02 ,2009
翠滴 2 -エピローグ 2-
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肌寒さを感じて、ぼんやりと目覚めた。
「享一、風呂を沸かしたから、入ろう」
耳元で愛しい声が聞こると、自分の顔に微笑が広がるのを感じる。
日はとうに傾いており、晴れ渡った春の空に浮かぶ雲を神々しく輝かせている。
花弁は、辺り一面 享一自身や享一に掛けられた掛け布の上にも散り積もっていた。
立ち上がると纏っていた花弁がハラハラと足許に舞い落ちる。
ともすると、よろめきそうになる躯を支えられながら風呂に向かった。
周は一緒に入る事を躊躇う享一を嬉々として浴室に引っ張り込んだ。充分な広さのある檜の湯船に少し間を置いて身を沈めると、湯の中を伸びてきた手に抱き寄せられ、向かい合わせの状態で周の膝の上に跨らされた。周の翠の虹彩に新たな欲情を見て取り、このままでは済し崩しになりそうだと慌てて話題を振った。
「周、夕食はどうしようか?」
「パスタや缶詰の常備食があるから、それで済ませればいい
それとも、街まで食べに行くのも悪くないか・・享一は何が良い?」
この腰のだるさを抱えて、車で1時間以上もかかる街まで行くのはかなり辛い。逡巡する顔を上げると目の前に、こんな身体にした張本人が口角を少し上げ笑いを噛み殺している。
「・・・パスタでいい」 憮然と答えると
「では、急ぐ事はないですね」と返してきて、抗うそぶりを見せた享一の動きを素早く封じ、湯の温度で染まり薄らと汗をかいた熱い肌に舌を這わせ歯を立ててきた。享一の腰を捕らえていた手指は、ゆっくり2人分の性に愛撫を加えていく。享一の周の首に回した腕が伸びきって、堪らずに仰け反らせた頭から流れるウェンゲ色の髪先が湯の表面で漂った。
少しずつ揺れだした享一の躯に合わせて水面が揺れだす。濡れた声を発する薄く開いた唇は頬と同じように染まり、湯と唾液に濡れて周を誘う。浴室に切羽詰った喘ぎと水音だけが響いている。汗の粒を額に浮かべ快感に眉根を寄せ、半ば伏せられた目蓋が時折、小刻みに震えた。その頭を起こして淫蕩に弛んだ唇を捕まえる。
「享一、綺麗だ」 面と向かって告げられ、面映そうに微笑む。
風呂から上がり、着替えを取りに行くと言う周についていこうとして止められた。
「享一は、あの部屋への出入りは禁止だ」
「は? なん・・・あ」
周の部屋は河村が設計した。
「周は、その・・・圭太さんの事が、気になるのか?」
愚問だと自分でも思う。だがいつまでも引っ張っれば、そのうちお互いが辛くなる。
周の表情から感情が消え冷たい眼差しを向けてきた。
掌で頬を包まれ、その冷たく沈んだ翠の瞳が悲しげに揺れる。
「嫉妬の炎で、享一を焼き殺すかもしれないと言ったら? 所詮、俺も神前と同じ業の深い人間だ。でないと、享一を俺の運命に巻き込んだりは出来なかった」
「周…神前は、人を信用出来ない弱くて悲しい人間だ。周は違う。俺は周になら囚われても構わない」
周の瞳がすっと潤み、その後まぶしそうに目を細め微笑む。
その頭を捕まえて、初めて自分からキスをした。
痛いほど抱きしめられ、密着し合わされた肌はそのまま同化し、ひとつになれそうな錯覚を起こす。
愛しい、愛しい、愛しい。周になら、ずっと囚われていたい。
日もすっかり暮れ、闇夜に映える薄紅の桜を見ている。夜が深くなるにつれますます艶やかな妖気放ち出す桜は、昼間あれだけ花弁を散らしたのに、まだはらはらと花弁を落とし続けていた。
「春が散る」
「ああ、今夜は暖かいから、夜中には散ってしまうかもしれないな」
春の宵に吹く微風に流されて来た花弁に手を伸ばすと、指の間をすり抜け広縁に佇む2人の足許に舞い落ちた。
突如、田園の夜の静寂を破り、轍を踏む車のエンジン音が近づいてきた。
塀の外を、ヘッドライトの明かりが通り過ぎて門の前辺りでピタリと停まる。
続いて車のドアが閉まる鈍い音が夜空に響いた。
「玄関に誰か来たみたいだぞ。周、行かないのか?」
享一が尋ねると、隣に立つ周は憐れみのこもった瞳で享一を見、
「早すぎる」 と一言呟き、桜に視線を戻すと憮然とした表情で溜息を一つ零した。
肌寒さを感じて、ぼんやりと目覚めた。
「享一、風呂を沸かしたから、入ろう」
耳元で愛しい声が聞こると、自分の顔に微笑が広がるのを感じる。
日はとうに傾いており、晴れ渡った春の空に浮かぶ雲を神々しく輝かせている。
花弁は、辺り一面 享一自身や享一に掛けられた掛け布の上にも散り積もっていた。
立ち上がると纏っていた花弁がハラハラと足許に舞い落ちる。
ともすると、よろめきそうになる躯を支えられながら風呂に向かった。
周は一緒に入る事を躊躇う享一を嬉々として浴室に引っ張り込んだ。充分な広さのある檜の湯船に少し間を置いて身を沈めると、湯の中を伸びてきた手に抱き寄せられ、向かい合わせの状態で周の膝の上に跨らされた。周の翠の虹彩に新たな欲情を見て取り、このままでは済し崩しになりそうだと慌てて話題を振った。
「周、夕食はどうしようか?」
「パスタや缶詰の常備食があるから、それで済ませればいい
それとも、街まで食べに行くのも悪くないか・・享一は何が良い?」
この腰のだるさを抱えて、車で1時間以上もかかる街まで行くのはかなり辛い。逡巡する顔を上げると目の前に、こんな身体にした張本人が口角を少し上げ笑いを噛み殺している。
「・・・パスタでいい」 憮然と答えると
「では、急ぐ事はないですね」と返してきて、抗うそぶりを見せた享一の動きを素早く封じ、湯の温度で染まり薄らと汗をかいた熱い肌に舌を這わせ歯を立ててきた。享一の腰を捕らえていた手指は、ゆっくり2人分の性に愛撫を加えていく。享一の周の首に回した腕が伸びきって、堪らずに仰け反らせた頭から流れるウェンゲ色の髪先が湯の表面で漂った。
少しずつ揺れだした享一の躯に合わせて水面が揺れだす。濡れた声を発する薄く開いた唇は頬と同じように染まり、湯と唾液に濡れて周を誘う。浴室に切羽詰った喘ぎと水音だけが響いている。汗の粒を額に浮かべ快感に眉根を寄せ、半ば伏せられた目蓋が時折、小刻みに震えた。その頭を起こして淫蕩に弛んだ唇を捕まえる。
「享一、綺麗だ」 面と向かって告げられ、面映そうに微笑む。
風呂から上がり、着替えを取りに行くと言う周についていこうとして止められた。
「享一は、あの部屋への出入りは禁止だ」
「は? なん・・・あ」
周の部屋は河村が設計した。
「周は、その・・・圭太さんの事が、気になるのか?」
愚問だと自分でも思う。だがいつまでも引っ張っれば、そのうちお互いが辛くなる。
周の表情から感情が消え冷たい眼差しを向けてきた。
掌で頬を包まれ、その冷たく沈んだ翠の瞳が悲しげに揺れる。
「嫉妬の炎で、享一を焼き殺すかもしれないと言ったら? 所詮、俺も神前と同じ業の深い人間だ。でないと、享一を俺の運命に巻き込んだりは出来なかった」
「周…神前は、人を信用出来ない弱くて悲しい人間だ。周は違う。俺は周になら囚われても構わない」
周の瞳がすっと潤み、その後まぶしそうに目を細め微笑む。
その頭を捕まえて、初めて自分からキスをした。
痛いほど抱きしめられ、密着し合わされた肌はそのまま同化し、ひとつになれそうな錯覚を起こす。
愛しい、愛しい、愛しい。周になら、ずっと囚われていたい。
日もすっかり暮れ、闇夜に映える薄紅の桜を見ている。夜が深くなるにつれますます艶やかな妖気放ち出す桜は、昼間あれだけ花弁を散らしたのに、まだはらはらと花弁を落とし続けていた。
「春が散る」
「ああ、今夜は暖かいから、夜中には散ってしまうかもしれないな」
春の宵に吹く微風に流されて来た花弁に手を伸ばすと、指の間をすり抜け広縁に佇む2人の足許に舞い落ちた。
突如、田園の夜の静寂を破り、轍を踏む車のエンジン音が近づいてきた。
塀の外を、ヘッドライトの明かりが通り過ぎて門の前辺りでピタリと停まる。
続いて車のドアが閉まる鈍い音が夜空に響いた。
「玄関に誰か来たみたいだぞ。周、行かないのか?」
享一が尋ねると、隣に立つ周は憐れみのこもった瞳で享一を見、
「早すぎる」 と一言呟き、桜に視線を戻すと憮然とした表情で溜息を一つ零した。
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□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
エピローグは全2話の予定でしたが、長くなってしまったので
残りは上がり次第、更新いたしますm(_ _)m
日ごろコメント・拍手・村ポチありがとうございます。
読み手の皆さまからの、パワーを頂いております。
本当に、感謝です。
ブログ拍手コメントのお返事は、サイトの”もんもんもん”の
ブログ拍手コメ・メールのお返事からか、もしくは*こちら*から

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
エピローグは全2話の予定でしたが、長くなってしまったので
残りは上がり次第、更新いたしますm(_ _)m
日ごろコメント・拍手・村ポチありがとうございます。
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本当に、感謝です。
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2人の愛が溢れていて素敵過ぎます!
って思っていたら!
早すぎる?
憐れみのこもった瞳??
えぇ?また離れ離れになっちゃうとか言いませんよね?汗
何が起こるの~~?!
最後の最後までドキドキハラハラ・・・流石紙魚さん・・・。
続きお待ちしております!