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紙魚

Author:紙魚
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長らくみなさまから頂戴した拍手コメント・メールへのお返事は、別ブログの”もんもんもん”にてさせて頂いていましたが、2016年4月より各記事のコメント欄でお返事させて頂くことにしました。今まで”もんもんもん”をご訪問くださり、ありがとうございました。く



    
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Category: 深海魚 (全31話 )

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 深海魚  目次
    深海魚   (バレンタイン企画 / 全31話)     2009 / 04 / 23  完結  
   
葉山のバー、『シーラカンス』で雇われ店長として、バーテンを勤める花隈 静(はなくま せい) は、幼馴染でもあり世界でもその実力を認められる建築家の河村圭太に想いを寄せていた。自分の中で次第に大きくなる河村への想いをもてあます静に、傲慢な手口でビジネスを手中にし成功を遂げたシーラカンスのオーナー伊原から誘惑の手が伸びる。
河村 圭太が、時見 享一と別れた後のお話。翠滴 サイドストーリー
  

 1 ///////// 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17* /
18* / 19* / 20* / 21 / 22 / 23 / 24 / 25 / 26 / 27 / 28* / 29* / 30* / 31(完)


    『ラヴァーズ』   <<全7話>> ■20000HIT記念リクエストⅡ
 兄の薫に黙って、河村 圭太と付き合い始めた静。自分はもう深海には戻れない・・・『深海魚』スピンオフ。

///// 6* /


    『Soulful Sea』    <<15000HIT記念コラボ >>
このお話は、『卯月屋文庫』の紙森けい様から15000HITのお祝いとして頂戴しました。
紙森さまがお持ちの 『ヴォーチェ・ドルチェ』  シリーズのパティシエ・淡路 恭祐さんとバーテンダー・越野 環さんの粋で洒落た大人のお話に、 『深海魚』 の花隈 静が登場させていただいています。このSSには、絵描きとしてもコラボさせていただきました。


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Category: 深海魚 (全31話 )

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深海魚 1
 「花隈さん、ご注文のシャトー オー・ブリオンと、ナパの白はリクエストのテイストのものを此方でチョイスしておいたけど、これでよかったかな?」

 レトロな古いビルを改造した趣のあるワインショップの大きなカウンターの上に、今しがた奥のセラーから運ばれたボトルが2本、ラベルを上にして並べられる。この店は、葉山にある自分が雇われ店長を勤めるバー、シーラカンスと同じオーナーの経営だ。今日はそのオーナーとの話し合いに私的な用事を絡めて、わざわざ東京に出向いてきた。

----君をプライベートのバーテンダー兼ギャルソンとして迎えたい。
 全く別なことを談判しに行った自分に、オーナーが提示してきたものは、何度も断ってきた申し出だった。俺がシーラカンスから離れられる筈はないのに。
オーナーとの遣り取りを思い出すと、ここ東京まで出向いたのに無駄足だったかと、重い疲れを感じた。いや、そんなことはない。
沈みがちな瞳をカウンターの上に落とし、僅かに目を細め眩しげに並べられたボトルを見た。

柔らかな店内の光の中で、深みのあるクリムゾンは更に芳醇さを増し、さわやかなグリーンのボトルは、きりりっと淡い下心を戒めてくれるようだ。

「ラッピングしましょうか?」深みのある店長の声に我に返った。
「いえ、このままで頂いていきます」
「なあんだ、明日のバレンタインに恋人と一緒に・・・じゃないの?」
「はは、残念ながら相手は幼馴染の男性で、
そんな気を使う間柄の人ではないんですよ。色気がなくてすみません」

 ラッピングなんてしたら、却っておかしいのだと思う。だから、敢えて剥き出しのまま、ラッピングしたい心は畳んでポケットにしまい、ワインだけを手渡す。

 『MAM竣工記念講演会
 アルミと光 ストラクチュアの可能性
 lecture/河村 圭太(建築家)』

 案内を確かめて真新しい美術館のホールに足を踏み入れた。
ほぼ満員の半円のすり鉢状の底辺に設えられた壇上にスラリとした長躯を認めて、暗いホールの末席の空シートに身体を預ける。ここからだと壇上の人物が良く見え演台に置かれたPCでパワーポイントを操る指さえ良く見えた。
建築の専門的な話はほとんど解らなかったが、久しぶりに目にするその長躯と柔かく張りのある心地よい声に捕らえられてその人物から目が離せずにいる。

 彼に最後に会ったのは、去年の夏だ。その時も久方振りで、シーラカンスに圭太はチラッと顔を見せただけですぐに帰ってしまった。
 その前に会ったのは、今から丁度1年前だ。
 その日の夕方、店には自分の兄の薫と圭太、それに圭太の恋人である時見 享一がいた。店には、他に客もおらずカウンターに座る3人の会話はいやでも耳に入ってくる。時見は兄の薫に圭太以外の人を想う恋心を暴かれて、狼狽え店から飛び出した。その後、2人の殴り合いの喧嘩が始まり、デカイ2人がこんな所で喧嘩をしたら店も無事では済まなくなると店から追い出した。

 俺は、あの時なんと思ったろうか?

 その夜、再び圭太が店に顔を出した
 ----シズカ、今晩泊めて

 俺は圭太と時見 享一の関係に深い亀裂が入ったことを感じ取った。

 俺は、なんと思ったのか・・・・。ウレシカッタ。
 俺は最低だ。

 目は段上に釘付けのまま、思考は過去に滑り込んでいく。無意識のうちに指で自分の柔かい顎鬚を弄っている。ふと壇上の人物に、似合わないから鬚は落とせと言われた事を思い出し苦笑が漏れた。

 その時、壇上の圭太と目が会った。おや、といった表情をする圭太にアイコンタクトで会釈をする。

 この気持ちは、いつまで経っても浮上できない。

シーラカンス---
暗い海底を彷徨い、決して日の光の届く明るい海面には浮上できないグロテスクな深海魚。
------それは、俺だ。

         次話→ 
 

一年前の出来事を知りたい方は↓↓↓
本編-----bar coelacanth
SS ------願い 圭太+静

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Category: 深海魚 (全31話 )

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深海魚 2
 盛大な拍手と共に講演会は幕を閉じた。
会場からの質疑応答の中ホールを出ると、反対側のドアから同じように出てきてそのまま出口に向かうほっそりとした姿にハッとした。
その横顔がエントランスの外に何かを見つけたのかパッと華やぎ、艶やかに微笑む。
足取りも軽く、歩を速めエントランスを飛び出していく。

 その後姿を目で追うとその先には赤いフェアレディがあった。車の前に立つ男の元に真っ直ぐに向かっていき、蕩けるような笑みを浮かべるその男の前で止まると、照れたように顔を真っ赤にし伸ばされた手をすり抜け車内にその清艶な姿を消した。

 先程の頬を高潮させた桜の蕾が綻んだような見事な微笑が、彼が現在(いま)本当に望んだものを手に入れ、幸せに満たされている事を物語っている。彼は、はたして圭太の傍であんな幸せそうな顔をしていただろうか?

時見 享一。艶やかで綺麗な圭太の元恋人。

 自分が恋する圭太の恋人である享一を、花隈 静(せい)は決して嫌いではなかった。やや硬めだが、控えめで気遣いの出来る享一にシンパシーを覚え、好ましくさえ思っていた。だが、先の薄紅の桜が一斉に開花したような、清廉なくせに艶を注したような貌を見せられ複雑な心境に陥る。
彼は、圭太のことをどう思っていたのだろう?

 ホ-ルから人が吐き出されエントランスを過ぎて行った。建築に感心を持つ者、圭太の教え子らしき学生たち、単にモデル張りに容姿が良く新進気鋭と称される建築家・河村 圭太のファンの女性たち、皆、口々にレクチャーの内容についてや河村への称賛を口にしながら去っていく。
自分だけが異質で、ポツンと浮いている気がした。
 人も掃けて半時が過ぎた頃に、漸く圭太が奥の関係者用の通用口から出てきた。
背後に所員らしき2人の若い男がついてきている。

 圭太が自分を見つけると驚いたように目を丸くするのを見て、自分が待っていたことが迷惑だったかもしれない事に気付き、感付いた気持ちを誤魔化すように、ゆるく笑って見せた。
全く、客商売をしていながら、相手の立場に考えが至らなかったとは、なんたる失態。
圭太に会える、それだけで浮き足立っていた自分が恥ずかしくて、いたたまれなくなる。

「シズカ、今まで待ってくれていたのか?」
「いや、ちょっと時間があったから・・・はい、これ圭太さんの好きな
シャトー オー・ブリオンと、ナパの白。講演、お疲れ様でした」
「お、サンキュ、シズカ。時間があるなら、ちょっと飲んで帰らないか?」
そう言って破顔した圭太は、背後の2人を親指でクイクイと指し示した。

「いや、これから帰って店を開けなくちゃいけないんだ。今日は、久しぶりに顔を見ようと思って寄っただけだから。じゃあ・・・圭太さん、また店にも来て下さい」
踵を返して美術館を出、駅に向かった。
本当は、今日はシーラカンスの定休日だ。
店を開けるというのは、咄嗟に口をついて出た嘘で、これから打上げに行くであろう圭太達に気を使わせないための方便だった。
慣れない嘘をついた顔が熱くなる。早くこの場から逃げ出したい。

 エントランスから外に出た足は、早く姿を消してしまおうと一目散に駅に向かう。
その腕をとられて驚いた。
「待てよ!シズカ。何度も呼んでるのに。・・・駅はそっちじゃないだろう?」
聞き慣れているはずの圭太の声に心臓が跳ね上がった。
「え?」
見れば、圭太の背後、振り返った自分の進路とは間逆の方向に地下鉄の目立つ目印が掲げられている。間抜けな自分に、頬が熱くなった。
その横顔に、呆れたような圭太の声が投げられる。
「お前、相変わらず、方向音痴だな。車で送ってやるから、ここで待ってろよ」
 


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深海魚 3
 車の外を、都会の見る度に高くなっていくビル郡が流れ過ぎて行く。
4年前までは自分も、この街を自在に泳ぎ回っていた筈だったのに、この街は訪れる度に自分の知らない街へと変貌を遂げていた。圭太の運転するポルシェGT2は、人も建物も高密度にせめぎあう都会を切り裂くように首都高速を突っ走っていく。

 静を引きとめた後、圭太は一旦、2人のスタッフの元に戻りそれから姿を消した後、車をまわして戻って来た。

「圭太さん、打ち上げは行かなくて良かったんですか?」
「打ち上げ? 今日のは単にスタッフと飲みに行こうかって話しだったんだけど。互いに気を遣うMAMのエライさん達と飲んだって面白くともなんともないだろう? ここんとこ激務で丁度、息抜きもしたかったし、週末は葉山のセカンドハウスでゆっくりするよ。そう思えば、今日はシズカに会えてラッキーだったかもな」

そう言って向けられた笑顔に心が小躍りしそうになるのを、商売用の笑顔を顔に貼り付けることで何とか乗り切った。その勢いで、自分の中の厭らしい勘繰りを口に乗せる。

「でも、明日はバレンタインですよ。誰かと会う約束とかないんですか?」
「ああ、そういえばそんなイベントが世間にはあったっけな。最近やたらとメールが多いと思った」 苦笑混じりに笑っている。
「読まないの? メール」
「ここんとこ忙しかったからな。仕事関係以外は、申し訳ないが無視だ」

週末、圭太が葉山にいる、そう思うだけで胸をノックするリズムが高くなる。

 先程、講演会が催されていた美術館MAM(モダン・アート・ミュージアム)は元々、臨海都市再開発の一環として計画されたが一年前、クライアントの事業縮小と融資元であったHNホールディングスの買収問題で計画が頓挫しそうになった。事業を引き継いだ高波グループによって規模は縮小されたものの、都市開発は続行され圭太の設計したMAMも日の目を見ることとなった

 日本中を揺るがほどの騒動の引き金となった、大企業買収を仕掛けた男が自分もよく知る男で、先程、時見 享一を抱きしめようとして躱された永邨 周(ながむら あまね)だったと思うと、不思議な感じがする。

 圭太は以前、周にもちょっかいをかけていた。だが、それをいったらキリが無い。
出合った頃からモテまくっていた圭太の隣にはいつも、美しい女が座を占めていた。いつの頃からか、その恋人の位置に男が混じり始めた。自分の圭太に対する気持ちが、単なる憧れではないことに気が付いたのもその頃だ。圭太がクリスマスやバレンタインのイベント時にひとりでいるのを一度も見たことが無い。

明日は、圭太は葉山にいる。店のささやかな飾りつけ以外に、イベントというものを意識したことはなかったが、バレンタインに圭太がひとりで葉山にいるという事実が、静の心の中に小さな喜びを生み出した。静は、我に返ったように小さく息を呑むと、自分の胸に灯る自分本位なささやかな喜びを、慌てて打ち消した。
 これではまるで、現在、圭太に恋人がいない事を喜んでいるみたいだ。

「圭太さん、飲んで車で帰るつもりだったんですか?」
 先の言葉を裏付けるように、ハンドルを握る圭太の横顔に微かな疲労が滲む。
「さっきいた眼鏡のほう。あいつは、超下戸の癖に、飲みにいくのが好きという変わり種でね。代わりに車を運転してくれるからありがたい存在ではあるが、ちょいと煩いのが玉に瑕」
 軽く笑いながら、圭太が言う。こんな、普通の会話が自分には、とても嬉しいことなのだと、圭太は想像できるだろうか?

「ところでシズカ、今日は何の用で東京に来たの?薫は確か今、撮影でイタリアだろ?」
なんといおうか迷ったが、正直に話すことにした。
「圭太さん、俺、シーラカンスを買い取ろうと思うんだ」
「買い取る? シズカがあの店を? 伊原さんは承諾したのか?」
「いや、まだ交渉の土俵にも乗せてもらってない」
「東京にはもう戻らないつもりなのか?」
「……うん。海のそばにあるあの店が好きなんだ。葉山にいれば湘南も近いし、サーフィンも好きなときに出来るだろう?」

 もし、俺があの店を離れられない理由を言ったら、圭太はどんな顔をするのだろう?




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■静×圭太 関連<SS> ― 願い ―

■河村 圭太 関連作 翠滴 2

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深海魚 4
 圭太を困らせたくはない、でも・・・と

 シーラカンスのオーナーである伊原氏との今朝の遣り取りを思い出す。
伊原氏には、前々から静に住み込みで東京の本宅専属のバーテンダーになってほしいと言われてきた。婉曲にだが、身の回りのことも頼みたいと・・・。
それが、何を意味するのか、奥手な静にも大体の察しはつく。

 そっと、再び圭太の横顔を伺い見る。世界から切り取るように、形の良い頤や鼻、唇を秀でたラインが縁取り、薄い色のサングラスに覆われた瞳は真っ直ぐ前を向いている。昔からこの横顔が好きだった。

 圭太にとって俺は、仲のいい友達の弟でしかない。俺の圭太に対する感情は、きっと圭太にとって煩いだけだ。身体と一緒に、心まで柔かい皮のシートに沈んでゆく。
外を見るふりをして、そっと目を閉じた。

「落とせよ」
不意に圭太が呟いた声に顔を上げる。
「え?」
「その鬚。何度も言うようだけど、全然、似合ってない。もともと薄いのに無理して伸ばしても、全くサマになってない。落としたほうが断然、女にもモテるぞ」
 無意識のうちに指先が顎鬚を弄んでいた事に気付き、人に見られたくない癖を見咎められた子供のようにバツが悪くなって、赤面しながら指を下ろした。圭太の何気ない、思いやりのこもった言葉が、沈んだ心にいくつもの小さな引っ掻き傷を作っていく。

「ただ、延ばしてるんじゃないんだ。
願掛けしてて、願いが叶ったら落とそうと思ってる」
圭太が小さく噴出した。また傷が増える。
「シズカって、意外と迷信深いんだな。で、シズカの望みは叶いそうなのか?」
「どうかな・・」俯いた顔が曖昧に笑う。

「その願い事って、何?薫には黙っててやるから、俺にだけ、こっそり聞かせろよ」
圭太が、ニヤニヤと笑いながら横目で助手席に視線を向ける。
その、優しげな庇護するような眼差しに、やはり自分は弟分なのだと胸を痛くしていることなんか、圭太にはわからないだろう。

 たぶん、願いが叶うことは無い。
喩え、この鬚が白くなっても、自分の顔から消えることは無いに違いない。


 横浜横須賀道路に入るとやがて見慣れた海が見えてきた。
安堵に吐息が漏れる。
早く自分が本来いるべき、深い深い海の底に潜り込んでしまいたかった。

「シズカ、どこで降ろしてほしい?」
圭太に問われて、答えに窮した。店を開けるつもりなら、この時間には花を買い求めてから店に入り、清掃やら氷やおしぼり、酒のストックなんかを点検をしている時間だ。
だが、今更店は休みだったと告げる訳には、いかない。
小さな声で行き先を口にする。
「シーラカンスに、お願いします」
運転席から、盛大な溜息が聞こえた。
「嘘付け。シーラカンスは、3のつく日は定休日で、本当は13日の今日は、休みなんだろう?シズカ、俺が打ち上げに行くと思って、気を遣って嘘をついたんだろ?」

 総て見透かされていた。そう思うと、自分の幼稚な嘘が恥ずかしくなって赤面し、シートに縮こまった。その恥ずかしさの中にほんの少し混ざる嬉しさに気付き更に頬を熱くする。

「シズカのさ、そういう所は嫌いじゃないし、むしろ美点だとは思う。
けどな、その自分から進んで貧乏くじを引く性格はいい加減直さないとな。シズカが本当に欲しいものが出来た時に、逆ににビビって、手を伸ばすことも出来なくて泣き面をかくことになりそうで、俺は心配になるぞ」
そう言うと、圭太は右手を伸ばし静の頭をくしゃりと撫でる。
その掌の温もりに涙が出そうになって、瞳を閉じた。
圭太は優しい。圭太の優しさが自分に向けられる度、心の中の掻き傷が増えてゆく。

 本当に欲しいものに手を伸ばす・・・・。
 いつだってその指の先にあるのは、幼馴染というカテゴリーから決して零れることの無い圭太の姿だ。




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■河村 圭太 関連作 翠滴 2


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