BL・MLに関心の無い方 18歳以下の方はご遠慮くださいませ。大人の方の自己責任においてのみの閲覧を お願いします。


プロフィール

紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
拙い文章ですが、お読み頂けましたら嬉しいです。


紙魚は著作権の放棄をしておりません。当サイトの文章及びイラストの無断転写はご遠慮ください。
Copyright (C) 2008 Shimi All rights reserved

*お知らせ*
長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
参加ランキング
FC2カウンター
*
検索フォーム
QRコード
QRコード
18

Category: 深海魚 (全31話 )

Tags: ---

Comment: 9  Trackback: 0

深海魚 14

 深夜、宴もお開きになり、客たちは伊原に37歳の祝いの言葉や抱擁を献上し徐々に帰って行く。留学経験のある圭太からすると、抱擁をする挨拶は見慣れたものであったが、日本人同士がやっているのを見ると、いつも少し違和感を覚えた。

 圭太は、静の顔を見てから帰るかどうか迷っていた。伊原とキスをする後姿を見た後、静の姿を見ることは無かった。自分の中に生まれた静への拘りが軋みを上げている。パーティーで立ち歩く静の姿が目に焼きつくほどに見た。
 楚々とした立ち姿も、薄い鬚に覆われた綺麗な形の顎の上部に位置する柔かそうな口唇も、黒く艶のある前髪の下のゆるくおろした長い睫も・・・静への想いに気付き始めた心に、それらの容色は小さな苛立ちを伴いながら圭太を煽り続けた。伊原とキスする姿を見ても、煽られた想いが醒めることは無く、ただ何かが足りない歯がゆさが胸に痼る・・・
 今日は、あの綺麗な鳶色の瞳と一度も目を合わせていない。避けられているような気がして、それもずっと気にかかっていた。静は、自分に伊原との事をカミングアウトしたことを後悔しているのだろうか。

 リビングのソファを見ると、二ノ宮がすっかり打ち解けたタレントの少女とメールのアドレス交換をしている。2人の会話は際限なく広がって、放って置けばフィギュアがどうの、ゲームのキャラクターが声優がとオタッキーな話が、朝まで続きそうだ。帰りたそうにマネジャーらしき男が2人の前に仁王立ちになっているが、全く無視で2人で盛り上がっている。

 自然に足がバーカウンターのある書斎に向く。
一体、自分はシズカを探して何を言うつもりなのか、自問自答した。少なくとも、伊原邸を辞する挨拶などでない。最後に静の気持ちの確認を取っておきたかった。静が本当に伊原のことを想っているのなら、自分の出る幕ではない。
 静は伊原の自邸での勤務の誘いを、何度も断ったと言っていた。もし、伊原に対する想いに少しでも迷いがあるのなら・・・そう願う自分を「諦めが悪い」と思いながらも、確かめずにはいられなくなっている己に、苦笑する。
 これほどまでに、静の存在が自分の奥深いところまで食い込んでいようとは、思わなかった。今となって思えば、近すぎて見えてなかったものが、たくさんあり過ぎた気がする。本当に「今更」だ。

 書斎に踏み入れても静の姿はなく、どうしてもいま会いたい気持ちに駆られて、邸内を探し始めた。先程、静と伊原がキスしていた廊下の奥にドアが一枚あり、そのノブに手を掛けた。

「河村先生、そこはプライベートなエリアなので、ご遠慮願えますか?」
「失礼、シズカを探しているんですが、どこにいるかご存じですか?」
 振り返ると、さっきまで玄関で客を送り出していた伊原が立っていた。
「彼なら顔色が優れなかったので、先に上がらせました。今日は朝からセッティングや何かを手伝ってくれたので疲れたんでしょう」
 あちらこちらに生けられた花や室内のしつらえ、使用されたクロスのセンスの良さに静を感じる。伊原のために朝からここに来て設えたのだろう・・・そう思うと胸が塞いだ。

「何か伝えたい事があるなら、僕が伝えて差上げますよ」
「いえ…結構です」

「圭太さん、もうおいとましせんか?」
 圭太を探してやってきた二ノ宮が欠伸混じりで進言してきた。眠そうに眼鏡を外した目を擦っている。
「へえ…可愛いとは思ったけど、君は本当に整った顔をしているね」

 眼鏡を掛け直した二ノ宮は、ぴたりと伊原に視線を合わせるとニッと笑った。
「残念ですけれど、伊原さんは全くもって、僕の好みではありませんので、僕にちょっかいはかけないで下さいね。僕、寂しがり屋さんの相手って、苦手ですから」
「これは、手厳しい」

 一瞬、虚を突かれた顔をしたが伊原は再びニヤニヤと二ノ宮を眺めた。二ノ宮は笑を引っ込め真顔に戻ると、伊原の視線を煩いハエでも追い払うように無視した。
「圭太さん、帰りましょうよ。リナちゃんも帰っちゃったし、僕も、眠いんです。
じゃ、伊原さん失礼しまふ。けうはごちそうたま」挙句、欠伸しながら礼を言う。失礼なヤツだ。

「どういたしまして。河村先生、MITに在籍できるほど優秀な頭脳を持つ所員をお持ちだなんて、羨ましい限りですね。私もそろそろ疲れてきましたので、失礼しますよ。
またお会いできるのを楽しみにしています」

 欠伸をしながらスタスタ歩き出した二宮に続いて別荘を出た。月明かりの中、アスファルトの上を波音が押し寄せる。2人並んでセカンドハウスまでの坂を登り始めた。圭太が呆れたように溜息を吐く。

「まったく、寂しがり屋だなんて、誰に何言ってんのやら」
「言葉通りの意味ですよ、圭太さん。伊原さんみたいな甘えたさんの相手してたら、キリが無いですよ。花隈さんも彼みたいな人に目を付けられたんじゃ、大変そうだな」

 圭太は意外なものでも見るように二ノ宮を見た。二ノ宮が興味を持つのはオタッキーなサブカルチャーと建築だけかと思っていたら身の回りの人間にもそれなりに興味を持ち、分析し、人間関係まで把握していたらしい。そういえばと、享一にも妙な執着を見せていたことを思い出す。

「静は、伊原氏と付き合っているそうだ」
「ヘ~ぇ~~。エ」
「なんだよ、その「ヘ」と「エ」は?」
「いえ・・・別に~」
 二ノ宮は、物言いたげに圭太の顔を見ながら何度も目を瞬いた。その小動物を思わせるつぶらな瞳に、圭太は思わず小さく噴出した。

「まったく、二ノ宮からその頭脳と容姿を取り上げたら、ただの”オタク”が残るのかと思っていたら、結構周りを見てるんだな。天下のMIT侮りがたしか。二ノ宮相手に予測など不可能な気がしてきた」
「いえ、僕は学内ではバランスが取れすぎてて、ちょっと肩身が狭いです」
「二ノ宮でバランスが取れてるって・・・・一体どういう大学だ。それより二ノ宮、そろそろ学生に戻った方がいいんじゃないのか?」
「へへへ、もうちょっとK2にいさせてくださいよう、圭太さん」
「まあ、どうしてもっていうなら別に構わないが。日本での仕事も減っているし、給与は下げさせてもらうけど?」 整った顔に意地悪な笑いが浮かぶ。
「え~~ヤダッ!!それは困ります!僕の聖地、秋葉原に繰り出す軍資金がなくなっちゃうじゃないですかぁ!」
  
 セカンドハウスの門扉が見えた。
 
 笑いながら上り切った坂の上から、圭太は来た坂道を振り返った。
 暗い海辺に伊原の別荘にだけ煌々と灯りが点いている。
 気遣わしげに自分を見つめる、あの澄んだ鳶色の瞳をいますぐに見たい。その思いを振り切るように背を向けた。



←前話          次話→ 

■深海魚 1 から読む

■静×圭太 関連<SS> ― 願い ―

■河村 圭太 関連作 翠滴 2

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 

  更新ペースは今のままだと思いますが、そろそろランキングに復帰しようかと思います。
 綺麗な色のバナーがあったので、先駆けて設置してみました。
 よかったら、踏んでいってください(*^_^*)ペコリ・ペコリ

 
  ブログ拍手コメントのお返事は、サイトの”もんもんもん”の
 ブログ拍手コメ・メールのお返事からか、もしくは*こちら*から



テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

二ノ宮
うんうん、もっと言ってやってーー!!!
しーちゃん、大丈夫かしら(;´Д`)
うぅ~~圭太も……もどかしいですねぇ。
2人の気持ちがスレスレまでに近寄っているのに、立ちはだかる伊原氏(-ω-;;)
しーちゃんのお初は圭太に上げたいよぉ~~。
紙魚さまぁああぁあぁ!!!クスン。
続きもお待ちしております!!
ドキドキ・・・。
圭太・・そのまま帰っちゃうの??
駄目よ!!
静を連れ戻さないとぉ~!!
伊原に、取られちゃうよぉ~!!
せっかく・・圭太も自分の想いに気が付いたのに・・。

二ノ宮が薄々勘付いているのに、圭太はもう伊原と静が付き合ってるとしか思えないんですね・・。(悲しい・・)
次回は・・・どうなるんだろう・・・。(むふふっ・・←あっ、よからぬ事を・・・・)

ランキングに戻られるそうで!!
嬉しいですぅ~!
楽しみに、待ってますからねぇ~♪
Kさま・・・
 いらっしゃいませ♪コメント、ありがとうございます!

>やっぱりシズカさんに会えなかったですね・・・
 ごめんなさい~!!!Kさま許して。
私って、こんな奴なんです。あ~~~っ、私のバカァ!!

>これも伊原さんの策略ですか?
 伊原の策略=私の策略・・・アタシってヒドイ・・・

>ランキング、復帰、お待ちしておりますぅ~~♪
 ありがとうございます。宣言しないといつまでもズルズルいっちゃいそうなんで、
とりあえず声を上げてみました。
内容も更新速度も変わらないと思いますので、
現状と殆ど変わらない気もしますけど、ゆっくり再開していこうと思います。
どうぞ、よろしくおねがいします~♪
柚子季さま・・・
 こんばんは!!

>うんうん、もっと言ってやってーー!!!
 わ~い。二ノ宮に声援頂いちゃった~~♪
天然オタッキーの二ノ宮は、私のお気に入りなので、今回露出が多かったです♪いらない件まで詰め込んだじゃったので、長文になってしまった・・・テヘ。

>しーちゃんのお初は圭太に上げたいよぉ~~。
 むむむむむ・・・・( ̄ー ̄;)
柚子季さま、投石はダメよ、、あぶないもん←
って、なんか人非人な宣言していますねアタシ・・(汗

>紙魚さまぁああぁあぁ!!!クスン。
 柚子季さまに、お願いされちゃったぁぁぁ!!どうしよう!Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)

>続きもお待ちしております!!
 嬉しい~です♪でも、投石はナシで~~~(泣
コメント、ありがとうございます♪

そうかぁ、伊原氏は寂しがりやさんなのか。なんだかすごく憎たらしいことばっかり言うから、そんなかわいいとこあるとは思いたくないんだけど。。。
でも、そうかもしれないよね、二ノ宮クン、オッタキーなだけじゃないあなたってすごいって今日分かりました、MITの優秀な学生なだけじゃくて。
ああ、このまま汚されちゃうんですかね静さん。このままだと、そうですよね。
---圭太もう遅いかもよん。
ミートン・メートンさま・・・
 おお、こんばんは♪

>圭太・・そのまま帰っちゃうの??
 帰っちゃうんです・・・後ろ髪はグイグイ引かれていると思うんですけれど、、、自分の想いはわかるけど、相手の心がわからない。。厄介です。

>次回は・・・どうなるんだろう・・・。(むふふっ・・←あっ、よからぬ事を・・・・)
 むふふ・・・紙魚もよからぬ事を考えちゃいます。ランキングに戻ろうかという時に、書き手の人格で読者を減らしそう~( ̄▽ ̄;)テヘ

>ランキングに戻られるそうで!!
>嬉しいですぅ~!
>楽しみに、待ってますからねぇ~♪
 ありがとうございます!!Kさまのコメレスにも書貸せて頂いたんですが、更新速度も内容も殆ど変わることはないと思います。ノンビリいく気持ちで復帰することにしました。
 先日の、ミートン・メートンさまのコメントにとても励まされました。ありがとうございます!
近日中には、重い腰を上げようと思います。
また、よろしくお願い致しますね~(ペコリ

コメント、ありがとうございます!もうすぐ、お花見のシーズンですね♪そして、春休み~3

甲斐さま・・・
 こんばんは~♪コメント、ありがとうございます!
 あったかいですね~って、ウチの地域だけでしょうか??

>そうかぁ、伊原氏は寂しがりやさんなのか。
 ちょっぴり、伊原の人間像が読む方の中で変わったのでは・・・傲慢、不埒は人を信じることが出来ない悲しい心の裏返しかも?です。でも、伊原には最後まで憎まれキャラでいて欲しいので、この後もガンガン(?)いってもらいますv

>二ノ宮クン、オッタキーなだけじゃないあなたってすごいって今日分かりました
 おおっ、二ノ宮にまた一票!←・・・???
天然か天才か?ただのボケかお惚けか?二ノ宮で一本書きたくなるくらい、気に入ってます。

>ああ、このまま汚されちゃうんですかね静さん。このままだと、そうですよね。
 もうこうなったら、雨降ってなんとやら・・・で、
私には、石が降ってきそう・・・((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
なるほど。
二ノ宮クンってなかなが面白いキャラですね。可愛いだけじゃなかったんだ~( ̄ー ̄)ニヤリッ
伊原氏に対してあの言動。なかなかの強者だ(笑)

それにしても静さんどこ消えちゃったのかしら..
シマシマ猫さま・・・
 こんばんは。コメントありがとうございます。
あったかいですね。私の住んでいる地域ではさっきまで雨が降っていました。
一雨ごとに春が濃くなっていく感じがしますね。

> 二ノ宮クンってなかなが面白いキャラですね。可愛いだけじゃなかったんだ~( ̄ー ̄)ニヤリッ
 綺麗なものや可愛いものが大好きで、面倒くさいことが大嫌いな二ノ宮です。惚けてるように見えて、実は人間関係なんて書かせたら、一番的を得た答えを書きそうな、天然紙一重な子なので翠滴でも深海魚でも若干、浮き気味キャラです。

> それにしても静さんどこ消えちゃったのかしら..
 いますよん。しかも、普通に・・・・いいのか?アタシ?こんな展開で・・心配になってきました。

Leave a Comment