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紙魚

Author:紙魚
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Category: 翠滴 3 (全131話)

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翠滴 3 傀儡  19  (76)

 自分を睨み下ろす容赦のない断罪の視線に、享一は苦悶に顔をゆがめた。
 周を裏切ってまで選んだ男の命乞いに、のこのこやってきた厚顔ぶりに加えて、与えられた接吻けに簡単に酔ってしまった。酷く薄っぺらで、矮小な自分が恥ずかしくて仕方がない。
 消え入りたい衝動に駆られソファの上を後ずさった。その腕を掴まれ、全身が脅えたようにびくりと跳ねた。
 
 「放してくれ。周を疑ってたわけじゃない、本当だ。でも、周の言ったとおり、ここへは瀬尾の命乞いに来た」
 もしかしたら、自分がピッキングの被害に遭っていなかったら、自分はここへは来ていなかったかもしれない。瀬尾の事故も、ピッキング被害も、自分はどこか、対岸の火事のように思っていた。自分が同じ目にあって、自分や和輝の死を連想したからこそここを、周の許を訪れたのだ。しかも純粋な気持ちからだけではく、命乞いを周に会う口実にしていなかったか?
 自分の薄情さと、下劣な計算高さに反吐が出そうになる。

 「瀬尾に頼まれたのか?」首を横に振る。
 「違う。瀬尾は今、バンクーバーで俺がここにきていることは知らない。」
 「奴がバンクーバーなのは知っている」
 享一の目が驚きで大きくなる。

 「俺が手を貸さなければ、どうするつもりだ?海外に跳んであの男と一生、身を潜めて生きていくつもりか?」
 正直、そこまでは考えていなかった。
 一生という言葉の重みに、己の覚悟の軽さを知る。
 「俺達の情報網を甘く見るなよ、享一。瀬尾の動きなんぞ、奴等だってとっくに把握している。行くゆくは、バンクーバーを拠点に高飛びして姿をくらます算段なんだろうが、世界中に網を張れる連中だ。瀬尾が逃げおおせる確率は、万にひとつもないと思え」

 享一の知らない周が顔を覗かせる。いや、かつてN・Aトラストを解体して縮小し、国の根幹企業であるNKホールディングスを買収に持ち込んだ周には、企業家以外の別の顔があることは分かっていた。これまで、周はその顔をひたに隠し、決して享一には見せることはなかった。
その闇の顔がいま、氷の如き冷たさを以って自分に向けられていた。

 どこに逃げても同じ・・・・・空き巣というよりは、凶悪な強盗に荒されたといったほうがいい自分のアパートを思いだし、死臭のする恐怖心が蘇る。
 あの場所に欠けていたものがあるとすれば、それは自分達の死体だ。 

 享一はソファから降りてラグを避け、白い石の床に自らの額をすり付けた。
 土下座する享一を周は方膝を立てて座ったソファの上から暗い眼で見下ろす。 

 「自分が虫のいいのは、分かってる。こんな事を周に頼むのは筋違いだって、わかってる。けど、お願いだ。瀬尾を助けたいんだ、力を貸してくれ。頼む・・・」
 床についた頭を更に擦り付ける。
 「瀬尾には和輝がいる。もし・・・・もし和輝に何かあったら。俺は、・・・おれは」
 小刻みに震える首の後ろが露になり、所有の刻印であるかのような鬱血痕が周の目に曝される。下げた顔から涙が床に落ち、白い石の上で四方に飛び散った。
 一見いじらしいその姿に、冷酷で残虐な気持ちが芽吹き、周の胸を占拠し始める。
 自分以外の者のために落ちた涙など踏み躙ってやりたい衝動に駆られ、嫉妬の憤怒で乱れる息を大きく吐いた。
 
 「行けよ」
 短い言葉に享一の顔が上がった。涙に濡れる黒い瞳も、戦慄く唇も、業火となって燃え猛る嗜虐心を煽るだけだ。
 「今は、お前を見ていると滅茶苦茶にしたくなる。俺が平常心を保っている間に、ここから出て行ってくれ」
 「アマ・・・・」
 目の前に屈んだ周が乱暴に顎を掴み、享一の言葉を絶つ。


 「でないと、奴らより先にこの俺が、瀬尾 隆典に王手を掛けてやる」
 深みを増した翠の瞳に無慈悲で残忍な光が宿る。
 周のシャープに整った男らしい美貌が、背筋の凍るような凄みのある笑みを浮かべ、艶然と且つ冷酷に嗤った。



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翠滴 3―1 →

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 
 甘アマな展開でなくてガッカリ!という方、すみません<(_ _)>
 周さん、怖いですね~。自分で瀬尾っちの息の根を止めそうな勢いです。。
 週末でコメントを頂いてもコメレスが遅くなると思います。
 それでもかまわないという方、コメントご指摘お待ちしております。
  
 
                     
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Comments

周さんかっこいい♪
いやーーここで甘あまになるのは、あまりに陳腐すぎて、さすが紙魚さん、鬼畜ーーと喜んでいました。
この二人の関係がどこに向っているにしろ、いままでの享一の行動からすると、周さんすぐに許すってわけにはいかないでしょうね。
ここは、享一の覚悟をみたいところですね。
続き続き~~~←お約束のように毎回催促する。
はぁあああああ、ため息
そうか! こう来るか! こわいよ~周さん~。
ああ、Mさんが喜んでる♪

ビビりまくっている享一さんに、冷たいこと冷たいこと!
た、確かにカッコよくって…ちびりそうです・・・。

あわわっわわわわ~~~~~。
元の鞘にはなかなか・・・
享一が瀬尾を庇えば庇うほど、周の心が冷酷さを増してってますね。
享一お仕置きされちゃえ~!(心の叫びです)
う~ん、どこもかしこも瀬尾のつけた情痕がぁ。
享一ここで尻尾を巻いちゃうの?根性見せるの?
紙魚様、ずっと読み逃げでごめんなさい。

周様、嫉妬の業火でボウボウです!
「10ボウボウ」で「1メラメラ」という単位を某漫才コンビが言ってましたが、はたして何メラメラまでいくか!

いやもう、享たんは流され侍だから滅茶苦茶にしたら良いと思います。
もともと草食系の人なのに、周様とか瀬尾っちみたいな超肉食系の餌食になってしまって、情にほだされてあっちにもこっちにも行けない状態で、精神が崩壊しなきゃいいけど・・・・。

久々に野獣の周様、見てみたい・・・♡
Route Mさま♪
 Route Mさま、ようこそですv

> 周さんかっこいい♪
 ・おお、そういってくれるのはMさんだけかも。これで周も、人気急降下ですねえ(笑)

> いやーーここで甘あまになるのは、あまりに陳腐すぎて、さすが紙魚さん、鬼畜ーーと喜んでいました。
 ・これだけのことやって、すぐに許されて甘アマ展開しちゃったらこの数ヶ月の離別の期間は一体なんだったんだ?ってことになっちゃいますもの。
ここで、享一は周という人間の別のコワイ一面を知ることになったと思います。

> ここは、享一の覚悟をみたいところですね。
 ・もういい加減に腹を括らないと、周も本当にキレると思います。

> 続き続き~~~←お約束のように毎回催促する。
 ・私は、櫂さんのその後の方が気になります。茶目さんはアドさん宅で修行中なのか・・いいなあ。ウチにも週一でいいから来てくれないかななあ。。それとも、鳴海あたりをアドさんちに修行に出すか・・・え?嫌がらせ?いやいや・・・

 コメント&ご訪問、ありがとうございます♪
Re: はぁあああああ、ため息
 アドさま、こんばんは。

> そうか! こう来るか! こわいよ~周さん~。
> ああ、Mさんが喜んでる♪
 ・この状況で喜んでくださるのは、やはり師匠(鬼畜のv)だけではないかと思います。

> ビビりまくっている享一さんに、冷たいこと冷たいこと!
> た、確かにカッコよくって…ちびりそうです・・・。
 ・あの、あのお・・・アドさん、ジワジワ後退ってません?
周さん、冷たいです。ブリザードのようです。やはり、甘い男ではなかったと享一も凍えながら骨身に沁みていると思います。 

> あわわっわわわわ~~~~~。
 ・おーーほっほほ!!←
 ところで、ウチの鳴海ですけどお好きではありませんか?(控えめに訊いてみたり・・

 ヤフーの方にメッセ入れましたので、よろしくお願いします。
 コメント&ご訪問、ありがとうございます。
Re: 元の鞘にはなかなか・・・
 Rinkさま、いらっしゃいませ~

> 享一が瀬尾を庇えば庇うほど、周の心が冷酷さを増してってますね。
> 享一お仕置きされちゃえ~!(心の叫びです)
 ・ププ・・反比例ですねえ。享一の一挙一動が、怒りの炎に油をガンガン注いでます。甘いお仕置きではなく、マジお仕置きです。BL的にこんな萌えのない内容でいいのか?

> う~ん、どこもかしこも瀬尾のつけた情痕がぁ。
 ・目に見えるしるしだけでなく、行動にまで瀬尾がぷんぷん匂って周さん大爆発です(笑)
> 享一ここで尻尾を巻いちゃうの?根性見せるの?
 ・どうするんでしょう~~(っていうか、私どうするんだ?

 コメント&ご訪問、ありがとうございます。
くろねこさま♪
 くろねこさま、ようこそです!

> 紙魚様、ずっと読み逃げでごめんなさい。
 こちらこそです。リアルでバタついていて、読み歩きも駆け足で小説の続きも手付かず・・・。UEKI-YAさんの圭吾くん第2弾、かわいいっす!!落ち着いたら、改めて再読しに伺います!

> 周様、嫉妬の業火でボウボウです!
> 「10ボウボウ」で「1メラメラ」という単位を某漫才コンビが言ってましたが、はたして何メラメラまでいくか!
 ・200メラメラくらい?(笑)怒りすぎて、享一にもあたってます(汗)周さん、なかなかに心の狭い奴でした・・・て、痛っ!(お前のせいだと言ってます。ごもっともです。ハイ

> いやもう、享たんは流され侍だから滅茶苦茶にしたら良いと思います。
 ・流され侍!!(笑)あの「チーズ~」の主人公の、ついフラフラと流されてしまうところが、めっちゃツボだったんですけど、まさか流され侍がウチにもいたとは・・・(爆
侍は侍でも、世界のサムライさまとはエライ違いです。

> もともと草食系の人なのに、周様とか瀬尾っちみたいな超肉食系の餌食になってしまって、情にほだされてあっちにもこっちにも行けない状態で、精神が崩壊しなきゃいいけど・・・・。
 ・器用な性格じゃないですので、そろそろ限界かと♪

> 久々に野獣の周様、見てみたい・・・♡
 ・正直、書きたいですけどもうちょっと、享たんには反省してもらいたいので野獣周はも少し先です。ああ、やっぱりアタシってキチクかなあ・・・♪

 コメント&ご訪問、ありがとうございます。
好きです、好きですとも
メッセのお返事書いてから伺ってしまいました。
なので、メッセには書きませんでしたが、鳴海さん大好きです。
できあがっている大人の男と、成長途中の半端な男が好きなのですが鳴海さんは、まさしくできあがっている男。
仕事をしながらも自分が一番。 控えめそうでいておいしとこ頂き!
なんで、紙魚さん分かったの~?
成長中のオトコに享一さんを入れていいものか?
享一さんも大好き~❤
Re: 好きです、好きですとも
アドさま、おはようございます。

 鳴海、好き?え、あんなに怖いのに??やった~~!
茶目さんの後釜にぜひ、アドさんの下で家事修行させてやってください。
完璧主義っぽいところがあるので、ちょっと鍛えれば完璧なハウスキーパーになれると思います♪

> 成長中のオトコに享一さんを入れていいものか?
> 享一さんも大好き~❤
 ・うーーん。成長できるか・・・というか、自分の殻を破れるか。
まだまだ課題の多い御仁です=3

 コメント2&ご訪問、ありがとうございます!!

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