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紙魚

Author:紙魚
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Category: 翠滴 2 (全53話)

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翠滴 2  -エピローグ 3-  最終話 
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 「ああ、お腹すいたわね。お兄様いらっしゃる?」
 突如聞こえた複数の足音と、人の声にぎょっとした。
 「享一、覚悟しろよ。パワーアップしたカシマシ娘の登場だぞ」
 茶化しながらも、その声には、優しさが滲み出ている。

 振返ると、目にも艶やか晴れ着を纏い、3年前より更に完成された美しさを身につけた美貌の双子が、背後に鳴海を引き連れてやって来た。
 享一達を見つけると、華やいだ雰囲気に黄色い声もくっつけて足早に寄ってくる。

 「享一さん、お久しぶりですわ」
 「お元気でしたの?」
 「あら、この髪型は薫ちゃんかしら?素敵。」
 艶を増した優美な日本人形の顔をグッと近づけられてたじろいだ。
 「美操さん、・・・久しぶりです」
 美操と呼ばれた彼女は、ニヤリと兄と同じニヒルな笑みを浮かべると、「茅乃ですわ」と返してきた。中身は3年前と、さして変わらないらしい。

 双子の背後に立つ鳴海と目が合い、居心地の悪さを感じた。結局、周に救い出された自分を、鳴海はどう思っているのか。表情を表に出さないクールな風貌からは何も判らず、享一はそのまま視線を落とした。

 「時見さん、その節は失礼いたしました」
 鳴海が自分の部屋に現れてから、実際は1ヶ月半ほどなのに、数え切れない長い月日を経たような気がする。「いえ」とだけ答えて伺った鳴海の目には、あの時の見るだけで心臓を凍りつかせるような剣呑さは無い。ただ沈静した怜悧な瞳をさり気無く逸らされた。
 
 「鳴海、随分早かったな。
 2人を乗せてのドライブは、さぞ辛かっただろう。ご苦労だった」
 「お兄様、ひっどーい!!」
 黄色い抗議の声を尻目に、鳴海が薄く笑う。
 「いえ、すみません。おふたりの早くこちらに到着したいとのご要望で、東京を早めに出ました。夕食はまだかと思いましたので、玉庵の折をご用意してあります。
 ところで準備はもう始めてもよろしいのですか? お召し物もそのままで?」

 鳴海が問うと、周は突然現れた3人に目を白黒させている享一の手を取り向き直った。
 左手の薬指に冷たい感触がして目を下ろすと、幅広の銀色に光る指輪が嵌っていて驚いた。
 口々に好き勝手を言っていた双子の声が止み、華やいだ場が一転して緊張する。いきなり双子の前で指輪を嵌められ、なす術もなく固まった享一は、狼狽えながらも抗議の色を滲ませ周を睨みつけた。火照った顔に3人の視線が痛い。

 「享一、もう一度、私と祝言を挙げてくれますか?」
 「は?」 瞠目して固まる。

 一体、この男は人前で何という事を訊くのか・・・

 いや、これが永邨 周だ。強くて美しく、我侭で不埒、惚れたのは自分のほう。
 皆が固唾を呑んで自分を見ている。さらに、頭に血が上った。

 「享一、俺と結婚して欲しい」
 周が片手を伸ばしてきた。その手を取る
 「ああ。周、結婚しよう」

 双子の歓声が上がり、鳴海は煩悶の表情を隠すように
 眼鏡のブリッジを持ち上げた。

 「では、早速 支度をはじめましょう。周、場所は能舞台でよろしいですか?」
 「え?今からですか?」
 「ええ、前のような派手な演出は出来ませんが、構いませんか?」
 「いや、とんでもないです。あれはもう勘弁してください。あの衣装は殆ど拷問に近かった、二度とごめんです」

 麗かな春の宵に、華やかな笑い声が上り、交互に絡めた指はいつまでも離れない。

 夜桜の舞う能舞台の上で、ささやかな宴が始まった。
 雪洞に灯をともし、月明かりの中、周が「高砂や」を謡う。

 前回と同じく、雄蝶雌蝶を美操と茅乃が務める。2人は、前にも増して艶やかに咲き誇り、瑞々しい若さの中に兄とはまた違った色を匂い立たせていた。アメリカへの留学を決めている2人は、準備のため間もなく渡米してしまう。あと何度も、こうやって皆が集まる事は無いのかもしれない。そう思うと、静かな春の夜に散る桜を前に 一片の寂寥感がひらひらと舞いながら胸に落ちる。 

 目の前に出された盃のお神酒に、目の前を舞い下りた花弁が2枚浮いている。
 周を見ると深い翠の瞳が愛しげに微笑んだ。

 すべては、この翡翠の瞳に捕えられた瞬間に始まった。
 そして、今やっと自分もこの瞳を捕まえた。


            -翠滴2 エピローグ 終 - 


<<← 前話3章ー1>>

 □□今回をもちまして、翠滴 2 は終わりです。
 長々のご愛読、ありがとうございました(*^_^*)ペコリ
 

 日ごろコメント・拍手・村ポチありがとうございます。
 読み手の皆さまからの、パワーを頂いております。
 本当に、感謝です。


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Comments

はぁぁぁ・・。
もう、吐息しか出ません・・。
周と享一、幸せになれて良かった・・・。
最後に、みんなの前でプロポーズとは・・流石の演出に思わずニヤリと笑っちゃいました。(むふふっ・・

紙魚さまの世界は、本当に素敵ですね~。
読んでいると、別世界に逃避行した気分になります。
ウットリとしばらくこの余韻に浸っていたいわ~。

完結お疲れ様でした!
翠滴2の次は、3があるのでしょうか・・?
何をおいても、紙魚さまの次回作、楽しみにしております!
まずは、ゆっくり休んで下さいね!
もう何も言いますまい..
いや、言いますけどね( ̄ー ̄)ニヤリッ

『交互に絡めた指はいつまでも離れない』
ひたすら涙、涙でございます。
この日を、どんなに待ち望んだことか..(遠い目)

しかし、再び祝言とは..最後の最後に、またまた紙魚さまにはやられました。双子も登場して晴やか~(*´∀`*)
しかし鳴海さんの心境やいかに?(笑)


ホントにホントに、長い連載お疲れさまでした!!無事に素敵に完結、おめでとうございます!!!
毎日こちらに伺うのがメチャクチャ楽しみで、拝読するたびに胸が締めつけられ、乙女モード全開!
おかげで10歳くらい若返ったかと。(気持ちだけは)ガハハ

紙魚さま、ゆっくり休養なさってくださいね。
そして次の連載も楽しみにしております♪(* ̄∇ ̄*)エヘヘ
ミートン・メートンさま!! こんばんは♪
 長のお付き合い、ありがとうございました!!(ペコリ
ようやく、完結を見る事が出来ました。
ミートン・メートンさまの更新の速度に比べれば、本当に亀の歩みの
トロさで、凄い長い間この話を書いていた気分です(笑)

>最後に、みんなの前でプロポーズとは・・
 書いていて、ずっと甘々の設定が少なかったせいか、
これぞBL~!!となぜか1人で悶えウケてました~(←バカ?)

>次回作、楽しみにしております
 ありがとうございます。一応、翠滴は3部作で伏線も張ってあるんですが
少しおいてから書き出そうかと思って思っています。
それまでは、軽めのものでも単発で出せればいいかと・・・

ミートン・メートンさまには、いつも私の書くものの世界を褒めていただき
照れる一方で、とても勇気づけられました。
本当にありがとうございましたm(_ _)m

当分の間は、1人の読み手となってそちらに、お伺いしますので
よろしくお願いいたします。
シマシマ猫さま、こんばんは!!
 最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!!

>ひたすら涙、涙でございます
 私も、無事終われた安堵の涙が・・・2人の幸せが私のシアワセ・・あうっ!

 この地で始まり、この地に戻ってきました。
祝言は、回帰し新たなスタートを切らせてやりたいとのオヤゴゴロ・・(ハート)。
鳴海の心境は・・・・ふふふ。。。姑のごとく、事あるごとにピシュピシュ・・と
切れ味最高のセリフで、享ちゃんを、苛めてきそうですね~コワ・・・

>無事に素敵に完結、おめでとうございます
 ありがとうございます(泣)。今、改めて振返ればサイドも入れて100話でした
ひえ~~~~っ!!自分で言うのもなんですが、筆の遅い(ブラインドタッチの出来ない・・)私としては、快挙です。自己満足・・・(*´∀`)アハハン♪

>毎日こちらに伺うのがメチャクチャ楽しみで・・
 シマ猫ちゃんに、こう言って頂けて、連載やってて本当によかった~!!と
心から思えます(涙)10歳若返り・・・イイナ・イイナ~私は、翠滴に吸い取られて、5歳は老けたかも~~(泣)
 
 ここのところの自転車操業的な更新に少し疲れたので、少しお休みを頂こうかと思います。その辺は、まだ考え中なので明日のあとがきに明記しますね。

 いつも、楽しいコメントをありがとうございました。シマシマ猫さまはサイトを
お持ちで無いみたいなので、連載を止めてしまうと、お会いできなくなるのが
寂しいです~クスン。。。がんばって、次のお話し考えます!
完結お疲れさまでした!!
絢爛として美しく、ドラマティックな紙魚さま独特の世界に、酔わせていただきました。
したたるように匂い立つ日本語が、殊に素晴らしかったです。
第三部もあるとのことで、また彼らに会えるのかと思うと嬉しいです!
まずはごゆっくり、開放感を味わわれてから、ですね。
本当にお疲れさまでした。
素敵でした~
溜息と鳥肌が止まりません・・・(*´Д`)ほぅ~。

最後の最後に再びの祝言ですか~~!
しかも双子と鳴海氏を前にしてのプププププロポーッズ!!
イイノ?Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)イインジャネ?
くはぁ~もう、これで悶えずしてどこで悶える!ですね!!
末永く幸せを紡いで欲しい~。
3があるって・・・まだドキドキする事が待ってるんですか?
あぁ~でもまたこの2人に会えるのは嬉しいし・・・クネクネしつつ楽しみにしておりますね♪

何気に好きだった双子ちゃんにまた会えて嬉しかったです(*´∀`*)

無事の完結、お疲れ様でした!
煌く風景と薫り立つ風情に、惹き込まれました♪
素敵なお話をありがとうございます!!
りりさま♪♪こんばんは
 ありがとうございます!!!
終わった。終わった。終わったよ~~~う!!
りりさま、またまた、沢山の勿体無いお言葉をありがとうございます。

>したたるように匂い立つ日本語が
 こんなことを言ってくださるのは、りりさまだけです。
相方は、私の事を〇生総理並、と評します。←充分ありがたいんですけど
りりさまのこの評を見せてやりたいけど、出来ないのが悔しいわ(ハハハ・・)

>まずはごゆっくり、開放感を味わわれてから、ですね
ヘタレな私は100話で息切れです・・・・ハァハァ
本当に、りりさまのスタミナが信じられません(羨望)~~~
3部の着手はまだ先になりそうです。あまりに2部の終わり方が
スパッと収まったので、下手に手を出すのも恐いな・・・なんて。。ヘタレ

 これから、当分の間 読み手に徹します。月夜の庭に行ったら月光に
浸って帰れなくなるかも。どうか、追い出さないでくださいマセ~~

ゴージャスなコメント、ありがとうございます♪ 
コピペして画面に張っておきたいくらいですヽ(´∀`)ノ
柚子季さま♪こんばんは
 こちらにまで、コメントありがとうございます!!
ついに完結です(泣)最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!!

>しかも双子と鳴海氏を前にしてのプププププロポーッズ!!
ぷぷ。双子はいざ知らず鳴海の前でって、ヒドクネ?って感じかも・・・
でも、はっきり知らせてあげる事も、大事だし~

 3部、、伏線を張る事は張ったんですけど、どうも今までと傾向が
大きくズレそうなので、ここに来て迷いが~、、時間を置いてから
もう一度考えようかと思います。それまで、どうしよう~~~
柚子季さまみたいに、素敵なssが書ければいいんですが
力が足りません~~ガクッ=3

わ、柚子季さまも双子気になって頂けましたか?
2人でも姦しい・・・憎めないこの2人、書いていてとても楽しい
私もお気に入りのキャラなんです~嬉しいなったら、嬉しいナ~♪

>煌く風景と薫り立つ風情
わあ~~~勿体無い~
この言葉はこのまま、「僕天」に捧げます。
まさに、清々しく若さ煌く彼らの世界にぴったりです(///∀///)ポ~

 柚子季さま、たくさんの素敵なコメントをありがとうございました♪
Yさま♪こんばんは(ペコリ
Yさま、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
>完結、ご苦労様でした。>最後の最後まで素敵なお話でした。
 ありがとうございます~~~~(泣)そんな風にいって頂けると最後まで
書き切ることが出来て、本当によかったと思います。

>影響を受けるのが怖くて・・
 有りますよね。紙魚も煮詰まったときなんかは、いつもコメントを下さる方の
お宅のみの訪問にとどめて、じっとしています、、、で、また煮詰まっちゃうの~(笑)

>発作的にコメントを入れてしまった・・
 いえいえ~~嬉しかったです!!やっぱり、初めての方からもらうコメほど嬉しいものはありません。Yさまからこうしてコメを頂いたり、レスが書けるのも最初に、Yさまが
コメントを入れてくださったからです。本当に、感謝です。ありがとうございます。

 ファンなんて、とんでもないですよ~~~!!
紙魚は、この先、一旦ランキングから外れる予定ですので、
よかったらまた遊びに来てくださいませ。

 こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました
2部が終わった、2部が終わった、2部が終わった!!!

もう圧倒されてことばもありません。
エピローグの直前の、そもそものはじまりだった「家」での再会のくだりから、もう感慨のあまり泣き出しそうになりました。
桜、桜、桜……
紙魚さんの小説はいつでもロケーションがないがしろにされない。
幸せな場面でも悲しい場面でも不気味な場面でも、いつでも素晴らしく鮮やかに彩りがたたえられている。
紙魚さんもいつもこんなふうに世界を眺めているのかなあ。

で、ここで終わらないと……
これで完璧だとわたしなどは思ってしまうのですが、さらに怒濤の3部がはじまってしまうんですよね。
いったい享一と周のふたりはどうなってしまうのか。
サイドストーリーを読み終えたら3部にいきますね。
7月さま♪
 7月さま♪

 お疲れ様で~す!!
 最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございます(涙
2章は自分でも好きな章なので(3章書きながら言うな)、読んでいただけて嬉しいです。

> もう圧倒されてことばもありません。
> エピローグの直前の、そもそものはじまりだった「家」での再会のくだりから、もう感慨のあまり泣き出しそうになりました。
 ・このような感想がいただけて、感無量です(ノω・、) ウゥ・・・
ラストはいつもテンパってしまうので、更新後の大幅な書き足しとか・・
やってしまったなあ(遠い目

> 幸せな場面でも悲しい場面でも不気味な場面でも、いつでも素晴らしく鮮やかに彩りがたたえられている。
 ・う・・・嬉過ぎます。

> 紙魚さんもいつもこんなふうに世界を眺めているのかなあ。
 ・わ~~、どうなんでしょう。
すぐに感動する単細胞人間なので、何でもかんでも大げさに捉えているのかもしれません。

> で、ここで終わらないと……
> これで完璧だとわたしなどは思ってしまうのですが、さらに怒濤の3部がはじまってしまうんですよね。
 ・や、もう3章はお読みにならないで、ここで美しく終ってください。。。と申し上げたい(笑)
書き出すまでは、自分でもあそこまでドロドロになるとは思ってませんでした。
1,2章を引きずっている方が、ドン引きなのがわかってしまう今日この頃・・・(;^_^A
みなさん、ごめんなさい(ここで言うな~

 連続コメント&ご訪問、ありがとうございました。

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