01 ,2010
翠滴 3 傀儡 9 (66)
自分の中に瀬尾がいる。
その事を、怖いくらいリアルに感じた。
瀬尾の黒さの際立つ瞳孔が、享一の喘ぎも、表情も、微かな身じろぎ一つもつぶさに観察する冷静さで見下ろしている。その癖、打ち込まれた楔は熱い熱を放ち、受け入れる躰の反応を愉しむ動きで肉叢を掻きまわした。
声を上げる度、瀬尾が自分の中で膨張する気がした。
瀬尾の陰茎が肉叢を押し広げ、怒張を突き入れられた刹那、骨も筋肉も血液さえも凍りつきショックと痛みで息が止まった。
視覚と脳天を突き抜ける痛みの両方に犯されていた。
震えながらも、楔が埋め込まれてゆく結合部分から目を放せないでいる享一に、見下ろしている瀬尾の目が笑う。
瀬尾の性器が自分の中に侵入してくるビジョンと痛みを伴う挿入は、より明確に自分の中にいる男が誰であるかを思い知らしめる。享一を知り尽くした瀬尾の情欲と、すっかり瀬尾との情交に慣れ切った粘膜の奥が互いの欲望で搦み合った刹那、衝撃は激しい淫欲と官能に姿を変えた。
両腕を拘束され自由を奪われた躰は、瀬尾の愛撫を何倍にも増幅させ、過ぎた快感に余裕の無い声を上げた。爛れた熱が体内を駆け巡り、忙しなく浅い呼吸を繰り返す鼻腔に、瀬尾の躰に残ったプールオムの香りに鉄臭い匂いが混じって流れ込んできた。
背徳感とか自意識のようなものが、自分から殺ぎ落されていく。
鉄臭い血の匂いすら興奮を呼んだ。
瀬尾の舌や唇はのけ反った喉を這い、手指は硬く尖った胸の突起を弄ぶ。
享一は痛いほどに勃起した劣情に触れてもらえない苦しさに身悶えながら喘いだ。
もう、我を張ることも繕う事も不可能だ。
「あ…あ、触って、触って…せお。ああ…」
はしたなく懇願する言葉を口に上らせる。
享一の劣情を獣の狡猾さで見下ろす瀬尾が野獣のように咽を鳴らして嗤った。
「キョウ、もっと。もっと、沢山強請れよ」
やっと、与えられたペニスへの愛撫に欲望が頭の奥でジンと痺れ世界がぶれる。
同時に奥まで突上げられ、全身で喜悦の声を上げた。
暗闇を頭からまっ逆さまに落ちていく。
足元に散りばめられていたはずの都会の光の屑が天上から落ちてきて、無意識に頭を庇い目を覆う。何度も突き上げられた反動で拘束が緩み腕が自由になっていた。
微かな瞳孔の動きから、情交に熱中するふりをする瀬尾が隠微に自分を試しているのが手に取るようにわかった。
それほどに自分もこの男のことを知っているのに。
自分達の関係は一体どこで狂ってしまったのだろう。
泣きたくなるような思いを抑えて、自由になった手を瀬尾の頬に伸ばすと、まるで感電したみたいにピクリと瀬尾の動きが止まる。瀬尾の輪郭を滴る汗が掌を濡らした。真っ直ぐに見下ろすアーモンド形の瀬尾の黒い虹彩に、何とか頬笑みを浮かべようとする自分が映った。
「キョウ・・・・?」
答える代わりに頬に触れた手を首の後ろに回し、もう片方の手も瀬尾のぬめ皮の滑らかさを持つ背中に回して目を閉じた。
享一の覚悟が通じたのか、喰い尽くさんばかりに唇に噛み付かれ、激しく突き上げられ声を上げた。必死でしがみつく掌が嘗ての親友の背中で滑り、腕の中で躍動する汗に濡れた体を抱き直す。躰を引き裂かれる痛みを凌駕する快感はその痛みすらも道連れにして、隙間なく躰に纏わり衝いてきた。
いつしか、頭の中は快感と愉悦を追いかけることしか考えておらず、節操なく堕ちるところまで堕ちた自分を嘲りながらも興奮した。
「あ、、あぁ・・・・・達く、イ・・・く、瀬尾・・・」
「キョウ、キョウ…」
不意に訪れた尿道を昇りくる重ったるい熱の塊に全身が硬直する。自分を呼ぶ瀬尾の声を聞きながら意識が遠のいた。
今までちかちかと瞬きながら自分を包んでいた光の渦が収束し、暗闇の中でひらりと舞いだした。無数の小さな光が漂いながら降ってきて、足のその下へと落ちていった。
目の前を過ぎて落ちてゆく光の粒に、手のひらで消えた花びらを思い起こす。
もう、その光を手のひらに受け止めようとは思わなかった。
自分には、もうその資格はない。
どこで狂ってしまったんだろう?
問いかけても、自分の願望が生み出した、ただの幻なのか光の向こうに佇む男は何も答えてはくれない。責める事も詰る言葉さえも発せず、ただ月夜の海に眠る宝石のように静かな視線を寄越し、享一を見ている。
酷く詰られたいと思った。そうでないなら―――
消えていこうとする愛しい翠の瞳に、精一杯笑いかけようとする享一の瞳から涙が零れた。
―――桜だ、享一。
幻が消える間際、低く艶やかな声が呟くのを聞いたような気がした。
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目次を見る
翠滴 1―1 →
翠滴 2―1 →
翠滴 3―1 →
その事を、怖いくらいリアルに感じた。
瀬尾の黒さの際立つ瞳孔が、享一の喘ぎも、表情も、微かな身じろぎ一つもつぶさに観察する冷静さで見下ろしている。その癖、打ち込まれた楔は熱い熱を放ち、受け入れる躰の反応を愉しむ動きで肉叢を掻きまわした。
声を上げる度、瀬尾が自分の中で膨張する気がした。
瀬尾の陰茎が肉叢を押し広げ、怒張を突き入れられた刹那、骨も筋肉も血液さえも凍りつきショックと痛みで息が止まった。
視覚と脳天を突き抜ける痛みの両方に犯されていた。
震えながらも、楔が埋め込まれてゆく結合部分から目を放せないでいる享一に、見下ろしている瀬尾の目が笑う。
瀬尾の性器が自分の中に侵入してくるビジョンと痛みを伴う挿入は、より明確に自分の中にいる男が誰であるかを思い知らしめる。享一を知り尽くした瀬尾の情欲と、すっかり瀬尾との情交に慣れ切った粘膜の奥が互いの欲望で搦み合った刹那、衝撃は激しい淫欲と官能に姿を変えた。
両腕を拘束され自由を奪われた躰は、瀬尾の愛撫を何倍にも増幅させ、過ぎた快感に余裕の無い声を上げた。爛れた熱が体内を駆け巡り、忙しなく浅い呼吸を繰り返す鼻腔に、瀬尾の躰に残ったプールオムの香りに鉄臭い匂いが混じって流れ込んできた。
背徳感とか自意識のようなものが、自分から殺ぎ落されていく。
鉄臭い血の匂いすら興奮を呼んだ。
瀬尾の舌や唇はのけ反った喉を這い、手指は硬く尖った胸の突起を弄ぶ。
享一は痛いほどに勃起した劣情に触れてもらえない苦しさに身悶えながら喘いだ。
もう、我を張ることも繕う事も不可能だ。
「あ…あ、触って、触って…せお。ああ…」
はしたなく懇願する言葉を口に上らせる。
享一の劣情を獣の狡猾さで見下ろす瀬尾が野獣のように咽を鳴らして嗤った。
「キョウ、もっと。もっと、沢山強請れよ」
やっと、与えられたペニスへの愛撫に欲望が頭の奥でジンと痺れ世界がぶれる。
同時に奥まで突上げられ、全身で喜悦の声を上げた。
暗闇を頭からまっ逆さまに落ちていく。
足元に散りばめられていたはずの都会の光の屑が天上から落ちてきて、無意識に頭を庇い目を覆う。何度も突き上げられた反動で拘束が緩み腕が自由になっていた。
微かな瞳孔の動きから、情交に熱中するふりをする瀬尾が隠微に自分を試しているのが手に取るようにわかった。
それほどに自分もこの男のことを知っているのに。
自分達の関係は一体どこで狂ってしまったのだろう。
泣きたくなるような思いを抑えて、自由になった手を瀬尾の頬に伸ばすと、まるで感電したみたいにピクリと瀬尾の動きが止まる。瀬尾の輪郭を滴る汗が掌を濡らした。真っ直ぐに見下ろすアーモンド形の瀬尾の黒い虹彩に、何とか頬笑みを浮かべようとする自分が映った。
「キョウ・・・・?」
答える代わりに頬に触れた手を首の後ろに回し、もう片方の手も瀬尾のぬめ皮の滑らかさを持つ背中に回して目を閉じた。
享一の覚悟が通じたのか、喰い尽くさんばかりに唇に噛み付かれ、激しく突き上げられ声を上げた。必死でしがみつく掌が嘗ての親友の背中で滑り、腕の中で躍動する汗に濡れた体を抱き直す。躰を引き裂かれる痛みを凌駕する快感はその痛みすらも道連れにして、隙間なく躰に纏わり衝いてきた。
いつしか、頭の中は快感と愉悦を追いかけることしか考えておらず、節操なく堕ちるところまで堕ちた自分を嘲りながらも興奮した。
「あ、、あぁ・・・・・達く、イ・・・く、瀬尾・・・」
「キョウ、キョウ…」
不意に訪れた尿道を昇りくる重ったるい熱の塊に全身が硬直する。自分を呼ぶ瀬尾の声を聞きながら意識が遠のいた。
今までちかちかと瞬きながら自分を包んでいた光の渦が収束し、暗闇の中でひらりと舞いだした。無数の小さな光が漂いながら降ってきて、足のその下へと落ちていった。
目の前を過ぎて落ちてゆく光の粒に、手のひらで消えた花びらを思い起こす。
もう、その光を手のひらに受け止めようとは思わなかった。
自分には、もうその資格はない。
どこで狂ってしまったんだろう?
問いかけても、自分の願望が生み出した、ただの幻なのか光の向こうに佇む男は何も答えてはくれない。責める事も詰る言葉さえも発せず、ただ月夜の海に眠る宝石のように静かな視線を寄越し、享一を見ている。
酷く詰られたいと思った。そうでないなら―――
消えていこうとする愛しい翠の瞳に、精一杯笑いかけようとする享一の瞳から涙が零れた。
―――桜だ、享一。
幻が消える間際、低く艶やかな声が呟くのを聞いたような気がした。
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□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
あけましておめでとうございます。
長のお休み、本当にすみませんでした。
2010年の一発目がこの内容。もう少し幸せ気分になれる内容にしたかったですが、仕方ない・・・(TmT)
みなさま、本年もよろしくお願いいたします。
■拍手ポチ、コメント、村ポチと・・本当に、いつもありがとうございます。
ほんの拙文しか書けない私ですがですが、書いていく励みになります。。
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長のお休み、本当にすみませんでした。
2010年の一発目がこの内容。もう少し幸せ気分になれる内容にしたかったですが、仕方ない・・・(TmT)
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首を長~くして待ってました、連載再開。
新年早々、享ちゃんの苦しく切ない気持ちに涙しました。
三人が三人とも苦しい展開って、どうなんでしょう…。(紙魚さまのサド!)
でも、周ファンでありながら、実は隠れ瀬尾ファンのchikoには、堪らんですっっ!萌え~☆このまま長~くいっちゃって下さい。(笑い)