10 ,2009
ラヴァーズ 5
頭が力なく左右にふれ、自分の意思とは関係なく涙が頬を伝い落ちた。
涙に潤んだ顔を見られたくなくて、床に視線を落とす。
圭太さんは、本当に俺が他の誰かに心を許したと思っているんだろうか 。
一体、自分の何が圭太にそう思わせたのか。圭太に疑念を持たせてしまった自分が情けなくて、腹立たしさと信じてもらえない悲しさや切なさに、引きもきらず涙が溢れた。
決壊した涙腺をどうすることも出来ずに、ただ突っ立て床の一点を見詰めていると、音もなく明かりが消えた。月光に照らされた床に、窓際にいる自分の短い影が落ちる。下を向く視界に、伊原の送ってきた薔薇の花束と圭太の足が入ってきた。
床の上に薔薇の花弁がはらはらと落ちる。
涙の途切れた視界の隅で真紅の薔薇の束がスッと上にあがる。花束で叩かれると思って咄嗟に目を閉じた。
庇うように背けた顎を強い力で掴まれ上を向かされる。
「圭太さ・・・? ぅ、んっ」
唇に歯を立てられ、舌が抜けるほどきつく吸い上げられ。全てを食い尽くされてしまいそうな激しいキスに本能が慄いた。反射的に逃げようとした躰を花束を持った手に背後から戒められ、心も体も身動きが取れなくなる。
「朽ちかけの濃厚な薔薇の匂いがする」
圭太が花束に鼻を近づけ、少し顔を顰めた後、壮絶な色香を放つ嗤いを浮かべた。
「来いよ」
頭の芯が霞み、力が抜けたところで大きな手に腕をとられ、折れ戸で仕切られた隣室に引っ張っていかれた。振り返った象牙色の大理石の床に、真紅の花びらの軌跡が残る。
大きな天窓から月の光が落ちて、白いリネンのベッドが浮かび上がっている。
自分が日々、圭太不在の時間をひとりで使うベッドを見て静は密かに顔を背けた。
「シズカは、俺のいない時このベッドで何を考えているの?」
「え?」
「・・・俺のこと、想ったりすることはある?」
圭太を想うことがある。どころか、そればかりだ。圭太を恋しく想い、ひとり寝の淋しさに耐え切れず自らを慰めてしまう。浅ましい自分の姿を思い出し、静は目蓋を伏せ羞恥に震えながら頷いた。
わずかな沈黙の後、圭太が笑む気配がする。
「じゃあ、証明して見せろよ」
圭太の言葉が理解しきれず顔を上げた。圭太は一体、何をどう証明しろと言うのか?
ベッドの羽根布団を床に落とし、圭太がシーツの上で薔薇の花束を優雅に振ると、紅い花弁が盛大に白いシーツの上に舞い散った。大方、花弁の落ちてしまった花束を投げ捨てると、圭太は呆然と立ち尽くす静に向き直おる。そして、艶然と意地悪く微笑んだ。
静のTシャツの裾に圭太の手がかかり、ゆるゆると上にあがってゆく。
「普段シズカがどうやって俺を思い出しているのか。俺に証明して見せてくれたら、お前のこと信じてやる」
「見せるって・・・・」
言葉の後半は、頭を抜けてゆくTシャツが遮った。シャツを素早く剥ぎ取り、静の前に跪いた圭太は、蠱惑的な笑いを浮かべ前立てを解放した静のGパンを膝下までゆっくり下ろした。「圭太さん!」ビキニタイプの下着が露になり、狼狽える静の性に薄い布の上から軽く接吻ける。
繊細な動きで腿の両脇から静の腰をなで上げ、足の付け根から滑り込ませた指を浮かせて下着を下ろしてゆく。布越しに当たる圭太の硬い歯の感触に、感電したように全身がゾクリと痺れた。
素直に形を成し始めた静の欲望が、柔らかい布に弾かれながら露になる。静は敏感になった中心を布地に擦られる感覚と、あまりにも卑猥な自分の姿に全身を朱に染め、羞恥の呻き声を上げて、両手で顔を覆った。
その手首を掴まれ顔を隠す手を強引に剥がされ、額に接吻けが落とされると同時に背中に柔らかい衝撃を感じた。薔薇の香が全身を包み、衝撃で舞い上がった真紅の花弁が月光に照らされる胸や腹の上に落ちた。
足からGパンと下着が抜かれ、一糸纏わぬ姿にされた静に上着を脱いだ圭太が獣の体勢で跨ってきた。優美な青い影を落とす圭太の上質の白いシャツに、隠しようもなく欲望を露にした自分の厭らしい裸体が恥ずかしい。羞恥に耐え切れなくなって、身を捩って苦しげに小さな呻き声を上げた。自分の上から圭太が退き、頭部に移動する気配がする。
「シズカ・・・」
「圭太さん、無理です。・・・・・許して、出来ない・・・」
目を閉じて頭(かぶり)を振る頭を優しくなでられた。
「あんな花束で俺の嫉妬心をこれだけ煽っといて、ただで済むと思うなよ、シズカ」
嫉妬心・・・?薄く目を開けて圭太を見上げる。冴え冴えとした月光が圭太を照らし、その見事なまでに整った容姿や体を浮き上がらせる。
自分にとって何もかも完璧に見える圭太も、自分と同じように、離れて過ごす時間に不安を感じてくれているのだろうか。
静は、おずおずと自分の肌に指先を這わせた。
←前話 / 次話→
<関連作品>
深海魚 目次
『深海魚』1話から読む
『― 願 ―』
『翠滴2』 22話 シーラカンス
涙に潤んだ顔を見られたくなくて、床に視線を落とす。
圭太さんは、本当に俺が他の誰かに心を許したと思っているんだろうか
一体、自分の何が圭太にそう思わせたのか。圭太に疑念を持たせてしまった自分が情けなくて、腹立たしさと信じてもらえない悲しさや切なさに、引きもきらず涙が溢れた。
決壊した涙腺をどうすることも出来ずに、ただ突っ立て床の一点を見詰めていると、音もなく明かりが消えた。月光に照らされた床に、窓際にいる自分の短い影が落ちる。下を向く視界に、伊原の送ってきた薔薇の花束と圭太の足が入ってきた。
床の上に薔薇の花弁がはらはらと落ちる。
涙の途切れた視界の隅で真紅の薔薇の束がスッと上にあがる。花束で叩かれると思って咄嗟に目を閉じた。
庇うように背けた顎を強い力で掴まれ上を向かされる。
「圭太さ・・・? ぅ、んっ」
唇に歯を立てられ、舌が抜けるほどきつく吸い上げられ。全てを食い尽くされてしまいそうな激しいキスに本能が慄いた。反射的に逃げようとした躰を花束を持った手に背後から戒められ、心も体も身動きが取れなくなる。
「朽ちかけの濃厚な薔薇の匂いがする」
圭太が花束に鼻を近づけ、少し顔を顰めた後、壮絶な色香を放つ嗤いを浮かべた。
「来いよ」
頭の芯が霞み、力が抜けたところで大きな手に腕をとられ、折れ戸で仕切られた隣室に引っ張っていかれた。振り返った象牙色の大理石の床に、真紅の花びらの軌跡が残る。
大きな天窓から月の光が落ちて、白いリネンのベッドが浮かび上がっている。
自分が日々、圭太不在の時間をひとりで使うベッドを見て静は密かに顔を背けた。
「シズカは、俺のいない時このベッドで何を考えているの?」
「え?」
「・・・俺のこと、想ったりすることはある?」
圭太を想うことがある。どころか、そればかりだ。圭太を恋しく想い、ひとり寝の淋しさに耐え切れず自らを慰めてしまう。浅ましい自分の姿を思い出し、静は目蓋を伏せ羞恥に震えながら頷いた。
わずかな沈黙の後、圭太が笑む気配がする。
「じゃあ、証明して見せろよ」
圭太の言葉が理解しきれず顔を上げた。圭太は一体、何をどう証明しろと言うのか?
ベッドの羽根布団を床に落とし、圭太がシーツの上で薔薇の花束を優雅に振ると、紅い花弁が盛大に白いシーツの上に舞い散った。大方、花弁の落ちてしまった花束を投げ捨てると、圭太は呆然と立ち尽くす静に向き直おる。そして、艶然と意地悪く微笑んだ。
静のTシャツの裾に圭太の手がかかり、ゆるゆると上にあがってゆく。
「普段シズカがどうやって俺を思い出しているのか。俺に証明して見せてくれたら、お前のこと信じてやる」
「見せるって・・・・」
言葉の後半は、頭を抜けてゆくTシャツが遮った。シャツを素早く剥ぎ取り、静の前に跪いた圭太は、蠱惑的な笑いを浮かべ前立てを解放した静のGパンを膝下までゆっくり下ろした。「圭太さん!」ビキニタイプの下着が露になり、狼狽える静の性に薄い布の上から軽く接吻ける。
繊細な動きで腿の両脇から静の腰をなで上げ、足の付け根から滑り込ませた指を浮かせて下着を下ろしてゆく。布越しに当たる圭太の硬い歯の感触に、感電したように全身がゾクリと痺れた。
素直に形を成し始めた静の欲望が、柔らかい布に弾かれながら露になる。静は敏感になった中心を布地に擦られる感覚と、あまりにも卑猥な自分の姿に全身を朱に染め、羞恥の呻き声を上げて、両手で顔を覆った。
その手首を掴まれ顔を隠す手を強引に剥がされ、額に接吻けが落とされると同時に背中に柔らかい衝撃を感じた。薔薇の香が全身を包み、衝撃で舞い上がった真紅の花弁が月光に照らされる胸や腹の上に落ちた。
足からGパンと下着が抜かれ、一糸纏わぬ姿にされた静に上着を脱いだ圭太が獣の体勢で跨ってきた。優美な青い影を落とす圭太の上質の白いシャツに、隠しようもなく欲望を露にした自分の厭らしい裸体が恥ずかしい。羞恥に耐え切れなくなって、身を捩って苦しげに小さな呻き声を上げた。自分の上から圭太が退き、頭部に移動する気配がする。
「シズカ・・・」
「圭太さん、無理です。・・・・・許して、出来ない・・・」
目を閉じて頭(かぶり)を振る頭を優しくなでられた。
「あんな花束で俺の嫉妬心をこれだけ煽っといて、ただで済むと思うなよ、シズカ」
嫉妬心・・・?薄く目を開けて圭太を見上げる。冴え冴えとした月光が圭太を照らし、その見事なまでに整った容姿や体を浮き上がらせる。
自分にとって何もかも完璧に見える圭太も、自分と同じように、離れて過ごす時間に不安を感じてくれているのだろうか。
静は、おずおずと自分の肌に指先を這わせた。
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<関連作品>
深海魚 目次
『深海魚』1話から読む
『― 願 ―』
『翠滴2』 22話 シーラカンス
□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
すみません!!ちょこちょこ書き直していたら、更新時間を過ぎてしまいました。
朝から悩みます。一体、私は何を書いているのでしょう?
しかも、終わりません。河村は、伊原第二号となって言いたい放題です。
「静、がんばりなさい。」オカンからの激励のひと言でございます。
紙魚
拍手ポチ、コメント、村ポチと・・本当に、いつもありがとうございます。
ほんの拙文しか書けない私ですがですが、書いていく励みになります。。
ブログ拍手コメントのお返事は、サイトの”もんもんもん”の
ブログ拍手コメ・メールのお返事からか、もしくは*こちら*から

↑
続き書いてもいいよ~♪と
思っていただければ、ポチっとお願いします。
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すみません!!ちょこちょこ書き直していたら、更新時間を過ぎてしまいました。
朝から悩みます。一体、私は何を書いているのでしょう?
しかも、終わりません。河村は、伊原第二号となって言いたい放題です。
「静、がんばりなさい。」オカンからの激励のひと言でございます。
紙魚
拍手ポチ、コメント、村ポチと・・本当に、いつもありがとうございます。
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> 薔薇風呂とてもいいです。
いいですよね~♪
それも考えたんですけど、もっていくのが億劫で・・・←
お花は、売るほど残っていますので、薔薇風呂でも、柚子風呂でも(それはない)
○○プレイでも・・・2人で好きに使えばいいと思います♪
> なんて、静ぴーんち。
> じゃないですねw
> えっち描写より、一人えっちの描写のほうが
> (/ω\) ハジュカシィー・・・(/ω・\) チロ・・
> なんだか、紙魚さま♪⌒ヽ(*゜O゜)ノ スゴイッ!!!です。
やっぱ、恥ずかしいですよね、きゃあ~~~ハジカチィ~~・・・です=3
いま、続きを書いているんですけど、自分のキャパを完全に超えていることに
今頃になって気付きました(気付くのが遅い・・・)
静がぴーんち・・ではなくて、実は私がぴーーんち(笑)なのです。
小説を書き始めて一年。思えば遠くへ来たものです(// ̄‥ ̄//)ジ~ン・・
コメント&ご訪問、ありがとうございました!