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紙魚

Author:紙魚
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Category: 翠滴 3 (全131話)

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翠滴 3 和輝  7  (108)
 瀬尾の視線に釣られるように振り返ると、壁にもたれてこちらを見ている人物がいる。男とは相当距離が離れているにも拘らず、その視線はまばらに行き交う人を突きぬけ、柱の影にいる自分たちに注がれているのがわかった。
 男同士のキスへの好奇心や驚き、動揺といったものはその落ち着き払った姿にはない。
 背が高く、はっと目を引くような金色の短髪、鋼鉄を削り出したような硬い輪郭はシンプルな黒いジャケットとズボンに隠された体躯の強靭さを連想させる。それだけ目立つ風体をしていながら、注意をしていないと風景の中に見失ってしまいそうになる。だが、ひとたび気になりだすと、その存在の醸す異様さが浮き上がってきて目を離す事が出来ない。

 外国人のその男は、辰村や喬純の父親が纏っていた雰囲気とはまた違う、もっと暗くて救いようのない冷たさを持っていた。あれは現世とはかけ離れた河岸の岸に立つ男だ。
 直感的にそう思った。
 薄いサングラスの奥の死人(しびと)を思わせる瞳は他の誰でもない、瀬尾ひとりに注がれていた。
 ぞっとするような目だ。
 享一の頭の中で警笛が鳴る。
 「瀬尾・・・」
 「行けよ、キョウ」
 「え?」
 振り返ると瀬尾は笑っていた。どこか不自然なその笑顔に享一は表情を硬くする。
 知り合いなのかと問い質そうとすると、瀬尾は享一の目を避けるように俯き床に落ちた杖を拾った。
 「来てくれてありがとうな。本当はもう会ってはくれないんじゃないかと思ってた」
 「瀬尾」
 「和輝には手紙を書かせるから・・・って、まだ字はヘタくそだし読めるかどうかはわかリャしないけどな。元気でな、キョウ」
 「おい、瀬尾!」
 享一の呼びかけに振り向きもせず、男に向かって身体を揺らしながら歩き出す。足の怪我のせいで幾分大きく揺れる瀬尾の背中は、実際の速さよりも急速に自分から離れていく気がした。


 展望デッキに出て携帯を取り出した。
 ベンチに座り、手の中の携帯を弄びながら瀬尾と金髪の男の事を考える。瀬尾との別れ際の様子が、なにか不可解なものとして頭に引っかかり、落ち着かない気分にさせる。
 もしかしてあれがバンクーバーで組んで仕事をするといっていた瀬尾の友人だろうか?
 いや違うと、もう一方で否定する声がする。
 瀬尾の男を見た時の蔑みと憎悪の混ざった表情が、何より男の纏う物騒な空気が、2人の男の住む世界の違いや親しくなる共通点が無い事を顕著に表している気がした。
 引き寄せられるように男を目指していて歩く瀬尾の、ぎこちなく揺れる背中を思い出す。
 どういう関係の人間だろうか。考えても、推測の糸口すら見つけることは出来なかった。


 ぼんやり飛行機を眺めた後、飛行機の離発着の合間を縫って呼び出しボタンを押す。
 コール一回で出てくれた相手は、きっと自分からの連絡を待っていてくれたに違いなかった。
 「俺だけど・・・・終わったから」
 『そうか。享一、大丈夫か?』
 今朝、お互い瀬尾と会うことに関してあえて触れることはしなかった。だが、周の自分を気遣う言葉で自分でも気付かなかった緊張が解れていくのを感じる。
 どっと疲れが押し寄せる気がして、ベンチの背もたれに背中を預けた。

 飛行機がまた一機、デッキを離れゆっくり滑走路に向かって進み出した。滑走路に出て走り出せば盛大なエンジン音で会話が困難になる。ぎりぎりまで周の声を聞いていたかった。
 「大丈夫だよ、俺は」 
 なのに、口先はやわい自分を見せたくなくて虚勢を張る。

 『迎えに行く』
 「いいよ、わざわざ来てくれなくても。仕事中だろう?こっちは電車で帰るから」

 『行くから、待ってろよ』
 有無を言わせない低く艶を含んだ声が、昨夜を思い起こさせる。

 昨夜、携帯越しの瀬尾の声に、自分に纏わり付いていた甘い雰囲気は一気に霧散した。頭は冷水を浴びせられたように完全に冷めきり、軽い過呼吸のような症状が出た。手際よく周が紙袋を口にあてがってくれ幸い発作はすぐに止んだが小さな震えが止まらなかった。
 震えが落ち着くと周に手を取られ、寝室に連れていかれた。
 テラスに埋め込まれたエクステリアライトの弱い灯りのみが頼りの薄暗い部屋で、雨音に包まれながら周に抱き締められるとようやく心が落ち着いた。
  『享一、瀬尾と会うつもりなのか?』
 周の肩に額を乗せたまま答える。
  『・・・・会うよ。瀬尾とは自分の言葉でちゃんとけじめをつけなければ駄目なんだ。それに、和輝の事もある。明日、瀬尾に会いにいってくるよ』
 それが自分を好きになったがために、多くのものを失った瀬尾への自分なりのけじめだと思った。そして、前を向いて進むために必要な「過去への引導」だとも。
  『そうか』
 周囲を埋め尽くす雨音に閉じ込められたベッドで何度も接吻け求め合い、自分を抱く腕と雨音に溺れた。自分を薙ぎ、揺らし翻弄する張本人の腕につかまりながら喉を仰け反らせ、声を上げた。自分を溺れさせるこの腕だけが、自分を混沌の波間から掬い上げてくれる。
 脚を絡め躰を繋ぎながら、うねる波間に呑み込まれまいと周にしがみつき接吻けを交した。


 いつか、自分は和輝と会わなかったことを後悔するかもしれない。
 先の旅客機が滑走路に入って停止する。ジェットエンジンの音が徐々に大きくなってゆく。
 「わかった。俺が今いるのは第一ターミ・・・」
 耳に衝撃があって手の中から乱暴に携帯が引き抜かれた。
 驚いて見上げると、さっき別れたはずの瀬尾が激怒に満ちた形相で立っていた。
 眉が吊り上がり、猛り狂う怒りが全身から迸る瀬尾の姿に言葉を失う。呆然と見上げる享一を血走った目で捉えたまま、瀬尾は携帯に吐き捨てるように怒鳴った。
 「貴様っ! 和輝をどこへやったっ!?」

 ジェットエンジンが轟音を上げて滑走する。
 享一は押されればカクンと崩れてしまう木偶のように、茫然自失の表情で立ち上がった。



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翠滴 2―1 →
翠滴 3―1 → 

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ

暑いのか、寒いのか。着るものに困ります。
 



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テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

ひええええーーー
こ、これは!!!
続きを読むのが怖い♪
Re: あああああっ!
 わ~~~!!Mさま、一番コメント嬉すい~~!!!

 大変でしたね~GW~(*´д`*;)(いきなりこの話題か?
あの後も延々・・・・(´;ω;`)ウッ…気の毒すぎる。。。 
もう、夏休みとか冬休みとか秋の連休とかやめて欲しいです(我ながら暴言だわ。息子をはじめ世のお子様たちに恨まれてしまう(笑)

> 何でしょう…何なのでしょう…(/Д≦)゜゜。
> 瀬尾っち…今度はナニーッ!?∑(`□´/)/
 ・ナニーーーーィ?!です( ̄ェ ̄)ウシシシ←
 瀬尾っち激怒してます。

> 紙魚さん…端々への伏線が上手すぎて、全然安心して読めないのてす…(号泣)
 ・伏線撒き過ぎて、後で拾い忘れないかとドキドキ。
もう既に拾い損ねた小さな伏線もぼちぼち・・・Σ(・ω・ノ)ノ!
100話も書いているとね~(笑)←(笑いごとではないですね・笑)コラ

> 早く…早く心に平穏を…(T^T)
> ドキドキは心臓にも精神もよくない……でも楽しいーーー!(おい!
 ・よかったですv楽しんでいただけて♪(*^m^)o==3
ギョギョギョっていうのはたぶん、これが最後です。
そちらもようやく落ち着かれて、書きモードに入られているのでは・・・
うぉぉぉお!!、Mさんの新連載がたのしみだーーーーっ!!

 コメント&ご訪問、ありがとうございます(≧▽≦)
Route M さま♪
 Route Mさま、ようこそです。

> ひええええーーー
> こ、これは!!!
 ・すみません。穏やか宣言、早くも撤回です。
や、蓋を開けてみたら案外普通だったり・・・・

> 続きを読むのが怖い♪
 ・あ、♪が付いてる ヘ(゚∀゚ヘ)(ノ゚∀゚)ノ
こっちが本心という事で♪♪

 コメント&ご訪問、ありがとうございます♪♪♪
金髪の短髪の~♪
瀬尾っちと何やら、あれこれありそうな外国人男性ヾ(´∀`〃)ノ~♪
いなくなった様子の和輝くん(まただぁ~~)・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
お話が、どんどん進む合間にも雨のペントハウスでの甘いひと時が挟まれてうっとり~。
「翠滴」全体を流れるムードが、やっぱり好きです!!
うわ!瀬尾っち激怒!
さっきの金髪の人はなぞだけど、和輝はどこに?
周さん、やってしまったのかな?
『もともと享一の子供だ!』とかなんとか、言っちゃうのでしょうか!? また、ドキドキでつづく!
やだもぉー
心臓に悪いですよ~この急展開(◎-◎;)!!
周さんなんかしたの?それともドッキリ??うそよねーんて(笑)
金髪のお方も気になるデス♡

真夏のようかと思えばまた冬に逆戻り...まだ冬物をクリーニングに出せません。
昨日は息子の運動会でしたが、途中から競技なんかどうでもよくなってひたすら「早く終われ~」と祈ってました。周りの人たちもみんな毛布かぶってブルブルしてました。どんな運動会だ(笑)
ああ、瀬尾っちの頭のなかでは、拉致監禁実行犯と周様が繋がってると思ってるんだ。

そりゃそうか。強迫してた内容は政財界の大物と周様のスキャンダルだったものね。
享たんが周様のお陰で助かったんだっていても、内容まで言ってないんだから、依頼主が依頼を取り下げたくらいにしか思ってないのかもなあ。

それにしても和輝くんはどこへ! 
なんだかんだ言って瀬尾っちお父さんの顔だ~~。
つ、続きプリーズ!
Re: 金髪の短髪の~♪
 アドさま、おはようございます(*'ー'*)

> 瀬尾っちと何やら、あれこれありそうな外国人男性ヾ(´∀`〃)ノ~♪
 ・ここのところの妄想から生まれた金髪くん♪
設定にはなかった人物で、残念ながら本編ではあまり活躍しない予定なのです。
金髪くんはちょっと、こわっぽい感じの人。素性は・・・・お口チャ~~~ック!

> いなくなった様子の和輝くん(まただぁ~~)・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。
 ・よくいなくなる和輝坊や。事の真相はもう少し後で。

> お話が、どんどん進む合間にも雨のペントハウスでの甘いひと時が挟まれてうっとり~。
> 「翠滴」全体を流れるムードが、やっぱり好きです!!
 ・ヾ(=^▽^=)ノわーい。ありがとうございます。
気のおもむくまま書き出すと、だんだん内容がBLから遠ざかる傾向が・・・イカン(笑)キッチンえちの詳しい顛末はくろねこさんから前に頂いたコメを注釈として貼っておきたいくらいです。

 コメント&ご訪問、ありがとうございます!
Re: うわ!瀬尾っち激怒!
 Rinkさま、ようこそ♪

 瀬尾っち激怒。しています(;^_^A

> さっきの金髪の人はなぞだけど、和輝はどこに?
> 周さん、やってしまったのかな?
 ・周が愛する享一の為にΣ(・ω・ノ)ノ!もしかして・・・・!!
事の真相はもうちょっと待ってくださいねん。

> 『もともと享一の子供だ!』とかなんとか、言っちゃうのでしょうか!? また、ドキドキでつづく!
 ・イチャモン付けられたら、絶対それは言うと思います。
最初に横取りしたのは瀬尾っちなのでv 

 先日はお知らせメールをありがとうございました。
 コメント&ご訪問、感謝です!
Re: やだもぉー
 シマシマ猫さま、ようこそです!

> 心臓に悪いですよ~この急展開(◎-◎;)!!
> 周さんなんかしたの?それともドッキリ??うそよねーんて(笑)
> 金髪のお方も気になるデス♡
 ・いままで山有り谷有りしてきましたが、これが最後のお山です。
真相は・・・・・どうでしょうプププッ(*^m^)o==3 
金髪くん、またの名前を伏線くん。本編ではあんまり活躍(?)しないかも。
いつか瀬尾メインで書きたくなった時のための布石デス。

> 真夏のようかと思えばまた冬に逆戻り...まだ冬物をクリーニングに出せません。
> 昨日は息子の運動会でしたが、途中から競技なんかどうでもよくなってひたすら「早く終われ~」と祈ってました。周りの人たちもみんな毛布かぶってブルブルしてました。どんな運動会だ(笑)

 ・クリーニング、迷いますよね~~。。
先日あまりの寒さに、一度クリーニングに出した上着を引っ張り出して着てしまいました(≧ε≦)”もうちょっと待てばよかったです・・・
日曜日はこちらも寒かったですよ~。ってことは、そちらはもっとってことですねw(*゚o゚*)w。みんなが早く終れと願う運動会・・・・(笑) 運動会で暑いとか寒いとかって、疲れが倍増しする気がしません?( -д-)~3
お疲れ様でした!!

 コメント&ご訪問、ありがとうございました!
くろねこさま♪
 くろねこさま、おはようございます♪

> ああ、瀬尾っちの頭のなかでは、拉致監禁実行犯と周様が繋がってると思ってるんだ。
 ・バリバリ、思ってます。確信してます。微塵も疑ってない。めっちゃ怒ってます。

> そりゃそうか。強迫してた内容は政財界の大物と周様のスキャンダルだったものね。
> 享たんが周様のお陰で助かったんだっていても、内容まで言ってないんだから、依頼主が依頼を取り下げたくらいにしか思ってないのかもなあ。
 ・周が享一の為にやったとも思っているかもしれませんし、周個人の報復とも取れるかな?全く関係がないとは思えない瀬尾っちです。

> それにしても和輝くんはどこへ! 
> なんだかんだ言って瀬尾っちお父さんの顔だ~~。
> つ、続きプリーズ!
 ・瀬尾っちはやっぱりお父さんだった。こういう瀬尾っちは好きです。
もう変な欲なんか出したりせず、和輝と2人で仲良く父子家庭やってればよかったのにって、思い・・・・(アラ。。どのお口が言ってんの~?ですね(笑)

 コメント&ご訪問、ありがとうございます!

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