BL・MLに関心の無い方 18歳以下の方はご遠慮くださいませ。大人の方の自己責任においてのみの閲覧を お願いします。


プロフィール

紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
拙い文章ですが、お読み頂けましたら嬉しいです。


紙魚は著作権の放棄をしておりません。当サイトの文章及びイラストの無断転写はご遠慮ください。
Copyright (C) 2008 Shimi All rights reserved

*お知らせ*
長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
参加ランキング
FC2カウンター
*
検索フォーム
QRコード
QRコード
06

Category:

Tags: ---

Comment: 7  Trackback: 0

flower Ⅱ-SS-
 22:10 国道沿いの山道を自転車で走っている。
 この時期にしては暖かい夜気に、遅咲きの沈丁花の香が時折混ざり鼻腔をふくらませた。
 
 街灯の少なくなった坂道を立ちこぎに変え、息を切らして上り切ると、神社の鳥居の下の階段に長い脚を組み、しなやかな風情で座る姿を見つけた。Gパンとペパーミント色のTシャツ、それに濃いグリーンと紺のマドラスチェックのシャツを羽織った腰にセーターを巻いている。春に浮かれ躍る胸が、見慣れた制服ではなく私服姿で自分を待つ姿にざわつき出した。

 驚くか、呆れるか。ポーカーフェイスが崩れるところが見たくて、暗がりの中でそっと自転車を降りてそのまま音を立てないよう注意を払い近付いていく。

 忠桐(ただひさ)の顔は組んだ脚に突いた肘の上で、放心したように少し上に向けられていた。普段の確固たる自信に満ちた態度とは対照的で、あどけなささえ感じさせる。その無防備で頼りなげな表情に、思わず立ち止まった。

 参道に明かりを落す花見の雪洞の仄暗い光の中にあってもなお、色褪せることのない凜と張詰めた空気を醸すその姿に、彼が一般人とは隔たった伝統の世界に生きているのだと改めて思い至る。気を緩めている時でさえすっと伸されている少年の瑞々しさが色濃く残る背に、この先否応なく課せられるであろう荷の重さを思うと、切なくなった。

 空(くう)の一点を見つめていた瞳が流れて止る。「遅い。」 遅刻を責める流し目と、ぴしゃりと言い放つ声が飛んできた。忠桐は時間に厳しい。

「悪りィ、抜け出すのに手間取った」
「トモくんはドンクサイからな」
「呼び出しといて、言われようじゃん。何の用だよ?」
「ちゃんと家に帰ってすぐ勉強したのか?」
 さっきまでの浮かれた気持ちをフリースの下に隠して、つんけんどんに返したオレの言葉は、鋭い諸刃の刃(やいば)となって返ってきた。借りた参考書に、時間と場所だけ示したメモが挟まれてあるのに気付いたのが15分前。つまり、帰ってから一度も参考書を開いてなかった。

「夜桜見物しよう」
「今から? 崖っぷち受験生を夜更に呼び出した理由がそれかよ?」
「それは、受験勉強をやってる人間の言うセリフだ。受験勉強なら、これから9ヶ月間、手取り足取り僕が見てやるって言ってるだろう。GWと夏休みは合宿だから覚悟しとけよ。で、行くの? 行かないの?」

 手と足だけか?とツッコミを入れそうになったけれど、不機嫌な眼差しに喉仏の上で飲み込んだ。

「・・・行く」

 二人で階段を上がってゆく。
 両側から張出した桜の枝が、雪洞に照らされ薄紅のトンネルを作る。人影もなく風もない春の夜に、石段を踏みしめる2人の足音だけがした。
 上がりきると薄紅の雲が本殿を取り囲んでいた。忠桐(ただひさ)は一本の大きな樹の前で止まった。

「樹齢300年だってさ」
桜の太い灰色の幹には所々、緑の苔が生している。
「随分と爺さんなんだな」
 忠桐は応えず、頭上から垂れ篭める花雲を見上げている。
 口角のハッキリした唇を薄く開け、何かに憑かれたように見入る横顔に、心を奪われた。
 忠桐を虜にするするものの正体を求めて、自分も同じ様に頭上を仰ぐ。

 視界が桜で埋まる。自分達の他に愛でる者もないというのに、その存在を見せ付けるように咲き誇る花。
 忠桐を魅了するものを探して、目の前の5枚の花弁や花陰に目を凝らした。

 天の黒を背景に桜の薄紅が、ただ咲いている。音も無く、壮絶なまでに咲き競う小さな花弁の群集に、なぜか狂気のようなものを感じてゾッとした。
 もの言わぬ小さな花の一つ一つが、強烈な夢想を抱いて咲いている気がする。

    怖い

 思いは声になって零れたらしい。

「守ってやるから」
 少し掠れたゾクリと脳髄を刺激する声が、耳のすぐ後からして、しなやかな腕に抱き込まれた。息のかかる襟足がチリチリと痺れる。

「トモは僕が守ってやる」    何から?

 違う、本当はオレが守りたいのに。
 行き場を失った頼りなげな低く切ない呟きは空に留まったままで、未熟な自分たちの無力を知る。
 独りが心細くて、ゆっくり忠桐と向き合う。その肩を樹齢300年の太い幹に押し付けられた。
 自分を魅了した唇が角度を変えて重ねられ、そのまま、太い根の張る根元へと2人して崩れていく。

 薄く目を開ければ、自分に跨る形で座る忠桐の背後を桜の花が覆いつくしている。
 忠桐はまたあの表情をして桜を見上げ、睨んでいた。
 ああ、そうか   と思う。
 この桜は人の想いを喰らうのだ。だから、ひときわ絢爛に咲くのかもしれない。
 天蓋となった桜に忠桐を持っていかれそうな錯覚に捉われて、思わず忠桐に手を伸ばす。 
 上を見ていた忠桐がごつごつした桜の根を枕に寝転がるオレを見下ろして、薄く笑った。

「今夜は帰したくない。そう言ったら、トモはどうする?」
「オレが絶対帰らない、って言ったら忠桐は? どうすんのさ?」

 挑発的に笑う忠桐の唇が 欲情を零しながら桜の天蓋と共に落ちてきた。

    
                            ― Sakura Spiral


←flower Ⅰ          

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 
昨日お花見に行きました。葉の出ている樹もあって、早くUPしないとヤバイぞってことで
以前に書いた『flower ?』を更新させてくださいませ。これといって、萌えもない話なのですが、
さすがに今季最後の”桜テーマ”のお話です。
 


ねねさま、拍手コメをありがとうございます。
お返事をこちらにUPしてありますヾ(=^▽^=)ノ
(12/1


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

ポチしてただけると嬉しいです♪
 


テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

どわーー鳥肌!!
>手と足だけか?とツッコミを入れそうになったけれど
 ↑
鳥肌の前にここで( ´艸`)ムププ♪となりつつ…。

桜に対するトモの恐れが、情景と一緒に伝わって来ましたよ~ゾクゾクした!!
やっぱり紙魚さんの文章って流麗で透明感に溢れてるわ~。脳内に漆黒の闇の中咲き誇る桜と、2人の少年の姿が幻想的に浮かび上がってきました。
桜というより櫻ですね…うわーうわーうわーー。
何だかものっそ心が震えました…。

先日はありがとうございました♪
ご一緒出来て本当に楽しかったです(*´∀`*)
元気も愛も沢山頂いてしまって(///∇//)テレテレ☆
今後ともヨロシクお願いいたします♪♪
『flower』の続編、嬉しいです。
こんにちは♪
『flowerII』は、私が初めて読ませて頂いた『flower』の続編なのですね。
あのお話、とても好きなので嬉しいです。

何と言うか、桜の美しいんだけど畏怖を覚える部分が、登場人物の心理、外的要因に絡んで表現されていて、ため息が出ました。
幽玄で美しい世界です~。
私が今推敲しているのと次回予定の話はすごく現実的で、夢も美しさもなかりけりでして。
内容が無理なら、せめて紙魚さんの美しい文章表現を学ばせて頂きたいなと思った一編でした。

先日は楽しかったですね~。
紙魚さんもいらしたらいいのに…と思っていたので、とても嬉しかったです。
またあのような機会が持てたらいいでね。

Re: どわーー鳥肌!!
 柚子季さま、こんばんは♪

> 鳥肌の前にここで( ´艸`)ムププ♪となりつつ…。
 忠桐はトモの手と足と・・・・トモは受験に失敗しますね、きっと(爆

> 桜に対するトモの恐れが、情景と一緒に伝わって来ましたよ~ゾクゾクした!!
 今季最後の桜テーマです。
 桜って大好きなんですけど、清廉な姿をしているのに見る者を畏怖させる力を持ってますよね。でもこれは、日本人独得の捉え方なのかも知れませんね。

> やっぱり紙魚さんの文章って流麗で透明感に溢れてるわ~。
 ひょえ~~恐れ多いっす!深海魚は多少汚れても平気(←酷!)なんですけど、この話は高校生を扱ってますので・・・一応。

> 何だかものっそ心が震えました…。
 もう、萌えも何も無い記事なんですけれど、柚子季さまにそう言ってもらえて救われます(涙

> 先日はありがとうございました♪
 こちらこそです!!
 柚子季さまをはじめ、憧れの書き手さま達とご一緒でき、
 舞い上がってしまいました(//▽//;)ありがとうございます!!
 打ち込みが異常に遅いのがネックですけれど、是非またご一緒させてくださいませ~♪

 コメント&ご訪問、感謝です!!
Re: おぉ!!
  Kさま、いらっしゃいませ♪
 実は、このSSを書いたとき丁度Kさま主催の企画の最中でして、ややこしいかと思いUPを控えていました、、、で、Kさまの桜テーマの楽しげな企画に、よろめくように参加させて頂いた次第です♪

> そのまんま幻想的で絵になりそうですね!
 イエ、あの企画で絢爛に咲き競う桜を見た後では、ウチのショボイ夜桜なんぞ・・・

> 夜桜の鳥肌が立つ感覚・・・
> 凄くよく解ります!
 桜って、不思議ですよね。一つ一つは可憐なのに群集になると壮絶な感じがします。
 夜に見る桜は、ちょっと怖いです、、でも好き。

 コメント&ご訪問、感謝です♪

Re: 『flower』の続編、嬉しいです。
 おお、紙森さま、いらっしゃいませ~
 
> あのお話、とても好きなので嬉しいです。
 そうなんです。紙森さんが拙宅ではじめて読んでくださったSS『flower』の続編です。
 前回は風が吹いていましたが、今回は無風で舞い落ちもしません。
 闇にただ、ただ、咲く桜。怖いですね。

> 何と言うか、桜の美しいんだけど畏怖を覚える部分が、登場人物の心理、外的要因に絡んで表現されていて、ため息が出ました。
 うおおおお~~~、さっき自分でざっと読み直したらかなりの誤字を発見(焦!!!
 でも、言いたいことは伝わったと・・・そう思っていいんですよね!紙森さん!!

> 私が今推敲しているのと次回予定の話はすごく現実的で、夢も美しさもなかりけりでして。
> 内容が無理なら、せめて紙魚さんの美しい文章表現を学ばせて頂きたいなと思った一編でした。
 紙森さま、参考にする人間を間違ってます・・・
 私は、やっぱり現実味のある紙森さんの作品が大好きなんです。どうやったら紙森さんのような、登場人物の呼吸する音まで聞こえてきそうな文章が書けるのか・・・私には羨望の的なんです。

> 先日は楽しかったですね~。
 楽しかったです!!憧れのみなさまとお話できて、感激でした。
 タイピングと頭の回転の遅さか口惜しかったです~~最後寝てたし・・・

> 紙魚さんもいらしたらいいのに…と思っていたので、とても嬉しかったです。
> またあのような機会が持てたらいいでね。
 そう言って頂けて、嬉しいです~~~。
 偶然、あの時間に駄文さんに伺えて、超ラッキーでした!
 ぜひ、またご一緒させてくださいませ~~!

 コメント&ご訪問、嬉しいです♪
なんか、なんか..
涙がコロリと出てきそうな切ない気持ちです。
不安定なお年頃の少年たちの心情が、乱れ咲く桜の花たちに投影されてるような。

そちらの桜はそろそろピークを過ぎますか?シマ猫ちゃんは北国在住なので、ゴールデンウイーク辺りが見頃なんですよ(*´∀`*)
Re: なんか、なんか..
 シマシマ猫さま、おはようございます(^▽^)/

> 涙がコロリと出てきそうな切ない気持ちです。
 深海魚がゲゲッ状態なので、若い瑞々しい感覚に触れたくなって、いきなりのUP。
 「なんでやねん」と声が飛んできそうな・・・切ないと言って頂き、救われます~

> 不安定なお年頃の少年たちの心情が、乱れ咲く桜の花たちに投影されてるような。
 いつか、この子達の話をもう少しちゃんとお話に出来れば良いな~と思いつつ、手が回らないであろう私・・
 
> そちらの桜はそろそろピークを過ぎますか?シマ猫ちゃんは北国在住なので、ゴールデンウイーク辺りが見頃なんですよ(*´∀`*)
 おお、シマ猫ちゃんは北国にお住まいなんですね~。遠いところに住む方と簡単に繫るネットって、不思議でありがたいシステムだと実感です☆

 こちらは、ちょうど今がソメイヨシノの見ごろです♪
 きのうハイキングに行って来たんですが、山桜も満開で緑の山肌に白い花がとても綺麗でしたよ~♪ 八重桜の蕾もだいぶ膨らんでいました。昨日今日と、こちらはとても暖かいので週後半には散り始めてしまいそうです。
 クラクラと萌える春の陽気に、益々頭が使い物にならなくなりそう(苦笑~

 コメント&ご訪問、ありがとう~~(チュッ!←レシーブが返ってきそう(笑)

Leave a Comment