11 ,2008
煩悩スクランブル 1
2→
フライパンに3つめの卵を落とした。小気味よい油のはねる音がしてキッチンに食欲をそそる匂いが充満する。
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
4つ目を落としたところでインターホンが鳴った。
フライ返しを片手に壁の通話ボタンを押すと「宅急便でぇーす」と元気な兄(あん)ちゃんの声がする。
「ねえ、まだ8時半だよ。ちょっと早くね?」
「あ、サインはそこに・・・・すみませんね、今日ちょっと荷物が多くって」
受け取りにサインをして顔を上げると、日に焼けた好感度120%、好奇心200の%の目とバッチリ目が合った。年の頃23~5、同じくらいか。結構・・・・いや、かなりど真ん中だ。早速、秋波を送ってやろうと目を合わせた瞬間、配達の兄ちゃんはブッと噴出して「ありがとうございましたっ」と、最速で去っていった。さすが、飛脚の足は早い。
「なんだよ、今の笑いは?」
手の中に心当たりの無いダンボールの小箱が残る。
「オレ、なんか買ったっけ?」キッチンに戻りながら頭をかいた。覚えがまったく無い。
取り敢えず箱を開けてみる。そう、開けりゃあ答えはすぐに出るのだ。ガムテを剥がすと納品書らしき白い紙が一枚。下には真白な淡雪の如き衝撃吸収剤が。その真ん中にピンクの”すりこぎ”が、これまた赤いリボンのかかったガラスの棺の中で眠る白雪姫の趣で、楚々と収まっている。
なんの気なく透明な箱ごと目の前に持ち上げた瞬間、オレは雄叫びと同時に箱を放り出した。落下の衝撃か、箱の中で低いモーター音が唸りはじめる。ソイツは、清々しい朝の光を蹴散らすような恥じらいのない淫猥な動きで元気にのたくった。見ているだけで腰が抜けそうな激しさで、ちょっと嫉妬しそうだ。
「商品の電池は、お届け時は抜いとくのが原則だろうが!!」
ズレた悪態を吐きながら領収書を兼ねた納品書をひったくり確認する。眼鏡、眼鏡。
「・・・・・・・」
受取人は確かに自分の名前になっている。差出人欄には『壮快.com』。
ブチッ。脳内で細胞100万個が一斉に弾ける音がした。
脳細胞100万個。つまりショウジョウバエ10匹分だ。
オレは瞬時に脳内のショウジョウバエ10匹を無為な殺生でヤってしまったのだ。
「真理(しんり)ィーーーーーッ!!!!」
オレは片手にのたくる箱、もう片手に納品書を握り締め、真犯人の名を叫びながらロフトの階段をドタドタと駆け上がり、ベッドスペースに踏み込んだ。
ベッドの中では天使が惰眠を貪っている。
17歳の透けるような白い肌 バサバサと瞬くたび音のしそうな長い睫 柔らかそうな栗色の髪 小振りだが筋の通った愛らしい鼻、ぷるるんと艶めくベビーピンクの唇。
まさに、穢れ無き天使だ。
繊細そうに見える白い指先も、かわいい踝も無防備に投げ出され、天使のあどけなさを強調する。
だが、オレは知っている。コイツは穢れの固まりだ。
こいつの中にはあれやこれやの邪がギュウギュウ詰めで詰まっているのだ。
おまけに、コイツは正真正銘 生まれながらの仏教徒だ。クリスチャンでもなんでも無い。
こいつの実家はデカイ寺なのだ。
檀家からお布施と称して金銭を巻きあげ、その金でオヤジはクルーザーを買い、母ちゃんはおシャネルのスーツを戦闘服に高級外車を乗り回す。恐るべしギンギラリンに煌く、宗教法人ワールドのお坊ちゃまなのだ。
仏教徒の天使がオレのベッドで眠っている。いや、違った。正確に言えばこのマンションはコイツのだから、このベッドもコイツのモンで・・・てことは、もしかして、ここにいるオレもこいつのモノってコトかしら?
違うっ、断じて違うっ。オレはただの居候の身だ。ただし、オレだって好きで居候をやってんじゃない。ヤンゴトナキ事情があってのことなのだ。
やにわに、身動ぎした天使の左手が、あろうことか自分の股間に移動した。
眠ったままマスをかく気らしい。
予想外の面白い展開に、オレはニヤニヤと冷ややかな嗤いを浮かべながらその姿を見下ろした。もちろん手を腰に当て勝ち誇った男のポーズ、仁王立ちだ。
「おおっと、写メ、写メ~」天使の弱み、1つゲット!
わざわざ天使の顔の傍に箱から出したブツを置いて、ジーンズの尻ポケットから携帯を出す。もちろん、動画モードだ。マス掻き天使とのたくる愛玩具のエグい構図。
今後、俺に失礼な事を言ったりやったりしやがったら、お前の恥ずかしい映像をYouTubeで流してやるぞって、脅してやる。
卑怯者?言いやがれってんだ。
この件に関しては、俺はなんと言われたって構わない。
俺だって、卑怯者にも極悪非道の人非人にだってなれるってところを、この腹黒天使に見せてやるんだ。
優位に立つ自分を想像すると、込み上げる爽快感に笑わずにはいられない。
時を同じくして、天使のぷるるん唇がニヤリと不敵な笑いを浮かべた。
んん、なんだ?
液晶から目を離し注視すると唇が薄く開く。寝言か?
問題発言を期待して、緩んだ口元が更にニヤケる。
「・・・・・ハルゥ。ほら、もっと脚ひらいて・・・・」
!!!!。
「真理ィーーッ!テメェッ・・・起きやがれっ!よくもオレをオカズにマス掻きやがったな!!」
激怒したオカズのオレは、じゃ無かった、オカズにされたオレは、天使に纏わり付く羽根布団を乱暴に毟り取った。ようやく目が覚めた腹黒天使はスローな動きでベットの上に座り伸びをする。
しなやかな動きは猫のようだが、猫のほうが1000倍は可愛い。
ちなみにオレは猫が大っ嫌いだけどねっ。
「んーー。ハル、おはよ」
「ハルって呼ぶな。ちゃんと先生と呼べ」
「だって、もう先生じゃないじゃん。ううーーん。朝の伸びの邪魔しないでよね。今日の分、背が伸びなかったら”先生”の所為なんだから」
「うるせぇ。伸びでも何でもしてタッタと目ェ覚まして、そこでのたくってる
ソレについて説明しろっ」
真理は寝ぼけ眼で自分の横で卑猥な動きでクニクニと腰をふるブツを手に取ると、しげしげと眺めた。あどけない天使の顔が、何の感慨もなさそうにブツを眺めている。
なんとなく怖い図だ。
「ふぅん。ディルドってこういうのだったのかぁ」
「感心するなっ。やっぱり、犯人はお前か!何でこんなもん買ったんだよ!!しかも、俺のPCで、俺のアドレス使って、俺のクレジットでエログッズのネットショッピングなんて、すんじゃねえ!!」
真理がブツを注視していた目を、ピタッとこちらに向けた。性玩具片手に、上目遣いでじいっと見詰めてくる。いつになく思いつめた眼差しの天使顔と猛りうねるバイブのコラボに、異様な凄味を感じてあとずさった。
「な・・・・なに?」 声がちょっとばかし裏返る。
真理はコロッと表情を変え、ニッコリ破顔した。
「せーんせ。朝ごはん、ちょーだい☆」
フライパンに3つめの卵を落とした。小気味よい油のはねる音がしてキッチンに食欲をそそる匂いが充満する。
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
4つ目を落としたところでインターホンが鳴った。
フライ返しを片手に壁の通話ボタンを押すと「宅急便でぇーす」と元気な兄(あん)ちゃんの声がする。
「ねえ、まだ8時半だよ。ちょっと早くね?」
「あ、サインはそこに・・・・すみませんね、今日ちょっと荷物が多くって」
受け取りにサインをして顔を上げると、日に焼けた好感度120%、好奇心200の%の目とバッチリ目が合った。年の頃23~5、同じくらいか。結構・・・・いや、かなりど真ん中だ。早速、秋波を送ってやろうと目を合わせた瞬間、配達の兄ちゃんはブッと噴出して「ありがとうございましたっ」と、最速で去っていった。さすが、飛脚の足は早い。
「なんだよ、今の笑いは?」
手の中に心当たりの無いダンボールの小箱が残る。
「オレ、なんか買ったっけ?」キッチンに戻りながら頭をかいた。覚えがまったく無い。
取り敢えず箱を開けてみる。そう、開けりゃあ答えはすぐに出るのだ。ガムテを剥がすと納品書らしき白い紙が一枚。下には真白な淡雪の如き衝撃吸収剤が。その真ん中にピンクの”すりこぎ”が、これまた赤いリボンのかかったガラスの棺の中で眠る白雪姫の趣で、楚々と収まっている。
なんの気なく透明な箱ごと目の前に持ち上げた瞬間、オレは雄叫びと同時に箱を放り出した。落下の衝撃か、箱の中で低いモーター音が唸りはじめる。ソイツは、清々しい朝の光を蹴散らすような恥じらいのない淫猥な動きで元気にのたくった。見ているだけで腰が抜けそうな激しさで、ちょっと嫉妬しそうだ。
「商品の電池は、お届け時は抜いとくのが原則だろうが!!」
ズレた悪態を吐きながら領収書を兼ねた納品書をひったくり確認する。眼鏡、眼鏡。
「・・・・・・・」
受取人は確かに自分の名前になっている。差出人欄には『壮快.com』。
ブチッ。脳内で細胞100万個が一斉に弾ける音がした。
脳細胞100万個。つまりショウジョウバエ10匹分だ。
オレは瞬時に脳内のショウジョウバエ10匹を無為な殺生でヤってしまったのだ。
「真理(しんり)ィーーーーーッ!!!!」
オレは片手にのたくる箱、もう片手に納品書を握り締め、真犯人の名を叫びながらロフトの階段をドタドタと駆け上がり、ベッドスペースに踏み込んだ。
ベッドの中では天使が惰眠を貪っている。
17歳の透けるような白い肌 バサバサと瞬くたび音のしそうな長い睫 柔らかそうな栗色の髪 小振りだが筋の通った愛らしい鼻、ぷるるんと艶めくベビーピンクの唇。
まさに、穢れ無き天使だ。
繊細そうに見える白い指先も、かわいい踝も無防備に投げ出され、天使のあどけなさを強調する。
だが、オレは知っている。コイツは穢れの固まりだ。
こいつの中にはあれやこれやの邪がギュウギュウ詰めで詰まっているのだ。
おまけに、コイツは正真正銘 生まれながらの仏教徒だ。クリスチャンでもなんでも無い。
こいつの実家はデカイ寺なのだ。
檀家からお布施と称して金銭を巻きあげ、その金でオヤジはクルーザーを買い、母ちゃんはおシャネルのスーツを戦闘服に高級外車を乗り回す。恐るべしギンギラリンに煌く、宗教法人ワールドのお坊ちゃまなのだ。
仏教徒の天使がオレのベッドで眠っている。いや、違った。正確に言えばこのマンションはコイツのだから、このベッドもコイツのモンで・・・てことは、もしかして、ここにいるオレもこいつのモノってコトかしら?
違うっ、断じて違うっ。オレはただの居候の身だ。ただし、オレだって好きで居候をやってんじゃない。ヤンゴトナキ事情があってのことなのだ。
やにわに、身動ぎした天使の左手が、あろうことか自分の股間に移動した。
眠ったままマスをかく気らしい。
予想外の面白い展開に、オレはニヤニヤと冷ややかな嗤いを浮かべながらその姿を見下ろした。もちろん手を腰に当て勝ち誇った男のポーズ、仁王立ちだ。
「おおっと、写メ、写メ~」天使の弱み、1つゲット!
わざわざ天使の顔の傍に箱から出したブツを置いて、ジーンズの尻ポケットから携帯を出す。もちろん、動画モードだ。マス掻き天使とのたくる愛玩具のエグい構図。
今後、俺に失礼な事を言ったりやったりしやがったら、お前の恥ずかしい映像をYouTubeで流してやるぞって、脅してやる。
卑怯者?言いやがれってんだ。
この件に関しては、俺はなんと言われたって構わない。
俺だって、卑怯者にも極悪非道の人非人にだってなれるってところを、この腹黒天使に見せてやるんだ。
優位に立つ自分を想像すると、込み上げる爽快感に笑わずにはいられない。
時を同じくして、天使のぷるるん唇がニヤリと不敵な笑いを浮かべた。
んん、なんだ?
液晶から目を離し注視すると唇が薄く開く。寝言か?
問題発言を期待して、緩んだ口元が更にニヤケる。
「・・・・・ハルゥ。ほら、もっと脚ひらいて・・・・」
!!!!。
「真理ィーーッ!テメェッ・・・起きやがれっ!よくもオレをオカズにマス掻きやがったな!!」
激怒したオカズのオレは、じゃ無かった、オカズにされたオレは、天使に纏わり付く羽根布団を乱暴に毟り取った。ようやく目が覚めた腹黒天使はスローな動きでベットの上に座り伸びをする。
しなやかな動きは猫のようだが、猫のほうが1000倍は可愛い。
ちなみにオレは猫が大っ嫌いだけどねっ。
「んーー。ハル、おはよ」
「ハルって呼ぶな。ちゃんと先生と呼べ」
「だって、もう先生じゃないじゃん。ううーーん。朝の伸びの邪魔しないでよね。今日の分、背が伸びなかったら”先生”の所為なんだから」
「うるせぇ。伸びでも何でもしてタッタと目ェ覚まして、そこでのたくってる
ソレについて説明しろっ」
真理は寝ぼけ眼で自分の横で卑猥な動きでクニクニと腰をふるブツを手に取ると、しげしげと眺めた。あどけない天使の顔が、何の感慨もなさそうにブツを眺めている。
なんとなく怖い図だ。
「ふぅん。ディルドってこういうのだったのかぁ」
「感心するなっ。やっぱり、犯人はお前か!何でこんなもん買ったんだよ!!しかも、俺のPCで、俺のアドレス使って、俺のクレジットでエログッズのネットショッピングなんて、すんじゃねえ!!」
真理がブツを注視していた目を、ピタッとこちらに向けた。性玩具片手に、上目遣いでじいっと見詰めてくる。いつになく思いつめた眼差しの天使顔と猛りうねるバイブのコラボに、異様な凄味を感じてあとずさった。
「な・・・・なに?」 声がちょっとばかし裏返る。
真理はコロッと表情を変え、ニッコリ破顔した。
「せーんせ。朝ごはん、ちょーだい☆」
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お読みいただきありがとうございます。
こんにちは紙魚です。しょっぱなから、ちと、お下劣でスミマセンm( _ _ )m。
今回は、コメディです。
翠滴を念頭において読まれた方は、ちょっとがっかりされたかもしれません~。
3~4話で終わる予定ですので、どうぞ、あたたかく見守ってやってくださいマセ☆

お読みいただきありがとうございます。
こんにちは紙魚です。しょっぱなから、ちと、お下劣でスミマセンm( _ _ )m。
今回は、コメディです。
翠滴を念頭において読まれた方は、ちょっとがっかりされたかもしれません~。
3~4話で終わる予定ですので、どうぞ、あたたかく見守ってやってくださいマセ☆

『あれやこれやの邪がギュウギュウ詰め』って..どんだけですか(笑)
邪な天使ちゃんがきっとすんごい事を繰り広げてくれるに違いないと、期待に胸を膨らませております。朝ごはんて..(。-_-。)ポッ ←勝手に想像し過ぎっ
ああ..それだのに..私、諸事情により明日からしばらくPCにさわれない日々が続きます。多分2週間以上(涙)
この試練を乗り越え再びこちらにお邪魔した暁には..( ̄ー ̄)ニヤリッ
ハァ~耐えられるかな..がんばれ私!!
私事で、長々と申し訳ありませんでした<(_ _)>
気になるなー『朝ごはん』。(しつこい)