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紙魚

Author:紙魚
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Category: 深海魚 (全31話 )

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Comment: 7  Trackback: 0

深海魚 2
 盛大な拍手と共に講演会は幕を閉じた。
会場からの質疑応答の中ホールを出ると、反対側のドアから同じように出てきてそのまま出口に向かうほっそりとした姿にハッとした。
その横顔がエントランスの外に何かを見つけたのかパッと華やぎ、艶やかに微笑む。
足取りも軽く、歩を速めエントランスを飛び出していく。

 その後姿を目で追うとその先には赤いフェアレディがあった。車の前に立つ男の元に真っ直ぐに向かっていき、蕩けるような笑みを浮かべるその男の前で止まると、照れたように顔を真っ赤にし伸ばされた手をすり抜け車内にその清艶な姿を消した。

 先程の頬を高潮させた桜の蕾が綻んだような見事な微笑が、彼が現在(いま)本当に望んだものを手に入れ、幸せに満たされている事を物語っている。彼は、はたして圭太の傍であんな幸せそうな顔をしていただろうか?

時見 享一。艶やかで綺麗な圭太の元恋人。

 自分が恋する圭太の恋人である享一を、花隈 静(せい)は決して嫌いではなかった。やや硬めだが、控えめで気遣いの出来る享一にシンパシーを覚え、好ましくさえ思っていた。だが、先の薄紅の桜が一斉に開花したような、清廉なくせに艶を注したような貌を見せられ複雑な心境に陥る。
彼は、圭太のことをどう思っていたのだろう?

 ホ-ルから人が吐き出されエントランスを過ぎて行った。建築に感心を持つ者、圭太の教え子らしき学生たち、単にモデル張りに容姿が良く新進気鋭と称される建築家・河村 圭太のファンの女性たち、皆、口々にレクチャーの内容についてや河村への称賛を口にしながら去っていく。
自分だけが異質で、ポツンと浮いている気がした。
 人も掃けて半時が過ぎた頃に、漸く圭太が奥の関係者用の通用口から出てきた。
背後に所員らしき2人の若い男がついてきている。

 圭太が自分を見つけると驚いたように目を丸くするのを見て、自分が待っていたことが迷惑だったかもしれない事に気付き、感付いた気持ちを誤魔化すように、ゆるく笑って見せた。
全く、客商売をしていながら、相手の立場に考えが至らなかったとは、なんたる失態。
圭太に会える、それだけで浮き足立っていた自分が恥ずかしくて、いたたまれなくなる。

「シズカ、今まで待ってくれていたのか?」
「いや、ちょっと時間があったから・・・はい、これ圭太さんの好きな
シャトー オー・ブリオンと、ナパの白。講演、お疲れ様でした」
「お、サンキュ、シズカ。時間があるなら、ちょっと飲んで帰らないか?」
そう言って破顔した圭太は、背後の2人を親指でクイクイと指し示した。

「いや、これから帰って店を開けなくちゃいけないんだ。今日は、久しぶりに顔を見ようと思って寄っただけだから。じゃあ・・・圭太さん、また店にも来て下さい」
踵を返して美術館を出、駅に向かった。
本当は、今日はシーラカンスの定休日だ。
店を開けるというのは、咄嗟に口をついて出た嘘で、これから打上げに行くであろう圭太達に気を使わせないための方便だった。
慣れない嘘をついた顔が熱くなる。早くこの場から逃げ出したい。

 エントランスから外に出た足は、早く姿を消してしまおうと一目散に駅に向かう。
その腕をとられて驚いた。
「待てよ!シズカ。何度も呼んでるのに。・・・駅はそっちじゃないだろう?」
聞き慣れているはずの圭太の声に心臓が跳ね上がった。
「え?」
見れば、圭太の背後、振り返った自分の進路とは間逆の方向に地下鉄の目立つ目印が掲げられている。間抜けな自分に、頬が熱くなった。
その横顔に、呆れたような圭太の声が投げられる。
「お前、相変わらず、方向音痴だな。車で送ってやるから、ここで待ってろよ」
 


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■最後までお読みいただき、ありがとうございます。

テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

Kさま、こんばんは♪
>かわいぃ!!
ありーーーっす!!

おお、Kさまも方向音痴なんですか?
静と一緒ですね~~(*^_^*)
わたしは、そうでもないんですが、友人にダントツ凄いのがいます。
今回の静は、自分の目的の方向と全く反対方向へと自信満々で歩いていく
友人の後ろ姿を思い出しながら書きました(笑)
>爪の垢・・・ 少しわけてくださいっ!!
 そんなことしたら、おバカが感染っちゃいますよ~~~~っ(゚д゚lll)タイヘン
 イインデスカ~~~!?って、エエわけないって・・・(笑)

コメント、ありがとうございま~す♪
しーちゃん
方向音痴だったのね( ´艸`)ムププ♪
カワイイなぁ~!!

亨ちゃんもアマネさんと幸せな日々を過ごしてるのが垣間見れて嬉しかったです゜+.゜.(⊃Д`*)゜+.゜
赤いフェアレディ・・・乗って見たいぜ今畜生!←w

あぁ~、何だかしーちゃんと一緒になってドキドキそわそわしてる自分がいますw
柚子季さま♪こんばんは
>方向音痴だったのね( ´艸`)ムププ♪
 本当に、当サイトでは信じられない乙女系・・・しかも鬚面・・・(笑)
もう、どうしてやうろか~??てな具合です=3 
>亨ちゃんもアマネさんと幸せな日々・・・
 はい、イチャイチャラヴラヴたまにブチ!な日々を過ごしております。
ああ、またこっちも書きたいな~なんて、
3部に手を付けろよ!!って話なんですわね、、、ホホホ・・

>赤いフェアレディ・・・
 周のZは走り屋仕様に改造してあって、ややお下品なんですけど、
よろしかったら柚子季さまのために助手席は空けておきまする~。
享一?策士・鳴海にでもお任せましょう♪

ああ、しーちゃんどうなるんだろう?
いや、どうすんのアタクシ????

コメント、ありがとうございまっす!!



はふーん
享ちゃんがすっげー幸せそうだ~(涙)翠滴の余韻をまだまだひきずってる私..(;´Д`)
イチャつく二人を見られて嬉しかったです♡
あたりまえですが、静さん目線だと享ちゃんは『圭太の元恋人』なワケですよね~。
享ちゃんに対して、好ましい印象を持ちつつも、あんな幸せいっぱい顔見ちゃったら..複雑な心境になるのは無理ないです。
切ないですね(;-_-) =3 フゥ 河村氏に早く気付いて欲しい!そして静さんはヒゲを剃るのだー!!つるり。
シマシマ猫さま♪こんばんは~
享ちゃん、今のところ(笑)シアワセですよ
そりゃもう、周に振り回されるだけ振り回されて、
やっと手にしたシアワセですもん。
ココでまた奈落に突き落とされようもんなら、
享ちゃんきっと周のことただじゃ置かないと思います♡

>あんな幸せいっぱい顔見ちゃったら
普通、凹みますもんね。どちらかというと自虐心の強いタイプの静、
他人の3倍くらい凹んでそうです。。(TロT)

>そして静さんはヒゲを剃るのだー!!つるり
激しく、賛成ーーー!!
無いほうが可愛いんだから、さっさと剃らせたい~~
もう、なんで鬚面にしちゃったのか・・・・バカバカ、私!!! 
2話先でも河村に言われてます。でも剃らないの、頑固者ーー!!

ああ、なんか歩みがノロイ・・・(またか)
コメント、ありがとうございます♪♪
しーたんラブです
美形の髭、ってだけで相当惹かれるのに(また変なツボ)方向音痴!!
わたしもかなりきているらしく、しかも自信満々に歩いていくようで、
「君といると道に迷うんだよ!」
よく切れ気味に言われます。
そう言えば、一緒にいる方が乗り過ごしたり迷ったりよくするのは、わたしのせいだった…?
断然シンパシーを感じるしーたんを応援したいと思います。
でも圭太さんと想いが通じたら髭剃っちゃうんですね。残念かも。
りりさま♪♪
 お、こちらにも♪
そうそう、方向音痴の人って自信満々で反対方向へ
歩いていくんですよね(笑)
でも、自分は方向音痴だってちゃんとわかってるんですよね。
私の友人の中で群を抜く2人は揃って、B型・・・(笑)追加、入れときま~す

 美形・鬚・受け・方向音痴・サーファー・・ギャップだらけの、
しーたんです(ハートlll;)
鬚は願掛けで伸ばしているので、思いが通じたら落としちゃうと思うけれど、
それより前になくなりそうかも・・・りりさまは鬚がツボなのね~(笑)
コメント、ありがとうございまっす!!

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