01 ,2009
翠滴 2 poison -序章- (33)
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■■R指定要素の強い記事です。閲覧にはご注意ください。
その夜、久しぶりに夢を見た。---------淫夢。
2年もの間、庄谷での出来事を封印しようとすればするほど、夜な夜な享一の躯を蝕み悩ませ続けた夢。河村と付き合っている間は一度も見ていなかった。何度も夢で繰り返された同じみのシーンをリプレイする。
月夜の能舞台の床で、裸の下肢を極限まで広げていた。空に持ち上げられた白足袋の爪先が痙攣のようにガクガクと震えながら反り返り空を掻く。理性や日常の享一に纏わる一切のものを引き剥がし、貪欲に熱欲だけを追い求める淫獣に変えられ、咆哮をあげながら体内に打ち込まれた欲望を食いちぎらんばかりに貪っている。
『享一、目を開けろよ』 熱い吐息とともに命令される。
これも何度も繰り返された科白。浅い息とともに、ゆるゆると瞼を上げると祝言の時の紋付姿の周が欲望にまみれた不埒な捕食者の瞳で、自分を官能と淫欲の紅い泥の中に磔ている。
淫靡な灼熱の泥のしたたる躯は、ぬかるんだ熱の中で周に満され開放される瞬間だけを待ち望んでは、淫らにうねり強請りのたくっている。
これが、自分の正体なのだと慄いた。恐ろしいほどに、業が深く欲深い。
躯が魂の全てが周という男をからめ取り、呑み込もうと物欲しげに口を開けている
淫靡な花。
水仙・・・誰かが自分の事をそう言った。
周に突かれる度、闇の中で月光を受けて浮かびて上がる開いた脚と、その先の白い足袋が大きく振れた。自分が纏う薄紅の襦袢は、袷の右側だけが乱れて肌蹴け、濃さを増した硬い尖に周がぬらぬらと淫猥に蠢く舌を這わせている。カリッと軽く歯を立てられ、堪えきれぬ快感に頭を何度も振りかぶった。唾液のしたたる唇から切羽詰ったすすり泣きに似た声が漏れた。
周の頭髪が享一の指に乱され、白眉の美貌に淫らな色香を添える。視線が絡まると周が放つ微弱な電流が熱波となって襲い来て、結合した部分から脊髄を伝い、脳天を駆け上がった。顎を反らせ縁を朱に染め緩く伏せられた潤んだ瞳から涙が零れた。目蓋の内側の世界に周の翠の虹彩が広がり火花が散る。
仰け反った全身が硬直して、その時を迎えようと歓喜に身悶え震えた。
何度も繰返される絶頂。
「ああ・・・周・・アマネ・・・も・イ・・く」
アマネ、アマネ・・・もう一度、俺を堕してくれ。
夢精で全てが終わる 筈だった。
「ククク。いいとも、イキたまえ。時見 享一君」
氷水を浴びせられたように頭の中の靄が吹き飛び、蕩けた意識が引き戻された。
自分を引き裂き 「さあ」 と言いながら、ひときわ強く打ち付ける男の顔を見上げた瞬間、悲鳴を上げそうになる。享一に乗り上げ自身を打ち込み、月光に晒され冷たい嘲笑を浴びせかけているのは、神前 雅巳の顔だった。
午前4時。享一は、ビクンと身体を硬直させ、眼をカッと見開き目覚めた。暗闇の中、ゆっくりと辺りをみまわす。動悸が激しい。自分のアパートだという実感がなかなか湧いてこず、見慣れたはずの部屋が全然知らない場所に見えた。身体中に汗をかき、手足が鉛のように重い。引き摺るようにユニットバスへと向かい、チリチリと痛みを感じるくらいの熱い湯を頭から浴びた。
冷蔵庫へいってミネラルを取り出し、ソファに沈み込む。
紅い泥のイメージと、最後に見た映像が頭から離れない。
恐かった。あの周でも敵わなかった相手。
整った無機質な印象の男の顔に穿たれた昏い双眸が、何もかも虚無に変えてしまいそうな果て無い闇への入り口に見え、ぞっとした。無意識に我が身を抱きしめた。思い出すだけで悪寒が走り、震えが来そうになる。
外で小鳥がさえずり始めた。
ロールスクリーンの向こうが仄かに明るい。春が、もうそこまで来ている。
桜が咲き乱れる頃、一体自分はどうしているのだろうか?
”今日” が始まる。
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その夜、久しぶりに夢を見た。---------淫夢。
2年もの間、庄谷での出来事を封印しようとすればするほど、夜な夜な享一の躯を蝕み悩ませ続けた夢。河村と付き合っている間は一度も見ていなかった。何度も夢で繰り返された同じみのシーンをリプレイする。
月夜の能舞台の床で、裸の下肢を極限まで広げていた。空に持ち上げられた白足袋の爪先が痙攣のようにガクガクと震えながら反り返り空を掻く。理性や日常の享一に纏わる一切のものを引き剥がし、貪欲に熱欲だけを追い求める淫獣に変えられ、咆哮をあげながら体内に打ち込まれた欲望を食いちぎらんばかりに貪っている。
『享一、目を開けろよ』 熱い吐息とともに命令される。
これも何度も繰り返された科白。浅い息とともに、ゆるゆると瞼を上げると祝言の時の紋付姿の周が欲望にまみれた不埒な捕食者の瞳で、自分を官能と淫欲の紅い泥の中に磔ている。
淫靡な灼熱の泥のしたたる躯は、ぬかるんだ熱の中で周に満され開放される瞬間だけを待ち望んでは、淫らにうねり強請りのたくっている。
これが、自分の正体なのだと慄いた。恐ろしいほどに、業が深く欲深い。
躯が魂の全てが周という男をからめ取り、呑み込もうと物欲しげに口を開けている
淫靡な花。
水仙・・・誰かが自分の事をそう言った。
周に突かれる度、闇の中で月光を受けて浮かびて上がる開いた脚と、その先の白い足袋が大きく振れた。自分が纏う薄紅の襦袢は、袷の右側だけが乱れて肌蹴け、濃さを増した硬い尖に周がぬらぬらと淫猥に蠢く舌を這わせている。カリッと軽く歯を立てられ、堪えきれぬ快感に頭を何度も振りかぶった。唾液のしたたる唇から切羽詰ったすすり泣きに似た声が漏れた。
周の頭髪が享一の指に乱され、白眉の美貌に淫らな色香を添える。視線が絡まると周が放つ微弱な電流が熱波となって襲い来て、結合した部分から脊髄を伝い、脳天を駆け上がった。顎を反らせ縁を朱に染め緩く伏せられた潤んだ瞳から涙が零れた。目蓋の内側の世界に周の翠の虹彩が広がり火花が散る。
仰け反った全身が硬直して、その時を迎えようと歓喜に身悶え震えた。
何度も繰返される絶頂。
「ああ・・・周・・アマネ・・・も・イ・・く」
アマネ、アマネ・・・もう一度、俺を堕してくれ。
夢精で全てが終わる 筈だった。
「ククク。いいとも、イキたまえ。時見 享一君」
氷水を浴びせられたように頭の中の靄が吹き飛び、蕩けた意識が引き戻された。
自分を引き裂き 「さあ」 と言いながら、ひときわ強く打ち付ける男の顔を見上げた瞬間、悲鳴を上げそうになる。享一に乗り上げ自身を打ち込み、月光に晒され冷たい嘲笑を浴びせかけているのは、神前 雅巳の顔だった。
午前4時。享一は、ビクンと身体を硬直させ、眼をカッと見開き目覚めた。暗闇の中、ゆっくりと辺りをみまわす。動悸が激しい。自分のアパートだという実感がなかなか湧いてこず、見慣れたはずの部屋が全然知らない場所に見えた。身体中に汗をかき、手足が鉛のように重い。引き摺るようにユニットバスへと向かい、チリチリと痛みを感じるくらいの熱い湯を頭から浴びた。
冷蔵庫へいってミネラルを取り出し、ソファに沈み込む。
紅い泥のイメージと、最後に見た映像が頭から離れない。
恐かった。あの周でも敵わなかった相手。
整った無機質な印象の男の顔に穿たれた昏い双眸が、何もかも虚無に変えてしまいそうな果て無い闇への入り口に見え、ぞっとした。無意識に我が身を抱きしめた。思い出すだけで悪寒が走り、震えが来そうになる。
外で小鳥がさえずり始めた。
ロールスクリーンの向こうが仄かに明るい。春が、もうそこまで来ている。
桜が咲き乱れる頃、一体自分はどうしているのだろうか?
”今日” が始まる。
御馳走様です・・。
幸せの情事に・・ああっ!!
何故、神前がぁぁぁぁ!!
享一だけでなく、私の動悸も怪しい・・・。
享一、頑張って!
その腕の中に、周を取り戻すのよ!!
そして・・幸せの・・・(自粛・・