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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
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長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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ラヴァーズ 4
 
 月光に照らされた坂道のトップに圭太のセカンドハウスのシルエットが黒く浮かび上がる。一見平屋に見えるその建物は岸壁に張り付く形で階下を持ちそのシルエットだけでも、住居としての機能性、そして建築デザインとしての水準の高さがうかがえる。

 今はその黒いシルエットの一角に細い縦長の白熱色のスリットが入っており玄関の扉が開いたままであることがわかった。
 静はすぐに圭太の後を追いかけたが、到底、長躯の圭太のコンパスには及ばず、セカンドハウスに辿り着いた時には、当然圭太の姿は無かった。
 静は開いたままの門扉を急いで閉めると、草木の茂る月光のアプローチを足早に抜けて玄関に入った。

 「うわっ!!」
 リビングに飛び込むと同時に鼻先から何かにぶつかった。
 ひしゃげそうになった、自分の鼻を押さえながら目の前に立ちはだかる背中を見上げる。

 「圭太さん?」
 「シズカ、これは一体なんだ?」
 「・・・花・・・・・です」
 「花、じゃない。花束だ。しかも、この量はナニ?お前はここで花屋でも
 始めるつもりなのか?」
 「・・・・・・」

 2人の前に、セカンドハウス中にあるフラワーベースや、それに変わる入れものがリビングのガラスのローテーブルと、その周りの象牙色の大理石の床に並べられ、そのどれもに色鮮やかで豪華な花束が無造作に突き刺さっている。よく見れば、数が足りなかったのかバケツやプラスチック製のゴミ箱まで引っ張り出されている有様だ。
 テーブルの隅には封の切られていない静宛の何通かの封筒が、これもまた無造作に置かれていた。

 密閉した部屋に、やや朽ちかけた濃厚な花の香が充満してむせ返りそうになる。
 静は慌ててテラス側のガラス窓を開けに行った。床から天井まである大きなスライド窓を開けると夜風と一緒に波音が部屋に入り込み花の香が薄れてゆく。
 外に向けて息をつくと、暗い海面の波の先で月の光が細かくさんざめいている。
 静は潮の香のする夜風を深呼吸をするように吸い込み吐き出すととゆっくり振り返った。予想通り真正面から圭太の切れ長の瞳に睥睨されて項垂れる。
 
 「もちろん、自分で買ったんじゃないよな」
 「お客様から頂きました」

 「俺がいない時は、いつもこんな感じなのか?」
 「え・・・その・・・」

 確かに、以前から店の客より花やプレゼントを贈られることはよくあった。
 物品は後日、丁重な詫びと共に送り主に返しても、花まで返すのは・・・と、気が引けて花だけは受け取っていた。
 すると、どこでどうなったのか、シーラカンスのバーテンは花好きで花なら受けとるという妙な噂が流れて、それまでモーションをかけてきていた客たちから、まるで競うように花が贈りつけられた。
 いくら誤解を解こうにも、これまで受け取った経緯があるだけにその量は一考に減らず、それどころか、皮肉なことに鬚を落として以降、花束も誘惑もその数が激増した。
 また、そのほとんどが男性客からだという事実に静は頭を抱えた。
 
 そのことを圭太が知れば不快な想いをするに違いないと、圭太がやってくる週末には前もって花屋の配達を断り、超過状態の時には前に住んでいたマンションの大家のところへ持っていったり、近所のバーや飲み屋のオーナー仲間に引き受けてもらった。

 昨日、開店前に届いた花はどういうことかいつもの倍はあり、大量の花束を前に静は唖然とした。さすがに店に大量の花を置いたままには出来ず、過剰に送られた分は仕方なく花屋に頼んでセカンドハウスに届けてもらったのはいいが、自分の頭の中は来る薫へのカミングアウトのことでいっぱいで、とりあえず花束を水につけたところで後の仕分けの事がごっそり抜けていた。

 圭太は、身近にあった大輪の真紅の薔薇の花束に差し込まれあった封筒を取り上げ中のカードに目を通すと、眉間に険しい皺を寄せその場で乱雑に破り捨てた。
 完璧なプロポーションの長躯から、冷え切った怒気と苛立ちが立ち上る。
 水色の特徴のあるカードの贈り主はシーラカンスの前オーナーである伊原だ。

 完璧に項垂れてしまった静の目の前で、圭太はテーブルの端に置かれていた封筒も手に取ると次々封を破り、同じように目を通すと破り捨て、終いには開封もせず残りの封筒を束ごと破り捨てた。 そうして、剣呑な表情で眉間に皺を立て、暫らく花束たちを辟易した顔で睨み据え押し黙っていた圭太が、低く感情を押し殺した声で訊いてきた。

 「シズカ、貰ったのは花だけ?」
 「え?」
 意外な言葉に、はっと顔を上げる。
 猜疑の色を露にした圭太の視線とぶつかり、その言葉の謂わんするところを知り愕然とした。
 



←前話 / 次話→

<関連作品>
深海魚 目次
『深海魚』1話から読む
『― 願 ―』
『翠滴2』 22話 シーラカンス


 □□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ

   本当に、久しぶりの更新で申し訳ございませんm(_ _)m 
 しかも、4で完結の予定でしたのに、終わっていません。
 いつもの悪い癖が出てしまいまして、次話で終われるかどうかも怪しい雲行きです。
 一体私は何をやっているのか・・・もう少しお付き合いいただけると幸いです。

 リクエストを下さったSさま、お待たせして本当にすみません~~~m(_ _)mm(_ _)m

                           紙魚

 
  拍手ポチ、コメント、村ポチと・・本当に、いつもありがとうございます。
  大変、励みになります。。
 

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テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

わはははは
そうだったのか~~~(* ̄ー ̄)ふふっ
不可抗力ですからそんなに怒らないであげてね。河村氏♡でもお仕置きっていう手もアリか..ゲホゲホ

まだまだ終わらなくていいんですよ~(笑)
いくらでも待ちますから、気にせずのんびりやってくらさいね(●´ω`●)
おお、静さんもてまくってるーー楽しい♪
圭太さん、焦る焦る。
どうなるんでしょう?
こういう展開大好き。
いやいや、長編になってもいい。楽しませてくださいませ。
O(≧▽≦)O ワーイ♪
ラバーズ!
しーたんのせいじゃないのよ圭太さん。美しさが罪……てか髭落としたのもさらに美貌に磨きが掛かったのも自分のせいなわけだし。怒らないであげてくださいまし。
でもお仕置きは(・∀・)イイ!!かも←結局酷
はい、長くなるのは一向に構わないですウェルカムですよ♪
おしおきスイッチ
入ってしまいましたか?(笑)
負い目ってわけではないですが、静さんにはそれに似た感情があるでしょうし、普段出来ない「アレ」や「コレ」を、圭太さんに言われるがままにしてしまうかも知れませんね。
妬いてもらえて嬉しいって気持ちもあると、尚、ご奉仕してしまうかも(笑)
すみません、私、もしかしなくてもエ○エ○過ぎる…。
花束の山~!
メールありがとうございました♡

静さん、すごいですね・・。墜ちないからこそ男の征服欲をそそるのか・・・?
伊原さんも、まだ諦めてないところが図太いというか、一途というか・・・。

これだけの花束と手紙をみたら、さすがに心中穏やかじゃいられないと思うけど。・・・嫉妬は愛のスパイスっていうけれど。静さんの性格だったら、真正面から受け止めて傷ついちゃいそうで心配。せっかくお兄ちゃんにカミングアウトして認めてもらえたのに・・・。

お話の方は、もうどんどん長くしてください。
お仕置きされる静さんもじっくり堪能したいです。イヤン((▽\*)≡(*/▽))イヤーン

そのうち薫お兄ちゃんのエピソードも読んでみたいです~。とさりげなくおねだり・・・。
秋の夜長、今年はとても楽しく過ごしてます♡

AOさま♪
 AOさま、こんばんは。

> ワーイ♪ゝ(▽`*ゝ)(ノ*´▽)ノワーイ♪、更新だ
 わ~~っ!お待たせして申し訳ありませんでした!!

> そして、まだ続く・・・嬉しいです。
 うう、許していただけて、良かった(泣
 自分の構成力のなさを毎度思い知り悲しくなります。。シクシクシク凹

> 静すごいなあ。こりゃ。モテモテ。
 はい、乙女モテモテで圭太はハラハラの構図ですね(笑)
 何せ、普段は離れてて週末しか会えない人たちなので
 お互い勝手に妄想を広げてそうです。

> 周といい圭太といい、受け子ちゃんたち大変ですね。
 ウチのネコ君たちは基本、大事にされているんですけれど、
 独占欲が強い(特に周・笑)のが窮屈かもしれません。

> お花ワタシもおすそ分けしてもらいたいわw
 大輪の花束をお渡ししたいです♪

> 紙魚さま、お疲れ様でした。疲れは取れましたか?
 ありがとうございます。
 本当に、年々疲れが取れなくなってきている気がします・・シミもね(爆

>結果問題なし♪
 おお!良かったです!!

> ああ、その日一日ハッピーでしたよw(^ー^* )フフ♪
 や~~~ん!例のイケメン先生ですね♪♪♪♪
 AOさまのルンルン←な気分が伝わってきますよ♪

> と、なかなかよい一週間でした♪
 10位!!健闘されましたね!
 ヽ(゚・^*)^☆.。.:*・゚☆祝☆゚・*:.。.☆^(*^・゚)ノおめでとうございます。
 
 コメント&ご訪問、ありがとうございす♪

Re: わはははは
 シマシマ猫さま、ようこそです♪

 ダラダラ引っ張ってしまい、申し訳ないです!!m(_ _)mm(_ _)m

> そうだったのか~~~(* ̄ー ̄)ふふっ
 こんな月並みなオチで、みなさまの妄想に応えられなくてごめんよう~~~
 
> 河村氏♡でもお仕置きっていう手もアリか..ゲホゲホ
 ぷぷ・・・そうですよね♪・・・って、どなたかアイデアくださいませ~~~!
 うむう~~。どんなお仕置きがモエになるんだろう・・・

> まだまだ終わらなくていいんですよ~(笑)
 ありがとうございます~~(泣
 でもこのまま放置すると、また延々やっちまいそうなので←
 キリのいいところで何とか食い止めたいと思います(笑)

> いくらでも待ちますから、気にせずのんびりやってくらさいね(●´ω`●)
 なんて優しいお言葉を・・・・
 即行、甘えてしまいそうな自分がイヤです~~~(´Д`;)

 コメント&ご訪問、ありがとうございす!

Route Mさま♪
 Route Mさま、こんばんは~

> おお、静さんもてまくってるーー楽しい♪
> 圭太さん、焦る焦る。
 モテモテハラハラ(笑)
 無防備な静を野放しする危険を圭太はやっと気が付いたと思います。
 
> どうなるんでしょう?
 やっぱり、貞○帯の出番でしょうかMさま。。
 ん~~~未踏の世界です。

> こういう展開大好き。
 ありがとうございます♪

> いやいや、長編になってもいい。楽しませてくださいませ。
 や、5話完結を目指して30話書いてしまった前科者ですので~~
 ここは、ビシッと締めていきたいと思っているんです(拳)・・・一応。

 コメント&ご訪問、感謝です!!

Re: O(≧▽≦)O ワーイ♪
 りりさま、こんばんは♪

>髭落としたのもさらに美貌に磨きが掛かったのも自分のせいなわけだし。怒らないであげてくださいまし。
 見た目控えめで、鬚を落としたらちょっと儚げ・・・に見える。
 むむ、そうか~~!言われてみればそうですね!
 圭太は自業自得・・・・( o ̄▽ ̄)σナルホド
 押せば堕ちそうなところがたくさんの虫を呼んじゃうんですね。

> でもお仕置きは(・∀・)イイ!!かも←結局酷
 りりさ~~~んっ!!
 お仕置きアイデア募集中ですので・・・ぜひ♪(笑)
  
> はい、長くなるのは一向に構わないですウェルカムですよ♪
 どなたか私の手綱を引いてください・・・・ってまた、私ったら問題発言を・・・
 
 コメント&ご訪問、ありがとうございます!

Re: おしおきスイッチ
 紙森さま、ようこそです!
 
 今日の雨は良く降りましたね。やっと本格的な秋到来でしょうか。

> 入ってしまいましたか?(笑)
 うむうぅぅ~。
 ウチで○○プレイが登場する日が来たら、迷わずこの2人を使おうとは
 思っていましたが、残念ながら私の知識がまだそこまで到達しておりません。
 と、私は何を正直に告白しているのか。。。。(笑)

> 負い目ってわけではないですが、静さんにはそれに似た感情があるでしょうし、普段出来ない「アレ」や「コレ」を、圭太さんに言われるがままにしてしまうかも知れませんね。
 静は、圭太が自分を受け入れてくれた、そのことだけで充分負い目も
 感じていますから、な~んでも言いなりだと思います。
 もちろん、あんなことやこんなことも・・・・。何を言わせるんですか~

> 妬いてもらえて嬉しいって気持ちもあると、尚、ご奉仕してしまうかも(笑)
> すみません、私、もしかしなくてもエ○エ○過ぎる…。
 (笑)~~!!紙森さん、書かれる小説は究極のストイックですのに・・・・・
 ギャップが面白すぎます!も~、大好きです!

 コメント&ご訪問、ありがとうございます!や、笑いました。

Re: 花束の山~!
 くろねこさま、こんばんは♪

> メールありがとうございました♡
 こちらこそです、ありがとうございました♪

> 静さん、すごいですね・・。墜ちないからこそ男の征服欲をそそるのか・・・?
 触れなば落ちん風情が”蜜”ではないかなと・・・
 ビシッと断れないんですね、元鬚面乙女は。

> 伊原さんも、まだ諦めてないところが図太いというか、一途というか・・・。
 ある意味一途で・・・だから困った人なのですね(笑)

> 静さんの性格だったら、真正面から受け止めて傷ついちゃいそうで心配。せっかくお兄ちゃんにカミングアウトして認めてもらえたのに・・・。
 うーん。静の性格なら圭太に嫌われたら病気にでもなってしまいそうですね。。
  で、薫にも相談できずにウジウジしてそうです・・結構、困ったチャンですね(笑)

> お話の方は、もうどんどん長くしてください。
> お仕置きされる静さんもじっくり堪能したいです。イヤン((▽\*)≡(*/▽))イヤーン
 お、こちらにもお仕置きコールが(爆
 深海魚は、ウチでもえろ度の高い話だったので、やはりそちらの
 期待も高くなるのか・・・ちょっと、修行して出直したくなりました(  ̄∇ ̄;)

> そのうち薫お兄ちゃんのエピソードも読んでみたいです~。とさりげなくおねだり・・・。
> 秋の夜長、今年はとても楽しく過ごしてます♡
 ありがとうございます。
 落ち着きましたら、押しかけ女房(亭主?)安里のお話も書きたいと思います。
 本当にこの秋は、あちらこちらで読み応えのあるお話が掲載されてて、
 素敵なお話が豊作ですよね♪

 コメント&ご訪問、ありがとうございます!

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