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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
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Category: 深海魚 (全31話 )

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深海魚 12
「伊原さん、本当にあなたはシズカ1人で満足出来ますか?
シズカ ひとりを愛する自信があると?」

 願掛けの理由(わけ)をシーラカンスで手を繋ぎ内緒話に顔を寄せる2人を目撃し、願掛けの真実を知っても、何かが合致しない。2人の仲を快く認める気にならないのは、自分の嫉妬や願望が混ざっているからかも知れない。
だが、伊原を相手にシズカが幸福になるのは難しい気がした。

「こう言っては何ですが・・・、東京で浮名を流し続ける伊原さんは正直、私の中で”遊び人”という括りにカテゴライズされています。シズカを泣かさないという保証は無い」
「それは、それは・・・。まさか先生の口からそんな言葉が飛び出すとは思わなかったな。
それは、兄代わりとしての問いかけですか?それとも、別の感情から?」

「河村先生は確か、シズカクンのお兄さんと友達なんですよね。仲のいい友人の弟を気遣う気持ちはわかりますが、彼も大人です。恋愛は、自由であるべきだ。この信条は河村先生も僕と共通であると思っていますよ。」
 
 伊原が同意を得るように共犯者の目を向けてくる。
 その顔を圭太は醒めた表情で見返した。
 冗談ではない。自分が恋愛する時は、たとえ短い期間であってもたった一人を、真剣に想う。こんな、複数相手に月代わり用途別で恋人をとっかえひっかえする男の恋愛観と一緒にされたくはない。

「でも先生、ご心配なく。僕は、彼にゾッコンなんですよ。凄い美人だし、控えめで情が厚い。
それにあの、もどかしさも僕は愛してますよ。征服欲を刺激されるって言うのかな・・おっと、すまない、言い方が悪かった。そう睨まないでくださいよ」
 伊原の言葉とその物言いに、圭太は露骨に顔を顰めた。

「鬚なんか生やしているのは勿体無いでし・・・」
 言葉が途中で途切れその顔が一方向にむけて固定された。その視線を追うと、ライトアップされたパティオを囲むように作られた回廊をリビングから戻ってくる静の姿があった。背はそれほど高くは無いが、スラリとしたプロポーションにレジメンタルタイとウイングカラーの白シャツ、黒いスラックスにベストというシンプルでストイックなバーテンダーの装いが初々しさと同時に、思わず目を引く艶やかさを添えている。
清楚で端然とした装いに背く色香を湛えたその姿は、静がニッチに飾った紅い椿を思い起こさせた。

 一瞬、明確な意思を持った憂い色の瞳が上げられた。シズカを凝視していた自分とはっきり目が合ったという気がしたのに、鳶色の瞳はすぐに目蓋が薄く下り視線は隔てられた。
その些細な仕草にも、心のどこかが小さくかき乱される。

 シズカが美人なのは知っている。そのせいで、シズカの中高時代は美しい弟に心配性の薫がどれだけやきもきし、ちょっかいをかけようとする男どもに対する制裁を手伝わされたことか。 

 カウンターに戻ると、静はもう圭太の顔を見ることなくオーダーのメモに目を走らせ、必要なリキュールやソーダ、フルーツ類を手際よくカウンターに並べていく。
淡々と仕事をこなす静の姿に、圭太は静が自分の手を離れていくのを感じた。
 いつまでも庇護をしなければいけないと思っていた相手は、既に立派な大人で自分がどうこう言う相手では無くなっていたという事だ。

「圭太さん!」
 切羽詰った半泣きの声に3人が一斉に顔をあげた。
「どこにいるのかと思えば・・・、探したじゃないですかぁっ!動かないでくださいって・・・
あ、そだ!あっちにいるごオバサン達から圭太さんを連れてくるように仰せ付かってるんです。圭太さんっ、一緒に来て下さいよ。さっきの彼女と2人だと、モグリ、モグリって揶揄われるんです。河村 圭太を連れてこないと信じないって!もォ~、オバサン達に何とか言ってくださいよォ~」
情け無い声で、一気に捲し立てると鼻息の荒い二ノ宮が返事も聞かずに河村の手を引いて歩き出す。

 二ノ宮に引っ張られ、静を一瞥するがとうとう視線が合うことはなかった。
それなのに、立ち去る背中に静の縋るような視線を感じ振り返る。だが、タイミングをわざと合わせているのかずらしているのか。静の鳶色の瞳は手元のカクテルに注がれ、終に捕まえることは出来なかった。




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■深海魚 1 から読む

■静×圭太 関連<SS> ― 願い ―

■河村 圭太 関連作 翠滴 2

 □□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 

 予約更新したつもりが、下書きのままでした(゚д゚lll)
 ま、、ウチではよくある話なんでございますけど、、遅ればせながら更新しますm( _ _ ;)m
 緩みきった進行状況ににも拘らず、コメント・拍手・拍手コメを下さるみなさま、
 本当にありがとうございます。深く深く感謝いたします。
 

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テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

静さんたら..
ストイックであればあるほどエロいっすよね。うひ。
静さんが歩いてくるシーン、最高に萌えです。オッサン二人完全に魂抜かれてますがな(笑)
あっいくらなんでもこの色男たちにオッサンはひどいですねm(_ _)mスマン
あぁ~ん
このままじゃしーたんが魔の手に!!
圭太しゃぁあんヽ(≧Д≦;)ノ

シマシマ猫さんのコメに激しく同意!
もうメッチャ萌えました(///∇//)テレテレ☆
いつもながらのクオリティの高さにも惚れ惚れです~♪
あぁ、しーちゃん、どうなるんだろう~~?
このジレジレ感が
癖になります(笑)。
想いが揺れる様子や、恋を試すかのような横槍(?)の配置など、読み手を惹きつけてやみません。
静さんはきっと匂うような美しさと色気を持っているんだろうなぁと、紙魚さんの文章より想像しております。
一人の人を想う貞操観念がさらに禁欲的で、それがまたそそりますよね(同じバーテンダーでありながら、うちのとは大違い・笑)。
先のお二方が仰っているように、今回の静さん登場シーンはぞくぞくしました。
恋をすると人は美しくなると言いますが、その『美』を無防備に振りまいているに違いありません(笑)。
圭太さんが自分の感情を持て余してイラつくほどに、そして伊原さんの征服欲をそそるほどに。
う~ん、罪な人ですね、静さん。

お返事、ありがとうございました。
私の方こそ、もったいないお言葉で嬉しく思うと共に照れます(笑)。
私もまだまだ勉強中です。
紙魚さんをはじめ、素敵なBL小説に刺激を受けながら精進したいと思います。
まずは、『地味』からの脱却ですかね(や、永遠に無理かも知れませんが、希望だけは捨てずに・笑)
長文、失礼しました。
シマシマ猫さま♪
 おはようございます!
昨夜は、連日徹夜のツケがガツンと襲ってきて早々とダウン、
スイッチが切れてしまいました。もう、若くないとまたもや自覚・・・(苦笑)

>ストイックであればあるほどエロいっすよね。うひ
 ストイックってエロティシズムの極致にあるような気がします。
シマ猫ちゃんに萌え頂けて嬉しいっす!うひひ

>あっいくらなんでもこの色男たちにオッサンはひどいですねm(_ _)mスマン
 うんにゃ、河村たちの年齢数えたら、
河村→35~36才 
伊原(河村より2歳上の設定)→37~38才
年齢層低めなBL界においては、立派なオッサンでした♪
静(ちなみに27~28)にタマシイ抜かれ、鼻の下伸ばして佇む、オッサン2人・・
色男2人の設定ですが、どうにも絵にならない気がしてきました(苦笑)
Kさま♪
いらっしゃいませ!
今日も、一日雨みたいですね。今朝、天気図を見たら、日本だけを雨雲が
スッポリ覆っていてちょっと、恐かったです(笑)

>一体シズカさんはどうなるんですかっ?(笑)
 どうしましょ~~~~?
仕事は完璧にこなすのに、どうにも不器用なこの人、上手く躱せるのか・・?
腐腐腐・・・・ゼンゼン、答えになってませんね(笑)

>悶々・・・ ←この感覚が結構好き♪
 ありがとうございますv
Kさまに悶々していただけて、嬉しいです。
ここのところ、バタバタしてましたので(昨日はダウン・・・)
サイトに伺っては、読み逃げばかりしています。ごめんなさい~~~!!
柚子季さま♪
 おはようございます。いらして頂き嬉しいです!

>このままじゃしーたんが魔の手に!!
 魔の手に、魔の手に、魔の手に・・・・・堕ちてしま(ビーーーッ!)・・・
さて、どうしましょう・・最初の予定通りいくか、違うパターンを考えるか・・・
でもね、ラストもう書いちゃってるから、やっぱり予定通りで♪

>シマシマ猫さんのコメに激しく同意!
>もうメッチャ萌えました(///∇//)テレテレ☆
 きゃあ~~、ありがとうございます!!
ストイック=エロティシズムの信奉者がここにも!仲間だ!!わ~~い!

 ク、クオリティだなんて!!またもや、この拙文にそんなドキドキするお言葉を・・!
まままま・・お茶でも~

>あぁ、しーちゃん、どうなるんだろう~~?
 しーちゃん、どうなるんだろう・・腐腐腐・・・・・(黒笑い)
ここにきて、ようやく完全に腐ってしまった事を自覚した紙魚です。

コメント、ありがとうございます♪腐腐腐・・・・・(←モウ イイッテ・・・?
紙森さま♪
 こんにちは、いらっしゃいませ!
 もうもう、勿体無い言葉の数々・・・・きゃ~~っ、どうしましょう!!
静は、もともと主人公にする設定は持たずに生まれたキャラクターなので、地味キャラ設定にしていました。圭太への恋心が切羽詰ったことで、堰を切って滲み出てきた色気がどんどん濃くなっていくよう表現できればよいなと思うのですけれど、表現し切れているかどうか・・・う~ん。。。

>一人の人を想う貞操観念がさらに禁欲的で、それがまたそそりますよね
 貞操観・禁欲・・・いい響き~(笑)そそりますよね。自分はS気質ではない・・・と思っている私でも、「無防備に色気と美しさを振りまいたら、エライ目に遭うぜ・・・」とか言いながら、なんかイケナイコトしてやろうって思っちゃいますもの。 

>(同じバーテンダーでありながら、うちのとは大違い・笑)。
 ツンデレ(若干ツン多め)の最高にクールな彼、そそられます!!そちらのバーテンを拝見してから、ウチのバーテンを見たら、なんと軟弱なヤツなんだろうと・・・(笑)


>お返事、ありがとうございました。
 こちらこそです!メール、本当に嬉しかったです!!

>『地味』からの脱却ですかね(や、永遠に無理かも知れませんが、希望だけは捨てずに・笑)
  地味かな~?紙森さんの書かれる世界が私は大好きなので、私的にはキラキラと輝いて見えます。人間味のある登場人物たちも魅力が溢れています。
中でも特に、リックが好きです。ツンデレじゃなくてツンツンなところが・・・そそられます(笑)

 紙森さまの小説に感化されて、今、頭の中ではもともと好きだった、『ストイック』が爆発的なブームになっています。もう、軟弱な我が家のキャラ達をそちらへ修行に行かせたいくらい・・・!
すっごい迷惑だと思いますけれど・・(笑)

コメントありがとうございました!コメより長い、長文レス失礼しました(笑)
征服欲が・・・
伊原さん、あなたの気持ちはよーくわかる。しかし、しかしです!!
ストイックな静が、乱れていく様を思い浮かべているであろう遊び人のあなたには、静を幸せにはできないでしょうが~。
圭太目覚めなさい、もう一息だ。大切なものが壊されちゃいますよ。
甲斐さま♪
 おはようございますヽ(^▽^)ノ

>征服欲が・・・
 伊原からしたら、静みたいな なんにでも遠慮がちなモジモジ君って弱そうに見えて、すぐに言いなりになるって思っていたのに、案外、意のままにならないところがたまらないんでしょうね~(笑)・・・静の、相手をキズつけないよう気を遣いながら、モジモジやんわり躱すところが余計に火に油を注いでいたりして・・・
静に煽られる伊原の気持ち、わかるわ~わかります・・・でもね~~でもね、ですよね。ね。

>圭太目覚めなさい、もう一息だ。大切なものが壊されちゃいますよ。
 勘違いが入ってるから、始末に終えない圭太です。
こっちも、またじれったい・・・この話、こんなんばっかり・・・ジレジレ(笑)

コメントありがとうございます!!
まさにジレジレ…!!
合いそうで合わない視線に萌えます!
何かふたりがもどかしくしている隙に伊原さんが美味しいところをさらうんじゃないかと思うと、オロオロしちゃいます。だってこの人きっと征服欲だけ。
圭太さん、いいの?これでいいの?!と詰め寄りたい気分です。
りりさま♪
 りりさま、こんばんは~
週末にはなかなかPCに向かえないというか、ブログページを開けなくてジレジレしている紙魚です。こういうときに限って、話の続きが浮かんだりしてジレジレ・ジレジレ浮かんだエピソードが大半飛んでしまいました(泣

> 合いそうで合わない視線に萌えます!
 追いかけると、フイッと逃げてしまう視線、、思わせぶり過ぎて、もうジレますよね。

> だってこの人きっと征服欲だけ。
 伊原みたいな人、、堪りませんよね。自己中で自惚れが強くて・・・オイシイトコもっていきそう・・圭太は割り切れない思いをしながらも、静が好きならと・・”大人”が裏目に出てます。

> 圭太さん、いいの?これでいいの?!と詰め寄りたい気分です。
 胸倉掴んで詰め寄っていただいて、わからないようなら2~3発いっといて頂けるとオメメが覚めるかもです(笑)

 コメント、ありがとうございます!話もラストに近づいて、ちょっと気合入れて書こうと思ったら途端にそちらに行けなく・・・相変わらずヘタレてます。でも読みたい~~!!禁断の新連載も気になる!どうなったの~~~?甘くない青春の続きも気になる!アレやコレ・・・ああ、もう!!!
こっちの片がついたら即行、お邪魔します。

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