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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
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*お知らせ*
長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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02

Category: 翠滴 2 (全53話)

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翠滴 2  葉山  3 (3)
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 「おはよう 享一君」

 名前を何故…と顔を上げ、ベッドの横に立つ長身の男の顔を見上げた。

 「あんた、誰?」 咄嗟の一言だった。

 話が終わったのか、携帯のフリップの角で唇を弄びながらニヤついている長髪男を見ていると、何やらムカムカと頭にきて、気付いたら相手が答える前に、平手打ちを見舞っていた。
見舞ったと同時に身体がバランスを崩してベッドから転がり落ちた。その拍子に股の間からトロリと白っぽい液体が腿を伝い落てゆく。背筋を悪寒が走った。

 「享一っ、大丈夫か!?」

 人の名前を呼び捨てにし、慌てて抱き起こしにかかってきた相手にもう一発、見舞ってやった。 
 決して、相手が悪いわけじゃない。八つ当たりだ。
 そんな事は自分でもわかっていたが、この怒りをどこかにぶつけないと遣り切れなかった。

 男の頬は2発のビンタで赤く腫れているが、構うものか。どうせ2度と会うことはない。
 憐れな男にバスルームを貸せと迫り、ソファの上に丁寧に掛けられた自分の服と下着を掴むと一目散にバスルームに駆け込んだ。
 久しぶりにする後処理に情けなくなり、こういう事態を招いた自分に再度、怒りが込上げる。
 きれいに積み上げてあったタオルを勝手に使い、衣類をすばやく身に着けた。
 バスルームを出て急ぎ足で靴下を探し、無造作に足を突っ込む。

 その様子を、余裕綽綽でソファに踏ん反り、コントレックス片手にニヤニヤと眺めている男が酷く癇に障った。結局、最後まで男と口を利かず、別荘だと思われるその家を挨拶も無しで飛び出した。


 葉山での無様な自分に思い至ると、激しい自己嫌悪に自然と顔が紅潮し険しくなるのを自分でも感じる。昨日の夜まで落ち込みが激しく、何もする気が起こらずに会社も休み、ふて寝し続けていた。

 「時見 なんかあったか?顔、怖いぜ。なんか赤いし目ェ吊り上ってる。まだ、本調子でないんじゃねえの?」

 19階でエレベーターを降りて廊下に立つと、突きあたりの大きなガラス窓の向うに、隣接する高層ビルの連窓(れんそう)が目に入った。羞恥のあまり、いっそこのまま叫び声を上げ、あのガラスを突破って自分を罵りながら飛び降りてやりたい衝動に駆られてしまう。

 高所恐怖症負の自分には、絶対に無理な話だが。

 「なんだ、あの団体さんは?」

 葉山で消えた適当な言い訳を並べる享一の横で、片岡が小さな声で注意を促す。
 片岡の視線の先を見ると、専務の平川が数人の男を従え、廊下の向こうから歩いて来る。営業や建築の部長クラスがズラリと周りを固める中心に、一際目を惹く長躯の男がいた。

 その隣に享一の上司でもある設計本部長の大石もいる。余程、気を遣う相手なのか、
大石はいつもの威勢は何処にという風情で、頻りに男に向けて頭を下げ、享一たちには気が付かないようだ。他のお偉方も一様に似た対応で、自分等より一回り下手をすれば二回りは若い一人の男に付き従うような光景は少し異様でもあった。

 「何者だ? 取引先の偉いさんとかかな」 と片岡。
 「お前と同じ新入社員の俺に分かるわけないだろ」

 不意に、長躯の男がこちらを向く。男前だが、遠目でもわかる瞳の奥に宿る仄暗い冷たい光に、得体の知れない胸騒ぎを覚えた。

 あの眼を見たことがある、知っている気がする。なのに、それをどこで見たのか思い出せない。
 頭の中で記憶の断片がゴソリと蠢き、ザラザラする断面で享一を逆撫でしてくるような不快感を感じた。

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テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

02

Category: 煩悩スクランブル (全4話)

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煩悩スクランブル 4
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 玄関ドアのすぐ内側でキスをした。

帰って灯りも点いていない暗い室内に、互いの唇を噛み合いながら舌を絡める濡れた音だけがしている。長いキスを終えて、スイッチに手を伸ばす。リビングとダイニングが一体になった室内に柔らかな明かりが点く。

 「お前、泣いてんの?」
 真理の頬が涙で濡れていた。眉根を寄せ、堪えるようにして流す涙は、赤ん坊を見ても小動物を見ても何の感情も起こらないオレにすら庇護欲を催させる。真理が小さく鼻を啜った。

 「今朝はゴメン。ハルがライブに来てくれて本当に嬉しかった」
 「うん・・・背中、大丈夫か?」
 「平気」

 見かけによらず、抱き応えのある真理の身体が腕の中に納まる。

 「今日、ハルに言われた事ずっと考えてた」
 「・・・・」、えーと、何だっけ?
 「ハルに嫌われちゃったんなら、本当に出家しちゃってもいいかなって」 
 ハァァァ?
 「真理?ちょっと、待てよ!」

 これは、ちゃんと顔見て話すべしと、肩をつかんで真理の顔を覗き込む。
オレ、ちゃんと真理に惚れてるって、気づいたのに。こんな急展開アリかよ?
真理は、泣き笑いの顔を向けてきた。

 「でもね、クラブでハルの顔を見たら、ぶっ飛んじゃったの。
 ハルと、離れるなんて出来ない。ハルが他の誰かのものになっちゃうなんて
 耐えられないもん・・・寺の子なのに、僕って人より煩悩の数が多いのかな?」

 涙をためた睫が切なげに揺れる。
オレは、もう一度その身体を今までになかった愛おしさを感じながら抱きしめた。

 ついさっきまで、クラブのフロアでライトを浴びマイク片手に身を躍らせていた真理は、カラコンを嵌めた瞳を挑発するように真直ぐ前に向けて、唇から魂を迸らせていた。
ビートに低く甘い声を絡め、聞くものを違う次元へと掻っ攫ってゆく真理を見て、オレは 真理ほど輝いている奴を見たことがないと思った。
ああ、オレって、ホントに惚れちゃってる?

 ライブの最後に”happy birthday”が合唱されて驚いた。
今日は真理の誕生日だった・・・らしい。知らなかった。
真理はオレに関する数字なら、出生時の目方まで知ってるというのに。

 かなわねえ。
その真理が、今、オレの目の前で、オレと離れたくないと泣き、涙に濡れた瞳を向けて訊いてくる。オレが本当に乱れたところを見たいのは、この顔かもしれない。

 「ハル、僕のこと嫌い?」  

  マイリマシタ・・。

 「・・・ス・・・・・・好き・・・・?」 なんだ、この疑問符。
 真理相手だとなんか素直になれねえのよ。ツマんねー年上のプライドってヤツ?

 「嬉しい!ね、ハル、ゴハンは?食べてないんでしょ。今から一緒に食べよ?」
 腕を引かれた。テーブルに手付かずの夕食が並ぶ。
ここで何で急に、ご飯なの?
やっぱ、お前ポイントがズレてねぇ?・・・へんてこで、可愛すぎるぞ。

 「真理、プレゼントなにがいい。ネットなら今からでも覘けるぞ?」
 「嬉しいな。でも”後で”もらうから、今はいいよ」

 普段は人一倍疑り深いオレなのに、なんでこの時、真理の言葉を深読みしなかったのか・・・
今朝のブツの箱に巻きついた赤いリボンの警告を、なぜ汲み取らなかったのか?

 零れ落ちるシャワーの湯の下で、またキスをする。
 「ハル、僕、覚悟を決めた。どうしても、ハルとひとつになりたいもん」
 「え?本当にいいのか?」 
 「うん、もう手段なんか選んでいられない。
 どうしてもハルとひとつになりたい。深く繋りたいんだ」

 頬を染めて、ウルウルと潤んだ、キラキラのオメメが祈りを捧げる天使の如くオレを見つめる。
あろう事か、オレは感動してしまった。
あれだけ、自分の『牡』に拘った真理がオレの為に自分の信条を曲げると言う。

 「先にロフトに上ってて。僕、もう少しだけ食器とか片付けて行くから」
バスローブを着た天使が、はにかんだ笑顔で言う。

 ベッドに大の字で倒れ込んだ。これから起る事を考えると頭がギンギンに冴えそうなものなのに、頭の中がボンヤリする。身体も少し熱い。階下の灯が消え階段を足音が上がってきた。
その時になって初めて異変に気が付いた。

 重い頭はそのままで、足元に立った真理を見上げる。
興奮に頬を染め、欲望に濡れる瞳でまっすぐにオレを見下ろすエロい天使の顔。
何でこいつの奸計に気付かなかったの?オレの、バカバカバカバカ・大バカ野郎ーーーっ!

 真理の羽織っただけのローブの前はストンと下まで開いていて、真ん中では天使のカンバセを裏切る立派なものがそそり立ってる。その右手にはピンクのスリコギが、左手にはチューブのついた太い注射器のようなものと例の赤いリボンが握られている。俯き加減で微笑み頬を染める表情は天使そのものだが、上目遣いの瞳には計算高い悪魔の笑みと、溢れんばかりの欲望がネットリとぐろを巻いている。

 「真理っ。テメェ・・・盛りやがったな?」
 「ハルったら、晩ごはん食べてなかったんだもん、
 お迎えは嬉しかったけど、内心はちょっと焦っちゃった」

 オメェの歌う姿に感動した、オレの気持ちはどうしてくれるってのよ?
そうか、お前は手段を選ばないって言ったんだっけな? こんチクショウッ!!

膝を立ててオレの身体跨った真理が、オレの首に赤いリボンを巻き、チョウチョ結びをする。

 「・・・・・・・」
 「18歳の決意・・・ふふ。”襲ってでも、ハルとひとつになる”覚悟をしたの。
 ハルさ、僕の誕生日知らなかったでしょう?」
 ごめんなさい。すみません。申し訳ござりませぬ。そこは謝る、素直に謝る。
 「だからね、ハルからのプレゼントは僕が勝手に決めさせてもらっちゃった」
 ちょっと待て。

 真理はオレの首に結んだリボンを、プレゼントのラッピングを開けるようにはらりと解いた。

 「こ・・・の、堕天使、ヤロウ・・・・・」
 「僕、仏教徒だもーん。いつもハルが言う通り、ちゃんと残さず、
 きれいに食べてあげる。じゃ、おテテとおテテを合わせて」 

 フザケルナぁぁーーーーッ!!実際は、もう口も動かない。
合掌した煩悩天使は極上の笑みで小首を傾げニッコリ笑った。

 いただきまぁす。


 ・・・FIN ・・・

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