05 ,2009
翠滴 3 交差 3 (10)
唇が離れて、我に返った。
車道をヘッドライトが流れ、車内を淡い光が横切っていく。
「周・・・、写真に撮られたら、拙い」
碧眼を隠す薄い色のサングラスを掛けていても、西元のように周に関心のある人間ならすぐに正体を見破ってしまうだろう。
「俺は構わないけど、享一は・・・困るか。心配しなくても、最近はこそこそ嗅ぎ回るマスコミ関係の奴らもめっきり減ったし、大丈夫だろう。メディアっていうのは常に流動的だからな、いつまでもチョイ出の人間に関わるほど暇じゃない」
「”あの人は今” とかで、やって来られても困るんだけど・・・」
周の言葉に小さな非難を感じながら、それを誤魔化すように笑って答える。
自分は、どうなのだろうか? 周のように平然と言ってのけれらるほど自分は強くはない。瀬尾に「彼女は?」と訊かれ、自分たちの付き合いが何の躊躇いもなく人に話せる関係でないことを実感したばかりだ。
いつも頭の隅に会社や友人、家族といったものたちへの社会的な体裁を気にする自分が常にいる。
「・・・ごめん」
「いつも言っていることだが、俺は享一の望まないことを強いるつもりはない・・・・享一が納得のいく答えを出せばいい」
視線をフイッと正面に逸らすと、ポツリといった感じで 「俺のマンションでいいな?」 と、訊いてきた。
「え・・・ああ」
いつもなら自分のアパートに帰る日だが、こんな会話が途切れた状態で離れたくはなかったし、今夜は本屋を出た時から周のマンションに帰るつもりでいた。
「もともと、今日は、そっちに帰るつもりでいたんだ」 そう付け足すと、流れた視線の端で周が“ニヤリ”と笑んだ。
ゆっくり発進したフェアレディが、いきなりスピードを上げる。ぎょっと胸騒ぎを覚えた時には、既に全身にかかるGで躰がシートにずしっと沈んでいた。
「無茶な運転するなよな、車はレジャー施設の乗り物とはわけが違うんだぞ。胃がひっくり返るかと思った」
「安全運転で走るスポーツカーなんてありえないだろう。スピードなくして、車の一体どこが面白いんだ?」
憮然とソファにカバンを置きながら抗議すると、いつも通りとり澄ました顔が返してきた。
その腕に捕まり唇が重なる、続けて文句を繰り出そうとした舌は、心に並べ立てた言葉の半分も言い終わらないうちに、強引な舌に絡め取られ勢力を奪い取られた。
「全く暖簾に腕押し、糠に釘だな。でも、気をつけてくれ、周にもしものことがあったら、俺は・・・」
緩く笑い、これだけは言わせてくれと周の頬に手指を添えると、吸い込まれそうな深緑と、全てを見透かせそうな黒檀の瞳孔が真っ直ぐ享一を見返す。どれだけこの瞳に会いたかっただろう。
自分より大きくて、繊細で美しい動きをする指に頬に添えた手を取られて、無言で強く抱きしめられた。その腕の強さに、焔の中に横たわりこちらに向けられた不安と困惑に満ちた翡翠の双眸を思い出す。モデルのことや父の事、訊きたいこと言いたいことは、たくさんある筈のに、どれひとつ口を衝くことはなかった。周の背中に同じように腕を回して、自分も周の身体を抱きしめた。シャツを通して周の体温が伝わってくる。
いまはただ、腕の中の温もりを抱きしめていたい。言うべき事があるならきっと、話してくれる。それを待つ覚悟は出来ている。
「気をつけます」
「ああ、そうしてくれ。この腕がなくなったら、俺はきっと生きていけない・・・」
「・・・・!」
両肩を掴んだ周が目を見開き、正面から放心したように見つめてきた。一瞬、周が泣くのかと思い、何も言えず見つめ返す。すると周は空気を鮮やかに反転させ、はっとするような艶やかな顔で笑った。どこまでもこの男は自分を魅了するのか。自分がリードしたかと思ったら次の瞬間には周のペースに巻き込まれている。
腕を取られバスルームに引っ張っていかれた。
「もう、待ちきれない・・・・」
「俺も・・・・俺もだ。きょう偶然大学時代の友人に会ったんだけど、そいつ子供連れててさ・・・2人を見てたら周が恋しくて」
再び周の長い腕(かいな)に包まれる安堵感に、瞳を閉じて周の体温を感じ、周が発するあの独特の白い花をイメージさせる香りを肺いっぱいに吸い込む。すると、頭の奥から陶酔が広がって、吐息とともに甘露のような声が零れた。
「凄く・・・・会いたくなった・・・・」
そう、白状するとこの一日がとてつもなく長い一日だったように思えた。
キスをしながら着ているものを剥ぎ取られてゆく。上着は落とされネクタイも解かれて、お互いのシャツのボタンを外し合う。いったん落ち着きかけた熱がまた、加速をつけて上昇してゆくのを始めるのを止められない。
周の手のひらに煽られるように全身を隈なく洗われ、蕩けそうな皮膚に湯を掛けられ額にキスを受けた。お互いの熱が上がりきった感じで、ほとんど飛び出すような勢いでバスルームを出てベッドルームに向かう。
「周、ほらちゃんと拭かないと風邪、引くぞ」
互いをバスタオルで拭いながら子供のように2人で笑い転げベッドに縺れ込み、深い夜に埋没してゆく。
両手の指を絡め、強く握り合い周の手を取ったまま、日常から抜け落ちていくのを感じた。
<< ←前話 / 次話→>>
翠滴 1 →
翠滴 2 →
□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
すみません!短いです。う~~~昨日までのバタバタで頭の中がカキカキモードに
切り替わらんのですよ。この頭、復帰するのかしら・・・(焦
ブログ拍手コメントのお返事は、サイトの”もんもんもん”の
ブログ拍手コメ・メールのお返事からか、もしくは*こちら*から

↑
続き書いてもいいよ~♪
という奇特なかたはポチお願いします。
↓
すみません!短いです。う~~~昨日までのバタバタで頭の中がカキカキモードに
切り替わらんのですよ。この頭、復帰するのかしら・・・(焦
ブログ拍手コメントのお返事は、サイトの”もんもんもん”の
ブログ拍手コメ・メールのお返事からか、もしくは*こちら*から

↑
続き書いてもいいよ~♪
という奇特なかたはポチお願いします。
↓
昨日の怖さと打って変わってラブラブで…うふふ、にやける←
こんなに愛し合ってるカポーに、瀬尾、本当お邪魔虫ですねぇ(しみじみ
どんなに揺さ振ったところで、この2人は切れないぞ!
早いところ諦めてーーー!!
(まぁ、無理でしょうな…かなりの時間歪な片思いしてるわけだし。片思いって表現は可愛らしいのにぃ~~うぅ)
ところで周さん、一般道でGが掛かる速度は宜しくないのでは?(爆)
つかまるっちゅ~ねん!ww
でも確かに~Zじゃ飛ばしたくもなりますよね( ̄ー ̄)ニヤリッ
先日山に行ったら、ドリフト跡多数で…楽しそうだなぁ~と思った事は内緒です(え