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紙魚

Author:紙魚
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Category: 深海魚 (全31話 )

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深海魚 27

「圭太さん?」
「お前の話の中には、俺の気持ちは入ってないよな。
おまえはいつだってそうだ。自分で勝手に考えて、自分を否定して我慢して・・・俺の気持ちは、シズカの中で一体どうなっている?お前の言葉の中には俺の気持ちなんて、これっぽっちも入ってないじゃないか」

 圭太が左右の二の腕を掴んで顔を近づけ、静の瞳を覗きこんだ。
 自分を抉り出そうとする圭太の瞳を真っ向から見返す。
 もう逃げないと決めた。あの、青く煌く海の中でもう二度と真実から目を逸らさないと。
 自分にも誰にも、もう嘘はつきたくない。

「俺がどんな気持ちで、お前を探し海から引き上げたと思う?」
 断罪するような厳しい口調とは裏腹に、圭太の瞳が濡れているような気がした。
 背後の白い壁に反射した太陽の光が、圭太の整った顔を明るく照らし陰影をおとす。陽の光の似合う人だと思う。これまでの人生を真っ直ぐに歩いてきた憧れの人。
 静は、泣き出しそうになるのを抑えて無理矢理笑った。

「圭太さんには、二ノ宮さんがいるから」
「あぁ?二ノ宮が?なんで?」
「伊原さんが、圭太さんの新しい恋人だと、・・・・え?」
 圭太の顔がみるみる憤怒で強張り、目は炎を噴出しそうなくらい爛々と燃えている。
「・・・・・・よくわかった」

 どこへいくつもりか、無言で圭太が立ち上がろうとするのを、静の腕が止めた。
「圭太さん!じゃあ、あの・・・二ノ宮さんは?」
「お前、どれだけ俺と付き合ってきてんの?俺のこと好きだって言うなら、俺の好みぐらいわかるだろう。伊原の嘘くらい、サクっと見破れよ。どう考えたってありえない相手だろうが。二ノ宮だぞ?あいつと2人、無人島に置き去りにされたとしても、恋愛感情だけは絶対に生まれっこない」

 自分はどれだけ、伊原の言葉に振り回されていたことか。抜き差しならない自らの恋心に切羽詰って、ステレオチックに伊原の言葉を鵜呑みにしていった自分が恥ずかしくなり、静の顔はみるみる赤面した。

「シズカ。海の中でのキスを憶えてないのか?それとも、俺が戯れでキスしたと思ってる?」
 朧な記憶が甦る。抱擁され肌を行きかう体温や、柔らかい唇に恐ろしいくらいの幸福感に世界が溶けていった。この時が、永遠であればいいと願った。
「夢か・・・と、思った」
 自分の唇を指の先で押さえる。
 静の頭の後ろを大きな手が包み、添えられた温かさに既視感を感じた。
「BARIで一緒に食事したあの夜、本当はこうしたかった」
 吐息を感じる程に近づいた圭太のしっかりと質量のある少し大きめな唇に、伏せ気味の静の瞳が釘付けになる。ゆっくり近づいてきて自分の唇の上で、声がした。
「あの夜から、ずっとこうしたかった」

 バレンタインのチョコレートを口に含み、薄紅の舌が唇をなめ舐る光景が蘇って心拍数が上がる。高鳴る胸が苦しくて瞳を閉じた。
 唇に、柔らかい熱が重なった。
 充分に温度を分け合い離れていくと、圭太が大きくなった鳶色の瞳を覗いて、初めて会った頃を思わせる気遣うようでからかうような笑みを浮かべる。

「俺の気持ちを、訊いてくれないのか?シズカ」
「俺は・・・・圭太さんが好きだ。諦めたくない。圭太さんの気持ちを聞かせて?」
 圭太の両掌が頬を包み、輪郭を確かめるように撫でる。親指が鬚のあった辺りを、愛おしげに何度も辿る。
「シズカ、俺もお前が好きだ。こんなに愛しいと思っているのに、なんで今まで気が付かなかったのか、不思議なくらいだ。シズカは願掛けまでして想っていてくれたというのに」

 圭太の唇が顎に音を立ててキスをし、また唇同士が重なる。先の重ねるだけのキスとは違い、舌先を尖らせ静の柔らかい上唇を捲りあげてくる。キスなど初めてでも何でもないのに、動悸がさらに高まり気付いた時には、口腔を巧みに愛撫され、クッションに預けた静の上半身は大きく傾いでいた。
落ちた身体の下でガサリと音がする。
「え?」
 静の顔に疑問符が浮かぶと、圭太がホッチキスで纏められた白い冊子を取り上げニヤリと笑った。

「シーラカンスの権利書、あの店は俺が買い取った」
 鳶色の瞳が瞠目する。
「話は、あとだ」
 圭太は薄い冊子を床の上に無造作に落とすと、再び唇を重ねた。
 完全にベッドに乗り上げ、静を跨ぐ。口づける圭太の舌に上顎を擽られ、きつく吸い出された舌を甘咬みされると、身体中が官能に痺れ何も考えられなくなる。反応する下肢を圭太から離そうと、ずらしながら身じろいだ。
 不意に圭太が身を起こし、静から身体も唇も離す。

 突然の行動に静の瞳の鳶色が動揺し、失望に大きく揺れた。
 なにか、圭太の興を削いでしまったのだろうか?怒らせてしまったのだろうか?
 もしかしたら、身体をずらしたことで、嫌がっていると思われたのかもしれない。祈るような気持ちで、膝で跨り自分を見下ろす圭太を見つめた。




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深海魚 1 から読む

■静×圭太 関連<SS> ― 願い ―

■河村 圭太 関連作 翠滴 2

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 
すみません!!予約投稿の時間を間違えてました。しかも、まだ終わりません(謝!! 
 ずるずる引っ張って、申し訳ないですm(_ _;)m

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Comments

キタ━━(((≧∀≦)))━━!!!!!
圭太ーーーー!!!!!
す、素敵過ぎます!!!!!

>「シーラカンスの権利書、あの店は俺が買い取った」
>「え?」
>「話は、・・・あとで・・・ん・・」

ぐは・・・(///∇//)
んも~~~悶えますーー!!!カッコイイー!
んでも、3日ぶりに目覚めて一番最初に口にしたのが圭太の唾液って…( ´艸`)ムププ♪
病み上がり、また寝込まない程度でお願いします、圭太さん(笑)
いや~ん、まだ続くんですね!!
はい!!楽しみにして待ってますとも!!!
(今回「!」多すぎ…ww)
圭太!素敵~!!
きゃ~!!!
ようやく・・お互いの想いが通じ合いましたね!!
良かったよぉ~!!
静には、痛い経験だったけど・・これからの幸せを考えると、もう、忘れちゃいそうです!!(←私が・・爆)
次は・・次は・・・むふっ!!(←ヤラシイ・・)

いえいえいえいえ・・・
どんどん引き延ばしちゃってください!!
紙魚さまの書かれるエチ・・・かなり悶えますから・・。(ふふっ・・)
楽しみで小躍りしちゃいそう!!(爆)
Re: キタ━━(((≧∀≦)))━━!!!!!
 柚子季さま、こんばんはです♪

> 圭太ーーーー!!!!!
> す、素敵過ぎます!!!!!
 おおおーーーっ!「素敵」ありがとうございます!!

> ぐは・・・(///∇//)
> んも~~~悶えますーー!!!カッコイイー!
 店の権利は、本当はタダでぶん取っていてもいいくらいなんですけど、後腐れを残したくない圭太は買い取ったみたいです。

> んでも、3日ぶりに目覚めて一番最初に口にしたのが圭太の唾液って…( ´艸`)ムププ♪
 あ、そうだ!!気が付かなかった!お腹壊さないでしょうか~~?(笑)

> 病み上がり、また寝込まない程度でお願いします、圭太さん(笑)
 (爆)ご心配、ありがとうございます!!まさに、次話はそこから入ります!いいのかな~、私・・・最近、ちょっとつめて書いているせいか、えろ記事ばっか書いている気がします(汗
> いや~ん、まだ続くんですね!!
 予定では、今日で完結の予定だったんですけど、いつもの悪い癖が・・嗚呼~~~
 纏める能力、誰か私に・・・・くださーい!
> はい!!楽しみにして待ってますとも!!!
 そう言ってくださる、柚子季さま、愛してます~~~!!
> (今回「!」多すぎ…ww)
 私も、日に日に増えてる気が・・・なんですか、叫びたい季節なんですね、きっと~~春だもん
 
 コメント&ご訪問☆ありがとうございます!
Re: 圭太!素敵~!!
 ミートン・メートンさま♪ようこそっす。

> ようやく・・お互いの想いが通じ合いましたね!!
 ようやく、、、ですよ!この一言のために何話使うんだ??っていうくらい、今回は動きのない話を延々書き続けてしまいました。

> 静には、痛い経験だったけど・・これからの幸せを考えると、もう、忘れちゃいそうです!!(←私が・・爆)
 私も既に忘れかけてる・・・(゜Д゜;lll) 最近脳の容量が劇的に減ってる気がします(汗

> 次は・・次は・・・むふっ!!(←ヤラシイ・・)
 このまえのえろ記事でかなり疲れたんで、今回はソフトにいかせて頂きたいと・・・静も疲れていることですし・・あ、全然イけそうな感じですね・・・朝チュンってダメかしら。

> 紙魚さまの書かれるエチ・・・かなり悶えますから・・。(ふふっ・・)
 え~~~!ホントウデスカ??あんなにヘボいのに(/////)
 もう、そう言っていただけるなら・・・って、さっきのソフトタッチはどこへ行っちゃったんでしょう

> 楽しみで小躍りしちゃいそう!!(爆)
 ひ~~~~っ!ミートン・メートンさま!ガッカリさせたら、ごめんよう~~~!!

 コメント&ご訪問、感謝です☆
わお
ホントに河村氏素敵です。
この人がその気になると、一気に甘い雰囲気を醸し出しますね。さすが王子♡

これまた、今日も気になるところで切れてるんですもの~!!モジモジ。
あ、私からも寝込まない程度でお願いします(。-_-。)ポッ
Re: わお
 シマシマ猫さま、いらっしゃい~~again!

> ホントに河村氏素敵です。
 ヤタ!!「素敵」頂いた~~~!!ありがとうございまっす!

> この人がその気になると、一気に甘い雰囲気を醸し出しますね。さすが王子♡
 おお、王子路線はまだ健在でしたか、よかった~
 あまりに地味な話しを延々続けてしまったんで、王子っぽさも、剥げてしまったのではないかと危惧していました。
 
> これまた、今日も気になるところで切れてるんですもの~!!モジモジ。
 もうちょっと先まであったんですけど、異常に長くなって読んでいると退屈しそうだったんで、ブチッと切ってしまいました。こりゃまた、いいところで切れたみたいでv

> あ、私からも寝込まない程度でお願いします(。-_-。)ポッ
 おお、これは朝チュン禁止令ということでしょうか?前回、小物使いなんてやっちゃったから、食傷気味でなかなか、頭のえろ書きモードスイッチが入らんのですよ。そうですね、静の体調も考えて、今回はライトエロでいきたいと思います。

 コメントとご訪問♪嬉しいっす!

Re: うわ・・・
 Kさま、こんばんは♪ようこそっす!
 
 ↓↓(爆)~すごく、期待して頂いているのが伝わってきて・・
> どこまで焦らす圭太さんっ!! ゴフッ
 ここのところ、毎回、今日(明日)で完結だと思いながら書いているんですけれど、眠いせいか一向に進展しないんです。本当なら、今日で完結をみていたはずなんですけど・・・
もう、私あちこちで大法螺を吹いてしまいました(汗

> まぁ、いいや・・・ この幸せがずっと続くなら喜んでお付き合いしますっ!!(正座)
 そうですかぁ?じゃあ、お言葉に甘えて・・・・って、違いますよね。。

 コメント&ご訪問、感謝でございます!
わくわくわくわくわうわ…
圭太かっこいい!きゃ~~~しーちゃんこんなこと言われたら天にも昇る気持ちでしょうねえ!
危機一髪のところまで追い込まれたけど、やっと気持ちを伝えあえましたね…(TωT)ウルウル
そ、そしてぇ…
焦らしプレイ!!(違
o(~o~;):ハァハァ・・!! いやもう何話でも続いちゃって大丈夫、というかむしろそうして下さいお願いです紙魚さま(もう何を言っているのか自分でも良く分からない
続きが更新されるまで、ずっとアイドリング状態でお待ちしてますから!!
Re: わくわくわくわくわうわ…
 りりさま、こんにちは~~♪

> 圭太かっこいい!きゃ~~~しーちゃんこんなこと言われたら天にも昇る気持ちでしょうねえ!
 おお、「かっこいい」頂いた~!ありがとうございます。

> そ、そしてぇ…
> 焦らしプレイ!!(違
 ひ~~~~~~っ!りりちゃんまで!!
 さっき、3時起きで仕上げた仕事のデータ送信終えて、今から書くんですけど、もう頭が回ってません。今日の、夕方の更新は落としちゃうかもです・・(´A`)~3
 
> o(~o~;):ハァハァ・・!! いやもう何話でも続いちゃって大丈夫、というかむしろそうして下さいお願いです紙魚さま(もう何を言っているのか自分でも良く分からない
 エ?じゃあぁ、お言葉に甘えて、次の連載が決まるまで、延々と\(≧▽≦)丿・・・って、違いますね。りりさまがよく仰ってくれる、美しい日本語どころか日常会話すらも怪しい私なのでございます。最近書いた記事は読み返すと、あまりの雑さに( ̄□ ̄;)・・・・

> 続きが更新されるまで、ずっとアイドリング状態でお待ちしてますから!!
 ありがと~~う!夕方、落としたらごめんよ~~~っ!!(オッサンですね、既に・・・ 

 コメント&ご訪問、感謝です。
焦るな圭太!
やっと、圭太さんの告白聞けてワタシもうれしいよ♪
でも、あせりすぎでは?圭太さん。
長いこと秘めた想いで待たせた挙句、ここって病院じゃぁ・・・、それに3日間振りに目覚めたんだし、静ちゃん病み上がりっすよ。ここは落ち着いてね。気持ちはわかるけど。。。

権利書買っちゃうってのは、恋人への初めてのプレゼントですかね。それとも伊原氏からの詫び代込み?
Re: 焦るな圭太!
 おお、甲斐さま、こちらにも~~♪

> やっと、圭太さんの告白聞けてワタシもうれしいよ♪
 やっと、大事なところを忘れずに書けて、私もほっとしています~3

> でも、あせりすぎでは?圭太さん。
> 長いこと秘めた想いで待たせた挙句、ここって病院じゃぁ・・・、それに3日間振りに目覚めたんだし、静ちゃん病み上がりっすよ。ここは落ち着いてね。気持ちはわかるけど。。。
 あ、そっか!!すみません~~~記述が抜けてました!!
 ここは、病院じゃなくて、圭太のセカンドハウスなんですよ。
 マズイ!!!!後で、補足しておきます。いくらなんでも、病院で・・・は拙いですよね(笑)
 今日の更新では、病み上がり相手に、やる気マンマンのケイタくんが出ています
 (私って、キチク・・・・・?
 
> 権利書買っちゃうってのは、恋人への初めてのプレゼントですかね。それとも伊原氏からの詫び代込み?
 静が思い入た店を、伊原の所有にして置きたくないって事でしょうか・・・圭太と付き合いだした静が、まだ伊原とかかわりの深い店を続けたいっていうかどうかもわかりませんし。
まあ、素直に伊原がお店を渡さなかったら、圭太はもうちょっと暴れて伊原も、もう2~3本歯を折っていた可能性も・・・

 こちらにも、コメント&ご訪問、ありがとうございます!!

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