01 ,2010
翠滴 ３ 傀儡 1８ （７５）
心臓が大きく脈打つ。同時に自分の世界を震わせる周の轟のような心音を感じている。
濡れた接吻けの音以外は耳に入ってきていないはずなのに、自分の内側で再生される眼前の男の心臓の爆音で、鼓膜を破られそうそうだ。
暴走する恋情を、いつものように殺す事ができない。
それならば、いっそ耳を劈き血液を沸騰させる心音の中で、自分を捕らえるこの手によって息の根を止められたい。甘美な死の連想はぞくりと官能の痺れを生み、享一の躰をひとつ震えさせた。
周の唇が離れ腕の中の享一を抱きしめたまま動かなくなる。耳元で艶めいた低い声に「痩せたな」と呟かれ、切なさに似た熱いものが込み上げる。厚手の上着が落とされ、床の上でぱさりと音がした。
不意にグイッと躰を引かれ、なぎ倒されるようにソファに押し倒された。息が詰まり無意識に起き上がろうとした肩をクッションに押し戻される。
詰まった息を整えながら呆然と見上げる目線の先で、自分に跨る周の冷静さを失わない蒼い業火を噴く翠の眼にぶつかり、熱に溶けかけた頭の芯が瞬時に醒めた。
「周･･･待っ････」
散々嬲られ、紅に濡れる唇を周に再び捕らえられた。
項に近付いた薄い唇が、吐息のかかる距離でぴたりと止まる。
微かに息を呑む音がし、その後すぐに「ギリッ」と歯軋りの音が聞こえ享一は息を呑んだ。一昨日の瀬尾との情交が蘇り一気に血の気が引く。
訊かずとも容易に周の瞳に映る情交の名残を想像する事が出来た。
ここのところ偏食を繰り返したせいか、一度着いた傷や痣が治りにくい。普段ならＹシャツの襟の下に消える鬱血痕もセーターでは隠し様がなかった。
少し間が開いて、セーターの裾から周の手が忍び込んできた。
「痩せた」 一言いったきり、無言になった周の検分するような眼に曝され、いたたまれなくなった。
脇腹や胸に触れる周の指先が皮膚を切り裂き、奥に隠れる享一の 『裏切り』 を暴き出してゆく。享一は目線を逸らせ、隠微に身を竦めた。
ズボンのウエストに掛かった周の手を、享一は咄嗟に掴んだ。
周の眼に、問い質すような厳しい表情が浮かぶ。
いつまでも自分を憚り離れない享一の手に焦れた瞳は、徐々に眇められ硬さを増し享一を睨んだ。
「周、駄目だ。やめ……」
周に猥らに腫れる瀬尾との情交の跡など、絶対に見せたくはない。
その癖、冷ややかに自分を見下ろす翠の瞳を恋しいと思う。自分の全てが永邨 周を求めている。
だが自分には、もう周に触れてもらう資格がない。
「なるほど････これは瀬尾から俺への意趣返しというわけか？」
周の口の端が皮肉気に上がり、左の項の一点を指先で強く押された。
醒めた頭と裏腹な快感が、めり込んだ指の先から下腹に向けて走り抜ける。
「ち、違う！」
「何が違う？ ちゃんと、お前のイイところにマーキングがしてあるぞ」
いきなり周の片足が腿の下に差し込まれ、勢いをつけて脚が開かれた。腰に激しい疼痛が走り、短い悲鳴を上げた上半身が跳ね上がる。
癒えはじめた傷が再び裂ける痛みに、呻き声を上げ息も絶えだえに全身を強張らせた。
一瞬、翠の瞳が訝しむように享一に向けられ、次第に猛々しいものへと変貌する。
周の手がジーンズの前立てに掛かり、頑丈なボタンが弾け飛んだ。
「嫌だ！ アマ･････や･･･」
もともと享一の痩せて隙間だらけになったウエストに周の手が強引に差し込まれ、未だ腫れの引かない後孔を容赦なく弄られた。
悲鳴をあげ、仰け反った躰を周が押さえつける。
「享一、これはどういうことだ？」
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□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
Ｒな展開を期待していただいた方、申し訳ありません(_ _(--;(_ _(--; ﾍﾟｺﾍﾟｺ
もう、３～４話後になりそうです。そして今回も短いです･･･例の如く長くなりまして
チョッキンと切りました(汗･･･)。明日のこの時間続きをＵＰいたします。
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ある意味充分Ｒな展開ですね。
でもまあ、ちゃんと見てもらったほうが。
甘あまでなくなりそうな二人の関係がツボ。
やっぱり紙魚さん鬼畜だーーーー(嬉）