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紙魚

Author:紙魚
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Category: 翠滴 -side story-  

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翠滴 side menu  鳴海 7(終)
← 6                                         月下 1→  


 屋敷に着く頃に周は目を覚ました。
 衣服の乱れは鳴海によって きれいに直されていた。

 「無理させてしまいましたね」

 「・・・・なんてこと無い」

 感情を消した抑揚の無い声が答える。この男は、何度この言葉を自分に言い聞かせてきたのだろう。鳴海は、直接顔を向けず助手席を見遣る 周は視線を暮れなずむ遠くの山の頂に、ほんの少し残る残光に向けたまま、表情を窺い知る事はできない。

 「鳴海」

 「・・・はい」
 
 「俺は結婚する。力を貸せ」

 驚きで、すぐに言葉が出なかった。

 「結婚・・ですか?」

 「俺が結婚したら、本家の奴等も神前たちもそう頻繁に呼び出せは
 しなくなるだろう」

 「・・・結婚ごときで、あの方々が大人しく引き下がるとは思えませんが・・、
 牽制くらいにはなるかもしれませんね・・」
 
 いや、跡継ぎが生まれれば事態は劇変する。本家に子種は無い。

 「どなたか、心当たりでも?」

 「時見 享一」

 周の即答に面食らった。

 「それは・・・時見は、男性でしょう?」

 「俺は、自分の子なんていらない。なら、”ごっこ”の結婚で充分だ」

 「一族の皆様や、神前様たちを欺くと?」

 「何、言ってんだ。俺だって騙されてここに連れてこられたようなもんだろうが?」

 周の瞳が責めるように睨んできたが、諦めたようにすぐにもとの表情に戻る。
 鳴海とて、その話題に触れられるのは後ろめたさを露呈するようで気分は良くない。

 「ただ・・・・時見 享一は、ごく一般的な男だと思われますが、
 落す自信はあるのですか?」

 「俺は受けも攻めも、テクはピカイチだぜ?なんてったって、淫獣・神前の
 直伝だからな」

 周 は事も無げに嘯くと、忽ち悪巧みを企む子供のような酷薄さを滲ませてニヤリと笑った。確かに”受け”のテクはたった今、証明してもらった。 
偽りの、それも女役での結婚式への加担を、如何に時見に承諾させるのかということを訊いたつもりだったが、この発言からすると躯も堕すつもりということか。鳴海の中に複雑な感情が沸き起こる。

 「ちょっと、掻き混ぜてやろうぜ」 と、

 周の翠の虹彩の中で悪戯を企てる時の子供のようなきらきらと輝いては爆ぜる光が楽しげに共犯を誘う。可愛く”悪戯”と呼ぶには悪質すぎて呆れるが、この瞳に強請られるなら悪い気がしない。久しぶりに見る周の生きいきとした表情は、鳴海の胸にも小さくパチパチと弾ける花火のような光を伝染させる。

 完成された美しい男の容貌から覗く、聞き分け悪そうな少年の貌。
 この男は、どれだけ自分を魅了すれば気が済むのか・・

 「なっ、面白そうだろ」 

 「少しは・・」

 しなやかな男だ。 
 実のところ、神前も他の誰もこの男には敵わないのかもしれない。

 選択を許されない逆境にあっても運命を変えようと指し示す指は、常に真直ぐ前を向いている。この類稀なる男にどんな運命が待ち受けるのか、どうやって自分の道を切り開いて行くのか、その先までも見届けたくなった。
   


                                  鳴海 (終)  
             

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「side menu 鳴海」、終わりです。ラストまで読んで下さった皆様、ありがとうございます。
明日から、本編デス。


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テーマ : BL小説    ジャンル : 小説・文学

Comments

sideを読んで、更に鳴海にはまってしまった私です。
やっぱ、紙魚サマの書く描写は素晴らしい!
特に、情事の場面なんか、鳴海が輝いて見えました(笑
千澄さま!コメありがとうございます!!
ここまで書いといて言うのもなんですが、お恥ずかしゅうございます。
キラキラ☆輝くえろ(笑)最高のホメ台詞でございます~(≧▽≦)
ありがとうございます(ペコリ)
紙魚さま。こんばんは!
またまたお邪魔してます(#^.^#)

また、素晴らしいモノを読ませて頂きました。
ありがとうございます。
遠くから、紙魚さまを拝みたい・・・。

鳴海・・・。
かなりの食わせ者でしたね。
そんな所が大好きです。
今夜は眠れそうにありません・・・。(悶・・・)
7ページ読むのに、息切れしそうになりました。(悶々・・・)
ヤバいです!

翠滴2も早速読ませて頂きま~す!

それと、私のブログにもご訪問して下さっていた様で、本当にありがとうございます。
紙魚さまの様な素晴らしい文章をお書きになる方には、目も当てられないかと思いますが、是非、またいらして下さいね(*^_^*)
ミートン・メートンさま!! こんばんは~(*^o^*)
 鳴海、読まれたんですね・・
きゃあーーーっ!! ハズカシーーーィ!!!
ミートン・メートンさまのお言葉,勿体のうございますっm( _ _ )m

 鳴海は、もともとエロ路線を狙って書いていたので
書いている最中も結構ノリノリだったんですけど、
更新時間(朝6時・・に読む内容じゃないですよね・・・)
になると胃が痛くなってました(笑)
鳴海は、パワーバランスの変動も書いていて楽しかったです。(ナンチッテ☆

Night gateのような地味サイトに何度も足を運んでいただき恐縮です。
ありがとうございます\(≧▽≦)丿また遊びに来てくださいね(Love!

 次、ミートン・メートンさまのところにお伺いする時は、
気合を入れて伺います(←篠永君シリーズ制覇する気マンマン~☆

いいもん読ませていただきました!!
鼻血出る…!!
やっぱり周魔性~~~~~~。
ハァハァハァハァハァハァ(←変態かーーーーっっ!!
性的に搾取されても誇り高い周が好き…。
エロティックですが文章が美しい!どっぷり陶酔します。
うぬぅーーーエロ書くの苦手なわたくし…精進しないとなぁ。
エーーーーッ!!
 よ・・読まれたんですか~~~っ!!
うわぁっ!ハッズカシーーーーイ!!!

 重いコンダラ引っ張りながら、ノリノリで書きました・・・って
 ↑(コレ、変換したらすぐ出るようになちゃった・・・(^-^;)
どんなけ、えろ好きなのよ???って感じ?
違いますよぉ!ホントに書くの苦手なんですよう~~
 読むのは好きなんですけど(エッヘン!

 周にとって肉体は所詮それだけのもの。精神の繋がりにこそ
意味があり真実のSEXがあるということでしょうか。。ナンテ・・
たとえ汚れても人は再生できる、りりさまのコメレス、とても素敵でした(ポ

しかし、りりさまの深いエチに比べれば、アタクシのえろなんぞ
・・・オハズカシイ~

> うぬぅーーーエロ書くの苦手なわたくし…精進しないとなぁ。

 精進。。。うむむ・・やはり、えろ道場か・・・
このあまねの
背景が、1ではあまりつっこんでは描写されてなかったです、よね?
ちがいましたか?
もっとも享一視点でしたからね1は。
でもこの非常におもしろい設定は、もうこれだけでどーんとメインにもってこれるというか。
享一という男にたいする攻め男(笑)である、周という人間のたんなる一背景にしておくにはあまりにもったいなさすぎる設定では……
徹底的につっこんだ、詳らかな「周メインの話」が読んでみたい。
Re: このあまねの
 7月さま。ラストですね♪←

 本編は、享一がメインなので周に関する内容はどちらかというと端折ってます。

> 徹底的につっこんだ、詳らかな「周メインの話」が読んでみたい。
 ・え~~~~~(また・・笑
 確かに、攻め男・周の背景は享一よりもドラマティックですよね。
 でも、混沌と葛藤それに絡まるエロスを書ききるのは凄く難しそうなので、もっと筆力が上達したら考えてみたいとおもいます♪(いつだろう?私が知りたい・笑

 たくさんのコメント&ご訪問、ありがとうございました♪♪
鳴海完全読破!
一気読み致しました。
淫獣神前って、デビルマンのタイトルみたいだ!

鳴海もよかったです、
周が乱れるのも美しく
ドキドキしました。
周を好きになった神前も、鳴海も報われないですね。
自分だけのものにしようとするからなんですが

周様やはりすてき、男に捧げる貢物にされても、失わないプライドがいいです。
はあ、周さまチャージできました。
ぼくカテ雫も周さまを見習いたいですが、彼はプライドって何?って感じなキャラですぐに人に懐くから、
この凌辱とかされようと すぐ許しちゃってちゃんちゃんです。
いいもの読ませていただきました。ありがとうございました
Re: 鳴海完全読破!
 Rinkさま、ようこそです♪


> 一気読み致しました。
> 淫獣神前って、デビルマンのタイトルみたいだ!
 ・永井ゴウ~~~出てきそう(笑)こういうテイストですよね、まさに。

> 鳴海もよかったです、
> 周が乱れるのも美しく
> ドキドキしました。
 ・ありがとうございます。
も、RのみのSSで、より地味なお話なんですけど気に入って頂けて嬉しいです♪

> 周を好きになった神前も、鳴海も報われないですね。
> 自分だけのものにしようとするからなんですが
 ・2人とも、周と生きてゆく人間ではなかったということですね。
早く、別の方を見つけて頂きましょう。

> 周様やはりすてき、男に捧げる貢物にされても、失わないプライドがいいです。
> はあ、周さまチャージできました。
 ・よかったです~。本編ではすっかりご無沙汰(早く更新すれば良いだけなんですけど…
ですので、周さん忘れられるんじゃないかと心配しておりました(笑)

> ぼくカテ雫も周さまを見習いたいですが、彼はプライドって何?って感じなキャラですぐに人に懐くから、
> この凌辱とかされようと すぐ許しちゃってちゃんちゃんです。
 ・や、周は愛のないえちはスポーツぐらいにしか思ってない節がありますので、ある意味節操がないかもです。

> いいもの読ませていただきました。ありがとうございました
 ・こちらこそ、一気読みありがとうございましたv

 コメント&ご訪問、感謝です!
鍵コメントさま、ようこそです!

ふおおお! お読み下さったんですね、ありがとうございます!
周はある意味、雑草のような根性の持ち主なので、いろんな意味で整っている鳴海には
実際のところ敵わないのかもしれません。
そしてプライドMAXな性格の鳴海は、周の横暴に打ちのめされても
自分が弱っているところは絶対に見せないというのが、鳴海の萌えかも…と(笑)
一~二章の完結で、三章は結構重めです。
重いのが苦手でしたら二章まででも、充分楽しんで頂けるのではないかと思います。
私も後ほどそちらに伺いますね~♪♪

コメント&ご訪問、ありがとうございました!
拍手コメント、Cさま
Cさま、ようこそです~~(*^▽^*)

夜になってからコメントに気が付き・・・m(_ _:)m
何だったんでしょうかね。。もしかしたら、FC2さんの方でメンテでもやっていたのでしょうか。
取り敢えず、お読みいただけるようになったみたいで良かったです!!

そして、美味しい水のCDも聴いていただいているのですね!
翠滴を書いていた頃、ジルベルトとイリアーヌ・イリアスのCDを何度も聞き返していました。自分の中でも、音と文章が強く結びついた作品だったと思います。
今も、作品を読み音を効いいてくださる方がいる。
本当に幸せな作品だと思います。
Cさま、こうしていつまでもご愛読してくださり、本当にありがとうございます♡
拍手コメント&ご訪問、感謝です!

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