06 ,2010
ファミリーバランス 1
買い物から戻って玄関ドアを入ったところで捕まった。
「もう、我慢できない」
「エレベータの中でもしただろう?」
肩を壁に固定され、脚の間に長い周の足が割り込んだ。こうなると全く身動きが取れない。両手に持っていた紙袋が大理石の床に落ち、中から子供サイズのTシャツやらGパンやらが顔を出す。
夏の初め頃から、期限付きで和輝を預かる事になった。
周と和輝と。短期間だが、うまく家族になれるだろうか?ちゃんと父親ができるだろうか?
少し、面映い。
「ちゃんと集中して」
上の空になりがちな唇を親指で弄られ、気を取り直し薄い唇に合わせた。
薄暗い静かな玄関に濡れた音が響く。
周の脚が兆し始めた中心をすりあげ、息を呑んだ唇から上ずった声が上がった。
まずい、じきに和輝も帰ってくる時間なのに、こんなに風に煽られたら、この先も欲しくなってしまうじゃないか。
小学生が一緒に暮らすとなっては、もう今までみたいに周に四六時中サカらせる訳にはいかない。育児をする家庭にはモラルと規律が必要だ。
「も、放せよ。もうちょっとしたら和輝もサッカーから帰ってくるんだし」
着痩せする厚い胸板を掌で押し返す。
「和輝? 和輝なら、ここにいるけど」
「は・・・・? 何っ!!」
周が視線で指す先に目を落とすと、子供特有の白目の青く澄んだつぶらな瞳と視線がかち合った。和輝はすぐ側に立って俺たちのキスシーンをまじまじと見上げている。
ザザザザザーー、と血の気が引き真っ白になった頭で言い訳を考えるが、魚のようにぱくぱく動く口からは「おかえり」すら出てこない。
「往生際が悪い」と言わんばかりの、周の溜息が肌蹴た襟の間の鎖骨に当たり、ボンと音が出そうなくらい勢いをつけて、身体中に羞恥の火が点いた。
「チュウだったら、僕もタカスミくんとしたことあるよ」
下からも爆弾発言が飛んでくる。
キスを見られた衝撃と、脳を爆撃する言語ミサイルで頭の中のアレやコレが、ボーリングのピンのようにしっちゃかめっちゃかに弾けとんだ。
「え、えーと。な、なに? かずくん、いまなんて言った・・・のかな?」
「タカくんがしようっていったから、仲良しはするもんだって。教えてくれたもん。男同士で結婚できる国があるから、大きくなったらいこうねって言ってた」
爆死しそうな頭に、波動砲を浴びせられる。
まさか、俺たちのせい?
「僕もタカくん好きだし、してもいいかなあって」
眩暈がしてきた。
由利になんて説明するんだ?
「エ、エ・・・・・・ええっと、周っ!」
とどめを刺された頭は使い物にならない。
助けを求めて振り返ると、周が露骨に嫌そうな顔をして立っている。
「あ・・・? アマネ?」
「子供に向って、あの子と遊んじゃいけないとか言うのは気が進まない。だが、はっきり言って、あの高波一家とこれ以上、因縁を持つのは正直、御免こうむりたい」
そこかよっ!!
「そういう問題じゃないだろう」・・・て。
周が憂いを含んだ真顔になる。
「享一・・・・」
はい・・・何でしょう?
前で組んだ腕を引かれ、解けた手のひらを握られる。何が始まるんだ?
「俺といて、幸せ?」
「ばっ・・・・・な、なにを急に」 言い出すんだ、この男は。
厭な予感にジリジリと引ける腰を、微妙にいやらしい動きをする掌が捕まえる。
尻(ケツ)を揉みしだく手を放せっ。
和輝の顔をチラッと見ては戻す。を繰り返し、和輝の前だからとサインを送るのに。完全無視しやがった!
そ、それをここで言わせるのか? 波動砲を浴びた顔面に脂汗が浮かぶ。
「言ってください。享一は私といて幸せかどうか聞かせてください」 ヤバイ、丁寧語だ。
白々しい笑い声で誤魔化した。
「はは。変だな周は、急に何を・・・・」 ここで、俺に言わせようってんだっ。
「聞かせてください」
尻の狭間に指がめり込んだ掌に、グイと腰を抱き寄せられた。薄っすらと笑う形になった唇が近づいてくる。
艶めいた薄い唇の醸し出す雰囲気がやたらと卑猥だ。
「死ぬほど幸せです!!」
小さな舌打ちと共に体が離れた。動悸が治まらず、引き攣った顔に昇った血液がなかなか引いてくれない。こっちが恥ずかしくて真っ赤になった顔を和輝に向けられないのに対し、周はさっさと向き直る。
「人生のパートナーとして、誰を選ぶのかは和輝の自由だ。男も女もない。大事だと思った相手と生きていけばいい。だが、和輝はまだ学生だろう。勉強に遊びに手伝い、他にやることがたくさんあるはずだ」
学生って。そりゃ、学生には違いないけど、さ。
「僕、まだ小学生やもん」 そうだ、そうだ。心の中でコクコクと頷く。
喬純くんの影響か、和輝の口から時々関西弁が飛び出すようになった。
周は和輝が関西弁を口にする度、決まって『この家で関西弁は厳禁です』をやる。
「何もそこまで拘らなくても・・・」
呆れて小声で呟くと周のシャープな男らしい柳眉がピクリと反応し、ギロリと睨んでくる。
オイオイ、俺にまで威嚇するなよな。
上下双方向からの種類の違う攻撃波に、ドっと脱力した。
ファミリーバランス・2
「もう、我慢できない」
「エレベータの中でもしただろう?」
肩を壁に固定され、脚の間に長い周の足が割り込んだ。こうなると全く身動きが取れない。両手に持っていた紙袋が大理石の床に落ち、中から子供サイズのTシャツやらGパンやらが顔を出す。
夏の初め頃から、期限付きで和輝を預かる事になった。
周と和輝と。短期間だが、うまく家族になれるだろうか?ちゃんと父親ができるだろうか?
少し、面映い。
「ちゃんと集中して」
上の空になりがちな唇を親指で弄られ、気を取り直し薄い唇に合わせた。
薄暗い静かな玄関に濡れた音が響く。
周の脚が兆し始めた中心をすりあげ、息を呑んだ唇から上ずった声が上がった。
まずい、じきに和輝も帰ってくる時間なのに、こんなに風に煽られたら、この先も欲しくなってしまうじゃないか。
小学生が一緒に暮らすとなっては、もう今までみたいに周に四六時中サカらせる訳にはいかない。育児をする家庭にはモラルと規律が必要だ。
「も、放せよ。もうちょっとしたら和輝もサッカーから帰ってくるんだし」
着痩せする厚い胸板を掌で押し返す。
「和輝? 和輝なら、ここにいるけど」
「は・・・・? 何っ!!」
周が視線で指す先に目を落とすと、子供特有の白目の青く澄んだつぶらな瞳と視線がかち合った。和輝はすぐ側に立って俺たちのキスシーンをまじまじと見上げている。
ザザザザザーー、と血の気が引き真っ白になった頭で言い訳を考えるが、魚のようにぱくぱく動く口からは「おかえり」すら出てこない。
「往生際が悪い」と言わんばかりの、周の溜息が肌蹴た襟の間の鎖骨に当たり、ボンと音が出そうなくらい勢いをつけて、身体中に羞恥の火が点いた。
「チュウだったら、僕もタカスミくんとしたことあるよ」
下からも爆弾発言が飛んでくる。
キスを見られた衝撃と、脳を爆撃する言語ミサイルで頭の中のアレやコレが、ボーリングのピンのようにしっちゃかめっちゃかに弾けとんだ。
「え、えーと。な、なに? かずくん、いまなんて言った・・・のかな?」
「タカくんがしようっていったから、仲良しはするもんだって。教えてくれたもん。男同士で結婚できる国があるから、大きくなったらいこうねって言ってた」
爆死しそうな頭に、波動砲を浴びせられる。
まさか、俺たちのせい?
「僕もタカくん好きだし、してもいいかなあって」
眩暈がしてきた。
由利になんて説明するんだ?
「エ、エ・・・・・・ええっと、周っ!」
とどめを刺された頭は使い物にならない。
助けを求めて振り返ると、周が露骨に嫌そうな顔をして立っている。
「あ・・・? アマネ?」
「子供に向って、あの子と遊んじゃいけないとか言うのは気が進まない。だが、はっきり言って、あの高波一家とこれ以上、因縁を持つのは正直、御免こうむりたい」
そこかよっ!!
「そういう問題じゃないだろう」・・・て。
周が憂いを含んだ真顔になる。
「享一・・・・」
はい・・・何でしょう?
前で組んだ腕を引かれ、解けた手のひらを握られる。何が始まるんだ?
「俺といて、幸せ?」
「ばっ・・・・・な、なにを急に」 言い出すんだ、この男は。
厭な予感にジリジリと引ける腰を、微妙にいやらしい動きをする掌が捕まえる。
尻(ケツ)を揉みしだく手を放せっ。
和輝の顔をチラッと見ては戻す。を繰り返し、和輝の前だからとサインを送るのに。完全無視しやがった!
そ、それをここで言わせるのか? 波動砲を浴びた顔面に脂汗が浮かぶ。
「言ってください。享一は私といて幸せかどうか聞かせてください」 ヤバイ、丁寧語だ。
白々しい笑い声で誤魔化した。
「はは。変だな周は、急に何を・・・・」 ここで、俺に言わせようってんだっ。
「聞かせてください」
尻の狭間に指がめり込んだ掌に、グイと腰を抱き寄せられた。薄っすらと笑う形になった唇が近づいてくる。
艶めいた薄い唇の醸し出す雰囲気がやたらと卑猥だ。
「死ぬほど幸せです!!」
小さな舌打ちと共に体が離れた。動悸が治まらず、引き攣った顔に昇った血液がなかなか引いてくれない。こっちが恥ずかしくて真っ赤になった顔を和輝に向けられないのに対し、周はさっさと向き直る。
「人生のパートナーとして、誰を選ぶのかは和輝の自由だ。男も女もない。大事だと思った相手と生きていけばいい。だが、和輝はまだ学生だろう。勉強に遊びに手伝い、他にやることがたくさんあるはずだ」
学生って。そりゃ、学生には違いないけど、さ。
「僕、まだ小学生やもん」 そうだ、そうだ。心の中でコクコクと頷く。
喬純くんの影響か、和輝の口から時々関西弁が飛び出すようになった。
周は和輝が関西弁を口にする度、決まって『この家で関西弁は厳禁です』をやる。
「何もそこまで拘らなくても・・・」
呆れて小声で呟くと周のシャープな男らしい柳眉がピクリと反応し、ギロリと睨んでくる。
オイオイ、俺にまで威嚇するなよな。
上下双方向からの種類の違う攻撃波に、ドっと脱力した。
ファミリーバランス・2
□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ
これを書いた時は、ちょうど瀬尾と享一の息詰る関係を書いていた時で、
まだラストもおぼろげにしか見えていない状態でした。
瀬尾と切ない別れをする設定でもなかったので、今読み返すと3人がヒドイ能天気ヤローに思えてきます(;^_^A
特にカズキン。泣いて瀬尾を追っかけてたじゃん。くぅ~~~、子供は薄情だねえ。。
って、書いたのは私なのね(笑)
みなさま、どうぞ余興と軽く読み流してくださいませ。
後編は明後日の0時に更新いたします。
■拍手ポチ、コメント、村ポチと・・本当に、いつもありがとうございます。
ほんの拙文しか書けませんが、書いていく励みになります。。
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これを書いた時は、ちょうど瀬尾と享一の息詰る関係を書いていた時で、
まだラストもおぼろげにしか見えていない状態でした。
瀬尾と切ない別れをする設定でもなかったので、今読み返すと3人がヒドイ能天気ヤローに思えてきます(;^_^A
特にカズキン。泣いて瀬尾を追っかけてたじゃん。くぅ~~~、子供は薄情だねえ。。
って、書いたのは私なのね(笑)
みなさま、どうぞ余興と軽く読み流してくださいませ。
後編は明後日の0時に更新いたします。
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スイマセンスイマセン(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ
無邪気な和輝の爆弾発言に大爆笑ww
周さんは何処でもやっぱり周さんですね♪
ひとりアワアワと慌てる享たんが可愛すぎます(笑)
前後編なのですね♪ 続きも楽しみです!!