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紙魚

Author:紙魚
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長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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Category: 翠滴 2 (全53話)

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翠滴 2 毒 8  (41)
←(40)                                      (42)→  

 「周は美しかったよ。君の名前を出されて完全に憤っていた
 周はね、怒ると翠の瞳の赤みが増してね、頭に上った血液を抑えようと
 苦悶する周は、服従させられ屈辱にのた打ち回る気高い竜のようにゾクゾクする程、美しい」

 陶酔するように話す神前の目には周以外の何も映っていないのだろう。享一に向けられた瞳には、狂気めいた全ての光を飲み込んでしまいそうな暗い炎のみが宿り、背筋が寒くなった。その、つかみ所を間違えると間違いなく引きずり込まれそうな暗い深淵から浮上してきた冷たさすらない温度を持たない感情が緩慢に、だが滑らかに享一に照準を合わせる。
 
 やがて残忍さと欲情が綯交ぜになった微笑を浮かべる。一見、上品で優しげに見えるその微笑が、却ってこの男の冷酷さを物語る。ぎゅうと冷え切った心臓が縮み上がり、身体が勝手に後ずさろうとした。それを意地だけで踏み止まらせる。
 この男を、心底恐ろしいと思った。

 「もう一匹、小綺麗な色をした蜥蜴を飼うのも悪くない」

 輝きの無い暗黒の瞳に捕らえられ、動けなくなった。飲み込まれる。
 18の周も、この瞳に捕まり恐怖を感じただろうか?アマネ・・・アマネ・・

 ”アマネ”それは戒めを解き放つ名前だった。ドロリとした暗闇に足を取られ、その大半を占められていた胸の内が、一気に生命力溢れる緑に満たされる。その真中に、いつの間にか享一の心の中に住み着いた、瑞々しい翠の瞳で真直ぐに自分を見つめる18才の周が佇んでいる。

 挑戦的な目で神前を睥睨しつつ笑っている自分に気が付いた。自分の中で濃厚な生命力を宿した瑞々しい植物の蔓がいくつも絡み合い育ちながら自分を満たしてゆくのを感じた。大丈夫だ、俺の中には周がいる。

 「取るに足らない小さな蜥蜴でも、油断していると、咬みますよ。
 俺には守るべきものは一つしかない。周を必ず、あなたから解放してみせます」

 神前は、自分が今まで見ていた男が、目の前で変化(へんげ)したのを見て、「おや」とばかりに少し片眉を上げ、次に満足した表情で悦しそうに嗤った。

 「なるほど。周の選んだ男の正体が見えてきた」
 少し間をおいて、闇が滴る笑みを浮かべ呟く。
 「これは、実に楽しみだ」

 流れるような手つきでグラスにワインを注ぐ。神前はビジネスと共に教養も周に施したと言っていたが、こんな些細で動作も周を連想させるのが辛い。その優雅に流れる指先が、シャツの胸のポケットから茶色の小さなアンプルを取り出した。

 「これが何かわかりますか?」

 アンプルを割ると中から粘性のある液体が流れ出し煙のような澱を作った後、深紅の液体に溶けていった。薬品は無色でありワインの色自体には何の影響も無いはずなのに、目の前のルビー色していたワインは前よりも明かにどす黒く妖気を漂わせる液体になった気がした。

 口に含めば喉や内蔵が内から焼け爛れ腐敗していくに違いない。
 享一はグラスから神前の顔に視線を移すと瞳に挑戦の光を宿し睨みつけた。

 「ふふ・・・媚薬だよ。無味無臭だからワインの味を損ねる事は無い、飲みたまえ」

 無言で黒煙を上げそうなグラスを手に取り、先日神前がやって見せたように一気に飲み干した。
 周・・・
 目を閉じて周と同じ闇を見る。けれど、俺は負けない、必ず救い出してみせる。

 「緩効性なのが、今ひとつですがね。
 さてと、食事の続きをしようか?それとも、このまま・・・」

 神前がそう言いながら開けた幅広のサイドボードの抽き斗しの中身に享一は瞠目し、慄いた。抽き斗しの中には、鞭や注射器、鋲の打たれた黒革の首輪とチェーンで繋がった揃いの手錠など、それとわかる淫具や使い道の全く想像つかない道具がびっしりと詰まっていた。黒皮に褐色に変色した血液が染みついているのが見て取れ、自分の顔から音を立てて血の気が引くのがわかった。

 「全て特注品だよ、周のサイズに合わせて作らせた
 君のもそのうち用意するから、今日はこれで我慢してくれたまえ」

 狼狽が隠せない。この男は真性のサディストだ。
 本能から身体が神前から離れようとするが、足に力が入らない。神前が恐怖に見開かれた享一の目が首輪に釘付けになっているのを見て取り、それを取り上げた。チェーンで繋がった手錠もジャラと音を立て一緒に持ち上がる。神前は整った貌に残忍な嗤いを浮かべ、邪欲にまみれた視線で享一を捕らえながら首輪の金具を外した。

 薬が効いてきたのか、それとも恐怖からなのか身体が思うように動かない。されるがままにネクタイを緩められ、Yシャツの首もとの釦を外されると、柔らかい項に硬い皮の首輪が充てがわれる。そのひたりと冷たく、しっとりとした感触に恐怖心が極まり、発狂し叫び声を上げそうになった。
 いや、実際に怒鳴る声を享一の耳は聞いていた。

 「享一に手を出すな!」

 時間が止まり、神前はおもむろに振返り、享一の瞳は信じられない思いで侵入者を凝視した。

 

<<← 前話2-1次話 →>>

 □□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
 
 
  いくら年間契約でも借り上げでも、ホテルの抽斗の中にこれはないやろ~!!!
 という突っ込みは自分で入れときますので、ご容赦くださいませ~ハハハ・・・(llllll)
 猛毒エリアをようやく抜けました。不快な思いをされた読者のみなさま、申し訳ございませんでした。
 このようなイタイ記事にも、かわらずコメント・拍手・村ポチをいただき、ほんとうに
 ありがとうございます。本当に本当に、感謝・感謝です(感涙


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Comments

あわわわわっ、享一~~!!
神前が怖い、怖い、怖すぎる。
毒が濃すぎて、どうしようかと・・・・・。
間に合ったんでしょうか、間に合ったんですよね。
喜んで良いのか、まだ分からないですけども。
取りあえず、ガッツポーズしながら胸をなで下ろしております。
周も紙魚さんも、頑張って下さいませ。
ドキドキ・・・。
よし!よしよし!!
周間に合った?!
NY素っ飛ばして来たんですね!
愛だわ、愛が溢れてる~~(感涙

あぁ~~もぅ、神前めーー(憤
躾け直しが必要ですね・・・(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
(誰も怖くて手が出せない?…ビクビク)

ここから怒涛のラストでしょうか?
ドキドキしながら続きお待ちしております!!
(あ、柚子季そんなにピュアじゃないので大丈夫ですよ?爆)
ゆめねさま、こんばんは~♪
 恐い・・恐いですか?恐いですよねこんな人・・・
半径30メートル以内進入禁止ですよね!!
書いてて、う~たまらん~~と思うキャラNO.1でした(笑)
周・・・間に合いました。ホッ・・・・(T▽T)
これで、やっと最終章に入れます!
周ばかりにでなく、私にまで声援をありがとうございます~~!!!

 コメント、ありがとうございました♪
柚子季さま。こんばんわ(*^o^*)
おお、柚木さまに愛があると言ってもらえた~~(嬉
NYは、もちブッチでございます。
ここでいったら男が廃る・・・以前の問題ですよね(^-^;)
神前の躾け直し・・・(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
 ↑ この顔文字、、檻に入れて鞭でやるバージョン?・・ヽ(゚Д゚ )ノ 
調教モノだ~(笑)
はい、これからラストに向けて爆走する、あくまでも”予定”で
ございま~す。
 コメント、ありがとうございました♪
良かったよ~!
間に合って・・。
媚薬を呑まされたときには、ドキドキしました・・・!

神前・・そんなモノを揃えていたのですね・・。
恐ろしい人だぁ~!!
今まで、周はそれに耐えてきたのですね・・・(クスン・・)
享一を守るため・・・。

次は最終章ですか・・。
やっと、二人に幸せが訪れるのですね・・・。
楽しみに待っています!
ミートンメートンさま、いらっしゃいませ!
 やっと神前から離れられそうです(涙
享一は、もう自分で飲んでましたね・・・
神前は初期に図に乗って狂人で淫獣って設定にしたけれど
途中でかなり後悔しました(泣
周は8年間もお付き合いしたことに・・・(゜Д゜;)
 
はい、次ラストに突入していきます。
BLの鉄則!ハピエ~~~
もうチョットお付き合いお願いします(ペコリ

 コメント、ありがとうございます~☆
こわいよおお!!
Σ(`■´;)゜。ごわい神前…!!!
お、お祓いを…!!

周間にあったの?間にあったのね?!
あんなのやこんなのでおいたされないですんで良かった…。
こんな恐ろしい男に8年!!
いっや~~~~!!
誰か成敗して!周今こそこんなヒヒ爺はけっ飛ばしてやるのよ!!

ハピエですよね?!
信じていいんですよね?!
りりさま、いらっしゃいませ!!
 ぷぷぷ、りりさまのアドバイス通り
ちょっくら、憑依してもらい2~3行増えましたゾヽ(´ー`)ノ 
まじキモ・・・なヤツの出来上がり♪ホホ・・(汗汗・・・

ホントにおいたされなくてよかった。。。
てか、きっとアタイには、書けません~(@_@;)。チータ~ン!!
やっと、次でおさらばッス!!うれすい~~
いま書いている記事には出て来ません、、なのに
物語終盤の魔物にまた引っかかっています。
頭の中では完結しているけれど、文字がついて来ない。。。

ラストはハピエですよお~~明言しとかないと裏切りそうな自分が恐い・・

 コメントありがとうございます♪

ヽ((◎д◎ ))ゝヒョエ~
『油断してると噛みますよ』
享ちゃんよく言った!それでこそオトコノコ!!カッコいいよ(涙)母さんうれしい..(えっいつから?)
まあ、かえって狂人を煽ってしまったようですが( ̄□ ̄;)!!

いよいよヤマ場ですね。襟を正して続きを待ちます。
シマシマ猫さま、おはようございます!!
 「かあさ~ん!!」(^◇^;)
イエイエ、お姉さまあたりで・・・・
「小さな蜥蜴も、油断すると噛みますよ」と
本人は本気のはず、、なんだろうけど、思い切り虚勢張らせてみました。
こういう強気は、狂人の大好物・・・(゜Д゜;)ウヘェ!!
でも、神前とも今日でオサラバでございます(嬉泣
長い荒修行にもようやくピリオドを打てそう・・(T▽T)

エンドまで上手く持って行けるか・・・緊張しています。ドキドキ・・・
 コメント、アリガトウゴザイマス♪♪♪



いやいや
まだまだ痛い展開を続けてくださってよかったのに(S発言)。
周、来るの早すぎ!!
そうだ、まえの記事で書こうと思って忘れてたことです。
味覚障害、ここですでに出てきていたんですね。
わたしは食欲がなくなることはあっても、味覚障害というものになったことはありませんが……
想像するだけで、ゾッとしてしまう。

やっぱり神前さんは真っ直ぐなひとでした(・∀・)♪
いや、鳴海よりはさ。
Re: いやいや
7月さま、おお、ここにも、いらっしゃった♪♪

> まだまだ痛い展開を続けてくださってよかったのに(S発言)。
 ・や、この頃お道具の知識があやふやだったので(爆
 お約束があまり好きではない私ですが、このときは流石にやってしまいました。
 精神的なもの、やくぶつにr味覚障害の原因は色々らしいです。

> 周、来るの早すぎ!!
 ・早く来ないのかと待ちわびる声はたくさん頂きましたけど、「早すぎ」と仰っていただいたのははじめてかも・・・(笑)

 連コメ&ご訪問、ありがとうございました!!

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