04 ,2009
深海魚 27
「圭太さん?」
「お前の話の中には、俺の気持ちは入ってないよな。
おまえはいつだってそうだ。自分で勝手に考えて、自分を否定して我慢して・・・俺の気持ちは、シズカの中で一体どうなっている?お前の言葉の中には俺の気持ちなんて、これっぽっちも入ってないじゃないか」
圭太が左右の二の腕を掴んで顔を近づけ、静の瞳を覗きこんだ。
自分を抉り出そうとする圭太の瞳を真っ向から見返す。
もう逃げないと決めた。あの、青く煌く海の中でもう二度と真実から目を逸らさないと。
自分にも誰にも、もう嘘はつきたくない。
「俺がどんな気持ちで、お前を探し海から引き上げたと思う?」
断罪するような厳しい口調とは裏腹に、圭太の瞳が濡れているような気がした。
背後の白い壁に反射した太陽の光が、圭太の整った顔を明るく照らし陰影をおとす。陽の光の似合う人だと思う。これまでの人生を真っ直ぐに歩いてきた憧れの人。
静は、泣き出しそうになるのを抑えて無理矢理笑った。
「圭太さんには、二ノ宮さんがいるから」
「あぁ?二ノ宮が?なんで?」
「伊原さんが、圭太さんの新しい恋人だと、・・・・え?」
圭太の顔がみるみる憤怒で強張り、目は炎を噴出しそうなくらい爛々と燃えている。
「・・・・・・よくわかった」
どこへいくつもりか、無言で圭太が立ち上がろうとするのを、静の腕が止めた。
「圭太さん!じゃあ、あの・・・二ノ宮さんは?」
「お前、どれだけ俺と付き合ってきてんの?俺のこと好きだって言うなら、俺の好みぐらいわかるだろう。伊原の嘘くらい、サクっと見破れよ。どう考えたってありえない相手だろうが。二ノ宮だぞ?あいつと2人、無人島に置き去りにされたとしても、恋愛感情だけは絶対に生まれっこない」
自分はどれだけ、伊原の言葉に振り回されていたことか。抜き差しならない自らの恋心に切羽詰って、ステレオチックに伊原の言葉を鵜呑みにしていった自分が恥ずかしくなり、静の顔はみるみる赤面した。
「シズカ。海の中でのキスを憶えてないのか?それとも、俺が戯れでキスしたと思ってる?」
朧な記憶が甦る。抱擁され肌を行きかう体温や、柔らかい唇に恐ろしいくらいの幸福感に世界が溶けていった。この時が、永遠であればいいと願った。
「夢か・・・と、思った」
自分の唇を指の先で押さえる。
静の頭の後ろを大きな手が包み、添えられた温かさに既視感を感じた。
「BARIで一緒に食事したあの夜、本当はこうしたかった」
吐息を感じる程に近づいた圭太のしっかりと質量のある少し大きめな唇に、伏せ気味の静の瞳が釘付けになる。ゆっくり近づいてきて自分の唇の上で、声がした。
「あの夜から、ずっとこうしたかった」
バレンタインのチョコレートを口に含み、薄紅の舌が唇をなめ舐る光景が蘇って心拍数が上がる。高鳴る胸が苦しくて瞳を閉じた。
唇に、柔らかい熱が重なった。
充分に温度を分け合い離れていくと、圭太が大きくなった鳶色の瞳を覗いて、初めて会った頃を思わせる気遣うようでからかうような笑みを浮かべる。
「俺の気持ちを、訊いてくれないのか?シズカ」
「俺は・・・・圭太さんが好きだ。諦めたくない。圭太さんの気持ちを聞かせて?」
圭太の両掌が頬を包み、輪郭を確かめるように撫でる。親指が鬚のあった辺りを、愛おしげに何度も辿る。
「シズカ、俺もお前が好きだ。こんなに愛しいと思っているのに、なんで今まで気が付かなかったのか、不思議なくらいだ。シズカは願掛けまでして想っていてくれたというのに」
圭太の唇が顎に音を立ててキスをし、また唇同士が重なる。先の重ねるだけのキスとは違い、舌先を尖らせ静の柔らかい上唇を捲りあげてくる。キスなど初めてでも何でもないのに、動悸がさらに高まり気付いた時には、口腔を巧みに愛撫され、クッションに預けた静の上半身は大きく傾いでいた。
落ちた身体の下でガサリと音がする。
「え?」
静の顔に疑問符が浮かぶと、圭太がホッチキスで纏められた白い冊子を取り上げニヤリと笑った。
「シーラカンスの権利書、あの店は俺が買い取った」
鳶色の瞳が瞠目する。
「話は、あとだ」
圭太は薄い冊子を床の上に無造作に落とすと、再び唇を重ねた。
完全にベッドに乗り上げ、静を跨ぐ。口づける圭太の舌に上顎を擽られ、きつく吸い出された舌を甘咬みされると、身体中が官能に痺れ何も考えられなくなる。反応する下肢を圭太から離そうと、ずらしながら身じろいだ。
不意に圭太が身を起こし、静から身体も唇も離す。
突然の行動に静の瞳の鳶色が動揺し、失望に大きく揺れた。
なにか、圭太の興を削いでしまったのだろうか?怒らせてしまったのだろうか?
もしかしたら、身体をずらしたことで、嫌がっていると思われたのかもしれない。祈るような気持ちで、膝で跨り自分を見下ろす圭太を見つめた。
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深海魚 1 から読む
■静×圭太 関連<SS> ― 願い ―
■河村 圭太 関連作 翠滴 2
□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
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す、素敵過ぎます!!!!!
>「シーラカンスの権利書、あの店は俺が買い取った」
>「え?」
>「話は、・・・あとで・・・ん・・」
ぐは・・・(///∇//)
んも~~~悶えますーー!!!カッコイイー!
んでも、3日ぶりに目覚めて一番最初に口にしたのが圭太の唾液って…( ´艸`)ムププ♪
病み上がり、また寝込まない程度でお願いします、圭太さん(笑)
いや~ん、まだ続くんですね!!
はい!!楽しみにして待ってますとも!!!
(今回「!」多すぎ…ww)