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紙魚

Author:紙魚
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Category: 深海魚 (全31話 )

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深海魚 11
 振返ればシーラカンスの柔らかい照明が暗闇に浮いて見えた。
時が止まったような、あの仄暗い明かりの中、静はひっそり息を潜め酒を作り話しかける客の話に薄く笑いながら耳を傾ける。

 静は、自分のことをバー・シーラカンスに巣食う深海魚なのだと喩えたことがあった。
深海に揺蕩(たゆた)うグロテスクな怪魚――シーラカンスは自分そのものなのだと。
鬚を生やしてしまった今も、美人と噂された昔と変わらず、楚々とした風情が失われることはない。何故、自分をそう喩えるのか・・・
 気付けば自分がよく知っていると思っていた幼い少年は、いつの間にか身内のカテゴリーから零れ落ちて姿を消し、ひとりの人間として深い魅力をもつ艶やかな青年が目の前に立っている。

 俺が、静を意識している?そんな・・・・「バカな。」

 形のみの、力も中身も無い否定の言葉は、冷たく湿気った塩風と共に暗い空に舞い上がり、いとも簡単に四散し暗い波間に呑み込まれていった。


 
「圭太さん、・・・あのォ、ちょっといいですか?」
「あのな、二ノ宮、ミーハーもそこそこにしとかないと、ひとりで帰らせるぞ」

 伊原の別荘に足を踏み入れて10分も経っていないというのに、同伴した二ノ宮はTVのキャスターやら、人気の脚本家なんかを目敏く見つけては鼻息荒くはしゃいでいる。
全体的に年齢層が高いから、アトリエの若い人を連れてきて欲しいと、伊原から連絡があり参加者を募ったところ二ノ宮だけが手を上げた。本音を言うと、一番同伴したくない相手だった。
溜息交じりで腕を組み睨み下ろしたところ、二ノ宮のくりくりとした小動物のような瞳が必死の様相で訴えてきた。

「だってね、圭太さん、あそこのあの娘ね、『アキバどーる5人衆』の1人で最近メジャーデビューしたばっか・・・てか、ボク前から目をつけてたんですよね。あー、なんで今日はメイド服じゃないんだろう、惜しい!」

 一体何が、”惜しい”のやら。
 二ノ宮の目線の先にはなるほど、いかにも売り出し中と看板がかかっていそうな10代と思しき少女が、ベビーフェイスに健気に笑顔を貼り付け、ひとり突っ立っている。大方、営業でマネージャーあたりと連れ立ってきたのだろう。だが、世間でセレブリティと呼ばれる類の人間の集まるこのパーティーでは、少女の若さや美しさを賛美してくれるファンなどいない。
ここで、ものを言うのは、本物の経済力と絶対的な知名度だけだ。駆け出しのタレントに目をくれるような輩はいない。
身の置き場を見つけられない少女が、気の毒なくらい自分をもてあましているのがよくわかった。


        まったく、嫌味な集いだ。
「行ってこいよ。ただし、あんまりはしゃぐなよ」
「イエッサー!」
 嬉々として飛んで行った二ノ宮に話しかけられ、ようやく少女の顔に安堵の笑顔が浮かんだ。見た目が二十前後にしか見えない二宮とは、丁度いい釣り合いだ。

 伊原の別荘はコロニアル様式で、パティオとよばれる中庭がある。その一辺がプールに向けて開放されそのまま海に出ることが出来るようになっている。先代の趣味のよさが窺える、開放的で気持ちのよい建物だ。
 一旦パティオに出ると、向かいのガラス戸の向こうに求める姿を見つけた。

 白いウイングシャツに銀と黒のレジメンタルタイを締め、黒いシルクのベストに身を包んだ静は清楚で美しくそれだけで輝いて見える。煌びやかな光の中で、話しかける客に控えめな笑みを返しながら、しなやかな手つきでシェイカーを振り、カクテルをグラスに注ぐ姿を、暫し圭太はガラス戸の外から眺めた。

 その顔が不意にこちらを向き、さり気なく逸らされる。
       シズカ?
 そんな些細な仕草に胸がざわつき、引き寄せられるように静に近づいた。

「こんばんは、圭太さん。何をお作りしますか?」
 先程、客に向けていた顔と同じ笑顔が向けられ、なぜか拒絶された気がした。

「バーボン、ダブルで」
「はい」
 いつもなら、ジン以外のロックを頼むと何かコメントを返してきたが、今日はそれも無い。
この前、突き放すような言い方をしたことを怒っているのだろうか?

「シズカクン!悪い。我が儘なご婦人方のオーダーを、お聞きしてくれるかな?君にしかオーダーを出したくないそうなんだ」
「わかりました」
 伊原に指示に、バーボンのグラスをホームバーのカウンターに差し出すと静はリビングへと離れていく。静の消えた方向から年配の女性たちの色めきたった歓声の声が上がった。
 中庭のガラスを透して、袖を引っ張ったり無理に隣に坐らせたりして困りきった静をおもちゃにする年配の女性たちの賑やかな様子が伺えた。
 なるほど、伊原が若い所員を連れて来いと言った訳がよくわかった。ペットに打って付けの二ノ宮に降りかかるであろう災難を想像すると、気の毒な反面、笑いも込み上げる。

「河村先生、彼を紹介してくれて本当に感謝してますよ」
 圭太と同じく、リビングの歓声に顔を向けていた伊原が満足そうにいい放った。
「なにを、今頃になって。だいたい、何についての感謝でしょう?」
 八つ当たりだ、真顔で伊原の顔を見る。視線に険が篭るのを自分でも感じた。
 圭太を向いた伊原が、人懐こい笑顔でニッと笑う。

「いろんな意味でね・・・この間、シーラカンスで見たでしょう?僕達はいま、とても”いい関係”を築こうとしているんです。河村先生、彼の鬚の秘密を知ってますか?」
 この男は、俺に一体何が言いたいのか。側にいるのが煩わしい。
「願掛けをしていると聞きました。なんのかは教えてくれませんでしたけど」

「好きな相手に想いが伝わったら、剃り落とすんだそうです。
実に奥ゆかしい人だ。僕はね・・・今夜、彼に応えるつもりです」




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■深海魚 1 から読む

■静×圭太 関連<SS> ― 願い ―

■河村 圭太 関連作 翠滴 2

 □□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 

 
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テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

やっと読めた~~涙
2話一気読みです♪

圭太の心が揺れ動いてますね!!
しーちゃん、さらに一歩引いてしまってるけど…この伊原氏の言葉で、圭太動くかな?
うっわ~~続きが待ち遠しいです(;´Д`)
しーちゃんの長年の想い、叶うかな?
叶って欲しいな~ドキドキ
柚子季さま♪
 わ~~こんばんわ!
J庭、お疲れ様でした!!あちこちのサイトさまの報告を拝見するだけでも、
本当に盛況で楽しい雰囲気が伝わってきて、指をくわえて読んでました~(笑)

>やっと読めた~~涙
 すみません!!こちらこそです。
仕事の期日が明日なので、ここのところテンパッてて、
どちらのサイトにも伺えていない状況です(汗
とにかく、眠いです。

>圭太の心が揺れ動いてますね!!
 10話過ぎてやっと・・・!!短編の予定じゃなかったっけ???
コレも全て、圭太の思い込みの激しさのせいです(泣

>この伊原氏の言葉で、圭太動くかな?
 伊原さん、いい加減そうに見えて、実は仕事は丁寧な完璧主義者だったみたいで、
この後も徹底的に2人を引き離しに掛かります。

>うっわ~~続きが待ち遠しいです(;´Д`)
 そういっていただけると、本当に嬉しいです。
ちょっと、イタタな記事が残ってますけど、頑張ります。

コメント、ありがとうございます。
たぶん、明日の夜にはそちらにゆっくり伺えると思います♪

Kさま♪
 こんばんは♪

>ちゃんと髭にも理由があったんですねぇ!!
 似合ってもいないのに、伸ばすには理由があったんです。。
身体の一部で願掛け・・・なんかこう言っちゃうと、
エロい感じがしてきました~。

>ボケーッと読んでいると見落としちゃいますね!気をつけなきゃ!!
 なにせ、文字が多いもんで・・・スミマセンもう、
雰囲気で読み流していただいても・・・(笑)

 コメント、ありがとうございます!!
あぁ、Kさまのところにも全然行けてない・・・
読み逃げしたままです(汗)スミマセン、スミマセン・・・
落ち着いたら、伺いますので!
ええっ~!!
これ以上に伊原が引き離しにかかるんですか??
ううっ・・頑張れるの?圭太・・・。
あ~あ、今の最後の伊原の言葉で、また圭太が勘違いそうな予感・・?
応えるつもりですって!!
お前じゃない!!
って、感じですよね~?
いよいよ、圭太も行動を起こさないと・・本当に静を取られてしまいそう・・。(クスン・・)

あっ!!
先日は、コメント2本も送ってしまい、申し訳ありません・・。(苦笑)
あれって、秘密コメにするとカウントされないんですね~、ああっ・・勘違い・・恥ずかし~い!!(テレテレ・・・)
それに、素敵なレスを書いて頂いて、嬉しかったです♪
こちらこそ、よろしくお願いします!!(笑)

お仕事お忙しい様ですね!
頑張ってくださいね!
体には、十分お気を付けて~!
ミートン・メートン さま♪
 おはようございます!!
遅レススミマセン!

>これ以上に伊原が引き離しにかかるんですか??
 伊原は、とても几帳面な人だったみたいです(笑)~
書き始めたときは、確か『圭太をシアワセ計画』って言ってた筈なのに、、どう見ても全然シアワセじゃない。。。気がつかなくても問題の無い気持ちに気付かされて、おまけに気付いた時には静は他人のもの・・・(に見える)・・・なんでこんなことに??( ̄ロ ̄)ゝ”
私は、一体何話まで書くつもりなのか、それすら判らなくなってきました。

>コメント2本も送ってしまい、申し訳ありません・・。(苦笑)
 とんでもないです!ミートン・メートン さまはヒナ共ちゃん達がいて、仕事も持った上で毎日更新しておられるのに、 ヘタレなことを呟いた自分が恥ずかしいです~~。
こんな、ダ~メダメ人間ですけど、よろしくお願いします(ペコリ!

>お仕事お忙しい様ですね!
 普段は、暇なんですのよ。。根がグウタラなんで・・・(笑)
今回請けた仕事がたまたま、本業と若干、勝手の違う仕事だったんで、慣れなくて手間取ってしまいました。。目先の違うことが出来て、楽しかったんですけど、寝る時間が取れなくて、辛かった~~~。でも、今日で終わりの筈・・です♪(たぶん・・・
よし!これから仕上げです。頑張ります。

コメント&お気遣い、ありがとうございます。
落ち着き次第、そちらにも伺いいますね♪
俺は、静を意識している? してるしてる。。。
伊原氏「・・・今夜、彼に応えるつもりです」って、本気でそう思ってるのかな?自分が想われ人って。あるいは圭太を煽ってる?牽制かな。
静危うし!!
この後、圭太がどう出るのか見ものですね。
一気に静は俺のモンだー!っとならないのが圭太の性格だしね。導火線湿ってませんか?
甲斐さま♪
 わ~!!
コメント、ありがとうございます!!
コメレスが遅くなって、申し訳ありません~~(汗

 圭太はどんどんどん・・・気になり出してます(笑)
でも、今までの経緯もあるし、勘違いもあるしで踏み込めない・・・
享一の時は、図々しいまでに攻めまくったのに、出会いの形が違うと大違い、、静は圭太にとって庇護すべき弟という部分が大きかったので戸惑いもデカイかと。。

>伊原氏「・・・今夜、彼に応えるつもりです」って、本気でそう思ってるのかな
 自分が想われてるなんて、思ってないですよね。願掛けの真実も知ってるし、
完全に牽制です。。やっぱり、嫌なヤツだ~~~
傲慢で自惚れが強い、、、ニッコリ笑って嘘もつく。
絶対に友達になれないタイプです。

>導火線湿ってませんか?
 湿っているどころか、水が滴るくらい濡れてるか、火
もしくは、薬を入れ忘れたとしか思えない(笑

大人は分別がありすぎて、こういう場合動かしにくいです。
享一にモーションかけた時の不埒な圭太が懐かしい~


ひ~
ず、図々しいにもほどがあるゾッ伊原氏!!
静さんがあたかも自分に惚れてるみたいな、その言い方!どの口が言ってるんだ。その口かーっ(グイッ)伊原氏の口をつねってみました(笑)
で?どんな手段で静さんのおヒゲ剃り剃りしちゃうの?
アクドイことしそうで怖いわ~きゃっ♡(←思いっきり期待してるじゃん(=ω=。))
シマシマ猫さま♪
 おはようございます。
春眠暁を覚えず。。。年中眠い紙魚ですけど、激眠です。
でも、限られた時間を有効活用しなければ、勿体無いと
2度寝を断念PCの前に座ればシマ猫ちゃんからのコメントが・・・寝なくてよかった~

 静の気持ちを知っている伊原は既成事実を作ろうと目論んでいます。
>アクドイことしそうで怖いわ~きゃっ♡(←思いっきり期待してるじゃん(=ω=。))
 ホント、伊原はアクドイって言葉がよく似合うわ♡
・・・口をつねったくらいじゃ懲りないですね、きっと。

>で?どんな手段で静さんのおヒゲ剃り剃りしちゃうの?
 フフフフ・・・( ̄ー ̄ll;)
鬼畜な自分を感じるワ。。

コメント、ありがとうございます♪
痛い思いをしないと恋が成就しない、このサイト・・・なんか問題あるんじゃ
・・・じゃ無くて、私に問題があるのか。。うむう。

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