01 ,2009
翠滴 2 毒 5 (38)
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「お久しぶりです。時見さん」
「鳴海さん、どうしてここに・・?」
鳴海がいるなら周がいてもおかしくない。享一の目が忙しなく、まだ薄暗い部屋の中を想い人を見つけようと彷徨った。徐々に鮮明になる記憶の中で、優雅に舞うように暴漢を沈める周と、赤いイメージが重なり、まさか・・・と鼓動が早くなる。
「鳴海さん、あの、周は・・・周は無事なんですか?」
「周は怪我も何もしていません、”無事”ですよ。
あの程度の奴らなら周の相手にはなりません。
・・まあ、そもそも何を持って無事と言うか、疑問ではありますがね」
「どういうことですか?」
「あなたが中途半端な動きをしてくれたせいで、今頃、周は精根尽きるまで
神前につき合わされているということです」
享一は驚き、うろたえた。周を守るつもりで行ったのに、これでは周を窮地に追いやっただけという事ではないか。
「そんな・・・俺がサクラをやったってバラしたからですか?」
「笑止。そんなこと、神前はとっくに知っている事でしょう?」
鳴海は低く乾いた笑い声を上げた。
「知らないというのは、最強の防御なんですね。
君は、周を好きだと言いながら、そうやって2年の間
何も知らずにのほほんと暮らしてきた訳だ
君を見ていると、想像力を欠いたその鈍さに虫唾が走りますね」
鳴海と自分の間に横たわる静寂に鋭い亀裂が走った。
「私は、2年前君が庄谷を後にした時、所詮 愛など造作ないものだと思いました
だが、周はその取るに足らないつまらない愛の為に完全に神前に囚われてしまった」
祝言の翌朝、享一はベッドの中で裸で抱き合う周と鳴海を見つけた。
周を信じ、周を想うだけで震えるほどの恋をし、全てを捨てても構わないと覚悟を決めて告白をしようとしていた矢先だった。傷ついたのは自分だ。
この2年間、その時のトラウマに自分はずっと苦しみ煩悶し続けたのだ。愛しているというのなら、どうしてこんな思いをさせるのか?周と、いま目の前にいる冷め切った怜悧な視線をよこして来る男に対して、今まで封印してきた、重く鉛色に濁りきった怒りが込上げてきた。花隈の話では、鳴海と周は付き合ってなどいないという事だった。
では、なぜ・・・周は、自分を捨てたのか。
「でも、あれは周とあなたにも責任はある。あなた達は共謀して俺を遠ざけた
じゃないですか。何故です?
それに、どうしてその事で周が神前に囚われる事になるんですか?」
鳴海は、薄笑いを浮かべた。
「・・・これを聞いたら、君はもう”知らない自分”には戻れません。
それでも、聞きたいですか」
享一は頷いた。部屋の中がさっきより少し明るさが増した。
もう、何も知らないでいるのは御免だ。心は、周と共に真実を渇望している。
鳴海は、眼鏡のブリッジを左手の中指で押し上げると、享一から視線を逸らさず感情を押し殺した声で話し始めた。
「2年前、あの祝言の夜です。
サクラを見た神前は周に新妻である君を要求してきた・・・
番いで自分のものになれとね。
周は、あの祝言を機に他の顧客と同じく神前を切り捨てるつもりだったんです。
だが、逆に神前は君の身の保障をネタに周を強請ってきた
芝居まで打って周が君を追いやったのは、純粋に君を守るためですよ。
君を神前から守るには、周は君を諦め”完全に切る”しかなかったんです」
衝撃だった。
『知らないというのは、最強の防御・・・』
頭の中で目の前の男が、無知は罪だと、享一に呆れながら低く笑っていた。
「お久しぶりです。時見さん」
「鳴海さん、どうしてここに・・?」
鳴海がいるなら周がいてもおかしくない。享一の目が忙しなく、まだ薄暗い部屋の中を想い人を見つけようと彷徨った。徐々に鮮明になる記憶の中で、優雅に舞うように暴漢を沈める周と、赤いイメージが重なり、まさか・・・と鼓動が早くなる。
「鳴海さん、あの、周は・・・周は無事なんですか?」
「周は怪我も何もしていません、”無事”ですよ。
あの程度の奴らなら周の相手にはなりません。
・・まあ、そもそも何を持って無事と言うか、疑問ではありますがね」
「どういうことですか?」
「あなたが中途半端な動きをしてくれたせいで、今頃、周は精根尽きるまで
神前につき合わされているということです」
享一は驚き、うろたえた。周を守るつもりで行ったのに、これでは周を窮地に追いやっただけという事ではないか。
「そんな・・・俺がサクラをやったってバラしたからですか?」
「笑止。そんなこと、神前はとっくに知っている事でしょう?」
鳴海は低く乾いた笑い声を上げた。
「知らないというのは、最強の防御なんですね。
君は、周を好きだと言いながら、そうやって2年の間
何も知らずにのほほんと暮らしてきた訳だ
君を見ていると、想像力を欠いたその鈍さに虫唾が走りますね」
鳴海と自分の間に横たわる静寂に鋭い亀裂が走った。
「私は、2年前君が庄谷を後にした時、所詮 愛など造作ないものだと思いました
だが、周はその取るに足らないつまらない愛の為に完全に神前に囚われてしまった」
祝言の翌朝、享一はベッドの中で裸で抱き合う周と鳴海を見つけた。
周を信じ、周を想うだけで震えるほどの恋をし、全てを捨てても構わないと覚悟を決めて告白をしようとしていた矢先だった。傷ついたのは自分だ。
この2年間、その時のトラウマに自分はずっと苦しみ煩悶し続けたのだ。愛しているというのなら、どうしてこんな思いをさせるのか?周と、いま目の前にいる冷め切った怜悧な視線をよこして来る男に対して、今まで封印してきた、重く鉛色に濁りきった怒りが込上げてきた。花隈の話では、鳴海と周は付き合ってなどいないという事だった。
では、なぜ・・・周は、自分を捨てたのか。
「でも、あれは周とあなたにも責任はある。あなた達は共謀して俺を遠ざけた
じゃないですか。何故です?
それに、どうしてその事で周が神前に囚われる事になるんですか?」
鳴海は、薄笑いを浮かべた。
「・・・これを聞いたら、君はもう”知らない自分”には戻れません。
それでも、聞きたいですか」
享一は頷いた。部屋の中がさっきより少し明るさが増した。
もう、何も知らないでいるのは御免だ。心は、周と共に真実を渇望している。
鳴海は、眼鏡のブリッジを左手の中指で押し上げると、享一から視線を逸らさず感情を押し殺した声で話し始めた。
「2年前、あの祝言の夜です。
サクラを見た神前は周に新妻である君を要求してきた・・・
番いで自分のものになれとね。
周は、あの祝言を機に他の顧客と同じく神前を切り捨てるつもりだったんです。
だが、逆に神前は君の身の保障をネタに周を強請ってきた
芝居まで打って周が君を追いやったのは、純粋に君を守るためですよ。
君を神前から守るには、周は君を諦め”完全に切る”しかなかったんです」
衝撃だった。
『知らないというのは、最強の防御・・・』
頭の中で目の前の男が、無知は罪だと、享一に呆れながら低く笑っていた。
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□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
すみません!ご迷惑をおかけしましたっ!!! m(_ _)m
2日間お休みを頂いて、ようやくラストの形が見えてきました(泣
更新していないにもかかわらず、ポチポチと応援ありがとうございます!!
読んでくださるみなさまあっての、紙魚だなあといつも感じます。
ラストが見えた、と言う割には後何話つづくか、はっきりわかりませんが(汗
あと、10話くらいで終われそうな予感です。
・・・最後までお付き合いいただけますと幸いです。
ありがとうございました。
紙魚

□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
すみません!ご迷惑をおかけしましたっ!!! m(_ _)m
2日間お休みを頂いて、ようやくラストの形が見えてきました(泣
更新していないにもかかわらず、ポチポチと応援ありがとうございます!!
読んでくださるみなさまあっての、紙魚だなあといつも感じます。
ラストが見えた、と言う割には後何話つづくか、はっきりわかりませんが(汗
あと、10話くらいで終われそうな予感です。
・・・最後までお付き合いいただけますと幸いです。
ありがとうございました。
紙魚

享一は遂に知ってしまいましたね。
どうするんだろう…鳴海さん、手貸してくれるのかしら?
その気もないなら姿を現す事もないですよね??
あぁ~~ん、神前が憎たらしい(>_<)
し、幸せにになれます・・よね??
ドキドキしつつ、続きお待ちしております!