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紙魚

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Category: ユニバース(全80話)

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ユニバース ― rose fever 1 ―
 まずは意識を同調させることが大事だ。

 次にイメージ、二枚のフィルムを合わせるよう輪郭を重ねていく。
 寸部の狂いがあってもいけない。
 これが全ての土台(ファウンデーション)になるからだ。
 
 真っ暗な世界のどこかでチャンネルの合う音を聞いたら、
 自分をターゲットに同期化してゆく。
 呼吸を合わせ、心拍を合わせ、思考と思考、心と心。
 数を数えろ。
 暗闇に針の先程の小さな光が現れたら、躊躇わずに飛び込むのだ。
 光は瞬時に広がり、自分を含むすべてを呑み込んでゆく。
 いくつもの閃光が天を貫き、虚無の世界が息を吹き返す。

 ユニバース

 世界が自分に向けて開いていく快感に眩暈がする。


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 <ローズ・フィーバー 1>


 西暦2300年

 地球上の人口は20~23世紀の人口爆発をうけて一時160億人を突破した。そして、最後のたった20年でその5割が減った。
 突発的に世界中に広がり、わずかな歳月で多くの人命を奪った熱病の名をローズ・フィーバー(薔薇熱)という。
 ウイルスによって感染し、発症すると微熱が続く。広げた血管を流れる血液の中で分離し増殖しながらウイルスは緩慢に全身に広がり、発熱によって肌を薔薇色に染める。
 だが、ローズ・フィーバーの名前の由来は別にあった。
 発症した感染者の肌からは独特の匂いが立ち上る。
 芳しい薔薇の匂い。
 発症者には熱以外の自覚症状はなく、痛みもない。皮肉な事に薔薇熱によって血色のよくなった肌は感染者を実際以上に健康体に見せる。
 感染者は自分に巣くう疫魔に気づくことなく普通に生活しながら、隣人にそして愛する者に、挨拶や愛の行為を通じて死のグリーティングカードを贈る。
 ウイルスに蝕まれ、死期が近付くと躰から立ち上る薔薇の匂いがきつくなる。
 こうなると、もう死神の接吻を受けたも同じだ。

 自覚症状のなさが、この熱病が爆発的に世界に広がった原因だった。
 空気感染はないが、感染者の涙や汗などの分泌液に触れることで、いとも簡単に感染する。感染すれば3年以内に発症し、発症すれば半年かけてウイルスによって皮膚と脳を残すすべての細胞を食い尽くされ、バラ色の肌に大量の血を流しながら死に至る。
 多くの人命を奪ったローズ・フィーバーの破壊力は驚異的だ。
 
 過敏になった人間たちは、発症者の匂いがすぐにわかるようにと、全ての薔薇を引き抜き廃棄した。
 かつて世界中で愛された花は、地上から姿を消し、阿片を生む芥子や大麻と並んで忌むべき象徴となる。
 今ではサンプルとして樹脂で固められたものか、画像でしか見ることができない。
 汎発流行(パンデミック)から20年。
 ワクチンの開発は往々にして進まず、ローズ・フィーバーウイルスは未だ根絶されていない



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テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学