、欲情という名の波は瞬く間に広がり、享一を熱いうねりに巻き込みながら凌駕していく。喘ぎ声が漏れそうで、唇を噛んだ。
この滾りながら渦巻く熱の先に何があるのかを見るのが怖かった。
「享一」
呼ばれて、重い瞼を上げると周と目が合う。
周の瞳からは先程の冷酷なサディストのような光は消え、元の穏やかな翠の色が享一を見つめる。おかしな話だが、こんな状態であってもやはりこの男を美しいと思ってしまう。
周が享一に跨がったままシャツを脱いだ。
想像通りの均整のとれた美しい裸体に 出所のわからない恥ずかしさが込み上げ、顔を背けた。
そして、気が付いた…いや、気付かないふりをしていた。
俺は周に惚れている。
美しい容姿、身体、髪、瞳、心・・周の総てに惚れている。
「享一、もっとオレに欲情して。オレに惚れて。溺れて。
ここにいる間だけでもいいから 享一…」
拒むことは出来ない。気付いてしまったのだから。
落ちてきた吐息と唇を合わせた。
自分の中に、このまま流されることを強く望む何かがいる。
ああ、ままよ。
人違いでもかまわない。永邨 周という激流に呑み込まれたい。
自分の中には、あの父親がいる。狡い淫乱の血が流れているのだ。
自分から唇を割り、周を招き入れた。唾液を分け合い、お互いの舌を絡め奪い合う。理性もモラルも飛沫となって飛び散り、チリチリと熱をもって頭のなかで爆ている。
こんなキスをしたら、戻れなくなる。
意識を飛ばしかけた躯の中心に熱を感じた。
「あ・・ま、待って・・・」
周の手が露になった享一を包み込み、蠢き纏わりつくようにゆっくり扱きあげていた。既に追い詰められていた享一の下半身は蜜を滴らせ、その時を待ちわびている。由利や、以前に付き合ったガールフレンドとの行為とは全く違う。
総てが淫猥で、享一を感じさせる為だけに与えられる愛撫に、愛欲の業の深さのようなものを感じた。
経験したことのない強烈な快感に目が霞み、息が上がる。
頭の中が熱でいっぱいになりとうとう思考を投げ出した。
項に、鎖骨の窪みに、躯中に、周の指と唇が刻み付けていく熱だけが享一を支配する。
「あ…ぁ…」
享一の余裕の無い様子に、周は表情を緩める。
「楽にしてやるから、堕ちちゃえよ」
耳元でそう囁くと、周は項に吸い付きながら敏感な裏筋に軽く爪を立てスッと先端に向け引いた。ヒュっと息を呑む音が聞こえ、短い叫び声を上げて享一は白濁した精液を放った。
「あ……や…」
享一が羞恥に顔を真っ赤に染め、自分の腹の上の"感じた証"を慌てて拭い去ろうとすると、その手をゆるく掴んだ周がキスしながら優雅に微笑む。
「まだ、使いますから」
眩暈がした。
背中で戒められた腕は解放されたが、痛みを堪えて緊張し過ぎた身体はぐったりと床にへばり付き、抵抗する気も起こらない。ただ、ただ、浅い息を繰り返した。
目の前に静かで薄暗い堂内とは対照的に開け放たれた堂の出入り口からは、雨に打たれた生命力滾る鮮かな木々の緑が見える。すぐそこにあるはずの、写真のように四角く切り取られた明るい戸口が酷く遠くにあるもののように思た。
「ああそうだ、オレ黒帯なの だから無駄な抵抗はよしたほうがいい
無意識に技かけちまう事も、度々だから」
そういうことは、早く言えよ!
俯せていた躰を仰向けに返された。
「享一は、中高と水泳やってたんだよな?」
「なんで・・・」 知ってんだ?
「調べたから」
いけしゃあしゃあと、事も無げに言って退ける。
「6月の失恋も今までの交友関係も、愛人と逃げた親父の事も…」
父親のことを持ち出され、身体と一緒に心も強張った。
「全部調べたつもりなのに、初恋の相手が初キスの相手とはね。嬉しい初耳。
新情報、サンキュ・・・」
頬の直ぐ横で囁かれ、吐息が産毛を掠めてザワッと肌が粟立つ。
「全部調べたって・・それじゃあ、まるでストーカーじゃないか」
「だから、今までイッパイ傷ついてきた享一に、たくさん優しくしてやりたい訳」
享一の非難を気にする風でもなく、少し首を傾げ半眼で見下してくる。
目の縁に色気が漂う艶やかなその視線に頭の中が小さくかき乱された。
この色気は普段の大人の男然とした周にも共通している。
そう、まるで大人とガキだ。
もしかしたら、周は2重人格者なのかもしれない。優しく麗しい風貌と性格の男と、激しく乱暴で煮え滾る狂気を持つ男。下手に抵抗すれば平気で骨の一本や二本は折りそうな冷酷な男。
この男の中には、優しい周はいない。そう思うと、恐怖で身体中から血の気が引いていく。
動けなくなった享一の唇に周が重なってくる。力の抜けた唇の隙間を割って舌が深く侵入してきた。口腔の柔らかいところを蹂躙し、淫猥な動きで享一の舌裏に侵入すると根元から先にかけて強く吸上げる。その刹那、下腹部に一気に血液が集まり理性が混乱する。享一は唇を剥がす為に頭を捩ろうとするが、頭の両側を強い力で固定され微動だに出来ない。
「んぅっ!」
こんな深いキスは知らない。そもそも、これはキスなのか?
侵食されて自分が汚された気分だ。
息が上がりはじめた享一の肌は、雨と湿度で汗ばんでいる。しっとり滑らかな肌に吸い付くように周の掌が這ってゆく。ゆるりゆるりと肌を攻められ、くすぐったいような焦れるような感覚に堪らず目を閉じた。
真夏の激しい雨の音だけが やけにリアルで、その他の何もかもが現実味を欠いていた。
官能の波がひたひたと押し寄せて、微弱な電流を放ちながら、享一を痺れさせる周の指先がとろりと絡みつく波を撹拌する。周から感電して生れた、欲情という名の波は瞬く間に広がり、享一を熱いうねりに巻き込みながら凌駕していく。喘ぎ声が漏れそうで、唇を噛んだ。
この滾りながら渦巻く熱の先に何があるのかを見るのが怖かった。
「享一」
呼ばれて、重い瞼を上げると周と目が合う。
周の瞳からは先程の冷酷なサディストのような光は消え、元の穏やかな翠の色が享一を見つめる。おかしな話だが、こんな状態であってもやはりこの男を美しいと思ってしまう。
周が享一に跨がったままシャツを脱いだ。
想像通りの均整のとれた美しい裸体に 出所のわからない恥ずかしさが込み上げ、顔を背けた。
そして、気が付いた…いや、気付かないふりをしていた。
俺は周に惚れている。
美しい容姿、身体、髪、瞳、心・・周の総てに惚れている。
「享一、もっとオレに欲情して。オレに惚れて。溺れて。
ここにいる間だけでもいいから 享一…」
拒むことは出来ない。気付いてしまったのだから。
落ちてきた吐息と唇を合わせた。
自分の中に、このまま流されることを強く望む何かがいる。
ああ、ままよ。
人違いでもかまわない。永邨 周という激流に呑み込まれたい。
自分の中には、あの父親がいる。狡い淫乱の血が流れているのだ。
自分から唇を割り、周を招き入れた。唾液を分け合い、お互いの舌を絡め奪い合う。理性もモラルも飛沫となって飛び散り、チリチリと熱をもって頭のなかで爆ている。
こんなキスをしたら、戻れなくなる。
意識を飛ばしかけた躯の中心に熱を感じた。
「あ・・ま、待って・・・」
周の手が露になった享一を包み込み、蠢き纏わりつくようにゆっくり扱きあげていた。既に追い詰められていた享一の下半身は蜜を滴らせ、その時を待ちわびている。由利や、以前に付き合ったガールフレンドとの行為とは全く違う。
総てが淫猥で、享一を感じさせる為だけに与えられる愛撫に、愛欲の業の深さのようなものを感じた。
経験したことのない強烈な快感に目が霞み、息が上がる。
頭の中が熱でいっぱいになりとうとう思考を投げ出した。
項に、鎖骨の窪みに、躯中に、周の指と唇が刻み付けていく熱だけが享一を支配する。
「あ…ぁ…」
享一の余裕の無い様子に、周は表情を緩める。
「楽にしてやるから、堕ちちゃえよ」
耳元でそう囁くと、周は項に吸い付きながら敏感な裏筋に軽く爪を立てスッと先端に向け引いた。ヒュっと息を呑む音が聞こえ、短い叫び声を上げて享一は白濁した精液を放った。
「あ……や…」
享一が羞恥に顔を真っ赤に染め、自分の腹の上の"感じた証"を慌てて拭い去ろうとすると、その手をゆるく掴んだ周がキスしながら優雅に微笑む。
「まだ、使いますから」
眩暈がした。
読みながら叫びましたよ!!←馬鹿
何でそんなにえろいんだー!
周がイイ!
その顔の使い分けに惚れた!
紙魚サマ! 貴方は天才ですよぉw
読んでいて、こんなにドキドキしたのは初めてですよw