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紙魚

Author:紙魚
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Category: 翠滴 -side story-  

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真夏の残像 1 □20000HITキリ番リクエスト♪□
 本日は、本編をお休みしまして、先日AOさまより頂いた
□20000HITキリバンリクエスト□にお応えしたいと思います。 
ストーリーは、『翠滴』のスピンオフ、周×享一のお話です。
では、どうぞ♪



 < 真夏の残像 1 >

 「夏祭り?」
 広げられた”たとう紙”の上に並べた鈍色と紺の浴衣を前に享一の目が問いかける。

 「茅乃と美操からの結婚一周年の祝いだそうだ。灰色が俺ので、
 こっちの藍紺が享一の浴衣だ」
 周の鈍色の浴衣は、少し光沢のある灰色に縦糸で注し色で翠の縞が入っており、翠の瞳と相俟って、周にすごく似合うに違いない。
 雄雛のようにきりりと切れ上がった眉の下で深い翡翠色の瞳が目許も涼しく笑っている。

 「実は、屋敷の前につるされた提灯が気になってたんだ」
 享一の手がたとう紙の上の紺の浴衣に伸びた。
 「GWに周から旅行をプレゼントしてもらったばかりなのに、茅乃さん達まで・・・
 2人とも忙しいのにいつ見に行ってくれたんだろう?・・・・これ、似合うかな?」
 「勿論・・・」周が浮かべた微笑に邪な色が混ざり、翡翠の碧が一層深くなった。

 茅乃たちが帰国した折、享一の浴衣の見立てに行くという2人に自分も同行した。
 一色の糸ではなく濃淡のある数種の藍糸を使った深みのある藍紺は享一のしっとりとした艶を引き出しより魅力的に見せるはずだ。
 嬉しそうに浴衣を手に取る享一に翠の瞳が下心を滾らせ、これもまた嬉しそうに細まる。 

 着せる喜びがあれば、当然そのさかしまの喜びがある。
 むしろ、そちらの方に周の期待は軍配を上げ、享一の腰に巻いた角帯を持つ手が仕上げの結びのところでピタリと止まった。
 着れば脱ぐ、いや脱がせるために着せる・・・。
 今夜の”着る”から”脱ぐ”までの間に横たわる雑多な段階をすべて排除できないものかと、周は帯の結び目を睨んだまま思案をめぐらせる。
 理性と欲望がこめかみ辺りでせめぎ合いピクピクと小さく震えている。

 「周、手が止まってるぞ」
 俄かに危険を察知した声が、普段の甘やかさからはかけ離れた想像もつかないような低音で頭上から落ちてきた。
 「・・・・夏祭りは、今日と明日の2日間ですが・・・・」
 帯を掴んだ両手がクロスしたまま期待を込めて”待て”をしている。

 享一がいつも、”その眼に魅入られた・・・・”と表現する魅惑の翠の瞳は、勢いよく袷を開いた時の享一の羞恥に狼狽る表情と、「浴衣には当然これだ」と、嫌がる享一に無理矢理着けさせた褌姿をもう一度見たいという欲望に充血しウズウズしている。

 「だから?」 氷の如く冷たくそっけない声も、欲望で沸騰した脳に達する前に蒸発する。
 「行きたい?」
 本当は『イキたい?』と聞きたい。今度は小さな溜息が落ちてきた。
 「明後日は仕事だし、明日の夜なんて俺たちはここにいないじゃないか?」
 周・・・、と肩に柔らかく享一の手が置かれた。
 「俺は、はじめて周と俺が出会い周が大切に思うこの庄谷を俺も大切に思っている。
 だから、村の祭りにも行ってみたいし、・・・なにより、周がその鈍色の浴衣を
 着たところも見てみたい」
 ダメ押しとばかりに周にむけて向きを変え、顔を覗き込むように少し屈んだ享一の、はにかんだ表情の唇が綻ぶ。
 素早く残りの帯も結び始めた周を肩越しに見下ろし、享一は薄くほくそえんだ。

 帯を結び終えて立ち上がり、改めて正面から享一を見た周の瞳が大きくなる。
 「どう?似合うかな?」
 「・・・・・・・・」
 「なんか言ってくれよ。そう正面からまじまじと見つめられると、恥ずかしいだろう?」
 照れ隠しか、頬を紅潮させながら享一がしかめ面を作る。
 なんという艶やかさか、濃い紺が細身だが決して低くはなく若竹のようなしなやかな躰を包みそこはかとない色香を漂わせる。
 寝巻き用の浴衣で浴衣姿には免疫があると思っていた考えが鱗となって剥がれ落ちていった。
 照れまくりながら上目遣いで見上げる表情は・・・「可愛い」と言っては怒るだろうと、万感の想いを込めて「よく似合っている」とだけ言っておく。
 そんな短い褒め言葉にも享一は頬を染めたまま満面の笑みで返し、愛おしさを掻きたてる。

 享一を待たすまいと、素早く自分も浴衣に着替えると、二人分の下駄を持って一足先に玄関に向った享一に追いついた。玄関先に立って自分を待っていた享一の顔が、やわらかな卵色の白熱灯の下でパッと華やいだ。
 「周、その浴衣やっぱりすごく似合ってる」
 嬉しい言葉に微笑で応えた。
 「行こう」
 
 門を出ると、とっぷりと落とされた夜の帳の中で、柔らかな提灯の灯りが時折風で揺れていた。遥か遠くの道にも同じ提灯が吊られていて、神社への参拝道をささやかな光で照らしている。
 鎮守の森のある山の中腹辺りがぼうと明るくなって、お囃子のような楽の音が風に乗って微かに流れてきた。
 ふと、前にも同じようなことがあったことを思い出す。
 秋の気配のする晩夏の夜、周は1人塞ぎ込む享一を同じように外に連れ出した。
 あの時、享一は心ではとっくに周を選んでいながら、頭では理想の人生の形というものに囚われ、ふたつの思いの間で揺れながら苦しんでいた。
 隣で佇む享一の顔を見ると、放心したように灯りのない暗い田畑に見入っている。
 享一の手を取りあの時のように手を繋ぐ。
 泣きそうな顔が微笑みを返してきた。

 あれから4年の月日が経った。
 享一の身を慮って、一度は諦めた。
 だが、その享一はすべての懸念や杞憂を持ち前の誠実さと潔さで覆し、隣にいる。
 更なる万感の想いを込めてしなやかな身体を抱き寄せると、何も言わずその腕を背に回してきた。
 「行こう」
 「ああ」
 頷いたその手を引いて薄闇の中に踏み出した。

 


    真夏の残像  2 →



□□最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^_^*)ペコリ

  リクエストが、『周と享一の夏』ということでしたので、夏といえば定番のお祭りに
 出かけさせました。全3話の短編の予定です。
 ダダっと書いてしまったので、誤字脱字、変な表現がボロボロありそうです(いつもだけど)
 お気づきになられた方、ご一報いただけると嬉しいです。
 毎度、他力本願ですみませんm(_ _)m
 AOさま、リクエストありがとうございます!

                           紙魚

 
  拍手ポチ、コメント、村ポチと・・本当に、いつもありがとうございます。
  大変、励みになります。。
 

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Comments

Re: もうすでに
 Kさま、ようこそです♪

> 文面から匂うような色気が…♪
> それに紙魚さんは心情のみならず、場景の描写が本当に巧みでらっしゃるので、風景が目に飛び込んでくるようです。
 ありがとうございます~ぅ。
 繊細で深みのある表現をされるKさんにそんなことを仰っていただけるなんて畏れ多いです。

 今、ざっと読み直したらかなり無理のある文章がチラホラ・・・・ぎゃ~~~~っ
 ガッツリ、目を通さず更新する自分が悪いんですけど・・・
 この夏、自分の筆力のなさにめげまくったので、ここのところ開き直りが入ってきました。

> すみません、きっと爽やかに前者ですわね。
 そんな筈、ないじゃないですか~~(爽やかに・・・)完全に後者です(きっぱり)
 この先、本編でもスピンオフでもちょっとの間ウチはお祭りでございます(笑)

> 失礼しました。
> 隠微な妄想は、ナルちゃんとの脳内番外編にとどめておきます(笑)。
 おお、そうだった!そっちも書かなくっちゃ。
 脳内妄想では、負けておりません~。単に筆がついていかないだけなんです♪

> 恥ずかしいから、一応、非公開にしておこう、うん。
 そういえば、今日Mさんのところで鍵コメにしたつもりが掛け忘れてまして、ズッコケました(笑)
 ドンくさい私です凹

 コメント&ご訪問、感謝です!
 
褌萌え(爆)
ぶぶぶーっ(≧ε≦)
周さんが面白すぎる~~~!!二枚目なのに、二枚目なのにぃーーー(笑)
浴衣を着せてるしりから脱がせたくてしょうがない( >ω<)9 
わかりますよ~。まさに理性と欲望のせめぎ合い!

享ちゃん、なんとか死守しましたね(* ̄∇ ̄*)
さすが、周さんのツボを押さえてます。

そしてそして、覚えてますよー。あの卵色の電燈のシーン。
享ちゃんがぽろぽろと泣くのが切なくて可愛くて。
周さんの心中もね..(ノд-。)クスン
本当に名場面だと思います。大好きです。
はぁ~。あれから4年も経っちゃったんですねえ。
色々乗り越えて、やっとここまで...あっ本編では再び大荒れなんだったΣ( ̄□ ̄;)!!

続きが楽しみです~♡
Re: 褌萌え(爆)
 シマシマ猫さま、こんばんは♪

> 周さんが面白すぎる~~~!!二枚目なのに、二枚目なのにぃーーー(笑)
 最近、ちょっと重めなので、昔のノリを思い出して書いてみましたo(*^▽^*)o
 ”素”の周が書けて、楽しかったです(笑)
 
> 浴衣を着せてるしりから脱がせたくてしょうがない( >ω<)9 
 ええ、ええ!!
 脱がせるために着せるんですもの!(←違う
 でも、ちょ~っと早過ぎるぜ、周。。。。という感じでしょうか(どんな・・・

> 享ちゃん、なんとか死守しましたね(* ̄∇ ̄*)
> さすが、周さんのツボを押さえてます。
 ええ、享ちゃんも付き合いを重ねて、さすがに強くなりまして(涙
 自分の身を守る方法も身につけたようです。

> 本当に名場面だと思います。大好きです。
 わぁ~~~~~~っ!ありがとうございます!!
 覚えていてくださった上に、好きだといって頂けて書き手冥利に尽きます。・゚・(ノε`)・゚・。

> はぁ~。あれから4年も経っちゃったんですねえ。
> 色々乗り越えて、やっとここまで...あっ本編では再び大荒れなんだったΣ( ̄□ ̄;)!!
 はい、あれから4年・・・山あり谷ありクレバスあり・・・本編はこれから大嵐が吹き荒れる(予定♪)
 私はキリリクのスピンオフで一休みです(笑)

> 続きが楽しみです~♡
 お、書かねば・・・♪(休んでる場合ではなかった
 次話は明日の夜、23:00更新予定です(きっと・・・

 コメント&ご訪問、感謝です♪
Re: タイトルなし
 AOさま、ようこそです!

 AOさま、リクエストを頂き、こちらこそありがとうございます!

> なんと言う美しい文章。
 きゃ~~~~あ!!ありがとうございます。
 今回、結構お下劣な周を出してしまったので、そう言っていただけますと
 品位も地に落ちずにすんだかと(とっくに堕ちてる←)ほっとします。

> 庄谷のシーンはホッとします。
 おお、AOさまも覚えてくださっていたんですね、、感動ですw(*゚o゚*)w
 庄谷は、もはや2人ののふるさとになっています。
 庄谷が舞台になると書いている私もホッとします(o^-^o)

> あの半纏の後姿のかっこよさ、Gメン75を超えておりました。
 (爆)Gメン75て・・・アアタ((o(>▽<)o)) きゃははっ♪
 いいですよね~~!!祭りって男の人は断然普段の5倍はかっこよく見えますよね。

> いやいや、そんな事より?、褌!に目が釘付けになったのは、周だけではないです(爆
 わ、こちらでも受けいれていただけた♪
 読み手の方に引かれちゃったらどうしよう~とちょっぴり、気になっていました。
 
> ありがとう紙魚さま(何が
 もちろんフン○シですよね♪(ちがう?

> こんな美しいお話を書いてくださって、ほんとうに嬉しいです。
 こちらこそ、ありがとうございます。
 切欠がなかったら、なかなか書けないお話でした。

> 続きが楽しみです。
 明日の夜23:00更新の予定です(たぶん・・・(笑)

 コメント&ご訪問、ありがとうございます。

 
Re: はじめまして。
 Kさま、ようこそ!はじめましてです♪

 お名前は、L さまのお宅でもよく拝見しておりましたので
なんだか、よく知っている人の感じです(勝手に・・・・笑)

> 秋の七草。美しいです。(青が好きです!)
 ありがとうございます!爽やかな季節に合わせたくて選びました♪
 HNは気になさらないで下さいね。最初は本人が間違えましたから(笑)

> 今日、「深海魚」を一気読みして感動していたのです。河村さん、いい男じゃないですか。周さんと享一さんの邪魔をする人と思ってたのに・・・。
 うおおおおっ!一気読みですか?
 ウチは、一話が結構長いのでオメメはお疲れになりませんでしたでしょうかw(*゚o゚*)w
 ありがとうございます。この度20000HITのリクを2つ頂戴していまして、もうひとつが河村×静のお話です。更新はまだ未定(コレばっかり・・)ですが、また覗いていただけると嬉しいです。

> 翠滴のシリアスなお話も表現がすごいの一言ですが、煩悩スクランブルのコメディータッチも好きです。匠の技を感じます。
 きゃあ~~っ!どうしましょう?穴、穴~~っ!!(スミマセン下品で・・・
 お願いです、L さまと並べないでくださいませ~~畏れ多いです。

> 本編の享一さん、周さんを守るためとはいえ・・・。かなり続きが読みたいですが、
 翠滴&周を気に入っていただき、嬉しいです~♪ありがとうございます!!
 本編はこの先、どす黒い暗雲がたちこめる予定ですので、取りあえず2人の浴衣男で寛いでいただければ←・・と思いますv

 9月になって、ランキングから下りていた方々も復帰されて、賑やかになりとても嬉しいです。
 お気遣いありがとうございます。
 Kさまもご自愛頂き、華やかになったサイト巡りをお楽しみくださいませ♪
 こちらこそ、今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m

 コメント&ご訪問、ありがとうございます♪

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