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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
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Category: 翠滴 3 (全131話)

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翠滴 3 傀儡  23  (80)

 静かな森を足音が走り抜ける。
 小さな水路を敷地内で湧いた清らかな水が澄んだ音を立て流れている。
 割り石で舗装された小径を囲む森は、もともとあった旧家の広大な庭に、ランドスケープデザイナーによって冬の間でも緑の残るように植栽プランニングさていた。

 工事中、何度も訪れ感嘆し耳を傾けた美しい森も水のせせらぎも、先を急ぐ享一の感覚の中に一切入って来ない。ただ、最後に自分を見つめた周の怒りに朱く染まる瞳のその奥に揺らめく蒼い焔に支配されていた。
 周はあの時点で既にこうなる事を覚悟していたのだろうか?
 もはや押しとどめることの出来なくなった周への焦げ付いた恋情や後悔が胸に押し寄せ渦巻いてうねり、逆巻く感情に視界がぶれた。

 その一方で、ロビーで会った辰村の、酷薄そうに笑う凄みのある顔が頭から離れないでいる。改めて、あの男が瀬尾の命を狙い車に細工をさせ、自分達の部屋を無残に破壊させた張本人かと思うと背中に震えが来た。
 ズタズタに切り裂かれたベッドや、続けて使用する事が不可能なほど荒らされた部屋の残忍さと、あの辰村の人道を外した傲慢で冷酷な印象がひたりと重なる。

 あの男は周をどうしようというのか。
 自分の考えの浅はかさが、周がやっとの思いで這い上がった蹂躙と屈辱の過去の深淵へと再び突き落とそうとしている。
 全部自分のせいだ。気も触れんばかりに叫び出しそうになった。

 横に枝分かれした細い小径(アプローチ)に入ると手の込んだ美しい植え込みがその先にあるラグジュアリーな空間へと誘う。享一はそれらには目もくれず、一気に小径を駆け抜けた。
 目の前に荒く削り出された石の柱が両サイドに立ち、石柱には真鍮で作られた1002の部屋番号を示すプレートの上に LOTUS と刻まれている。そこから先はこの優雅なヴィラをリザーヴした者だけに許された完全にプライベートな空間だ。
 目を閉じ、心にひとつ誓いを立てると、享一は結界を破るようにその先へと踏み込んだ。
 
 そのヴィラは静かな森に抱かれ、名前の由来ともなった蓮池に浮かび眠るように建つ。アプローチの石段を上がると、象牙色の石と珪藻土で造られた溜息が出そうなほど優雅な建物の全貌があらわになる。
 これほど切迫した気持ちで、この建物を再び訪れる日が来るとは思わなかった。
 
 黒い鋲が穿たれた木製のドアの前に立ち、享一は、戦慄く息を吐いた。
 呼び鈴のボタンを押し反応を待ったが返事もなければドアが開く気配もい。だが、辰村は確かにここにいる。周もまた・・・。
 享一は立て続けに呼び鈴のボタンを押し、ついには木製のドアをその手で何度も叩いた。静かな森の冷たい空気を打つドアを叩く音が同時に自分の胸の辺りを大きく打った。強く叩きすぎて、指の関節に痛みを覚えたが構わずに叩き続けた。
 たまらず、周の名を叫びそうになったところでいきなりドアが開いた。
 盛大な舌打ちが耳を打つ。享一の前に不機嫌さを全開にした辰村が立っていた。

 「しつこいぞ、ここには近寄るなと聞いていないのか?」
 一旦脱いだシャツをまた羽織ったという風情の辰村はシャワーを浴びていたらしく髪の毛が濡れていた。
 ところどころ水を吸って黒い染みの出来たグレイのシャツの袷が開き、隆々と張り詰めた筋肉の波打つ胸を這う刺青が垣間見えた。黒く長いものが縺れのたくる図柄の密度の高さと、その黒光りする墨が辰村という男を浮き彫りにする。
 人の命を奪う事をなんとも思わない男だ。
 一重できっかり吊り上った両目から無言の重圧が押し寄せ、息を呑んだ。

 「なんだ、さっきの奴か。なんだ?なにか用か」
 ドアの前に立つ享一を、先程ホテルのロビーで、鳴海と一緒にいた男だと気付いた辰村は一瞬、鼻白んだ顔をした後、鬱陶しそうに再度口の中で舌打ちをした。
 「永邨さんと会わせて下さい」
 「奴から他の男に乗り換えた男が何を言うかと思えば、世迷言を吐きに来たのか」
 呆れたように言い、それからニッと嗤った。
 「ここは今日から3日間立ち入り禁止だ。必要な時はこちらから呼ぶ。もう一度、お前が鳴海に念押しとけ」
 話はこれまでだとばかりに辰村が閉めようとした扉に、享一が咄嗟に手を掛けた。
 辰村の何人の指図も拒む獰猛な目に、かっと怒りの火が点る。強行突破で中に入ろうとした躰を、硬い筋肉の張った腕が阻んだ。
 「お前、ブチ殺されたいのか?」
 耳殻に直接、低音の脅し文句が注ぎ込まれる。
 無理矢理、扉框と辰村の間に半身を捩り入れ、ドアの奥に向って大声を張り上げた。
 「お願いだ、永邨さんに会わせてくれ。周!アマネー!」
 「こいつ!」
 「あ・・・うっ。痛っ!」
 辰村の手に掴まれた腕が背中で不自然な方向に捻り上げられ固定された。息が乱れ、あまりの痛さで上半身が前屈しそうになるのを強引に引き上げられ更に呻いた。

 「周とは切れているのかと思いきや、真面目そうな顔して案外気の多い男だな。おい、お前はこいつをどうしたい?」
 声にいたぶるような笑いが含まれている。
 「ううっ!!」
 更にぎりりと身体を引き上げられ、後頭部の髪の毛を掴まれ強引に顔を上げさせられた。 

 激痛で歪む視界に白いシャツにネクタイを締めた長躯の男の姿を認め、心臓が破れるかと思うほど大きく脈を打った。

  



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翠滴 3―1 →

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 
  ながながと、更新をほったらかしてすみませんでした。や、忘れていたわけではないのです。
子供の学級閉鎖が解除になったのはいいんですが、コマ切れちょこちょこ書き溜めたのをいざUP
の段階で、上手く文が繋がっていないことが発覚。やっぱり、一気に書かないとダメです。
 
予定ではこのシーンさらりと過ぎて、今頃Rゾ-ンに突入しているはずだったんですけど、
例によって進んでいません。 ええ、いつもの悪い癖が勃発しました(笑)
じっとり、ねっちり書きたくなっちゃったんです♪←オイ!m(_ _)m
 
                     
  ■拍手ポチ、コメント、村ポチと・・本当に、いつもありがとうございます。
  ほんの拙文しか書けない私ですがですが、書いていく励みになります。。

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Comments

おお、とうとう踏み込みましたね。
先の読めない展開にどきどきです。
で、おまけSS?
いってきま~~す
周!あまね~~!!(ノ△T)(ノ△T)


周!あまね~~!!(落ち着け!

更新待ってました!
ねっとり書いてください!
ああ、良かった。
紙魚さんのお尻を叩きにいった鳴海さんまで帰ってこないので、どうしよう(ToT;)(;ToT)オロオロと、なっていました。 そっか鳴海さんもいっしょになってエピソードを繋いでいたのね(*^_^*)

さて~っ、辰村さん体に柄つき!!こっわーいアワワワ((((゚ □ ゚ ) ゚ □ ゚))))アワワワ、頑張って立ち向かっていく享一、着衣で立っている周さん。 妙な温度差が…。
奪回してRに持っていくの? 
いったいどうやって? 紙魚さん読めないっ。

戻ってしまうけど、ホテルの離れの様子が素敵です。
リゾート地のホテルみたいに空気感まで違った温度が伝わってきます。
SSに伺います~~。
Route Mさま♪
 Route Mさま、ようこそです。

 お久しぶりです~~。っていうか、「ただいま!」って言いたい。。
 やっと日常が戻ってきました(TωT)

> おお、とうとう踏み込みましたね。
 ・書いても書いても進まないって、どういうことか・・・アチコチ細切れで書いていたので、使えない言葉の残骸を大量に出してしまいました凹

> 先の読めない展開にどきどきです。
 ・読まれる方に納得していただける展開に持ち込めるか、私もドキドキです。

> で、おまけSS?
> いってきま~~す
 ・ウレシハズカシ♪、ファミリー編(笑)にもお越しくださり、コメントまで残して頂きありがとうございます。本編があまりに重いので、あちらではネジが緩んでしまいました。

 今、珍しく書きモードに入っていてもう少しだけ不義理を致しますが、お許しくださいませ~~。ああーーでも、じゅんじゅんが気になるーーーーっ!!!(ぐぐぐ、我慢!できるかな(泣

 コメント&ご訪問、感謝です。
ならさま♪
 ならさま、ようこそです。

> 周!あまね~~!!(落ち着け!
 ・うおーーーっ。周コール、ありがとうございます!!!

> 更新待ってました!
 ・嬉しい~~~~。やたらと体力消耗の著しい一週間でした(笑)

> ねっとり書いてください!
 ・ワーーイ!\(*^▽^*)/ご許可をいただけた!!
 本当は、鳴海とホワイエで会うところから辰村と対峙するまで2記事くらいで終る予定だったのに3記事書いてもまだ終ってません(笑)。。もちろん、まだ続きます(汗)
お付き合いいただけるのですね~~嬉しい~~!!
 よろしければ、期間限定SSのしまりのない周も見ていってくださいね♪
下の「ファミリーバランス」の文字から跳べま~す♪

 コメント&ご訪問、ありがとうございます!
Re: ああ、良かった。
 アドさま、こんばんは。ようこそです♪

 ご無沙汰していまして、申し訳ございません~~~

> 紙魚さんのお尻を叩きにいった鳴海さんまで帰ってこないので、どうしよう(ToT;)(;ToT)オロオロと、なっていました。 そっか鳴海さんもいっしょになってエピソードを繋いでいたのね(*^_^*)
 ・鳴海は、隣で享一イビリが足りないとずっと文句を言っています。ホワイエのシーンをもう一度書き直せとネチネチ私を苛めてくるんです(泣) あと、眉間のMを消す高級皺取りクリームも買えとせっつかれました。私が欲しいくらいなのにぃ。

> さて~っ、辰村さん体に柄つき!!こっわーいアワワワ((((゚ □ ゚ ) ゚ □ ゚))))アワワワ、頑張って立ち向かっていく享一、着衣で立っている周さん。 妙な温度差が…。
 ・流行のもんもん入れてみました♪
Mさんとこで教えて頂いた墨サイトにずっぽりハマって、抜けられない私です(笑)

> 奪回してRに持っていくの? 
> いったいどうやって? 紙魚さん読めないっ。
 ・ん~~、実は自分でも読めてなかったり・・・一応の展開は考えて少し先まで書いてはいるんですけど、これでいいのか考える度、迷いが発生します。

> 戻ってしまうけど、ホテルの離れの様子が素敵です。
> リゾート地のホテルみたいに空気感まで違った温度が伝わってきます。
 ・ありがとうございます。単純な文字の羅列である文章から、空間とか空気を感じ取って頂けるというのは本当に嬉しいです。

> SSに伺います~~。
 ・あちらにもコメを頂き、ありがとうございます。Mさんのコメレスにも書かせていただいたんですが、珍しく書きモードに入っていまして、もう少しだけ不義理を致しますが、お許しくださいませ。

 コメント&ご訪問、感謝です。
お帰りなさいませ、ご主人様!
都心のホテルの中とは思えないゴージャスな作り。目前に蓮池の様子が広がりました。

もんもんの辰村にすでに捻りあげられてる享たん。捨て身のノープランが周様に火をつけるのか。

書きモードの紙魚様!メイドになって家事しますから、どんどん続きを書いて下さい。

あ、裸エプロンは創作意欲をそぐので、「エマ」に出てくるような英国貴族御用達正当派メイド服でご奉仕させていただきます。

で、出てくる料理は韓国料理だったり、中華だったり、ベトナム料理だったり。ほんとはチャイナドレス着たいとこだけどサイズが・・・。
片付けは苦手なので、助手の茶目3号がやります。

はうっ!周様狙いのメイドだったんだけど、鳴海さんがいたんだった。ちっ!
Re: お帰りなさいませ、ご主人様!
 くろねこさま、ようこそです♪

ご・・ご・・・・、ご主人様って言われた~~~~!!きゃ~~~っ。
いきなり頭が倒錯モードに(どういう頭だ・笑)

> 都心のホテルの中とは思えないゴージャスな作り。目前に蓮池の様子が広がりました。
 ・東京って意外と緑が多くて、上京した折にお世話になるホテルにもちょっとした広さの森があるんです♪でも、高低差があるから蓮池は無理かな。このシーンは、イタタな内容が延々続いていますので、ちょっと息抜きの意味でも入れてみました♪

> もんもんの辰村にすでに捻りあげられてる享たん。捨て身のノープランが周様に火をつけるのか。
 ・Mさんのとこで教えて頂いたもんもんサイトはお気に入りに入れてま~す♪(確かくろねこさんも同じ事おっしゃてたようなv

> 書きモードの紙魚様!メイドになって家事しますから、どんどん続きを書いて下さい。
 ・元々が、亀の如き歩みの人間なので、たいした量を書けるわけでもないのですがこれを逃したら、次いつ書きモードに入れるかわかりませんので・・・(←これってつまり、書き手に向いてないという話では・・・
すみません~~~、今しばらく不義理致します。

> あ、裸エプロンは創作意欲をそぐので、「エマ」に出てくるような英国貴族御用達正当派メイド服でご奉仕させていただきます。
 ・わ~~い!メイドさんだ!!ヾ(=^▽^=)ノ
あの制服一度着てみたかったんです!(え?違います?勘違い??

> で、出てくる料理は韓国料理だったり、中華だったり、ベトナム料理だったり。ほんとはチャイナドレス着たいとこだけどサイズが・・・。
> 片付けは苦手なので、助手の茶目3号がやります。
 ・茶目さんはくろねこさんとこの自家培養ですね(笑)
韓国も中華もベトナムどれも大好きです~~~。毎日こんなお料理が食べれるなんて、ご家族の方がうらやますぃ~~~!
昔アオザイを作ってもらって持ってるんですけど、今着たら確実にホックが弾け飛びます( ̄ε ̄;|||

> はうっ!周様狙いのメイドだったんだけど、鳴海さんがいたんだった。ちっ!
 ・はい。執事鳴海がデスマス調で、厳しくメイドのイロハを教えてくれると思います♪
潔癖そうだと思ってアドさんちに修行に出した鳴海ですが、人をアゴで使うことを覚えて帰ってきました(泣
 よければ、そちらにも派遣いたしましょうか?(何気に押し付けようとする私。

 コメント&ご訪問、ありがとうございます。
わはは!、皆がお尻を叩きに来てたんですね?
私は今回は優しく叩きに行きましたが・・・
本編、辰村さんかなりの極道さんのようですね。Mさん宅にてのっていた
例のサイトで見ました色んな彫り物すごい今の彫師さんところって病院みたいでしたよね。
あああ、感想が・・・、ほんとホテルのプライベートソーンまでの描写が素敵で、目に浮かぶようでした。
離れの空間素敵ですよね。
そして・・・ああ、まだやられてなかった、一瞬喜んだ私・・・
でも、Rが待ってるの?
ウウーーーー続き楽しみにしています。
Rinkさま♪
 Rinkさま、こんばんは。ようこそです♪

> わはは!、皆がお尻を叩きに来てたんですね?
> 私は今回は優しく叩きに行きましたが・・・
 ・ありがとうございます☆
何せ、行動の遅い上、ぐうたらな人間ですのでみなさまの叱咤激励なくしてはナメクジのように熔けてしまいそうです(笑)

> 本編、辰村さんかなりの極道さんのようですね。Mさん宅にてのっていた
> 例のサイトで見ました色んな彫り物すごい今の彫師さんところって病院みたいでしたよね。
 ・本当に清潔な感じで、なんかもうアートビジネスって感じですよね。
少し前に読んだ本に丁度、彫師の男が出てきてたんですが、昔の陰鬱なイメージのままであのサイトのお部屋とは全くの別世界でした。

> あああ、感想が・・・、ほんとホテルのプライベートソーンまでの描写が素敵で、目に浮かぶようでした。
> 離れの空間素敵ですよね。
 ・楽しんでいただけたみたいで、嬉しいです~。
この部屋にお泊りのシーンとか書いてみたいなあ・・・

> そして・・・ああ、まだやられてなかった、一瞬喜んだ私・・・
> でも、Rが待ってるの?
> ウウーーーー続き楽しみにしています。 
 ・すみませーんm(_ _)m
このシーンでRを書くと(辰村が)えらいことになりそうなので、Rはこのあとのシーンまで持ち越しです。後何話だろう?想像もつかない・・・(汗
でもでも、そのうちRに行き着くのは確かですので!

 「ファミリーバランス」の方にもお越しいただきありがとうございます!
 コメント&ご訪問、感謝です。

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