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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
拙い文章ですが、お読み頂けましたら嬉しいです。


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長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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Category: 翠滴 -side story-  

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真夏の残像 2 
 神社への長い階段を子供たちがはしゃぎながら駆け上がってゆく。
 やわらかな提灯の明かりの中、周と並んで石段を登り始めた。
 足を上げる度、腰の周りがどうにもスカスカと落ち着かず、不自然な仕草で浴衣の袷を押さえてしまう。
 ふと、隣で平然と階段を登る周の姿に疑念が湧き、周の腰を”観察”した。
 ・・・・どうにも、怪しい。
 思い切り嫌疑の目を向けていると涼しい声が尋ねてくる。
 「なに?」
 「や、その・・・別に・・」
 「奥歯にモノの挟まったような言い方しないで、はっきり言えよ」
 「あ、いや・・・・。まさか、人には『浴衣にはコレ』だとかいって褌を付けさせておきながら、自分は普通の下着を着けてる・・・なんてことはないよな?」 

 周の顔か一瞬真顔になり、含みのある笑いを向けてきた。
 「なんなら、ここに顔を突っ込んで確かめてみる?」
 小学生の一団が階段を駆け上る中、周が自分の浴衣の裾をそろりと捲り上げる。    
 「は? ばっ・・・馬鹿じゃないのか!? こんな所で一体、何を考えてるんだよ」
 「確かに、ここじゃまずいな。階段でやるには危ない行為だ」
 違うだろう!

 永邨 周という男は、社会的な面で優れたバランス感覚を持ち、スマートで時にど肝を抜く豪胆な判断もする。男らしい容は凛々しく、そして人間そのものが壮絶なくらい美しい。
 洗練された所作は見るものを惹きつけてやまず、”一見”完璧に見える。
 だが、一旦プライベートに立ち戻ると、ベロリと一枚皮が剥けて、嫉妬深く下品で利かん気の強いエロ男が顔を出す。
 出会った当初は、上辺の姿に魅了され自分も周のような大人になりたいと憧れた。
 複雑で、少し困った内面も知った今はどうだろうか。
 慣れた着物捌きで階段を上ってゆく男っぽい浴衣の背中を見ながら後に続く。


 上り詰めた境内は鄙びた田舎の祭りにしては賑やかで、参道脇には露店が出揃っている。
夏休みで、都会から帰省した子供たちもいると聞き、珍しい庄谷の賑わいに納得した。参拝を済ませ、周と並んで輪投げや射的、スマートボールなどの店先を冷やかしながら歩いた。
 
 地元の子ども会が出店しているという金魚すくいで、以前、軽自動車を貸してくれた利根さんに出会った。
 「あら、周さん帰ってらしたんですね。
 まあまあ享一さんも去年お屋敷の前でお会いして以来かしら?。
 お二人とも男前だから、浴衣がさまになって似合ってらっしゃるわ。
 どうぞ、客寄せにひとつすくってって下さいな」

 2人の手にアルミの容器と「ポイ」と呼ばれる薄紙を張った道具が渡された。
 男二人が客寄せになるとは思えないが、厚意を無駄にするのもどうかと子供に混じってしゃがみ込む。デカイ男の登場に迷惑気な視線が集まったが、周の一瞥で非難の視線は一斉に散った。フォローを入れようにも誰も上を向いてくれず、諦めの溜め息を吐く。

 「周さん、奥様はお元気ですか?なんでもすごい別嬪さんの花嫁さんを貰ったんだって、
 うちのばあちゃんがしきりに言ってましたよ」
 「ええ・・・・”家内”は元気にしてますよ」
 さっと朱の奔る顔を背け複雑な表情を見せる享一に、周が眉を上げ笑む。
 
 「あ・・・破れた。昔は結構取れてたんだけどなあ」
 動揺で闇雲に泳がせたポイはあっけなく水の中で破れ、これ幸いと立ち上がる。
 享一の容器の中で5匹の金魚が泳いでいる。
 その傍を泳ぐ出目金を周のポイがすくい、赤い和金と黒の出目金で一杯になったアルミの容器に落とした。満員御礼状態の器の中で金魚が蠢く様子は見ているこっちが酸欠になりそうだ。

 先程、邪険な視線を向けた子供たちが羨望と尊敬の熱い眼差しで周を見上げた。
 子供相手に、他人にはわからない優越の笑いがポーカーフェイスに浮かんでいる。
 「車の運転と同じで、何をするにも迅速な行動が功を奏する」
 年中スピード違反している男が、一体何を言うやら・・・。
 呆れて、歩き出した享一の足が止まった。
 さまざまな形の飴細工の並んだ小さな木箱を前に置いて、黒い前掛けに法被を羽織った若い男が実演をしている。

 「へえ、懐かしいな。まだこんなのが残っていたんだ」
 「職人の数は減っちまったけど、こうして俺みたいな物好きが飴細工の伝統の技を
 引き継いでるってわけだ。どうだい、どれもよく出来ているだろう?」
 作業台も兼ねた木箱には金魚や馬に龍、果ては恐竜なんていうのもある。
 
 ちらりと顔を上げた若い飴細工職人の手の中で、白い塊が鋏を入れられ引っ張られて見る見る形を変えていく。
 飴は白い鷺になって今にも広げた羽をはためかせ飛んで行きそうだ。
 同じく物を創る者としての好奇心からか、享一の熱心な瞳が輝き、刻々と形を変える飴に釘付けになる。
 「鋏一本で作ってしまうなんて、凄いな」
 突然、白鷺がひょいと享一の目の前に差し出された。
 職人気質の熱を帯びた眼差しが驚いた享一を見詰める。
 「やるよ。もっていきな」
 「でも・・・・」

 「いえ、お代は払います」
 即、隣から、やや威圧的とも取れる単調で低い声がする。拙い、機嫌が悪い。
 周の目つきは次の職人のセリフで更に険を帯びて完全に据わった。
 「いいって。これはあんたのイメージで作ったんだ。
 オレの技に熱い視線をくれるあんたのその目が気に入ったんだから。
 祭りも今日が初日だし、験担ぎだと思ってさ。ほら、もっていきなよ」
 
 階段の中腹で、また享一の足が止まった。
 享一は手にした飴を目の高さに翳し、優美に羽を広げる鷺の姿に見蕩れている。
 白い鷺の潔白さと享一のたおやかで誠実な瞳が重なる。

 「こんなに綺麗な形をしているのに、なんだか食べるのが勿体無いな」
 「置いていても、どうせ溶けるだけだから、美味い時に食べた方がいい」
 やけにきっぱり言い切る周に、享一がちらりと飴越しに視線を寄越し目の端で笑う。
 「な、機嫌直せよ、周」
 「誰も機嫌など損ねていませんが?」
 能面となった周が固い声で返す。

 笑みを深くした享一が周の好きな何もかも受け入れ内包てしまう柔らかな瞳で段下から見上げる。
 風が吹き始めて、汗で湿った肌をさわさわと冷やしていった。
 「ほら、言葉も・・・丁寧だけど、棘だらけだ。なあ、一緒に食べよう」

 見透かされている。享一が相手だと、そんなところもなんともいえず心地よい。
 赤く濡れた舌を出し、白い翼の先に這わせると上目遣いで周を見上げた。
 些細な仕草に煽られ、白い鷺に舌を這わせる享一から目が離せなくなる。
 黒曜石の瞳の中で連なった提灯が音もなく揺れている。




    ← 1 真夏の残像  3 →



□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ

  ヌルくて、すみません~m(_ _)m 
 スピンオフとして、少し砕けた感じで書いていますが、楽しめていただけているのか・・・
 気になるところです。。
 3話は、日曜の11:00の更新(予定)です♪

                           紙魚

 
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Comments

オフの周さん、かわいいです。
飴細工職人にまでジェラシー?
そして、子供相手に優越感?もう、かわいすぎてどうにかなりそう。
怒ったり、エロくなると言葉が丁寧になるのも、ツボです・・・。

私の読みでは、周さん浴衣の下は何もつけてないな。

最初のころは享一さんは周さんに圧倒されてたのに、なんだか対等というより保護者っぽい感じさえしてるんですけど、周さんが心を開ける唯一の人だからですね。

福岡では箱崎宮の放生会が、初秋のお祭りです。数量限定のおはじきとちゃんぽんというガラス細工のおもちゃがかわいいのです。
二人で浴衣着流しで遊びに来てくれないかしら。

日曜の更新、楽しみにしています。
Re: オフの周さん、かわいいです。
 くろねこさま、おはようございます!!

> 怒ったり、エロくなると言葉が丁寧になるのも、ツボです・・・。
 わ~~い、ツボに嵌っていただけた←
 今回の話はスピンオフということもあって、周もかなり”素”で書いてみたのですけど
 普段は押さえ気味の周の欠陥部分がむき出しでだせて楽しいです♪
 いつか、周がこうなった経緯なんかがかければいいなあなんて思います。

> 私の読みでは、周さん浴衣の下は何もつけてないな。
 おおお!!鋭いご意見が・・・・やや、ご返事は明日にとっておきますね(笑)
 
> 最初のころは享一さんは周さんに圧倒されてたのに、なんだか対等というより保護者っぽい感じさえしてるんですけど、周さんが心を開ける唯一の人だからですね。
 相手を気遣えば守りたくなるという、享一の心理なんだと思います。
 実際はあらゆる面でかなわない周でも、心では愛する人を庇護し甘やかしています
 周にも享一には思いっきり甘えて欲しい親心・・・(笑)なのです。

> 二人で浴衣着流しで遊びに来てくれないかしら。
 速攻、派遣します(笑)
 福岡のお祭りってすごく派手で大掛かりなイメージがあります。
 ちゃんぽんってビードロみたいなものかな・・・と思ってネットで調べたら放生会でしか
 手に入らないめずらしいものだったのですね。守り継がれた伝統を感じます(*´∇`*)
 
> 日曜の更新、楽しみにしています。
 続きを楽しみにしていただき、ありがとうございます!!
 昨夜、寝堕ちしてしまい、まだ半分以上残っていて青ざめている私ですが、がんばります!!

 コメント&ご訪問、ありがとうございます♪
Re: タイトルなし
 AOさま、ようこそです!

> 夏は暑いからヌルい位がイイんです。(なんのこっちゃ
 本当は、もう少し先まで書いていたんですけれど、長くなったので切ったら
 ヌルいとこしか残らなかったんです(爆

>ほんと、情景が目に浮かびますね。
 ありがとうございます。
 話の場面の臨場感がお伝えできて、それを感じていただけるのはとても嬉しいです。
 
> 周はTバックでしょうか、ラインがでるのがいやでつけてない?
 きゃあ~~~。AOさままで!!お、お嬢様方、なんという想像を・・・(笑
 ええ、答えは明日ということで←(爆

> スピンオフ楽しめてますよー。すっぴんでオフって感じデスね。
> 二人とも巣もとい素に戻れて。
 AOさま、上手いです~~(笑)
 本当に、ねぐらに戻って素でオフて感じですね。
 若干、のびのびしすぎな感じもしますけど、、ま、いいですね(=^▽^=)

> うわーん。
> こんなにも、いいバランスの二人に本編ではブリザードが吹き荒れるんですね。
 もう、ずっとこっちのスピンオフを書いていたいです。
 でも進めなければ・・・2人の(3人?)安息の日は訪れないんですよね。。

> でも、きっと、桜の頃には…ね。 紙魚さま。
> といいつつ、享ちゃん壊れちゃわないかと、今から心配です・・・
 ありがとうございます(涙
 桜の頃までには何とかしてあげたい・・・そう思います。

 コメント&ご訪問、感謝です!

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