04 ,2010
翠滴 3 born 14 (97)
■R指定要素があります、ご注意ください下さい。
長い指が心も躰もかき回す。熱く乱れた吐息と共にまた涙が零れた。
霞む視界の向こうに振り返る自分を見つめ返す瞳があった。そこには当然、自分の問いにたいする答えなどない。ただ、心に覆いを被せる事を赦さない翠の瞳が、静かに感情の発動を待っていた。
「欲しい・・・・」 ほんの半月ほど前、別の男に対して同じ台詞を吐いた恥知らずな唇が新たな欲望を音にする。
周の指先が官能の塊を強く擦り切羽詰った叫び声が口を衝く。
「欲しいだけじゃ何がどこに欲しいのかわからない。はっきり言えよ、享一」
耳の中に周の舌が入り込み、音を立てて舐めねぶる。 心臓から堰を切って送り込まれる血液に湧く膨大な数の官能の気泡が、周の舌の奏でる音に合わせて皮膚の下で弾けた。
「周が・・・・欲しい」
唇に染まる言葉は欲望を次々引き摺り出す。
「俺を、周でいっぱいにして。俺を満たして」
周が欲しいと心が叫び、足りないと躰が泣く。
周でなければ満たされない。周がいなければ呼吸も出来ない。これほどひとりの男に、視界も魂も奪われてはまともに生きてゆく事など出来るはずがない。
穿たれた指の生み出す心もとない快感に翻弄されながら周が欲しいと何度も叫び、廉恥も尽きたとばかりに乞い続けた。
「周で俺を壊し・・・・・」
懇願に振り返る頸に周の歯が食い込んだ。
獣が獲物の動きを封じ込める時のように首の後ろを咬まれ、引き攣った叫び声をあげ硬直する。ギリギリと食い込んでくる痛みに享一は、訳もわからず浅い息を繰り返しながら喘いだ。
口を離し、不埒な刻印のあった場所に新しく刻まれた自分の歯形を確認すると、周は隠微に口の端を上げ満足気に笑う。破れた皮膚が沁みるのか、大きな唇が愛しげに噛み痕を舐め唇で吸うと、享一の躰がピクリと震えた。
「俺に抱かれながら死ぬ覚悟があるんだろう?」
耳元で囁かれるのと同時に項に手が巻かれる。
愛撫するように長い指が柔らかい首筋をゆっくり撫上げ圧迫した瞬間、熱く猛る欲望に一気に貫かれた。不意打ちの激痛が脳天を突き抜ける。
肉体を裂き自分を押し広げる痛みに、躰と心の両方を引き裂かれた記憶が生々しい匂いを伴って蘇る。頭の隅でゆらりと身を起こす蒼い影に、全身がぞっと総毛立った。
鼻腔に含まれるほんの微かな血液の匂いに、覚えのあるトワレの匂いが混じり出す。
暗闇を、すうっと小さな白い光が横切った。またひとつ。また・・・
享一の足の下に気の遠くなりそうなほどの光の粒が集まり、あっという間に華々しい光が輝き燦ざめく都会の夜が現れる。
遥か眼下の、その一粒一粒の凍て付くような光の白々しさに、馴染みのある薄ら寒さを覚えた。
『―――― シラナイ、シラナイ。』何度も訴える自分の声が聞こえる。
狂気を孕むアーモンド形の瞳。自分にかけられた疑惑。血の匂い。プールオム。動脈を押さえる大きな手。『イヤダ、ヤメテクレ・・・・瀬尾!』 その手を、まさかと思いながら信じる事が出来なかった。
ぐらりと緩慢に身体が傾ぎ、渦巻く光の中に落ちてく既視感に叫んだ。
その声が、くぐもったうめき声と共に途絶える。咽喉を締め付ける力にバランスを崩した身体を引き上げられ、腰の奥を押し開く圧迫感に呻いた。
「瀬尾に何をされた?」 怒りを含んだ熱い吐息が耳殻を掠める。
目の前のガラスに、呼吸を荒げ周の膝に跨り背中を預ける自分の姿があった。
ガラスの中から真っ直ぐに自分を見つめる翠の瞳と目が合う。如何なる時も自分を捕らえて離さない魅惑の瞳は、今この瞬間も自分を惹き付け虜にする。
自分の首に搦まる手に自分の手を添えた。
「アマネ・・・・・。」
「享一」
「頼むから・・・周をもっと感じたい。今を実感したい」
享一の身体をシーツに倒し周が腰をゆっくり引く。周を咥える後孔の縁に鋭い痛みが走るのと同時に、享一の中をざわりとかき乱す波が生まれた。首に置かれたままの手は、周が指先に少し力を篭めただけで享一を苦しめるだけでなく滑るような快楽の泥濘へと享一を誘い込んだ。
下からゆるゆると突き上げられ、生死の境を行き交うような危ういエクスタシーに翻弄され意識が霞み始める。
「ア・・・・ぁ。アマネ・・・」
背後から回された長い指に緋色の紐ごと優しく扱き上げられると、硬直したまま全身が戦慄いた。吐き出すことの出来ない熱は増幅し、自分の中ではちきれんばかりに膨れ上がる。
柔らかく繊細な絹の紐が鋼の凶暴さで性器に食い込んできた。
「アマネ、ダメだ・・まだ触らないで。やめ・・・」 頭を振り切羽詰まった声を上げると、背中で微かに笑う気配がして手が引いていく。
だが、与えられた刺激は尾を引いて纏わりつきなかなか消えようとしない。膨れ上がった熱と刹那のエクスタシーに、ほんの些細な刺激にも目の眩むような高峻の頂へと攫われそうになる。
肩胛骨の窪みに唇を埋める周の吐息さえ、鋭く尖った官能の欠片となって享一の全身に突き刺さった。柔らかな間接照明の光を受けた白いシーツに快感の欠片で磔られ、恍惚の表情を浮かべながら周の生み出す死と隣り合わせの快楽に溺れる。
ふっと我に返り本能に駆り立てられるようにシーツに爪を立て、快楽の泥濘から逃げだそうと腕を伸ばす。その手を捕まえられ、再び周と絡まりあう肢体ごと熱の坩堝に深く沈められる。
フイルムが巻き戻されように同じことを繰り返した。
頑丈なベッドの躯体が軋みを上げる。
朦朧とした意識を手放しかけると深く突き上げられて呼び戻され、また激しく打ち込まれた。
脳髄までも犯す快感に思考を蝕まれながら、そろそろと行き詰まった息を逃がす。戒めを解放しようと自らの怒張に手を這わせるが、硬く縛られた結び目は指先で摘む事すら出来ない。それどころか自分の指が逆に刺激になって更なる責め苦に苛まれた。
「ア・・・周。もう、もう・・・あぁ」 懇願の涙が頬を濡らし、哀訴の言葉が口を衝く。
「享一」と、余裕を欠いた翠の目が眇る。瞬間、享一の手ごと劣情を包んだ手に激しく扱きたてられ、悲鳴を上げ仰け反った。
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長い指が心も躰もかき回す。熱く乱れた吐息と共にまた涙が零れた。
霞む視界の向こうに振り返る自分を見つめ返す瞳があった。そこには当然、自分の問いにたいする答えなどない。ただ、心に覆いを被せる事を赦さない翠の瞳が、静かに感情の発動を待っていた。
「欲しい・・・・」 ほんの半月ほど前、別の男に対して同じ台詞を吐いた恥知らずな唇が新たな欲望を音にする。
周の指先が官能の塊を強く擦り切羽詰った叫び声が口を衝く。
「欲しいだけじゃ何がどこに欲しいのかわからない。はっきり言えよ、享一」
耳の中に周の舌が入り込み、音を立てて舐めねぶる。 心臓から堰を切って送り込まれる血液に湧く膨大な数の官能の気泡が、周の舌の奏でる音に合わせて皮膚の下で弾けた。
「周が・・・・欲しい」
唇に染まる言葉は欲望を次々引き摺り出す。
「俺を、周でいっぱいにして。俺を満たして」
周が欲しいと心が叫び、足りないと躰が泣く。
周でなければ満たされない。周がいなければ呼吸も出来ない。これほどひとりの男に、視界も魂も奪われてはまともに生きてゆく事など出来るはずがない。
穿たれた指の生み出す心もとない快感に翻弄されながら周が欲しいと何度も叫び、廉恥も尽きたとばかりに乞い続けた。
「周で俺を壊し・・・・・」
懇願に振り返る頸に周の歯が食い込んだ。
獣が獲物の動きを封じ込める時のように首の後ろを咬まれ、引き攣った叫び声をあげ硬直する。ギリギリと食い込んでくる痛みに享一は、訳もわからず浅い息を繰り返しながら喘いだ。
口を離し、不埒な刻印のあった場所に新しく刻まれた自分の歯形を確認すると、周は隠微に口の端を上げ満足気に笑う。破れた皮膚が沁みるのか、大きな唇が愛しげに噛み痕を舐め唇で吸うと、享一の躰がピクリと震えた。
「俺に抱かれながら死ぬ覚悟があるんだろう?」
耳元で囁かれるのと同時に項に手が巻かれる。
愛撫するように長い指が柔らかい首筋をゆっくり撫上げ圧迫した瞬間、熱く猛る欲望に一気に貫かれた。不意打ちの激痛が脳天を突き抜ける。
肉体を裂き自分を押し広げる痛みに、躰と心の両方を引き裂かれた記憶が生々しい匂いを伴って蘇る。頭の隅でゆらりと身を起こす蒼い影に、全身がぞっと総毛立った。
鼻腔に含まれるほんの微かな血液の匂いに、覚えのあるトワレの匂いが混じり出す。
暗闇を、すうっと小さな白い光が横切った。またひとつ。また・・・
享一の足の下に気の遠くなりそうなほどの光の粒が集まり、あっという間に華々しい光が輝き燦ざめく都会の夜が現れる。
遥か眼下の、その一粒一粒の凍て付くような光の白々しさに、馴染みのある薄ら寒さを覚えた。
『―――― シラナイ、シラナイ。』何度も訴える自分の声が聞こえる。
狂気を孕むアーモンド形の瞳。自分にかけられた疑惑。血の匂い。プールオム。動脈を押さえる大きな手。『イヤダ、ヤメテクレ・・・・瀬尾!』 その手を、まさかと思いながら信じる事が出来なかった。
ぐらりと緩慢に身体が傾ぎ、渦巻く光の中に落ちてく既視感に叫んだ。
その声が、くぐもったうめき声と共に途絶える。咽喉を締め付ける力にバランスを崩した身体を引き上げられ、腰の奥を押し開く圧迫感に呻いた。
「瀬尾に何をされた?」 怒りを含んだ熱い吐息が耳殻を掠める。
目の前のガラスに、呼吸を荒げ周の膝に跨り背中を預ける自分の姿があった。
ガラスの中から真っ直ぐに自分を見つめる翠の瞳と目が合う。如何なる時も自分を捕らえて離さない魅惑の瞳は、今この瞬間も自分を惹き付け虜にする。
自分の首に搦まる手に自分の手を添えた。
「アマネ・・・・・。」
「享一」
「頼むから・・・周をもっと感じたい。今を実感したい」
享一の身体をシーツに倒し周が腰をゆっくり引く。周を咥える後孔の縁に鋭い痛みが走るのと同時に、享一の中をざわりとかき乱す波が生まれた。首に置かれたままの手は、周が指先に少し力を篭めただけで享一を苦しめるだけでなく滑るような快楽の泥濘へと享一を誘い込んだ。
下からゆるゆると突き上げられ、生死の境を行き交うような危ういエクスタシーに翻弄され意識が霞み始める。
「ア・・・・ぁ。アマネ・・・」
背後から回された長い指に緋色の紐ごと優しく扱き上げられると、硬直したまま全身が戦慄いた。吐き出すことの出来ない熱は増幅し、自分の中ではちきれんばかりに膨れ上がる。
柔らかく繊細な絹の紐が鋼の凶暴さで性器に食い込んできた。
「アマネ、ダメだ・・まだ触らないで。やめ・・・」 頭を振り切羽詰まった声を上げると、背中で微かに笑う気配がして手が引いていく。
だが、与えられた刺激は尾を引いて纏わりつきなかなか消えようとしない。膨れ上がった熱と刹那のエクスタシーに、ほんの些細な刺激にも目の眩むような高峻の頂へと攫われそうになる。
肩胛骨の窪みに唇を埋める周の吐息さえ、鋭く尖った官能の欠片となって享一の全身に突き刺さった。柔らかな間接照明の光を受けた白いシーツに快感の欠片で磔られ、恍惚の表情を浮かべながら周の生み出す死と隣り合わせの快楽に溺れる。
ふっと我に返り本能に駆り立てられるようにシーツに爪を立て、快楽の泥濘から逃げだそうと腕を伸ばす。その手を捕まえられ、再び周と絡まりあう肢体ごと熱の坩堝に深く沈められる。
フイルムが巻き戻されように同じことを繰り返した。
頑丈なベッドの躯体が軋みを上げる。
朦朧とした意識を手放しかけると深く突き上げられて呼び戻され、また激しく打ち込まれた。
脳髄までも犯す快感に思考を蝕まれながら、そろそろと行き詰まった息を逃がす。戒めを解放しようと自らの怒張に手を這わせるが、硬く縛られた結び目は指先で摘む事すら出来ない。それどころか自分の指が逆に刺激になって更なる責め苦に苛まれた。
「ア・・・周。もう、もう・・・あぁ」 懇願の涙が頬を濡らし、哀訴の言葉が口を衝く。
「享一」と、余裕を欠いた翠の目が眇る。瞬間、享一の手ごと劣情を包んだ手に激しく扱きたてられ、悲鳴を上げ仰け反った。
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□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
進んでいないように見えますけど、進んでるんです(キッパリ
ネタもとっくに尽きていることですし、早くこのエリアを脱出したいです(TωT)
■拍手ポチ、コメント、村ポチと・・本当に、いつもありがとうございます。
ほんの拙文しか書けない私ですがですが、書いていく励みになります。。
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もんもんもんによると「マグロ卒業」とな? オメデトウゴザイマスヽ(゚∀゚)ノ パッ☆
>生死の境を行き交うような危ういエクスタシー
モノスゴイものを感じています!それは周さまも!!
この激しいセ/ッ/ク/スで、二人の関係が大きく変わる予感がします。
まだ、緋色の紐で結ばれている享タンのあ・そ・こ!!
そこを、解放されたら、別の部分も解放されるのかも?
あ~、待った甲斐がありました。
もう1回読もう!!ヾ(´∀`〃)ノ~♪