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紙魚

Author:紙魚
近畿に生息中。
拙い文章ですが、お読み頂けましたら嬉しいです。


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*お知らせ*
長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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Category: 翠滴 -side story-  

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 翠滴サイドストーリー  <目次>
    鳴海   <<全7話>>   2008/10/29  完結 
周のお目付役として常に周に添い従う鳴海。利害のみで成り立つ2人の関係・・・のはずだった。わずかな自由と引き換えに鳴海の出した条件とは。 

鳴海  1 -- - -- - 7 

    真夏の残像  <<全3話>> 完結   ■20000HIT記念リクエストⅠ
 夏の数日を庄谷で過ごす周と享一。東京へ戻る前日、周が夏祭りへと享一を誘った。 

  真夏の残像 3*

    ファミリー・バランス  <<全2話>> 完結   
 和輝を預かることになった周と享一。”良いパパ”になることに必死の享一に冷ややかな視線を送る周。軽いコメディタッチの日々の一コマ。 

  ファミリー・バランス 

    In the blue.On the island.
  <<全6話>> 完結   ■50000HIT記念リクエスト
 周と同棲を始めた享一。すれ違う生活に機嫌が悪化する周の笑顔が見たくて、享一はアイスクリームを買った。 

  In the blue.On the island. 4*5*

テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

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翠滴 side menu  鳴海 1
                                                   2→

 黒いジャガーが敷地内の田園に入った。

 鳴海基弥(もとや)は、ミラーで後部座席の永邨 周(あまね)を見遣る。
周は黒い革のシートに身を埋めて動かない。軽く瞼を伏せ眠っているかのようだ。
”お努め”後は物憂げでいつもこんな感じだが、本当に寝てしまうのは珍しい。

 3日ぶりに会う周は、少しやつれ、やや青ざめた顔は、もともと色素の薄い肌を更に白く際立たせシートの黒革に映える。肌蹴たYシャツから覗く頬と同じ白い肌には血色の花弁が艶やかに散り、借主の周に対する尋常ではない執着を物語っていた。

 他の顧客の手前、躯に痕は付けないという約束なのに、あの男は守った例がない。

 「疲れましたか」
 返事を期待せず、声を掛けてみた。

 1晩のレンタルが2晩も延長され、肉体のみに留まらず、そこから滲み出る気配さえ疲弊しきっている。無理もない。3日3晩、激しい男の情欲に付き合い、苛まれ続けたのだ。周の傾げられて露になった項や長いまつげ、しどけなく投げ出さた肢体から滲む疲労に混じって、淫靡な蜜が流れ出る。

 どのように愛すれば、プライドの高い周をここまで引きずり堕してしまえるのか。

 鳴海は、長躯に高速CPUを持つ頭脳を携え、財界と政界を相手に悠々と闊歩し、眉目秀麗を誇る若き企業家を思い起こした。その男は、本望ではない父親の会社の後を継ぐため自分の起こした事業から手を引くという噂を聞く。
もしかして、荒れているのだろうか。

 この様子だと、きちんと食事を摂らせ、眠らせて貰えていたのかさえも怪しいものだ。

 「鳴海・・・いつになったら終わる。本宅は俺を殺す気か?」

 長い沈黙の後、周が口を開く。鳴海は鼻で笑い答えた。

 「まさか、貴方に死んでもらっては困ります。今のところ我社の将来は、
 あなたとあなたの顧客の投資や株の利権が握っているのですから。
 美操様と茅乃様の将来も然りです。もちろん、私の将来も」

 「お前の将来に興味は無い。今時、人身御供なんて流行らないだろうが。
 男の癖に俺と寝たがる下衆野郎どもの気も知れない。人権蹂躙反対!」

 最後の言葉を、嘲笑うかのように皮肉を込めて握った拳の中指をたて
いかにもスローガンっぽく口にする。かなり、機嫌が悪い。

 「下品ですねえ。周様」

 普段では考えられない周の下品な仕草に、鳴海は余裕の表情で笑う。
 大人ぶっても、所詮は24歳のガキだ。来年、三十路を迎える自分でも大人には程遠いと思えるのにだ。

 「あなたは、ある種の男を惹きつけてしまうのです。
 貴方の持つ、気高さや高潔な心、男でありながら美しすぎるという
 事実が嗜虐心と征服欲を煽るのですよ」

 「俺のせいかよ? 変態め。お前までそんなこと言うなんてな」

 眇めた目の奥の侮蔑を込めた翠の瞳が、ミラーを通して睨んでくる。
 いつもの紳士然とした物言いや余裕はすっかり、なりを潜めている。
 見掛け以上に参っているということか。
 これはいい。

 整った容姿はそのままで野卑に成り下がった周は、下品だが素直だ。結構気に入っている。
 目を細めた涼しげな容貌に意地の悪い嗤いが浮かぶ。

 「おや、貴方だっているでしょう? 気になる"オトコ"が」

 周の顔から表情が消えた。

 「N大建築学部の香田教授のところに足繁く通っているのは、
 重文に指定された邸宅の保存の話合いの為・・・・ばかりでは、
 ないのではないですか?」

 N大3年の時見享一の事を 暗に指摘すると、本気で怒ったらしく横を向く。

 「お前はいつまで経っても、厭な奴だな。1000年経ってもお前はそのままなんだろう?」
 「ふふ、貴方には、仕事を差し引いても興味がありますからね。
 わかり易い人だ。貴方が扱い難い人だなんて、誰が言ったんでしょうねぇ?」

 鳴海の目が愉しそうに笑う。

 いつもの楚々と全ての感情をしまい込こみ 気高くポーカーフェイスを決め込む周も神秘的でいいが、自分を押し殺した窮屈感に耐え切れず、感情を剥き出しにした周は普段からは想像も出来ないような物言いをして面白い。素の周は、歳相応の人間臭い熱みたいなものを持っていて、理不尽な自分の境遇に耐えつつも、荒々しい内面や弱さが時折顔を出す。

 可愛いものだ。

 あたられ役の自分にしか見せない、茅乃達ですら知らないもう一人の周。
 儘ならない状況に翻弄され、打ちのめされて苦しむ姿には、ゾクゾクする。
 その、ギャップがいい。もっともっと、追い詰めてやりたくなる。

 毅然とした仮面や言葉を剥ぎ取り、窮地に追い詰められ堕され自分に縋るしかなくなった周を想像すると、自分の中の昏いエクスタシーが蠢くのを感じる。

 鳴海は車の進路を変え、狭い農道に入れ車を止めた。地面を踏むタイヤの音とエンジン音が消えると、車内にも静寂が訪れた。
 周が怪訝な顔で、鳴海の後頭部に視線を注いでいる。



 「ひとつ、私と取引きしませんか?」

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翠滴 side menu  鳴海 2
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 「取り引き?」

 今や、周の顔は完全に覚醒し訝しげに厳しさを帯び、憮然と聞き返した。
背凭れから頭を擡げて、ミラー越しに鳴海を真直ぐ見返してくる。

 どんな表情をしても、美しいと鳴海は思う。決して、女性的でも中性的でもない、身長も 自分と同じぐらいで180を少々超えている。多少、線の細い部分はあるが、キリっと外に向け上がった眉、キリッと引き締まった形のよい輪郭は雛人形の男雛を連想させる。切れ長の目に納まる翡翠の瞳が、この美しい東洋顔に神秘的な魅力を添えている。

 永邨 周(ながむら あまね)
 我社、N・Aトラストの美しい切り札。

 「なんのつもりだ?」
 「取り引きですよ。周様」

 「私は、一族のコマとして扱われ、自分を殺しながら本宅の言いなりに
 生贄役を引き受ける貴方を、多少は不憫に感じています」

 周は、露骨に嫌悪の表情を鳴海に向けた。

 「お前が言うな」

 周は、その生贄を、毎回 祭壇である相手宅にデリバリーしているのはお前だろうがと、詰ってやりたくなる。

 「今回のような長逗留は、貴方にもかなり堪えているはずです。
 一回の”お努め”の時間を、"短く"したくはありませんか?」
 「・・・出来るのか?」

 周は大きく目を見開いて、シートから身を起こし運転席に顔を近づけた。
 カラーコンタクトを嵌めていない切れ長の目から、瑞々しい緑が溢れ出てくる。
 その視線を感嘆の思いで受け止めた。

 「先方の方々は、貴方にかなり入れ込んでいるご様子です。
 こちらから、時間に条件をつけるのは可能かと思います。
 貴方本人からの交渉は不可能でしょうが、永邨からということであれば、
 先方もある程度の有余はして頂けるかと・・」

 「・・・・・」
 「私を、手懐けておくのも悪くないでしょう?」

 実現されれば、周の身体も精神的な部分もかなり楽になる。特に今回のような、執拗に長い拘束は、周から体力も精気も根こそぎ搾り取る。
 周はミラー越しに端正な顔に掛かる銀縁眼鏡の奥の計算高い瞳を睨み付け、鳴海の考えを探った。

 「取引きって言ったな。要求は何だ? 金か?」
 「僭越ながら、金には困っていません。貴方の伯父上であられる騰真様から
 充分すぎる程頂戴していますし、こんなド田舎では、
 金なんぞ使いようもありませんしね」

 鳴海は鼻で笑いながらで答えた。
 
 眼鏡の奥の鋭い眼差しがミラー越しに流れる。ガラスや鏡を通過しても、殺がれる事の無い昏い欲情の炎に気付き要求の在りかを知る。

 長い沈黙の後、周が挑むように呟いた。
 
 「・・・いいぜ、こっちに来いよ」
 「いえ、貴方が助手席に移ってきてください」
 「取引きじゃないのか?」
 「私達は、イーブンではありません。貴方の方が、分が悪い」ミラーの中の鳴海の目が嗤う。
 「・・・・・」

 躊躇った後、周はいつもなら鳴海に開けてもらう後部座席のドアを自分で開け、5月の薫風と共に助手席に移ってきた。

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翠滴 side menu  鳴海 3
←鳴海 2                                          4→


 周(あまね)の微かに甘い香りが鼻腔を擽る。最後にトワレを使ってから4日経っている。香りは既に飛んでしまっているはずだ。この白い花を思わせる香りは多分、周自身のものだろう。


 周の表情が硬い。当然だ。

 「緊張しますか?使用人の私から、こんな要求を出されようとは、
 さぞ憤慨されているでしょうね」
 「お前を、使用人などと思った事は一度も無い」

 鳴海は、本家から使わされた周の監視役だ。使用人の様な気安い間柄ではない。

 「おや、では友人とでも思っていただけてましたか?」鳴海は惚けた。
 「違うでしょう?少なからず、貴方は私を疎ましいと思っているはずだ」
 「・・・・」

 周は無言で肯定する。
 正直、”少なからず”どころでは無い。本宅と自分を繋げる鳴海が鬱陶しくて仕方が無いのだから。だからこそ、こちらサイドに引き入れる価値がある。


 「さあ、取り引きを始めるとしましょう」

 鳴海はシートを後方へずらし、上半身を捩って周の顎を引き寄せ唇を合わせてきた。
まさか、いきなりキスされるとは思わず、本能的に逃れた唇にギリッと歯を立てられた。驚いた反動で開いた隙間から、押し入って来た舌に半ば捨て鉢で自分の舌を絡める。

 静かな車内に、お互いが貪りあうキスの音だけが響く。

 鳴海が、シートを倒して周の上に乗り上がってきても、キスは続いた。
やがて、鳴海の唇が周のそれから離れ耳朶や項を這いだし耳の後ろを強く吸われると、息を殺し瞼を閉じてせり上がる快感を耐える。

 「目を開けなさい。これから自分が組み敷かれるところを、
 その緑の宝石に刻んで頂きたい」
 「いきなり命令口調かよ。・・・で、俺が”組み敷かれる”側か」
 「これは、”お願い”です。生憎、私は受けた経験が無いものでね。
 それに、折角 憧れの貴方とセックスするのに目も合わさないんじゃ、
 つまらないでしょう?」

 ニヤリと鳴海が笑う。

 本当は、かなり前から鳴海が自分に、こういう意味での興味を少なからず抱いていることを知っていた。ただ、どういう気持ちからこの興味が湧いて出てくるのか怜悧で、沈着冷静な鉄仮面男の感情が推し量れず、面倒臭さも手伝って放置していた。
 まさか、”憧れ”と来るとは 面映さなんぞ軽く通り越して、驚きだ。

 もう一度、唇が戻ってきて周の唇に落ちた。
端から端へ口紅を引くように舌でなぞり濡らしていく。
スーツのフロントを割り、シャツの上から躯のラインを這う手が親指の腹で胸の2点を円を描くように弄ぶ。軽く爪を立てると、布越しの刺激に周の唇から押し殺したような声が漏れた。
 「あ・・・く、・・うッ・・」
 ボタンに手が掛かると思わず、制止の声が上がる。
 「鳴海っ」

 周が鳴海の手を押し退けようと無意識に繰り出した手を、逆にシートに貼り付けられる。
 「名前で 呼んでください」
 「ハッ。そんなに俺との距離を縮めたいか?」
 「ええ、ずっと焦がれていた人ですから」

 憮然と眉間に皺を寄せ閉口した周に跨り、目を細めて見下ろす。
 眼鏡の奥の瞳に、クールな銀のフレームとは不釣合いな焦れたような熱が篭る。

 「呼んでください」
 「・・・・」
 「さあ」

 「モトヤ」

 視線を逸らしたままそっけなく、早口で名前を口にする。

 「・・・全く、味もそっけも無いですねぇ」

 鳴海がつまらなさそうに呆れ顔をつくった。眼鏡を外すと上着の胸ポケットにしまい上着ごと脱いで運転座席に置く。そして、薄く笑うと顔を背けたままの周の耳に口を近づけて囁いた。

 「よく考えてくださいね、”周様”。この取引は、会社の為でも無ければ、永邨や美操様達の為でも無い、貴方の為の交渉です。私の機嫌をとっておいた方が、後々貴方の利益に繋がると思いませんか?」

 周の深緑の瞳が鳴海を見上げている。
 様々な思いに囚われているのだろう。虹彩の中で複雑な色が弾けている。
 思わず魅入ってしまい、鳴海の心が再び感嘆の声を上げる。
 同じ瞳でありながら、ひとつの色にに定まることは無い。鳴海を虜にする蠢惑の瞳。

 神前達も、この瞳に魅せられて手放せなくなり 約束の時間をオーバーしてしまうのだろうか。今、瞳はその”務め”のささやかな短縮と この現状を天秤にかけて推し量っている。

 周の薄い瞼がゆっくり閉じられる。緩くカーブした黒く艶のある睫が卑猥に映って
チリチリと想いを焦す。再び明き覗いた双眸には、今までとは全く違う挑むようなエメラルドの光彩が、奸計の中に欲望をちらつかせ鳴海を惑乱した。

 周は無言でその手を鳴海の頬に伸ばし愛撫すると、掠れた甘い声で名前を口にする。
形の良い口に笑みがゆるりと広がり、官能を誘う隙間から吐息が漏れ、
妖惑の瞳がこの取引のイニシアティブを獲ろうと仕掛けてくる。

 「・・・・基弥」


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翠滴 side menu  鳴海 4
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□18禁的表現がありますので、苦手な方はご遠慮ください□



  やばい・・・、名前を呼ばれただけで、呆気なく白旗を揚げてしまいそうだった。
 強請って呼ばせた自分の名前は、満足を通り越して下半身を直撃してきた。

 「なるほど、貴方の武器は その瞳だけでは無いという事ですか」

 周の瞼が紅に染まり、瞳が悩殺すれすれの色気を放って鳴海を見上げる。
 その口許は嘲笑うかのように口角が吊り上ってる。

 「速攻で陥落させてやる。俺達はイーブンじゃない。
 最後に平伏すのは鳴海、お前だ」

 「本気を出したというわけですか。
 では、私も気合を入れて掛からないといけませんね。
 今日から、私達の関係がどう変わるのか楽しみだな」

 そうだ、これくらいなんて事は無い。鳴海を取り込むチャンスだ。
 そう自分に言い聞かせ周は瞳を閉じた。


 鳴海はYシャツのボタンを全て外すと前を肌蹴て、贈り物の美しいラッピング剥がしていくかのようにゆっくり指を肌の上を滑らせながら、質の良い生地を肘の辺りまでずらした。肘から先にシャツが残る事で、大きな動きが制限される。

 厚くも無く、かといって薄っぺらでもない 程よく筋肉の附いた肩や胸部が露になる。
美しい上半身に出来て間もない鬱血痕が 昨夜の男の執拗さを証明するように散らばっている。鳴海は自分もネクタイを抜き取りながら 嫌悪に顔を顰めた。

 「この程度で驚いてんのかよ。自分でデリバっておいて、呆れるぜ」

 周はそう言うと、底意地の悪い、小馬鹿にするような薄ら笑いを浮かべた。

 「下はもっと凄いぜ。神前の執着に、びびって逃げ出すなよな」

 鳴海は一瞬 鼻白むが、やがて気が抜けたようにふっと笑う 

 「望むところです」

 堕ちる時は呆気ないものだ。
 長い間、狙って来た獲物を手にしたというのに、あまりの手ごたえの無さに物足りなさすら感る。いや、まだまだこれからだ。もっと貶めて、自分の意のままになるよう手懐けてやる。

 自分の思いのまま媚態を曝け、従順に身体を開く周を想像しただけで、情欲が煽られ体中の血液が興奮に沸騰しそうだ。
鳴海は暗い嗤いを浮かべながら、下衣を下着ごと抜き取った。
確かに上半身とは較べものにならないほど酷い有様だ。望まぬ関係に躯を差出し、抵抗を諦め蹂躙を許し美しい生贄となる事を自らに科した服従の証は、鳴海の嗜虐心を煽り、新たなる残忍な興奮を呼ぶ。

 柔らかい足の付け目辺りに集中して付けられた鬱血痕には、赤い歯形まで残っている。形の良い茎の根元にも赤黒く充血した後があった。

 まるで、此処にはおらぬ神前が自分に向かって威嚇をして来るようだ。
神前は、生贄であるはずの周に完全に捕らえられてしまっている。愚かな事だ。
俺なら、そんなヘマはしない。

 柔らかい項に顔を埋め白い花の香りを堪能し動脈の上を吸い上げながらなぞると、周が短く息を吸い込み緊張するのがわかる。
ペニスの根元の鬱血した部分に手を伸ばした。軽く触れただけでピクリと反応し頭を擡げはじめる。ゆるりと扱くと周の口から小さな叫び声が上がった。

 口程にも無い。もともと感じやすい躯をしているのか、情事の後で感じ易くなっているのか、それは、次に抱いた時わかるだろう。 

 「これほど完成された美しい姿をしていながら、貴方の中身は見るものを惑わす淫靡な蜜で溢れているのですね。貴方は気付いていますか?この完璧な形をしたご自分の身体から男を引き寄せる甘い花のような匂いが、漏れ出してきていることを」
 鼻を鳴らして周の体臭を嗅ぐ仕草をすると、短い笑い声を立てる。
 唇を重ね 舌を激しく吸い上げながら一気に扱くスピードも上げる。周が切羽詰った声を上げ、自由の利かない腕で鳴海を押し返すが、体力の消耗した躯は思うようには動かず、怒張した先端を指でふさがれ抉るように強く刺激された瞬間 押し殺した声を上げて、吐精してしまった。

    他愛も無い。

 「可愛いですね・・・周様」


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