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紙魚

Author:紙魚
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Category: 翠滴 3 (全131話)

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翠滴 3 月櫻  2  (117)
 すっかり夜の帳の降りた無人の駐車場に煌々と外灯の灯りが燈る。
 由利と並んで歩く享一の前を周の手を引きながら和輝が歩く。
 駐車場の車に戻るまで和輝はしきりに周に話しかけていたが、プリウスが停まっていた入り口付近を見ると笑い顔も消え、だんだん喋らなくなった。

 瀬尾は和輝に迎えに行くことを約束をしていたが、和輝はこの別れが短いものではないという事を本能で感じているように思えた。言葉数の少なくなった和輝を由利が抱き上げる。
 小柄で華奢な由利が20キロ近い和輝を持ち上げるのを見て、少女のようだったかつての恋人は母親になったのだとあらためて思った。

 由利が片手でバッグの中にある車のキーを取り出そうと手間取るのを見て、思い切って声をかけた。
 「和輝君、抱っこしようか?」
 由利は少し躊躇いを見せるように享一の顔を見た後、「かずくん、キョウちゃんに抱っこしてもらおうか?」 と聞いた。和輝に嫌だと言われないかと、情けないくらい心音が乱れる。和輝は可愛い澄んだ瞳を窺うように享一に向けると、小さな手を伸ばしてきた。
 柔らかい腕が首に回り、腕の中に和輝の体温と重みが移ってくる。
 思いがけず潤んでしまった享一から由利が視線を外した。


 由利は中学生の時から瀬尾に憧れていた事を告白した。高校は別の学校に進学したが、問題を起こした瀬尾が同じ校区からいなくなった事はすぐに耳に入ったという。
 「だって、瀬尾くん人気者だったから」「瀬尾はこっちの高校でも人気あったよ。特に女子に人気があったから俺たち男からは、最初のうちすごく敬遠されてた」「こっちでも、ちょっとワルな感じが女の子にウケてたわ」
 まるで死別でもして、二度と合えなくなった人の思い出話しでもするように由利は話した。
 自分の中で燈り続ける恋を諦めようともがく由利を、享一はどうしてやる事も出来ない。

 大学に入り、自分から告白して付き合いだした享一の親友が瀬尾だったことに、本当に驚いたのだと言う。
 「時見君がいるって自分に言い聞かせても、瀬尾を好きになる気持ちを止められなかった」
 自分にも覚えのある感情だ。否応無く引き寄せられていく感覚に困惑し躊躇い、気付いた時にはどうする事もできない恋情のうねりに呑まれていた。
 享一は、波打ち際で輪郭も朧になった周のシルエットを見ながら肯いた。
 

 「謝らないわ。私は自分の納得がいくまで瀬尾を愛したもの」
 表情がようやく読み取れる夕闇の中で、強い意志を滾らせきっぱりと言い切った女の横顔を、享一は感嘆の思いで眺めた。

 和輝を身ごもった由利は享一を捨て瀬尾を選び、そして自分の選んだ男は自分を決して愛さないことを知った。
 男を見る目が無かったとか、運が悪かったと悔やむのではない。
 辛酸を舐める結果になった自分の恋を否定するのではなく、ありのままを受け入れる由利の逞しさを潔いと思い、いい女になったとも思った。

 「謝ったりなんかしなくていいよ」
 冷めた自分のコーヒーを口に運んだ。冷たくなったコーヒーは酸味ばかりが舌に残った。
 わずかに青さをのこす高い夜空に星が瞬きだした。
 「でも、和輝のことは別ね。あなたが家族という単位を大切にする人だって知っていたのに、あなたから子供を育てる喜びを奪う結果になってしまったわ」
 「俺はあの時、結婚とか家庭っていうものに拘り過ぎていたんだと思う。由利を見ているつもりで、その先にある理想ばかり追いかけていた。俺たちが結婚してもきっと別れてたよ」
 由利が小さく吹きだした。

 「なんだ私ったら、結局どっちと結婚していても離婚したのね。いやだわ」
 「面目ない」
 「面目って、あなた一体いくつよ? お爺さんみたい」
 2人揃って笑う。
 風が運んだ笑い声に、肩に子供を乗せたシルエットがこちらを向いたのがわかった。

 「素敵な人ね。どこかで見たことある気がするんだけど・・・・。モデルかタレントでもしてる人?」
 「いや、他人の空似じゃないかな」
 NKホールディングスの買収劇で日本が沸いたのは、瀬尾たちが渡米した後だ。日本の根幹企業であるNKホールディングスに、アメリカのファンド会社が買収を仕掛けたニュースは、世界中に流れたに違いない。
 一連の騒動の顔ともいえるファンド会社の代表だった男が、まさか自分の息子を肩車しているなど、由利は夢にも思わないだろう。

 「彼、あなたに恋してるのね」
 ぎょっ、として由利を見る。
 「何気ない素振りだけど、ずっとあなたのこと見てるもの。あなたもでしょ? あら、別に構えなくてもいいわよ。瀬尾で免疫はついたし、大学にゲイの友達もいるわ」
 周の双子の妹の美操たちといい由利といい、こと恋愛における女の勘の鋭さにはいつも驚かされる。
 「ふふ、平凡な家庭を持ちたがってたくせに。すっかり恋に目覚めちゃって。ほんとに遅いわよ」

 由利と付き合っていた時、自分は本当の恋愛を知らなかったかもしれない。
 もしちゃんと由利という女を見ていたなら、由利は自分を捨てたりはしなかったのだろうか?
 いや、庄谷の屋敷の調査で周に会ってしまったら、きっと同じ結果になっていた気がする。
 庄谷で初めて周を見たその瞬間、本当の恋を知らなかった自分は同性という禁忌など飛び越え、恋の深みに落ちた。
 
 「あなたに大切な人が出来てよかったな」
 ぽつりと言った由利の呟きが、夜を含んだ潮風とともに胸に沁みた。




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翠滴 3―1 → 

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ

どこがBLっぽいのでしょう??すみません、また騙してしまいました。次こそは!
『ファミリーバランス・2』は、今夜時に更新いたします。
 

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Comments

鍵コメ M さま♪
 Mさま、オハヨウございます。

 はい、二回抱いてました。いつからクローンに?(笑)
完全にボケていました。

> なんか、お互いが相手の幸せを認めて理解し合えるようになった関係って、ほっとすると同時にどこかもの悲しい気がしますね。ある意味、関係がなくなったとも言えるし。
 ・こじれた関係もまた強い繋がりのひとつだという気がします。
2人の関係が修復されると同時に繋がりが一気に稀薄になっていく気がして、書いていて寂しかったです。
 Mさんが仰るようにお互いインターバルが必要だったと思います。

> 由利さんとの関係は抜きにしては語れない話だったと思う。
> いい女になったと認められる享一くんは成長したのですよね。
 ・着手した当初は、由利ここまで出てくる予定ではなかったのですけれど、書き進めていくうちに母親を抜きにして幼い子供は語れないと思いました。
時間を経て、由利も享一もそして和輝を手放した瀬尾も成長したのだと思います。
周は?・・・どうでしょう~(笑)

 コメント&ご訪問、ご指摘、ありがとうございました!
Re: 緊急質問です!
 Aさま、緊急質問ありがとうございます。

> ワープカズキン? 
 ・ひ~~~~文が足りてません!完全に説明不足でした( ̄ェ ̄;)。
大きな修正は諦めて姑息に短い文を入れてみましたがいかがでしょう?

> ついでに
 ・カズキンクローン事件勃発。ちょうどいいので、由利と享一でひとりずつ。
もうひとり追加して、瀬尾にもカズキン♪おお、コレで万事丸く収まりマス(コラ~~!!

> 紙魚さん、ワザとでしょう?
> 最後にココで私に見つけさせて「謝ったんじゃなくって誤ったの^^」
> みたいなぁ~~?
 ・ヾ(≧▽≦)ノ彡☆バンバン!!
Aさんに向けての締めのメッセージ!面白すぎる~~。おなかが捩れる~~ぅ。
笑い事じゃないですね。猛烈に反省致しますm(_ _;)m

 コメント&ご訪問、ご指摘、ありがとうございました
鍵コメ、Uさま♪
 Uさま、ようこそです。こんばんは

 きゃ~~~UPしてから足した一文だったんですけど、
自分の焦り具合が見えてきて、はじゅずかし~~(*ノェノ)キャー!撃沈っす。

> 和樹くんを自分の子どもとして抱きしめることができない享一くんが切ないですね~。
 ・ままならないですね。
いつか名乗れる日が来れば良いですけれどまだまだ先の話になりそうです(´;ω;`)

 コメント&ご訪問、ご指摘、ありがとうございます。
(今日はこのご挨拶のなんと多い事か・・・・トホホ凹

 
あらら、鍵コメが・・・。
鍵コメ3連続だったんですね(笑)
みなさん私と同じように紙魚さんにパーフェクトを求めているんですね~。
わかるわかる!!

由利さんというクッションが入って、瀬尾っち(亡き人のよう(笑))やアマネさまの享一への思いが伝えられて、更にはカズキンにも慕われて、享一!!
モテモテだぞ~~~。

モデルかタレントに見えちゃうアマネさま~~、肩車がツボ~~~。
次第に暗くなっていく海の景色も美しいです。

次も、じっくり拝見します~~ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ
あら?もしやシマ猫小姑の出番だったのでは?くそぉ出遅れた~(笑)
急速に夕闇に暮れていく風景がそれぞれの心情と重なり、切なさが倍増。でもとても素敵でした。
享ちゃんがゆりっぺとこんな風に語り合えるようになるとは。感慨深いですな。
Re: あらら、鍵コメが・・・。
 アドさま、こんばんは~。ようこそです。

> 鍵コメ3連続だったんですね(笑)
 ・教えて頂いたとこを直して、補足に入れた文章にまた・・・
自分のザル脳が怖くなりました( ̄ロ ̄lll;)

> みなさん私と同じように紙魚さんにパーフェクトを求めているんですね~。
> わかるわかる!!
 ・私に、パーフェクト?!Σ(・ω・ノ)ノ!それ、無理です。

> 由利さんというクッションが入って、瀬尾っち(亡き人のよう(笑))やアマネさまの享一への思いが伝えられて、更にはカズキンにも慕われて、享一!!
> モテモテだぞ~~~。
 ・瀬尾っち本当に過去の人になってしまったみたいです(笑)
享一は人生一番のモテ期なのかもしれません(ただし同性限定・笑(*^ー^*)

> モデルかタレントに見えちゃうアマネさま~~、肩車がツボ~~~。
> 次第に暗くなっていく海の景色も美しいです。
 ・見覚えが有る気はするけど会った事がない由利にとっては、何かで見た人なんです。
風景を感じていただけて嬉しいです~~。ありがとうございます~~。


> 次も、じっくり拝見します~~ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ
 ・どきどきどきどき・・・・・明日は息子の学校で明後日は代休。
いつ書く時間ができるかわからないですけど書く時は慎重になって書きます。
(でも、きっと誤字はあると思います・・・(≡д≡)
もんもんにもありがとうございます!
あちらのリコメ、もうちょっと待って下さい~~。

 コメント&ご訪問、ありがとうございます!!
シマシマ猫さま♪
 シマシマ猫さま、ようこそです!!

> あら?もしやシマ猫小姑の出番だったのでは?くそぉ出遅れた~(笑)
 ・ふふふ・・・・大漁だったのよぉ~~~滝汗ものよ~(;^_^A

> 急速に夕闇に暮れていく風景がそれぞれの心情と重なり、切なさが倍増。でもとても素敵でした。
 ・ありがとうございます!
誰そ彼(たそがれ)時の少し淋しい感じと重ねた享一たちの心情を汲み取ってもらえて
本当に嬉しいです~~。

> 享ちゃんがゆりっぺとこんな風に語り合えるようになるとは。感慨深いですな。
 ・冒頭のあの別れから時間が経って、お互いを認め合える大人になったということですね。
この2人がこういう結末を迎えることができて、よかったといます。
あとは、カズキンの将来のことでもたまに話し合って欲しいですね~~~

 コメント&ご訪問、ありがとうございます♪

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