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紙魚

Author:紙魚
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Category: 翠滴 -side story-  

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翠滴 side menu  鳴海 2
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 「取り引き?」

 今や、周の顔は完全に覚醒し訝しげに厳しさを帯び、憮然と聞き返した。
背凭れから頭を擡げて、ミラー越しに鳴海を真直ぐ見返してくる。

 どんな表情をしても、美しいと鳴海は思う。決して、女性的でも中性的でもない、身長も 自分と同じぐらいで180を少々超えている。多少、線の細い部分はあるが、キリっと外に向け上がった眉、キリッと引き締まった形のよい輪郭は雛人形の男雛を連想させる。切れ長の目に納まる翡翠の瞳が、この美しい東洋顔に神秘的な魅力を添えている。

 永邨 周(ながむら あまね)
 我社、N・Aトラストの美しい切り札。

 「なんのつもりだ?」
 「取り引きですよ。周様」

 「私は、一族のコマとして扱われ、自分を殺しながら本宅の言いなりに
 生贄役を引き受ける貴方を、多少は不憫に感じています」

 周は、露骨に嫌悪の表情を鳴海に向けた。

 「お前が言うな」

 周は、その生贄を、毎回 祭壇である相手宅にデリバリーしているのはお前だろうがと、詰ってやりたくなる。

 「今回のような長逗留は、貴方にもかなり堪えているはずです。
 一回の”お努め”の時間を、"短く"したくはありませんか?」
 「・・・出来るのか?」

 周は大きく目を見開いて、シートから身を起こし運転席に顔を近づけた。
 カラーコンタクトを嵌めていない切れ長の目から、瑞々しい緑が溢れ出てくる。
 その視線を感嘆の思いで受け止めた。

 「先方の方々は、貴方にかなり入れ込んでいるご様子です。
 こちらから、時間に条件をつけるのは可能かと思います。
 貴方本人からの交渉は不可能でしょうが、永邨からということであれば、
 先方もある程度の有余はして頂けるかと・・」

 「・・・・・」
 「私を、手懐けておくのも悪くないでしょう?」

 実現されれば、周の身体も精神的な部分もかなり楽になる。特に今回のような、執拗に長い拘束は、周から体力も精気も根こそぎ搾り取る。
 周はミラー越しに端正な顔に掛かる銀縁眼鏡の奥の計算高い瞳を睨み付け、鳴海の考えを探った。

 「取引きって言ったな。要求は何だ? 金か?」
 「僭越ながら、金には困っていません。貴方の伯父上であられる騰真様から
 充分すぎる程頂戴していますし、こんなド田舎では、
 金なんぞ使いようもありませんしね」

 鳴海は鼻で笑いながらで答えた。
 
 眼鏡の奥の鋭い眼差しがミラー越しに流れる。ガラスや鏡を通過しても、殺がれる事の無い昏い欲情の炎に気付き要求の在りかを知る。

 長い沈黙の後、周が挑むように呟いた。
 
 「・・・いいぜ、こっちに来いよ」
 「いえ、貴方が助手席に移ってきてください」
 「取引きじゃないのか?」
 「私達は、イーブンではありません。貴方の方が、分が悪い」ミラーの中の鳴海の目が嗤う。
 「・・・・・」

 躊躇った後、周はいつもなら鳴海に開けてもらう後部座席のドアを自分で開け、5月の薫風と共に助手席に移ってきた。

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テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

5月の薫風とともに助手席に……のくだり、はっとさせられる言い回しでした。
それにしてもねえ……( ̄∀ ̄)
周が生け贄にされてる場面の描写は、これまでにあるの?
周受け支持者のわたしとしては、それを喉から手が出るほど読んでみたいのですが。
相手は傲岸なオッサンだったりするといいなあ(笑)
7月さま♪
 7月さま、ようこそです。

> 周受け支持者のわたしとしては、それを喉から手が出るほど読んでみたいのですが。
 ・Ψ( ̄∇ ̄)Ψワッハッハ~!
 どっかで、ストリップやるとこは書いたことありますけど、後はみなさまの想像にお任せということでv(みなさんの脳内妄想の方がきっと、凄いはず・・・(今確認しましたら、ストリップのシーンは2章の雨-4でした。ホントにサワリだけだった・汗)
 相手は倣岸なオッサンがイイと言い切る7月さん。確かに面白い♪←

 コメント&ご訪問、ありがとうございます♪♪

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