11 ,2009
翠滴 3 breath 9 (56)
■性的要素があります、年齢に満たない方または苦手な方はお読みにならないで下さい。
いきなり消え去った快楽に、一瞬何が起こったのかわからず混乱した享一の躰が、ひとつぶるりと震えた。柔らかなカーヴを描く瞳の縁を朱に染めた瞳が、自分を穿っていた熱い質量を探して彷徨い、問いかける眼差しを向けてきた。
唖然と瞬きする自覚の無い顔があどけなく思え、甘さと切なさと、そして憎たらしさが渾然となって感情の出入り口に支える。
「あ・・・な?瀬尾?」
眼差しにも問いかけにも答えず、紅く染まった胸の尖りを舌先で転がしてやると、安堵の熱い吐息が小さな喘ぎに絡まって耳殻を掠めた。
許せない。
ただひとつの思いが胸の支えを突き破る。
やっと、こうして手に入れたからには、自分から離れていくことは、許さない。
柔らかい項に顎を埋めるとすっかり馴染んだ躰の素直な反応に、薄い皮膚の下の脈が少し早めのリズムを打つ。
この2ヶ月、徳山の自殺という現実に何度も押し潰されそうになった。
自分を見失いそうになる度、享一の身体にしがみ付き貪り、自分の息吹を『生』を確かめた。再会した頃に比べて随分と痩せたという印象を受けながら、気遣ってやるゆとりもないくらいに、享一に依存し食い荒らした。
享一を手に入れた二ヶ月前の夜。
あの夜、クライアントの父親である徳山氏の拳銃自殺を知らされ、自分の中の柔らかな部分がごそっと抜け落ちた気がした。その時になって初めて、自分が徳山に対して父親に対する感情に似たものを抱いていたことに気が付いた。徳山に対し深く同調しすぎていたのかもしれない。
自殺という徳山の死に悲しみ狽え、その同じ感情の先で、殺伐とした『死』に恐怖し『生』の証を求めた。
摂理に反する徳山の死には、自分までも冷たく暗い死の深淵に引き込まれていきそうな怖さがあった。
冬の深夜にひとり、徳山の死を抱え込むのは苦しすぎて耐えられない。
震える手で、徳山の死を知らせる携帯を切った自分の前に享一がいた。
その少し前、自分と寝ればいいと、自棄を起こした享一を押し止めたばかりだった。その癖、享一の無謀な挑発を逆手にとって、自分が焦がれ大切に思っていた筈のその躰に押し入った。
胸に開いた喪失感を人の体温で埋めたくて人肌の温もりを感じていたくて、一旦は止めた腕の狡さを承知で享一に伸ばした。
こんな形で手に入れるつもりではなかったと後悔しながらも、抱けば素直に蜜を零し湿り気を帯びた声を必死で押し殺す享一の姿に、いとも簡単に脳内が焼き切れる。
強引な手口も使い、躰先行で手に入れたが、大切にするつもりだった。
そして、ほんの少しずつでも自分の方に向いてくれればそれでいいと思っていた。
あれから数えられないくらい享一を抱いた。今こうして抱いていても、初恋のようなときめきを伴い胸に切なく甦るのは、眠っている享一に初めて接吻けたあの夜の、唇の柔らかさだ。
どれだけ抱いても、一番本質的なところで享一は添うてはくれない。
心が震えない。そんなことは、とうにわかっている。
その享一が、いま自分の下で欲情も露わに浅い息を繰り返しながら震え仰臥している。
この事実だけで、白熱した躰の芯がスパークし暴走しそうになる。
「心は震えなくても、こっちは物欲しそうにヒクついているぜ」
とばくちで止めていた牡を、勢いよく奥まで突き入れる。享一のしなやかな背中が仰け反り、形のよい艶めいた唇から濡れた嬌声を迸らせた。口ではどう言おうが、熱い肉襞は貪欲に快感を欲しがり瀬尾を引き込もうと蠢いている。
「・・あ!、イヤ・・やぁ・・・・・ぁ!」
逸る蠢きを慰めるように申しわけ程度に擦ってやり、再びあっさり引き抜いてやった。
脚を大きく開いたまま仰け反り、見開かれた欲情の瞳から涙を零し、逃げ去った快感に熱のやり場を失った全身が硬直したまま戦慄いている。
開いた腿の付け根に舌を這わせると、完全に起立する熱帯の花の蕾を思わせる雄蕊から、欲情の証である透明な蜜が細い糸を引いて下腹に滴り落ちた。
「はぁ・・・・うっ・・・く」
腰を蠢かせ浅ましく熱を強請ろうとする躰を、両腕で顔を覆い僅かに残ったなけなしの理性で耐えている。両手首を取ってシーツに貼り付けると、びっしりと汗の浮かんだ屈辱に苦悶する顔を横に背けた。
その顎を掴んで強制的にこちらを向かせ唇を貪ってやる。
朱に染まる全身に汗が浮かび、シーツの襞を掻き集め握る両手の甲が小刻みに震えている。
瀬尾は、劣情に煽られ官能がうねる深淵の際で、必死に理性にしがみ付こうと葛藤し、悶える享一の姿に薄く嗤うと、腿に掛けた手をさらに押し開いた。切なそうにビクビクと痙攣する欲望の輪郭を、追いつめるようにゆっくりと舌先を使って嬲ってゆく。
享一の身体が跳ね上がったところを押さえ付け、一気に貫いた。
ひときわ大きな嬌声が上がり、その口を唇で塞ぐ。享一の躰が瀬尾を押し返そうと苦しげにもがいた。強く数回突いてやり、極まったところでまた引き抜く。
「ア・・・・ァァッ!!」
泣き声に似た叫び声が上がり、その後小刻みに半開きになった唇から戦慄く息が洩れた。
混乱を極めて逼迫した顔が、慈悲を求めるように懇願の表情を向けてくる。
「そそるな、その顔」
言葉を失い慄える続ける唇を奪い、舌を呑み込まんばかりに吸い上げてやる。
その間も腿の内側や敏感な場所に掌を這わせながらも、一番愛撫を欲しがる場所には全く触れてやらない。
「ウッ、ンウゥーー!! 瀬・・尾・・・・・ヤ・・・ァ、ア」
享一の瞳から涙が零れ出した。
決定打が貰えず放置された躰は淫らに震え、広げた足の間で腰が誘うように揺れている。思考もままならず漆黒の瞳からは理性が消え、代わりに熱っぽい淫欲が漂う。
気高くて淫乱で、清楚で蜜のように甘い。それが、憎らしい。
高校の時から大事に守ってきたのに、平気で娼夫の貌をしてみせるお前が許せない。
「どうしてほしい?キョウ。素直に言えばその通りにしてやる」
耳元に顔を近づけ、呼び水のように官能を誘発する低い声で甘く囁いてやる。
「い・・挿・・・れて、瀬尾。抜かないでくれ、達かせて・・・・」
心を明け渡すことを拒否し続けた男に組み敷かれ、自分の吐いた言葉に打ちのめされる享一を最高に愛おしく思った。
渇欲に震える膝を更に割り広げ、猛り立った欲望を宛がうと、享一は静かに瞳を閉じる。乱暴に切り裂く勢いで貫くと、ぞくりと本能を痺れさせる断末魔の声をあげ、閉じた瞳から一粒の涙を零した。
たとえ壊してしまうことになったとしても、俺は享一を解放出来ないだろう。
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唖然と瞬きする自覚の無い顔があどけなく思え、甘さと切なさと、そして憎たらしさが渾然となって感情の出入り口に支える。
「あ・・・な?瀬尾?」
眼差しにも問いかけにも答えず、紅く染まった胸の尖りを舌先で転がしてやると、安堵の熱い吐息が小さな喘ぎに絡まって耳殻を掠めた。
許せない。
ただひとつの思いが胸の支えを突き破る。
やっと、こうして手に入れたからには、自分から離れていくことは、許さない。
柔らかい項に顎を埋めるとすっかり馴染んだ躰の素直な反応に、薄い皮膚の下の脈が少し早めのリズムを打つ。
この2ヶ月、徳山の自殺という現実に何度も押し潰されそうになった。
自分を見失いそうになる度、享一の身体にしがみ付き貪り、自分の息吹を『生』を確かめた。再会した頃に比べて随分と痩せたという印象を受けながら、気遣ってやるゆとりもないくらいに、享一に依存し食い荒らした。
享一を手に入れた二ヶ月前の夜。
あの夜、クライアントの父親である徳山氏の拳銃自殺を知らされ、自分の中の柔らかな部分がごそっと抜け落ちた気がした。その時になって初めて、自分が徳山に対して父親に対する感情に似たものを抱いていたことに気が付いた。徳山に対し深く同調しすぎていたのかもしれない。
自殺という徳山の死に悲しみ狽え、その同じ感情の先で、殺伐とした『死』に恐怖し『生』の証を求めた。
摂理に反する徳山の死には、自分までも冷たく暗い死の深淵に引き込まれていきそうな怖さがあった。
冬の深夜にひとり、徳山の死を抱え込むのは苦しすぎて耐えられない。
震える手で、徳山の死を知らせる携帯を切った自分の前に享一がいた。
その少し前、自分と寝ればいいと、自棄を起こした享一を押し止めたばかりだった。その癖、享一の無謀な挑発を逆手にとって、自分が焦がれ大切に思っていた筈のその躰に押し入った。
胸に開いた喪失感を人の体温で埋めたくて人肌の温もりを感じていたくて、一旦は止めた腕の狡さを承知で享一に伸ばした。
こんな形で手に入れるつもりではなかったと後悔しながらも、抱けば素直に蜜を零し湿り気を帯びた声を必死で押し殺す享一の姿に、いとも簡単に脳内が焼き切れる。
強引な手口も使い、躰先行で手に入れたが、大切にするつもりだった。
そして、ほんの少しずつでも自分の方に向いてくれればそれでいいと思っていた。
あれから数えられないくらい享一を抱いた。今こうして抱いていても、初恋のようなときめきを伴い胸に切なく甦るのは、眠っている享一に初めて接吻けたあの夜の、唇の柔らかさだ。
どれだけ抱いても、一番本質的なところで享一は添うてはくれない。
心が震えない。そんなことは、とうにわかっている。
その享一が、いま自分の下で欲情も露わに浅い息を繰り返しながら震え仰臥している。
この事実だけで、白熱した躰の芯がスパークし暴走しそうになる。
「心は震えなくても、こっちは物欲しそうにヒクついているぜ」
とばくちで止めていた牡を、勢いよく奥まで突き入れる。享一のしなやかな背中が仰け反り、形のよい艶めいた唇から濡れた嬌声を迸らせた。口ではどう言おうが、熱い肉襞は貪欲に快感を欲しがり瀬尾を引き込もうと蠢いている。
「・・あ!、イヤ・・やぁ・・・・・ぁ!」
逸る蠢きを慰めるように申しわけ程度に擦ってやり、再びあっさり引き抜いてやった。
脚を大きく開いたまま仰け反り、見開かれた欲情の瞳から涙を零し、逃げ去った快感に熱のやり場を失った全身が硬直したまま戦慄いている。
開いた腿の付け根に舌を這わせると、完全に起立する熱帯の花の蕾を思わせる雄蕊から、欲情の証である透明な蜜が細い糸を引いて下腹に滴り落ちた。
「はぁ・・・・うっ・・・く」
腰を蠢かせ浅ましく熱を強請ろうとする躰を、両腕で顔を覆い僅かに残ったなけなしの理性で耐えている。両手首を取ってシーツに貼り付けると、びっしりと汗の浮かんだ屈辱に苦悶する顔を横に背けた。
その顎を掴んで強制的にこちらを向かせ唇を貪ってやる。
朱に染まる全身に汗が浮かび、シーツの襞を掻き集め握る両手の甲が小刻みに震えている。
瀬尾は、劣情に煽られ官能がうねる深淵の際で、必死に理性にしがみ付こうと葛藤し、悶える享一の姿に薄く嗤うと、腿に掛けた手をさらに押し開いた。切なそうにビクビクと痙攣する欲望の輪郭を、追いつめるようにゆっくりと舌先を使って嬲ってゆく。
享一の身体が跳ね上がったところを押さえ付け、一気に貫いた。
ひときわ大きな嬌声が上がり、その口を唇で塞ぐ。享一の躰が瀬尾を押し返そうと苦しげにもがいた。強く数回突いてやり、極まったところでまた引き抜く。
「ア・・・・ァァッ!!」
泣き声に似た叫び声が上がり、その後小刻みに半開きになった唇から戦慄く息が洩れた。
混乱を極めて逼迫した顔が、慈悲を求めるように懇願の表情を向けてくる。
「そそるな、その顔」
言葉を失い慄える続ける唇を奪い、舌を呑み込まんばかりに吸い上げてやる。
その間も腿の内側や敏感な場所に掌を這わせながらも、一番愛撫を欲しがる場所には全く触れてやらない。
「ウッ、ンウゥーー!! 瀬・・尾・・・・・ヤ・・・ァ、ア」
享一の瞳から涙が零れ出した。
決定打が貰えず放置された躰は淫らに震え、広げた足の間で腰が誘うように揺れている。思考もままならず漆黒の瞳からは理性が消え、代わりに熱っぽい淫欲が漂う。
気高くて淫乱で、清楚で蜜のように甘い。それが、憎らしい。
高校の時から大事に守ってきたのに、平気で娼夫の貌をしてみせるお前が許せない。
「どうしてほしい?キョウ。素直に言えばその通りにしてやる」
耳元に顔を近づけ、呼び水のように官能を誘発する低い声で甘く囁いてやる。
「い・・挿・・・れて、瀬尾。抜かないでくれ、達かせて・・・・」
心を明け渡すことを拒否し続けた男に組み敷かれ、自分の吐いた言葉に打ちのめされる享一を最高に愛おしく思った。
渇欲に震える膝を更に割り広げ、猛り立った欲望を宛がうと、享一は静かに瞳を閉じる。乱暴に切り裂く勢いで貫くと、ぞくりと本能を痺れさせる断末魔の声をあげ、閉じた瞳から一粒の涙を零した。
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そしてまた週末が・・・・3連休。嗚呼・・・
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> 休みの日って、家族がいて更新しにくいですよね。
・そうなんですよね。。あらかじめ記事を書いておいて、予約投稿できれば問題はないんですけど・・・それが出来れば・・・ネ(笑)←
> 無理はなさらず、続けてください。続けて読んでいくのに、無理はない更新速度だと思います。楽しんで読ませてもらっています。紙魚さんも、楽しんで書いてくださいませ。
・ありがとうございます~~。そう言っていただけると、本当に救われます。・゚゚・(>_<;)・゚゚・。
> 突っ走ってしまう瀬尾と、・・・・
・ひ~~っ!単に書き手のモラルが低いせいだと思います。
”都合よく”とか”スン止め”が出来ない性質なんです。困った人です(笑)
> レイプさながらのシーンが、色っぽい。
・Mさんから色っぽいって言われると、太鼓判頂いたみたいで嬉しいです♪
コメント&ご訪問、ありがとうございます!