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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
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Category: 頂きものBOX

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眠りの海で青い魚は恋をする 4
『眠りの海で青い魚は恋をする 4』


――お父さんは、キョウちゃんが好きなんだ…。
 微笑みは優しく、名を呼ぶ声は甘さを含んでいた。隆典の、父親としてではなく一人の男である顔を見せられて、和輝の胸は昂った。同時に、それが自分に見せるために作られた表情ではなく、たとえ一瞬でも時見享一と見間違えられたことに落胆する。そして父親が同性を好きになる性質(たち)だと知ったことよりも、ショックだった。
 隆典は自分を透して享一を見ているのかも知れない。その時の切なさを、六年経った今でも和輝は思い出すことが出来る。
 もともと和輝は父親っ子で、大人の事情で無理やり引き離されてしまった上に、会う機会も年々減っていたこともあって、より隆典への思慕が強くなりがちであった。しかし隆典とは血の繋がりがないのではと意識した十四才の時以来、和輝の中で彼に対する別の感情が生まれ、少しずつ、だが確実に育っていた。それは子が親に抱く情愛とは違うと、自覚出来るほどには微かに狂おしいものだったが、認めてしまうにはまだ和輝は幼かった。
 隆典の秘めた想いを知ったあの夜の後――バンクーバーから戻って、和輝の気持ちは落ち込み気味だった。隆典がこの世で一番大切に想っているのは享一であり、よく似た和輝の中に彼を見ていると知ってしまった。それに追い討ちをかけたのが、受験が終わる再来年まで来るなと言われたことだった。
 二学期が始まってしばらく経っても引きずって、表に出していないつもりが、
「和輝、どうかしたんか?」
幼馴染で親友の池田喬純には悟られてしまう。部活からの帰り、寄り道して行こうと誘われ、児童公園のベンチに二人して座った。
「何でもない」
「何でもないってこと、ないやろ? 夏休み終わってから変やぞ。何かあったんとちゃうんか?」
 否定すればするほど、喬純はしつこく理由を聞き出そうとする。よほど和輝の様子が変なのだろう。ちゃんと答えない限り帰らせないと言わんばかりだった。
 父親の中の一番ではなかったことに気落ちし、それにしばらく会えなくなったことが重なって「気分が塞いでいる」とは、心を許し、何でも話してきた親友の喬純にも言えはしない。
――そんなファザコンみたいな理由。
「何でもない」と答えること数回、喬純が黙りこくった。明るくて話し上手、柔らかな関西弁で周りを笑わせる喬純は、ともすれば軽い性質に見られがちだが、その実は硬派で、本気で怒ったり思うところがあると口数が減った。薄暮の中、まっすぐ和輝を見据える目は、最前の比ではないくらいに強い意思を含んでいる。和輝に対しては滅多に見せない表情だった。
「俺、そんなに頼りないか?」
「そんなことないよ。本当に何でもないから」
「嘘や」
 怖いくらいに見つめられ、和輝は目を逸らした。喬純が本当に心配して気遣ってくれていることはわかるが、話したくないことだってある。それを話さないからと言って、責めるような目で見られるのは心外だった。だから苛立ち、つい語気を強めてしまった。
「何でもないって言ってるだろ。もし何かあったとしても、タカに全部話さなきゃなんないのか?!」
 これではやっぱり何かあると思われても仕方がない。そう言う斬り返しがあると構えたのだが、喬純は乱れのない深い声音で和輝の言葉に答えた。
「俺は和輝のことやったら、全部知りたい。どんなちっさいことでも。好きなヤツのこと知りたいのは、あたりまえやろ?」
「タカ」  
「俺、和輝のこと、好きや。友達としての『好き』やない。俺の『好き』には欲がある。キスしたいし、触りたい。そう言う『好き』なんや」
 思ってもみない彼の告白に、和輝の気持ちの矛先がそれる。
 喬純は両手を和輝の頬に添えた。そっと触れているだけであるのに、顔をそむけることを許さないほどの『力』がある。
「おまえは本気に取らんけど、俺はいっつも本気やった。男同士やなんて関係ない。和輝やから好きになった。和輝以外、欲しぃない。だから落ち込んでんの見るの、辛いんや。おまえが悩んでんなら、聞いて力になりたい」
 近づく喬純の顔。キスをするつもりなのだとわかったが、頬に添えられた彼の手で身動きが取れない。重なろうとするその瞬間、和輝の脳裏にあの夜の場面が浮かんだ。そして喬純の顔はすり替わる。引き寄せられ、二つの唇が重なる寸前まで近づいた隆典の顔に。
 喬純の唇は軽く触れただけで、すぐに離れた。和輝の目はその唇を追ったが、意識は違うそれを追っていた。
「なんか…言うてくれよ」
 喬純とのキスに何も感じない。頬にかかる彼の指先の体温も感じない。しかし隆典のことを思い出しただけで、身体中が熱くなる。あの時、別人の名前と共に漏れた隆典の吐息はブランデーの芳香で甘かった。記憶が鼻腔にまで広がり、和輝の思考をすべて隆典へとさらう。
――お父さんが好きだ
 喬純が言った言葉そのままに、「キスしたい」「触れたい」、そんな欲のある『好き』――その感情は恋だ、おまえはずっと恋をしているのだと、声なき声が和輝に告げる。
 和輝は一歩下がって、喬純の手を頬から外した。
「ごめん、タカ。好きな人、いるんだ」



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□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ

 明日同じ時間に5話と6話をUPいたします。
 タカ君、フラれてしまった・・・・小さい時はカズキン結婚してもいいとか言ってたのに(笑)
 

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Comments

No title
うーん、うーん、すごいなあ。
紙森さんのキャラに対する愛情が滲みでてますね。
ものすごく丁寧に描き込まれた、紙魚さんのものとはまた違う世界だなと、ただうなるばかりです。
紙森さんのところでも書いたのですが、和輝が、ものすごくイイオトコで、享一くんをしのいでますね。
瀬尾さん耐えてたんだろうなあ。
そこを耐えてきた瀬尾さんらしくないところが、瀬尾もすごくいい人にさせているような。
紙森さん瀬尾さん好きなんですね←つくづく
で、金髪のおっさんの動向も気になります。
あ、1,2読み返しました。
たぶん、朝読んだほうが初稿で、帰ってきてから入れ替えたのを読んだんですね。
Route M さま♪
Route Mさま、おはようございます。

> うーん、うーん、すごいなあ。
> 紙森さんのキャラに対する愛情が滲みでてますね。
> ものすごく丁寧に描き込まれた、紙魚さんのものとはまた違う世界だなと、ただうなるばかりです。
 ・紙森さんのフィルターを通すと、翠滴もこんなに繊細に・・・・w(*゚o゚*)w
人物のひとりひとりを丁寧にすくい上げて下さり、きちんとつくり込んでくださいました。
ぜひぜひ、うなって下さい!私も隣でご一緒にうなります。ううう。

> 紙森さんのところでも書いたのですが、和輝が、ものすごくイイオトコで、享一くんをしのいでますね。
> 瀬尾さん耐えてたんだろうなあ。
 ・いろ~んな意味で耐えていたと思います。

> そこを耐えてきた瀬尾さんらしくないところが、瀬尾もすごくいい人にさせているような。
> 紙森さん瀬尾さん好きなんですね←つくづく
 ・紙森さんの瀬尾っちに対する愛情をひしひしと感じます。
ここまで想ってもらえる瀬尾っちは幸せものですね。 

> で、金髪のおっさんの動向も気になります。
 ・金髪短髪は紙森さんがアレクセイと名前をつけて下さりました。
紙森さんの書かれるアレク、カッコいいですよ~~(あ、お口チャック!

> あ、1,2読み返しました。
> たぶん、朝読んだほうが初稿で、帰ってきてから入れ替えたのを読んだんですね。
 ・すみません~~。
作品を区切るために前に頂いたもので検証していたのですが、間違ってそちらを出してしまいましたm(_ _)m

 コメント&ご訪問、ありがとうございます!
喬純も 登場なのね~
喬純は あれからも 一途に 和輝を 想い続けていたんですね。脇目も振らずにエライ!

和輝が 隆典を好きだと 知ったら どうすんだろう。 この子って 意外と 怖いんだよねー。何しろ <アノ>家の子だもん。

再読完了済みです。 (^o^)ゞ...まだまだ特別出演は あるの?...byebye☆
ごぉおおおおおおおお!!!
来たぞー、来たぞ―!アレクセイが来たぞ―!!
ごぉおおおおおっと、そして瀬尾っちを連れて行ってしまったぁあああああっ。
傀儡の時の瀬尾っち、カッコいいって思って肩入れしていた私!ナーイス!
その後に鬼畜扱いしていた私!ブー!

なんて、なんて素敵な瀬尾さま←調子いい…(-_-;)

そして和輝のなんて繊細で魅力的なこと!
享一への萌えがそのまま和輝に重なり、喬純は形を変えたアマネ様のように吸引力があります。
でも、和輝の心は瀬尾パパへ!
なんて禁断な! 素晴らしすぎる―゜ヽ(亝∀亝。)ノ゜.:。+
し、紙魚さんのイラストの瀬尾さまも美しいこと~~。
連載が終わってガックリと思ったのに、こんな風にして再び楽しめるなんて…ああ、しあわせ~_ノ乙(、ン、)_
Re: 喬純も 登場なのね~
 けいったんさま、ようこそです♪

> 喬純は あれからも 一途に 和輝を 想い続けていたんですね。脇目も振らずにエライ!
 ・(*^m^)o==3はーい、喬純は保育園の頃からずっとカズキン一筋。
なかなかオトコマエに育ってますよね。

> 和輝が 隆典を好きだと 知ったら どうすんだろう。 この子って 意外と 怖いんだよねー。何しろ <アノ>家の子だもん。
 ・そうですよーー<アノ>あのお家のお子様です。
素質は充分に持っています。怖いですね~~(笑)
カズキンの想い人が血縁は無くても父親の瀬尾っちだって知ったらひと荒れありそうですv

> 再読完了済みです。 (^o^)ゞ...まだまだ特別出演は あるの?...byebye☆
 ・わわわ、本当にすみませんでした(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ
やっと涼しくなってきたというのに完全にボケています。や、暑さのせいではないですね天然です凹
 特別出演はこれだけですが、特別演出(?)があります(*ノェノ)キャー!

 コメント&ご訪問、ありがとうございます!
Re: ごぉおおおおおおおお!!!
 アドさま、ようこそです。

> 来たぞー、来たぞ―!アレクセイが来たぞ―!!
> ごぉおおおおおっと、そして瀬尾っちを連れて行ってしまったぁあああああっ。
 ・ヾ(≧▽≦)ノ彡ギャハハ!!アレクはまるで戦車のような存在感ですね(笑)」

> 傀儡の時の瀬尾っち、カッコいいって思って肩入れしていた私!ナーイス!
> その後に鬼畜扱いしていた私!ブー!
> なんて、なんて素敵な瀬尾さま←調子いい…(-_-;)
 ・そういえばアドさんは瀬尾っちにかなり揺れて下さってましたねえ(笑)
紙森さんはこの作品で瀬尾っちを本当に素敵に書いてくださいました。

> そして和輝のなんて繊細で魅力的なこと!
> 享一への萌えがそのまま和輝に重なり、喬純は形を変えたアマネ様のように吸引力があります。
 ・喬純、オトコマエですよね~~~。
戦車(アレク)は怖いしもうこっちにしちゃえ・・・とか、おばちゃんは想ってしまいます。
でも、喬純も普通のお坊ちゃまではありませんし、カズキン多難だなあ(ヒトゴト

> でも、和輝の心は瀬尾パパへ!
> なんて禁断な! 素晴らしすぎる―゜ヽ(亝∀亝。)ノ゜.:。+
 ・ああ、アドさんがヨロコんでる。。(嬉

> し、紙魚さんのイラストの瀬尾さまも美しいこと~~。
> 連載が終わってガックリと思ったのに、こんな風にして再び楽しめるなんて…ああ、しあわせ~_ノ乙(、ン、)_
 ・そんな、床に頬ずりしてまで喜んでいただけるなんて・・・(違う)
駄・イラストも描いた甲斐があるってなもんです(嬉)ありがとうございます!

 コメント&ご訪問、感謝です!

ひえ~~~
お父さんが好きだ..好きだ..だ....
あまりの興奮にエコーかけちゃいました。
みんながみんな片思い。それぞれの切ない気持ちが押し寄せてきて、胸が苦ちいデス。
どこぞのラブラブカップルが憎らしく思えてきたりして。あは。ウソですウソです。ごめんなさい。数々の苦難を乗り越えてようやく幸せになれた方達になんてことをΣ( ̄ロ ̄lll) 周さんに殺される~(笑)

しかし、本当に紙森さんは翠滴を愛してるんですね。そこここに溢れてます。愛が♡紙魚ちゃまの幸せものっ!このこの!!

イラストもすんごく素敵です(。-_-。)ポッ 舐め回すように見てます。じゅる。
Re: ひえ~~~
 シマシマ猫さま、ようこそいらっしゃいました!

> お父さんが好きだ..好きだ..だ....
> あまりの興奮にエコーかけちゃいました。
 ・おお、エコーだ!!禁忌の愛、勃発ですv

> みんながみんな片思い。それぞれの切ない気持ちが押し寄せてきて、胸が苦ちいデス。
> どこぞのラブラブカップルが憎らしく思えてきたりして。あは。ウソですウソです。ごめんなさい。数々の苦難を乗り越えてようやく幸せになれた方達になんてことをΣ( ̄ロ ̄lll) 周さんに殺される~(笑)
 ・周は自分がシアワセなのできっと寛容です(笑)
オトコマエに育った喬純もカズキンも、若さゆえの真っ直ぐな片思いを抱え
切なくもクリアな瑞々しさを感じます。素敵ですよね~こういう若さ(おばちゃん談

> しかし、本当に紙森さんは翠滴を愛してるんですね。そこここに溢れてます。愛が♡紙魚ちゃまの幸せものっ!このこの!!
 ・はい(*^▽^*) 
溢れ零れる愛をいただきまして、わたくし紙魚はシアワセです~~。゚(゚´Д`゚)゚。

> イラストもすんごく素敵です(。-_-。)ポッ 舐め回すように見てます。じゅる。
 ・(*ノェノ)キャー(*ノェノ)キャー!!この素晴らしい作品に、こんな未熟なイラストを差し上げてよかったのかと・・・
それこそこの短編に捧げるワタクシの愛のたまものということで(///ω///)エヘ

 コメント&ご訪問、ありがとうございました!

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