10 ,2008
翠滴 1-5 爆走ドライブ 1 (13)
←(12)に戻る (14)に進む→
結局、周(あまね)たちは次の日の夜も帰ってこなかった。
3日目の深夜に戻った周は、そのまま次の日も、またその次の日も姿を見せる事は
無かった。母屋の奥にある周の部屋に、鳴海が食事を届けているみたいだが、
食器を引いてきた鳴海の手の中の盆には、半分以上が手付かずで残されたままだ。
「周さんは どこか具合が悪いんですか?」
「いえ、たまにある事なので・・・、時見様は、お気になされなくても結構ですよ」
さらりと返してくる返答に 何故か少し棘のようなものを感じて鳴海の顔を見るが、
冷たさだけがいつにも増しただけの無表情な風貌からは、何も読み取れなかった。
会話の途切れた気まずい雰囲気に、やはり嫌われているのかな・・・という懸念が
享一の中に小さく湧き上がるが、嫌われるほど接触した憶えは無く、途方に暮れた。
面と向かって何かを言われた訳ではなく、ただ 感じるのだ。
鳴海は享一を敬遠していると。
その理由が享一にはわからない。理由もなく避けられると言うのは、改善のしようがなく、かといって、本人に確かめるというのも自分と鳴海の距離を考えると無理があるように思えた。
「時見様 そういえば、今朝 町に行きたいというお話をされてましたが・・」
鳴海も気まずさを感じたのか、話題を切り替えるように、今朝の朝食の時に享一が話題にした話を持ち出した。
建築計画の授業で出された 全員強制参加の学生コンペの提出期限が迫っていた。
提出物は、小規模集合住宅のプランやコンセプトをまとめてA2に出力し、CGか模型を一緒に提出することになっている。
模型を運ぶには電車より車のほうが都合がいいし、出力センターのある町は遠く、1時間に1本の、しかも恐ろしくトロイ電車で行くには気が重くて相談した。
「提出予定はいつですか?」
「週末には仕上げて出さないと、期限に間に合わないんです」
鳴海は少し考え込んでいる。
「残念ながら、 私は明日から4日間程 本宅に行かなければなりません。
なんとかして差し上げたい気持ちはあるのですが・・・」
「あ、いえ。ご心配には及ばないです。茅乃さんたちが利根さん宅の軽自動車を
貸して貰えないか交渉してくれるそうなので。ただ・・・」
自分の為に鳴海付きのジャガーなんて畏れ多くて、最初から頼むつもりは毛頭なかった。
この辺の人は、交通に不便なこともあり一軒の家に何台も車を所有している。
候補の利根さんはこの屋敷に出入りする女性で、幼稚園に通う娘がいた。茅乃たちの話では、夏休みで子供の送迎もなく、たぶん貸してもらえるだろうということだった。
「”ただ”・・・なんですか?」
「条件がついてまして、俺の髪を散髪させろと・・」
突然、鳴海が噴出した。
鳴海が笑った・・・。
享一は見てはいけないものを、見てしまったように目を丸くして唖然の表情になる。
「失礼しました。 普段は東京でお住まいのお2人にとって、実家であるこの田舎はさぞ
退屈なのでしょう。時見様は恰好の遊び相手ですね。
今の髪型が気に入られているのですか?」
遊び相手?恰好の遊びアイテム・・と聞こえるが、空耳だろうか・・?
2人が夏休みの帰郷での滞在というは初耳だった。なるほど、垢抜けしている筈だ。
このド田舎に埋もれさせておくには、勿体無い美貌だ。学校ではさぞ、モテるだろう。
「髪型に関しては拘りはないんですが、
ハッキリ言って2人のウデには大いに不安があります」
鳴海は2人の顔を思い浮かべたのか、口元を少し緩ませて苦笑した。
「そうですね・・確かに」少し考えて
「あと、屋敷には周様の車がありますが、アレは時見様には
運転が難しいかと思いますし・・・」
「周さんも、車を持ってるんですか?」
「ええ・・まあ・・・」
濁すような返答が返ってくる。車庫でジャガー以外の車を見たことはなかった。
何に乗っているんだろう?同じ男として、周が運転するのはどんな車か少し気になる。運転が難しいということは左ハンドルということなのだろうか。
大人な雰囲気を纏う周にはシルバーのBMW7シリーズとか似合いそうだ。
結局、利根さんには鳴海からも頼んでもらえることになった。
鳴海 基弥、見掛けほど冷たい人ではないらしい。
結局、周(あまね)たちは次の日の夜も帰ってこなかった。
3日目の深夜に戻った周は、そのまま次の日も、またその次の日も姿を見せる事は
無かった。母屋の奥にある周の部屋に、鳴海が食事を届けているみたいだが、
食器を引いてきた鳴海の手の中の盆には、半分以上が手付かずで残されたままだ。
「周さんは どこか具合が悪いんですか?」
「いえ、たまにある事なので・・・、時見様は、お気になされなくても結構ですよ」
さらりと返してくる返答に 何故か少し棘のようなものを感じて鳴海の顔を見るが、
冷たさだけがいつにも増しただけの無表情な風貌からは、何も読み取れなかった。
会話の途切れた気まずい雰囲気に、やはり嫌われているのかな・・・という懸念が
享一の中に小さく湧き上がるが、嫌われるほど接触した憶えは無く、途方に暮れた。
面と向かって何かを言われた訳ではなく、ただ 感じるのだ。
鳴海は享一を敬遠していると。
その理由が享一にはわからない。理由もなく避けられると言うのは、改善のしようがなく、かといって、本人に確かめるというのも自分と鳴海の距離を考えると無理があるように思えた。
「時見様 そういえば、今朝 町に行きたいというお話をされてましたが・・」
鳴海も気まずさを感じたのか、話題を切り替えるように、今朝の朝食の時に享一が話題にした話を持ち出した。
建築計画の授業で出された 全員強制参加の学生コンペの提出期限が迫っていた。
提出物は、小規模集合住宅のプランやコンセプトをまとめてA2に出力し、CGか模型を一緒に提出することになっている。
模型を運ぶには電車より車のほうが都合がいいし、出力センターのある町は遠く、1時間に1本の、しかも恐ろしくトロイ電車で行くには気が重くて相談した。
「提出予定はいつですか?」
「週末には仕上げて出さないと、期限に間に合わないんです」
鳴海は少し考え込んでいる。
「残念ながら、 私は明日から4日間程 本宅に行かなければなりません。
なんとかして差し上げたい気持ちはあるのですが・・・」
「あ、いえ。ご心配には及ばないです。茅乃さんたちが利根さん宅の軽自動車を
貸して貰えないか交渉してくれるそうなので。ただ・・・」
自分の為に鳴海付きのジャガーなんて畏れ多くて、最初から頼むつもりは毛頭なかった。
この辺の人は、交通に不便なこともあり一軒の家に何台も車を所有している。
候補の利根さんはこの屋敷に出入りする女性で、幼稚園に通う娘がいた。茅乃たちの話では、夏休みで子供の送迎もなく、たぶん貸してもらえるだろうということだった。
「”ただ”・・・なんですか?」
「条件がついてまして、俺の髪を散髪させろと・・」
突然、鳴海が噴出した。
鳴海が笑った・・・。
享一は見てはいけないものを、見てしまったように目を丸くして唖然の表情になる。
「失礼しました。 普段は東京でお住まいのお2人にとって、実家であるこの田舎はさぞ
退屈なのでしょう。時見様は恰好の遊び相手ですね。
今の髪型が気に入られているのですか?」
遊び相手?恰好の遊びアイテム・・と聞こえるが、空耳だろうか・・?
2人が夏休みの帰郷での滞在というは初耳だった。なるほど、垢抜けしている筈だ。
このド田舎に埋もれさせておくには、勿体無い美貌だ。学校ではさぞ、モテるだろう。
「髪型に関しては拘りはないんですが、
ハッキリ言って2人のウデには大いに不安があります」
鳴海は2人の顔を思い浮かべたのか、口元を少し緩ませて苦笑した。
「そうですね・・確かに」少し考えて
「あと、屋敷には周様の車がありますが、アレは時見様には
運転が難しいかと思いますし・・・」
「周さんも、車を持ってるんですか?」
「ええ・・まあ・・・」
濁すような返答が返ってくる。車庫でジャガー以外の車を見たことはなかった。
何に乗っているんだろう?同じ男として、周が運転するのはどんな車か少し気になる。運転が難しいということは左ハンドルということなのだろうか。
大人な雰囲気を纏う周にはシルバーのBMW7シリーズとか似合いそうだ。
結局、利根さんには鳴海からも頼んでもらえることになった。
鳴海 基弥、見掛けほど冷たい人ではないらしい。
鳴海さんカッコイイー!!!!!
めちゃくちゃタイプです!
こんな人が身近にいないかしら…(オイ