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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
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長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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Category: 翠滴 2 (全53話)

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翠滴 2 水底 1  (42)
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 周(あまね)がいた。

 会いたくて、会いたくて、会いたくて・・・でも、全然 手が届かない。
 夢でも、現実でもこの腕をちぎれそうなほど伸ばしても、手指はいつも空を掴んでいた。その周が目の前にいる。締め上げられるような苦痛を感じる自分の心が都合よく見せた幻影ではないのだろうか?

 明るい光の中で見る周は、記憶の中の周より少し大人になっていてシャープな輪郭に磨きがかかり、大人の色香を纏う。 その研ぎ澄まされた双眸からはカラーコンタクトを通しても怒りに満ちた精悍な光が放たれ、この状況を見据え立つ姿は、高潔な雄の獣を思わせる。
 ああ、やはりなんという美しい男なのだろう。慕情と感嘆が胸に満ち溢れ、2年前と同じく、いやそれ以上に永邨 周は享一の心を鷲掴みにする。

 先に、神前が口火を切った。
 「おや、おかえり・・・周
 今日からアメリカの予定だったのでは?」

 その予定だった。神前も自分も、周のいなくなる今日を選んで会うことにした。
 本来の目的を思い出した享一は、ようやく周に釘付けだった視線を引き剥がし逸らせると、空になったワイングラスが目に入った。本心を言えばずっと周を見ていたかった。だが、神前の提示した毒を呷った自分には、周を見つめる資格さえもう無い。

 「周、返事をしないか。アマネ!」
 自分の問いに答えない周に対し、神前の声に苛立ちが篭る。
 周は黙って神前を押しのけた。
 今まで、些細な反発も許さなかった独裁者は、微妙なバランスの崩れを嗅ぎ取ったのか、猜疑の色をその顔に顕にし周を睥睨している。

 「享一、行きましょう」矢庭に手首を掴まれた。
 「だめだ、周 帰ってくれ」周を見ることが出来なかった。

 「享一は連れて行きます」
 「周は、サクラが享一君だと認めるわけだ」
 「享一は、享一だ。たった一人の私の”番い”の相手です。享一、行きますよ」

 周の力強い腕に引っ張られる手首を引き抜こうと足掻いた。
 「周、だめだ、だめだ、待ってくれ」
 今この部屋を去るわけには行かない。
 抗いながらも、気持ちはこの手を放さないでくれと願っている。俯くと涙が零れた。
 周は享一を引き寄せ切なげに見下ろし唇で涙を拭うと、さっと屈んで享一を肩に担ぎ上げた。
 「周、下ろしてくれ!・・・下ろせっ、周!!」
 徐々に力が抜けていく身体を、軽々担いでドアに向かう。
 顔を上げると、怒りで赤黒く顔を染め上げた神前と目が会った。眉間に血管が浮き、全身を震わせ、見開いた目を血走らせて赤く濁らせている。下に下ろせともがいていた手足が慄然とし、享一の動きが止まった。

 「周」 震えを抑制する怒りに塗れ、押し殺した声が背後から掛かる。
 「裏切りの代償は高くつきますよ」

 享一を抱かかえた周は、ゆっくり振返り、普通の人間なら瞬時に凍りつきそうな笑みを浮かべた。ポケットから何か取り出すと、神前の前に放り投げる。

 「この部屋のカードキーだ。今日、初めて俺の役に立った
 お前とは、もう終わりだ”神前様”・・・・バン!」
 言葉の最後に周は指でピストルを作ると、神前の眉間を打ちぬいた。 
 その指の先を口の前に持ってきて、フッと息を吹く真似をする。
 少し顎を上げ見下すように、神前を睨み付け言い放った。

 「これは、18才の俺からの餞別だ。最後にお前の息の根を止めてやる」
 
 部屋を出てからエレベーターに行き着くまでの間に、神前の部屋から何か大きなものが倒れる音がし続いてガラスの割れる音が響いた。遠のいていく音の中に叫び声が混じっている。断末魔のような咆哮に、身体が震えた。

 「だめだ、周。戻らないと」
 抗う身体を無理矢理エレベーターに押し込まれ、やっと下ろされた。自分を掴む手の力が弱まった隙を突いて引き返そうとしたところを引っ張り戻された。鼻先で扉が閉まる。
 身体をエレベーターの壁に押し付けられ、逃げられないようにロックされた。その間も、薬効で感情が高揚した享一の調子外れの叫び声と、それを制する低い声の押し問答が続く。
 エレベータに乗り合わせた外国人の老夫婦が、目を丸くしているのもお構いなしに、享一は壊れたように声を張り上げた。「戻らせてくれっ」と絶叫を繰り返す享一を周が抱きしめようとすると、手を突っぱねて享一は拒否する。

 「周、邪魔するな!」目を潤ませ頬を染め、享一の興奮がエスカレートしていく。
 「享一こそ、何やってる。鳴海から伝言を聞かなかったのか?」
 ドアが開いた。老夫婦が頭を左右に振りながら逃げるように降りていった。
 享一も周に無理矢理引き摺り下ろされた。
 「嫌だっ。放せっ」
 夕刻の、待ち合わせやエアポートリムジンを待つ客で込み合った広いロビーラウンジに2人して降り立った。エレベーターを降りてからも、大声でやり合う2人に注目が集まった。

 「享一。いいから、聞け」
 「聞けるかっ!」
 享一の頬が鳴った。驚いた享一の両肩を掴んだ周が、怒気を迸らせながら強く揺さぶる。
 「ふざけるな!神前がどんな男か・・・・・自分が何をやったのかわかっているのか?いつからお前は男娼紛いの事を、やるようになったんだ?」
 享一の涙に濡れた必死の瞳が、ぶれる事なく周を捕らえ、あらん限りの声を振り絞り思いの丈を叫ぶ。

 「なんと言われようと俺は平気だ!それがどうした!?そんなことで周が自由になれるというのなら、俺は世界中の男とだって寝てやる!!」

 ロビー中が水を打ったように静まり返った。


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 □□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 
 ふと、思ったんですけど・・・本当に萌えの無い話ですね。すみません~~!!!!

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Comments

享一ー
ろ、ロビーで・・・・・そんな大声で(///▽//)ぽっ

いやいや、そこじゃないですね。

周格好良かったーーー!!!
無事に姫の奪還に成功しましたね♪
この後神前、まだ何かやるのかな・・・それが怖いな・・・。
河豚の毒にでも当たっちゃえばいいのに(ボソ←酷w

ようやく2人、また一緒になれるのでしょうか?ドキドキ
狂人の雄叫び
あー気持ちイイ~~~!!!!
そして超カッコいい~~~~!!!!!周さん!!
言ってやりましたね!とうとう..ううっこの時をどんなに待っていたことか..(涙)
享ちゃんもよく頑張った!!ロビーでえらいこと叫んじゃったけど、周にとってはかけがえの無いセリフでしょうね(*´ェ`*)ポッ

萌えが無いなんてとんでもない!!紙魚さまの物語は、そこここに萌えが転がっております♡っていうか~萌えだらけ?
鳴海さんと周さんの裏工作の種明かしも気になります。
柚子季さま!!
こんばんはヽ(^▽^ )ノ
>ろ、ロビーで・・・・・そんな大声で(///▽//)ぽっ
叫ばせちゃいました~
実際ならお客様・・・って肩叩かれて退場モノかも・・(笑)
周を褒めていただき、ありがとうございますっ(涙~~
やっとやっと、2人を会わせることが出来肩の荷が下りました・・ほっ

柚子季さまのご提案に賛成です~~!!
ここは穏便に神前には、河豚の毒にでもあたってもらう方が
世のため人のため、2人のため(ハート
一緒になれるまで、まだもう一山ございます。
・・・書き切れるだろうか???アタシ?

 コメント、ありがとうございます~♪
シマシマ猫さま、こんばんは☆
 スカッとしていただけましたでしょうか!!!?
周を褒めてもらえて嬉しいっす!!(*^o^*)
>ううっこの時をどんなに待っていたことか
ハイ、周も、享一も存分に思いの丈を吐かせてやりました~~スカ~ッ!!
享一の言葉に周は内心デレデレ間違いナシ・・

萌え、ありますでしょうか?
自分の記事にはなかなか萌えれないんでわからなくなってきちゃう
んですよね。。そう言っていただけると救われます~☆

 コメント、ありがとうございました♪♪

あぁ~~~感無量ダ!!!
…(泣
享たん…それだけ思われれば周も本望…。
美青年のもの凄い内容の叫びにどれだけ多くの人が反応した
ことでしょう(そこじゃないと思う

あとは、もういいでしょうか?
もう、災いないでしょうか??
こわ~~~いエロおやじの逆襲とか、ないですか?!

ふたりが苦難を超えて結ばれる日が待ち遠しい!!

萌え、ありますありますてんこもり!
美しくてインパクトのある日本語にも萌えます。
そして官能的なあれこれ…。
(そして続きも書かずに読みに来ているわたくし。
りりさま♪♪
 こんばんはヽ(^▽^ )ノ
実は、この雄叫びは3部の伏線にもなってるんですけど、
着手するのがメッチャ先になりそうなんで、忘れられちゃうかも~

>こわ~~~いエロおやじの逆襲とか、ないですか?!  
 エロおやじが逆襲にでる前に手を打たそうと
私が裏工作中~~周に、自分でやれよっ!!て言ってやりたい(泣 

私も、2人が結ばれる日が待ち遠しいっす!
その暁には、りりさまのところへ慰安旅行に行くっすV
今読んだら、アタクシきっと続きが書けなくなります~~ジっと我慢!

萌え、ありますか?
書いている本人は、なかなかわからないですよね・・・
最近、整合性を取るために前の記事を読み返すんですが、マジ蒼ざめます。。
かといって、今が進歩してるわけでもないんですけど(苦笑~・・

>そして続きも書かずに読みに来ているわたくし。
(゜Д゜;)!!! ま、、まずいんぢゃあ・・・・・

 コメント、ありがとうございまっす!!!
神前さんは
大丈夫かしら。脳溢血で倒れてたりしないか、
って、心配どころが違う(笑)
公衆の面前で叫んでしまった享一。
もももしかしてここでラブシーンが始まったり……
確かめなくてはε=ε=┏( ・_・)┛イソイデイソイデ
Re: 神前さんは
 7がつさま、ようこそです♪

> 大丈夫かしら。脳溢血で倒れてたりしないか、
> って、心配どころが違う(笑)
 ・爆!!)ご心配、ありがとうございます。
 や、けっかんの2~3本は軽く切れているはずだと。
 
> 公衆の面前で叫んでしまった享一。
> もももしかしてここでラブシーンが始まったり……
 ・え?公然ワイセツ?ま、やりそうな勢いですけど(笑)捕まりますね~。
 あ、行ってしまった・・・・

 コメント&ご訪問、ありがとうございます。

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